R&D of MPPC-1 (The Basic Performance of Multi-Pixel Photon Counters) * 完全版 * 京都大学 高エネルギー研究室 M1 五味 慎一
概要 新型の光検出器、Multi-Pixel Photon Counter (=MPPC)について、以下に述べる項目についてその基礎性能を測定した。括弧内の値は、T2K実験で求められる性能を表している。 GAIN ( > 5×105 ) noise rate ( < 1MHz ) least cross talk rate cross talk rate PDE ( > 75% PMT ) Linearity
MPPCの説明 MPPCはPMTに代わる新たな光検出器として注目されている新型の光検出器である。 100(10×10)pixel MPPC 1×1mm2の受光面に、APD (=Avalanche Photo Diode)ピクセルが並んでいる。この一つ一つが、「光を感知した」か、「しない」か、の2通りのシグナルを出すバイナリなデバイスとして動作することで、MPPCは検出したフォトン数に対して優れた分解能を持つ。 MPPCの利点 1.優れたフォトンカウンティング能力を持つ。 2.コンパクトである。 3.磁場に影響を受けない。 4.低いBIAS電圧、高GAINで動作する。
MPPCの1pixelの動作原理 APD (Avalanche Photo Diode)は、逆電圧をかけることで半導体のpn接合部に高電場領域を形成し、そこで電子雪崩を起こさせて信号を増幅するフォトダイオードである。 V+ 電子雪崩 による増幅率 γ p+ absorption region p n 印加電圧がある値VBDを超えると、僅かな光に対しても放電を起こすようになる。 この時の増幅率は106倍にもなり、シグナルの大きさは入射フォトン数によらない hole e- GND E 光が『入った』か、『入らなかった』か、だけが解る
定義 横軸にBIAS Voltage [V]をとり、25℃・20℃・15℃の3つの温度条件の元で測定を行った。
GAIN = 52.20×0.25 [pC] / 素電荷÷100(AMP) pedestal 1p.e. 2p.e. 3p.e. 4p.e. 5p.e.・・・ ADC channel counts セットアップ 青色のLEDを光源に用いて、その微弱光をMPPCで測定する。 ADC分布からGAINを算出する。 青色LED MPPC ~イメージ図~ * STATUS DATA * 400 pixel MPPC BIAS : 69.3V / VBD =67.1V 例 ( 1p.e. – pedestal ) = 143.43 - 91.23 = 52.20 [channel] GAIN = 52.20×0.25 [pC] / 素電荷÷100(AMP) =6.86×105
Cross-Talk Rate の測定 Cross-Talk Rate は、ある一つのAPDがフォトンを感知した時に、他のフォトンが入らなかったはずのAPDからも信号が出てしまう現象を示したものである。 これは、『データがPoisson分布に従うこと』と、『Cross-Talkが存在してもpedestalの比率は変化しないこと』との二つから測定することができる。すなわち、 PedestalからPoisson分布を仮定して算出した1p.e.の値は、Cross-Talkを含まない。 測定データの1p.e.の値はCross-Talkを含む。それ故に、pedestalから算出したものよりも小さくなるはずである。 以上から、Cross-Talk Rate は次のように定義される。
Least Cross-Talk Rate の測定 1.縦に重なったもの (時間的にほぼ同時) 2.横に重なったもの (始めのパルスから遅れて次のパルス) 1p.e.パルス (アナログ) 前項のCross-Talk Rateはこの二つを含めたものになっている。この内、『1.』に関しては『1.5p.e.』をthresholdにとることでnoiseと同様に測定することができる。そこで1.だけを特に『least cross-talk rate』と定義して測定を行った。
PDE ( =Photon Detection Efficiency ) の測定 PDEの測定はPMTとの比較で行った(同じ光量をPMT,MPPC双方に照射したとき、どれだけ光電子を得ることができるか)。 PDEは3つのパラメータから成る。 セットアップ PMT MPPC 波長変換ファイバーを通して、その出口からの光を二つの検出器で観測する。 MPPCの場合、光の広がりによる損失もあることに注意する。
Linearity の測定 MPPCのLinearityは構造上、光量がごく大きくなるにつれそのpixelの数に収束していく。そのLinearityはCross-Talkの影響を考慮すると、以下の関数の形になることがわかる。 セットアップ PMT MPPC 紙 紙で光を少しぼかす(MPPC,PMT双方に入る光は同じである必要はない。双方に入る光の割合が常に一定ならよい)。 BIAS電圧は100,400pixel共に69.0Vに設定した。
GAINから求めたBreak Down電圧を用いて、 グラフの解説 GAIN 横軸にBIAS電圧をとった測定データ 100pixel 400pixel 赤:15℃ 緑:20℃ 青:25℃ GAINから求めたBreak Down電圧を用いて、 を横軸に使用した測定データ 100(10×10)pixelのMPPCのデータ 400(20×20)pixelのMPPCのデータ
GAIN T2K > 5×105 T2K 100pixel 400pixel 赤:15℃ 緑:20℃ 青:25℃
noise rate [ MHz ] T2K < 1 MHz 赤:15℃ 緑:20℃ 青:25℃ 100pixel 400pixel
least cross talk rate 100pixel 400pixel 赤:15℃ 緑:20℃ 青:25℃
cross talk rate 100pixel 400pixel 赤:15℃ 緑:20℃ 青:25℃
Photon Detection Efficiency T2K > 75%of PMT 100pixel 400pixel 赤:15℃ 緑:20℃ 青:25℃
Linearity 薄い緑色の曲線は、別個に測定したCross-Talk Rateを用いて書いた期待値を表している。 100pixel
結論 新型光検出器MPPCは、T2K実験で求められている性能の条件をクリアしている、T2K実験に使用し得る光検出器である。
今後の予定 プラスチックパッケージの設計 新しい、というか実際に用いることになるであろうサンプルの基礎性能評価。 ジーテックの後藤さんに現在のところ相談中。 新しい、というか実際に用いることになるであろうサンプルの基礎性能評価。 いつ来るのかがまだよくわからないですけど・・・。 After Pulse の時間依存, 1pixel及びpixel-by-pixelの uniformity測定,・・・等