単独CABGにおける長期成績からみたLADへのGraft戦略 -RITA-LADはLITA-LADと同等か?-

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CABG戦術 CABG 当科での方針 On pump arrest (On-A) On-Pump beating(On-B)
日本耳鼻咽喉科学会 利益相反(CO I) 開示 筆頭演者名: ○○ ○○
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本呼吸器学会 COI 開示 発表者名: 宮崎一郎 鹿児島二郎 ○熊本三郎(○筆頭者)
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日本ミトコンドリア学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
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日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本心血管インターベンション治療学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
「日本性機能学会 第27回学術総会」 「第26回日本性機能学会中部総会」 「11th Japan-ASEAN Conference on Men’s Health and Aging」  筆頭発表者名: ○○ ○○ 私は今回の演題に関連して、 開示すべきCO I はありません。
第14回医療の質・安全学会学術集会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本プライマリ・ケア連合学会 第32回近畿地方会 利益相反(COI)開示 筆頭演者名: ○○ ○○ 共同演者名: △△ △△、 □□ □□
日本小児血液・がん学会 COI 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本消化器内視鏡技師学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○○○. ○○○○. ○○○○
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本循環器病予防学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○ 演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある企業などはありません。
第14回日本統合失調症学会 筆頭発表者のCOI 開示 【指定演題】 スライド (開示すべき情報がない場合) 企業等はありません。
第12回医療の質・安全学会学術集会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
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第13回医療の質・安全学会学術集会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
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第48回日本臨床分子形態学会総会・学術集会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本心血管インターベンション治療学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本頭頸部外科学会 利益相反(CO I) 開示 筆頭演者名: ○○ ○○
日本プライマリ・ケア連合学会 利益相反(COI)開示 筆頭演者名: ○○ ○○ 共同演者名: △△ △△、 □□ □□
演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある
日本化学療法学会 COI開示 様式1-A 学術講演会口頭発表時、申告すべきCOI状態があるとき 筆頭発表演者名: ○○ ○○
Presentation transcript:

単独CABGにおける長期成績からみたLADへのGraft戦略 -RITA-LADはLITA-LADと同等か?- 熊本中央病院心臓血管外科 中津太郎、田村暢成、柳茂樹、許敞一 福井大学第2外科 腰地孝昭 京都大学心臓血管外科 坂田隆造

日本胸部外科学会 COIの開示 演題発表に際し、 開示すべきCOIはありません。 筆頭演者:中津 太郎

背景 CABGを行うにあたりLITA-LADはGolden standardといえる 長期予後における両側内胸動脈の有効性は広く知られ、RITA-LADのGraft designも本邦では広く行われている RITA-LAD症例とLITA-LADとの長期成績を比較検討することを本研究の目的とした 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

対象 2285例 877例 LITA-LAD 727例 RITA-LAD 150例 BITA使用 単独CABG 1988~2012 1988~2012  単独CABG 2285例 877例 LITA-LAD 727例 RITA-LAD 150例 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

方法 RITA-LAD(R群)とLITA-LAD(L群)の二群を以下の点について比較検討した 生存率 心臓死回避率 MACCE回避率 Graftの開存率 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

患者背景 (Matching前) Characteristic R群 L群 P value 年齢 68.4±8.2 64.0±9.0 <0.001 女性 23 (15.5%) 159 (22.6%) 0.055 高血圧 99 (66.9%) 446 (63.5%) 0.439 高脂血症 65 (43.9%) 345 (49.1%) 0.248 糖尿病 50 (33.8%) 246 (35.0%) 0.770 インスリン 7 (10.4%) 45 (10.5%) 0.982 脳血管障害の既往 24 (16.2%) 83 (11.8%) 0.143  Characteristic R群 (n = 85) L群 P value PVD 26 (17.6%) 37 (5.3%) <0.001 人工透析症例 11 (7.4%) 39 (5.6%) 0.378 Cre 1.5±2.1 1.4±1.9 0.407 EF<40 10 (6.7%) 29 (4.1%) EF 40-60 (26.2%) 142 (20.2%) EF>60 88 (59.1%) 488 (69.3%) 0.157 OMI 47 (31.8%) 260 (37.0%) 0.224 CCS 2.1±1.1 2.2±0.9 0.718 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

手術 (Matching前) Characteristic R群 L群 P value 緊急症例 5 (3.4%) 27 (3.9%) 0.784 On pump arrest 65 (43.6%) 572 (81.3%) On pump Vf 9 (6.0%) 13 (1.8%) On pump beating 8 (5.4%) 43 (6.1%) OPCAB 66 (44.3%) 74 (10.5%) <0.001 手術時間 358±81 343±71 0.044 人工心肺時間 134±51 121±40 0.011 大動脈遮断時間 72±46 74±36 0.564 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

生存曲線 (Matching前) P=0.020 R群 L群 R群 146 91 39 12 6 2 L群 679 456 189 74 5 年 10 年 15 年 R群 90±2.8% 70±6.0% 42±9.4% L群 91±1.2% 79±2.3% 68±3.8% R群 146 91 39 12 6 2 L群 679 456 189 74 29 4 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

対象 L群とR群とは患者背景が異なった為、Propensity scoreによる matchingを行い、85対170例を対象とした BITA使用 1988~2012  単独CABG 2285例 877例 LITA-LAD 727例 85例 RITA-LAD 150例 L群とR群とは患者背景が異なった為、Propensity scoreによる matchingを行い、85対170例を対象とした 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

患者背景 (Matching後) Characteristic R群 (n = 85) L群 P value 年齢 67.7±7.8 68.9±7.1 0.303 女性 12 (14.1%) 16 (18.8%) 0.408 高血圧 58 (68.2%) 1.000 高脂血症 35 (41.2%) 41 (48.2%) 0.355 糖尿病 30 (35.3%) 25 (29.4%) 0.412 インスリン 5 (5.9%) 脳血管障害の既往 13 (15.3%) 0.829  Characteristic R群 (n = 85) L群 P value PVD 9 (10.6%) 11 (12.9%) 0.634 人工透析症例 5 (5.9%) 6 (7.1%) 0.755 Cre 1.3±1.7 1.8±2.5 0.143 EF<40 (7.1%) 8 (9.4%) EF 40-60 25 (29.4%) 24 (28.2%) EF>60 54 (63.5%) 53 (62.3%) 0.854 OMI 30 (35.3%) 34 (39.5%) 0.527 CCS 2.1±1.1 2.2±0.9 0.718 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

手術 Characteristic R群 (n = 85) L群 P value 緊急症例 3 (3.5%) 1.000 On pump arrest 47 (55.3%) 50 (58.8%) On pump Vf 2 (2.4%) On pump beating OPCAB 33 (38.8%) 30 (35.3%) 0.888 手術時間 360±82 346±73 0.279 人工心肺時間 139±37 123±47 0.046 大動脈遮断時間 86±36 70±41 0.034  Characteristic R群 (n = 85) L群 P value 吻合数 3.2±0.86 3.2±0.82 0.649 Free ITA 5 (5.9%) 2 (2.4%) 0.247 GEA 16 (18.8%) 20 (23.5%) 0.453 RA 10 (11.8%) 14 (16.5%) 0.378 入院死亡 1 (1.2%) 1.000 縦隔炎 (2.4%) 3 (3.5%) 0.650 出血再開胸 0.312 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

グラフト R群 L群 LAD Diag. HL LCx RCA LITA 14 71 RITA 85 RA 1 7 2 GEA 16 SVG 14 71 RITA 85 (Free5) RA 1 7 (LITA2) 2 (GEA 1) GEA 16 (SVG1,RA1) SVG 21 12 34 LAD Diag. HL LCx RCA LITA 85 (Free1) RITA 25 (RA2,LITA1) 63 (SVG1,RA4,LITA2) 1 (RA1) RA 6 (RITA3) 3 5 (RITA1,GEA1) GEA 2 8 SVG 19 21 10 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

生存曲線 (追跡期間8.3±0.7年) P=0.053 R群 L群 R群 84 61 21 5 L群 60 34 12 2 5 年 10 年 生存曲線 (追跡期間8.3±0.7年) P=0.053 5 年 10 年 15 年 R群 89±3.6% 56±6.9% 30±8.6% L群 91±3.3% 60±6.3% 53±6.9% R群 84 61 21 5 L群 60 34 12 2 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

心臓死回避曲線 (追跡期間8.3±0.7年) P=0.441 R群 84 61 21 5 L群 60 34 12 2 5 年 10 年 心臓死回避曲線 (追跡期間8.3±0.7年) P=0.441 5 年 10 年 15 年 R群 99±1.1% 85±5.8% 70±11.1% L群 93±2.9% 76±5.6% 73±5.9% R群 84 61 21 5 L群 60 34 12 2 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

MACCE回避曲線 (追跡期間5.7±0.5年) P=0.985 R群 L群 R群 74 42 10 2 L群 47 20 8 1 3 年 7 年 10年 R群 73±4.9% 66±5.5% 59±6.2% L群 77±4.6% 64±5.7% 49±6.6% R群 74 42 10 2 L群 47 20 8 1 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

LADへのITA Graft開存率 P=0.011 R群 L群 R群 30 20 14 6 2 1 L群 39 26 18 13 8 3 年 7 年 10年 R群 86±6.3% 58±12.7% L群 95±3.1% R群 30 20 14 6 2 1 L群 39 26 18 13 8 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

LAD以外へのITA Graft開存率 P=0.442 R群 30 20 14 6 2 1 L群 39 28 24 19 13 8 3 年 7 年 10年 R群 82±6.6% 64±12.6% L群 86±5.1% 78±7.3% 69±10.4% R群 30 20 14 6 2 1 L群 39 28 24 19 13 8 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

考察 LITA-LADとRITA-LADとの開存率に差はない。 本研究におけるRITA-LADの開存率はLITA-LADよりも低かった Ann Thorac Surg 2011;92:9-17 LITA-LADとRITA-LADとの開存率に差はない。 本研究におけるRITA-LADの開存率はLITA-LADよりも低かった 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18

結語 LADへのグラフトは、開存率でLITAの方がRITAよりも優り、長期生存率も改善させる傾向にある 第66回 日本胸部外科学会定期学術集会 2013/10/18