高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡

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高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡 SNRsのγ線放射メカニズムの解明 高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡

SNRsとγ線 超新星残骸(SNRs:Supernova Remnants) 爆発放出物の形成する 衝撃波面で荷電粒子が加速 →光子を放出 高エネルギー宇宙線の起源? 1667年に爆発したCassiopeia A

衝撃波による粒子(電子・陽子)の加速 加速により、電子の エネルギー分布は べき分布になる。

考慮した放射過程 γ線領域でどちらが主要かによって電子モデル, 陽子モデルと呼ばれる 電子起源 陽子起源 シンクロトロン放射(電波~X線) 熱的制動放射(Boltzmann分布 ~X線) 非熱的制動放射(ベキ乗分布 ~γ線) 逆コンプトン散乱(Inverse Compton Scattering ~γ線) 陽子起源  γ線領域でどちらが主要かによって電子モデル,  陽子モデルと呼ばれる

考慮した放射過程 電子起源 陽子起源 シンクロトロン放射(電波~X線) 熱的制動放射(Boltzmann分布 ~X線) 非熱的制動放射(ベキ乗分布 ~γ線) 逆コンプトン散乱(Inverse Compton Scattering ~γ線) 陽子起源

考慮した放射過程 電子起源 陽子起源 シンクロトロン放射(電波~X線) 熱的制動放射(Boltzmann分布 ~X線) 非熱的制動放射(ベキ乗分布 ~γ線) 逆コンプトン散乱(Inverse Compton Scattering ~γ線) 陽子起源

考慮した放射過程 電子起源 陽子起源 シンクロトロン放射(電波~X線) 熱的制動放射(Boltzmann分布 ~X線) 非熱的制動放射(ベキ乗分布 ~γ線) 逆コンプトン散乱(Inverse Compton Scattering ~γ線) 陽子起源

考慮した放射過程 電子起源 陽子起源 シンクロトロン放射(電波~X線) 熱的制動放射(Boltzmann分布 ~X線) 非熱的制動放射(ベキ乗分布 ~γ線) 逆コンプトン散乱(Inverse Compton Scattering ~γ線) 陽子起源

解析手法

解析 電波、X線、γ線領域でのデータが与えられている どのような環境(パラメータ)で実現されるか試行錯誤 光子のエネルギー[eV] パルサー星雲(G21.5-0.9)の観測スペクトル 光子のエネルギー[eV]

(例)パルサー星雲 G21.5-0.9 パルサー星雲 ~1pc 距離:~4.8kpc 年齢:~1000年

磁場によるfitting 逆コンプトン シンクロトロン

粒子数Nによるグラフ移動 シンクロトロン 逆コンプトン

による折り曲げ シンクロトロン 逆コンプトン   Cut off energy

Fittingの例 G21.5-0.9

結果

超新星残骸 Cassiopeia A(Cas A) 距離:3.4kpc 膨張速度: 4000- 5000km/s 年齢:355年 ~2.3pc 合成イメージ

Cas A(355yr), 電子モデル シンクロトロン 非熱的制動放射 逆コンプトン B~110 μG

Cas A(355yr), 陽子モデル シンクロトロン 陽子による放射 B~1100 μG

超新星残骸 RX J1713.7-3946 距離:~1kpc 膨張速度: 1000-4000km/s 年齢:1600年 8-10pc 色:TeVガンマ線

RXJ1713(1600yr),電子モデル シンクロトロン 逆コンプトン

RXJ1713(1600yr),陽子モデル シンクロトロン 陽子による放射

超新星残骸 W44 距離:~2.9kpc 年齢:~20000年 等高線:赤外 色:GeVガンマ線 12.5pc

W44(20000yr),陽子モデル 陽子による放射 シンクロトロン np, ne~10/cc B~100μG

超新星残骸 IC 443 距離: ~1.5kpc 年齢: 3000- 30000年 8-11pc ガンマ線(ピンク)、 可視光(黄)、  3000-   30000年 ガンマ線(ピンク)、 可視光(黄)、 赤外線(青、緑、赤) 合成画像 8-11pc

IC443(3000~30000yr), 陽子モデル シンクロトロン 陽子による放射

パラメータの検証 1 星間磁場の大きさは      BISM ~ 3 [μG] 衝撃波による圧縮     B ~ 4BISM ~ 12 [μG]

パラメータの検証 2 超新星残骸の半径・年齢 → 衝撃波の速さ 衝撃波の温度

パラメータの検証 3 加速された陽子の最大エネルギー ξの不定性から、最大エネルギーの上限だと考える

パラメータの検証 4 超新星爆発のエネルギーは1053 erg ニュートリノが99%のエネルギーを持ち去る 陽子・電子のエネルギー 総エネルギー

Fitting のパラメータ B > 12 [μG] 陽子・電子の 総エネルギー

Discussion

⇒若いSNRs ⇒老いたSNRs 放射機構と年齢に関係が見られる Discussion γ線の放射機構 陽子モデルでも電子モデルでも説明できる   CasA: 355yr, RXJ1713: 1600yr   ⇒若いSNRs 陽子モデルでないと説明できない    W44: 20000yr, IC443: 3000~30000yr   ⇒老いたSNRs 放射機構と年齢に関係が見られる

Discussion (1)電子の放射冷却 (2)時間とともに陽子のエネルギーが増える 質量が大きいので加速に時間がかかる 放射により電子の   質量が大きいので加速に時間がかかる 放射により電子の エネルギーが減少する ↓ 放射が効いてこなくなる

Discussion 陽子起源の反応から

ニュートリノの 観測に期待! Discussion ニュートリノをひとつ検出するのに 10万年かかる! ニュートリノエネルギーのピーク ~100MeV フラックス~ 100MeVでのニュートリノの断面積が       なので、 スーパーカミオカンデではW44からの ニュートリノをひとつ検出するのに  10万年かかる! ニュートリノの 観測に期待!

MeV, TeVの 観測が大事! 電子モデル 陽子モデル Discussion クライン-仁科 Cut off π0135MeV

まとめ 4つの放射機構を考えSNRsのスペクトルの モデルフィッティングを行った SNRsのγ線放射機構と年齢に相関が見られた ニュートリノを観測できれば陽子モデルが  支持されるが、実際に観測するのは難しい 不定性を消去するためにはMeV, TeVでの観測が  求められる

解析手法 各放射過程からの寄与をモデルを用いて計算 実際のスペクトルを説明する物理量を求める

カットオフ(Inverse-Compton) コンプトン散乱 (εは光子のエネルギー、添字1は散乱後) 入射光子が低エネルギーの場合は    (弾性的) で トムソン散乱断面積でよいが、コンプトン波長 に近づくと量子的効果が効いて断面積はクライン-仁 科の式で表される クライン仁科の式では高エネルギーほど反応しなく なる

カットオフ(陽子衝突) π0の静止質量エネルギー 135MeV 陽子がこれ以上のエネルギーを持っていなければ 起こりえない

ブレーク(power lawの折れ曲がり) シンクロトロン放射で高エネルギーほど早く冷える 一方加速もされるのでバランスする あるところ(εbreak)でpower lawが 折れる   energy