ATLAS実験における ブラックホール探索の研究

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ATLAS実験における ブラックホール探索の研究 東大 ICEPP 兼田 充、小林富雄、 浅井祥仁、田中純一 概要 イントロダクション ブラックホールの生成、崩壊 ブラックホールの発見能力 ブラックホールの詳細測定 まとめ 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

LHC・ATLAS LHC 2007年実験開始予定 周長約27km 直径22m、長さ44m、総重量7000t 期待される物理 イントロダクション LHC・ATLAS 直径22m、長さ44m、総重量7000t       期待される物理 標準理論で予測される全領域でのヒッグス粒子の発見 超対称性粒子の発見 超対称性以外の、余剰次元を含む標準理論を超えた物理の発見 標準理論の詳細測定 LHC 2007年実験開始予定 陽子-陽子衝突型加速器 周長約27km 重心系エネルギー 14 TeV ルミノシティー 1034cm-2s-1 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

標準理論における階層性問題 電弱統一スケールに比べてプランクスケールが桁はずれに大きい イントロダクション 標準理論における階層性問題 電弱統一スケールに比べてプランクスケールが桁はずれに大きい 電弱統一スケール<<プランクスケール O(100GeV) O(1019GeV) これに伴って、ヒッグス粒子の自己エネルギーによる2次発散の問題が生まれる MH2~MH (tree) 2-O(L2)   もし上記の様なスケールの差があれば、O(MH)=O(EM)であるとして、カットオフスケールをプランクスケール程度であるとすれば、100程度の値を出すために十数桁の数の微細な調整が必要になる。 ->TeV程度のエネルギー領域に新しい物理が存在する可能性: 超対称性理論、余剰次元、など 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

余剰次元(Large Extra Dimensions) イントロダクション 余剰次元(Large Extra Dimensions) もともと重力も他の力と同程度(プランクスケールが~TeV程度) 重力だけが余剰次元にも伝播する 他の力に比べて極端に小さく見える 4次元でのプランクスケールMPlと   4+n次元でのプランスケールのMP関係 MPl2~MPn+2Rn (R:余剰次元の大きさ) 加速器実験によるMPに対する制限:MP>800GeV MPが~TeV程度であるとすると: n=1:R~1013cm ×(この様なスケールでは余剰次元   の効果は観測されていない) n=2:R~100mm 実験的に完全に否定されてはいない ->この後ではn≥2のみを考える MPが~TeV程度であれば、~TeVのブラックホールが発生する可能性がある。 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

ブラックホールの生成 √s= MBH>>MPの粒子の衝突を考える。 ブラックホールの生成、崩壊 ブラックホールの生成 √s= MBH>>MPの粒子の衝突を考える。 impact parameter (d)がシュワルツシルト半径(rH)より小さい場合、BHは生成される (MBH>>MPの場合の古典的な近似) d: impact parameter rH: シュワルツシルト半径 MP: (4+n)-dimでの    プランクスケール n: 余剰次元の数 ~100pb(MP~MBH~TeV):非常に大きい 陽子陽子衝突実験では… a and b are partons in protons and fi(x) are the parton distribution function (PDFs) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

ホーキング温度 MP=5TeV,MBH=8TeV MP=2TeV,MBH=5TeV MP=2TeV,MBH=8TeV ブラックホールの生成、崩壊 ホーキング温度 MP=5TeV,MBH=8TeV MP=2TeV,MBH=5TeV MP=2TeV,MBH=8TeV MP=1TeV,MBH=2TeV MP=1TeV,MBH=5TeV MP=1TeV,MBH=8TeV このホーキング温度に従い、ホーキング輻射する:: ボソン(フェルミオン):c=-1(1) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

放射される粒子 g,g,Z,W+,H d,u,s,c,b,t e-,ne,m-,nm,t-,nt 放射粒子の種類 ホーキング温度の違いによる ブラックホールの生成、崩壊 放射される粒子 g,g,Z,W+,H d,u,s,c,b,t e-,ne,m-,nm,t-,nt 放射粒子の種類 ホーキング温度の違いによる 放射粒子(フェルミオン)の エネルギースペクトル PDG ID:1-6=d,u,s,c,b,t 11-16=e-,ne,m-,nm,t-,nt 21-25=g,g,Z,W+,H マイナスの付くものはそれぞれ反粒子 衝突した粒子から、カラー、フェルミオン数 電荷が保存されるように放出される 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

モンテカルロサンプル signal:Charybdis + Jimmy ブラックホールの生成、崩壊 モンテカルロサンプル signal:Charybdis + Jimmy MP=1,2,5TeV, n=2-7, MBHmin=2,5,8TeV (total 33sets) example of xsec: 41pb at (MP=1TeV,n=2,MBHmin=5TeV) backgrounds:Alpgen + Jimmy Multi jets: ~107pb ttbar+jets :~103pb W+jets :~105pb Z+jets :~104pb g+jets :~105pb ATLASのFast検出器シミュレーション   ATLFASTを使用 ATLFASTでは入っていない効果として、   レプトンの検出効率やフェイクはGeant4を用いたFullシミュレーションを用いて見積もり、ATLFASTの結果に適用した MBHmin Charybdisで生成されたブラックホールの質量分布 (MBH~MPの領域は理論的に大きな不定性があるため 本研究では質量の下限値もパラメーターとしている) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

ブラックホールイベント P P ブラックホールイベントのイベントディスプレイ。大量の高エネルギー粒子を放射する ブラックホールの生成、崩壊 ブラックホールイベント P P ブラックホールイベントのイベントディスプレイ。大量の高エネルギー粒子を放射する 解析では、基本的にはイベント内の全ての粒子がブラックホール起源と考える。 実際には、ISR等の効果を除くため、前方方向に出るジェットは除く  e,m,g:PT>10GeV,|h|<2.5, jet:PT>20GeV,|h|<2.5の粒子のベクトル和でブラックホールを再構成 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

イベントセレクション ジェットから電子へのfake 4番目にPTの大きい粒子のPT Isolationは10GeVを用いた ブラックホールの発見能力 イベントセレクション ttbar+jets BH:MP=1TeV,MBHmin=5TeV,n=2 BH:MP=5TeV,MBHmin=8TeV,n=7 W+jets Multi jets Z+jets ジェットから電子へのfake 4番目にPTの大きい粒子のPT Isolationは10GeVを用いた 200GeV程度で10-4程度のfake イベントセレクション PT>200GeVの粒子が4つ以上を要請 PT>200GeVレプトンがイベントに含まれることを要請する ->トリガーもOK  (QCD Multi jets イベントを落とすため) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

イベントセレクション後のイベント数(1fb-1) ブラックホールの発見能力 イベントセレクション後のイベント数(1fb-1) 過程 MBH>1TeV MBH>5TeV ブラックホール BH(MP=1TeV,n=2,MBHmin=5TeV) 10107 5770 BH(MP=1TeV,n=7,MBHmin=5TeV) 1291 869 BH(MP=2TeV,n=2,MBHmin=5TeV) 582 400 バックグラウンド Multi jets g+jets tt+jets 18 W+jets 31 1 Z+jets 14 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

必要最小積分ルミノシティー MP=5TeV,MBHmin=8TeV MP=2TeV,MBHmin=8TeV 1fb-1 ブラックホールの発見能力 必要最小積分ルミノシティー MP=5TeV,MBHmin=8TeV MP=2TeV,MBHmin=8TeV 1fb-1 MP=1TeV,MBHmin=8TeV MP=2TeV,MBHmin=5TeV MP=1TeV,MBHmin=5TeV MP=1TeV,MBHmin=2TeV 発見(significance :S/√B>5かつS>10)に必要な最小限のルミノシティー 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

質量の再構成 (サンプル:MP=1TeV,n=2,MBHmin=5TeV) 非常に大きなecsessが見える。 ニュートリノによる運動量損失が原因 セレクション後のブラックホール質量分布 (サンプル:MP=1TeV,n=2,MBHmin=5TeV) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

消失運動量 消失横運動量が大きい->ニュートリノによって多くの運動量を持っていかれている 質量の再構成 消失運動量 消失横運動量が大きい->ニュートリノによって多くの運動量を持っていかれている                ->消失横運動量<100GeVのみを用いる 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

より正確な質量再構成 サンプル:MP=1TeV,n=2,MBHmin=5TeV 消失運動量カット後 カット前 ブラックホールの質量分布 質量の再構成 より正確な質量再構成 サンプル:MP=1TeV,n=2,MBHmin=5TeV 消失運動量カット後 カット前 ブラックホールの質量分布 ブラックホールの質量の分解能 (カット後s~3%:150GeV@5TeV) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

ホーキング温度の測定 ホーキング温度をブラックホールの質量分布として 時間発展 :off ブラックホールの詳細測定 ホーキング温度の測定 ホーキング温度をブラックホールの質量分布として 測定し、これを左下の式でフィットすることでプランクスケールや余剰次元を求める 実験の際に考慮しなくてはならない点: 理論的側面 時間発展、grey-body factor、remnant 検出器の効果等 粒子の検出効率、分解能 再構成されたブラックホールの質量の分解能 イベントセレクションの効果 topやWの崩壊で来る2次粒子 これらの効果を全て補正する必要がある 時間発展 :off grey-body factor :off 電子のエネルギースペクトル(Truth) (MP=1TeV,n=2,MBH=5-5.5TeV) TH=179-173GeV (MP=1TeV,n=2,MBH=5-5.5TeV) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

MBH vs TH Truth(時間発展有り、grey-body有り) Truth(時間発展無し、grey-body無し) ブラックホールの詳細測定 MBH vs TH Truth(時間発展有り、grey-body有り) Truth(時間発展無し、grey-body無し) 時間発展やgrey-body factorを考慮するとエネルギーの高い粒子が多くなり、ホーキング温度も高くなる(青) 理論的にこれらが良く分かれば補正可能 検出器等の効果については、複数の効果があり、補正の研究がまだしっかりと出来てないので、今後の課題 Atlfast、イベントセレクション後(1fb-1) (時間発展有り、grey-body有り) 理論曲線 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

MBH vs Leading PT Jet Blackhole W+jet SUSY ブラックホールの詳細測定 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

まとめ ATLAS実験におけるブラックホールの発見能力、発見後の性質の測定について研究を行った。 1fb-1のデータ量(初期の一ヶ月分のデータ量)でMP~1TeVの場合には十分な発見能力がある。   また、10fb-1 (初期の一年分のデータ量)のデータ量があれば、 MP~2TeVの場合でも発見可能である。 消失運動量カットを加えることにより、3%程度の質量分解能を得た。 ブラックホールからの放射粒子は、ホーキング輻射により非常に特徴的なエネルギー分布を取る。 ホーキング温度を直接観測するためには理論起源、検出器起源の様々な補正を行なう必要があり、非常に難しい。 この特徴を用いて、ジェットのPTのMBH依存性等を見ることにより他の標準理論や超対称性によるイベントで無い、と区別出来る可能性がある。 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

Back Up Slides 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

生成断面積とプランクスケール xsec vs MP (MBH=5-14TeVsample) Remaining events vs MP プランクスケールの測定 生成断面積とプランクスケール xsec vs MP (MBH=5-14TeVsample) Remaining events vs MP (5-14BHTeVsample) イベントセレクション後の数(質量の分解能を良くするために消失運動量のセレクションも追加) nによってセレクション効率が違う nが大きくなるとTHが大きくなり  放出される粒子数が小さくなるため 生成断面積のMP依存性(MBH:5-14TeV) MPに強く依存 nにはあまり依らない 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

プランクスケールの測定方法 赤い太線は前のページと同じ残ったイベント数(前のページと同じ) 細い線は誤差範囲 もし、例えば800イベント得られたとすると、(左の黒い太線)n=4に対して青い範囲でプランクスケールが得られる remaining events of n=4 (MBH=5-14TeV) uncertainty 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

プランクスケールに対する制限 図の統計は1fb-1 青い部分:排除できる領域 BH(MP=1TeV,n=2,MBHmin=5TeV) プランクスケールの測定 プランクスケールに対する制限 図の統計は1fb-1 青い部分:排除できる領域 BH(MP=1TeV,n=2,MBHmin=5TeV) BH(MP=1TeV,n=4,MBHmin=5TeV) 122GeV<MP<1306GeV 550GeV<MP<1672GeV 過去に付けれた制限と合わせれば 800GeV<MP<1306GeV 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

レプトン、光子のefficiency、fake Muonは~800GeV程度で90% Isolationのカットの閾値 今回は全て10GeVを用いている Muon Electron Photon 電子、光子は~800GeVで 60%程度 ジェットから電子へのfake レプトン、光子のefficiency 200GeV程度で10-4程度のfake 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

時間発展、grey-body factor、Remnant 光子のエネルギースペクトル 2体崩壊 時間発展有り、greybody無し 4体崩壊 時間発展無し、greybody有り 時間発展有り、greybody有り 時間発展、grey-body factorの 有無による違い Remnant崩壊による違い 時間発展、grey-body factor共にエネルギースペクトルを高い方にシフトさせる Remnantからの崩壊数が多い方がエネルギースペクトルが小さい方にシフトする 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

誤差 ルミノシティーの測定誤差:<5% ジェットのエネルギースケール(JES)の不定性:±10%動かしてみて見積もった レプトンのefficiencyの不定性による誤差 バックグラウンドの見積もりで、ジェネレーターでのスケールの違いによる誤差:+100% ブラックホールの生成断面積の理論的な不定性:20% ブラックホールの崩壊違いによる誤差 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

ジェットのキャリブレーション 40GeV<PT<200GeVの領域ではW->jjイベントなどにより、1%程度でJESのキャリブレーションが可能 200GeV以上ではこの様なイベントが少ないためキャリブレーションに用いれない p b-jet t W+ jet e-(m-) n W- _ 2つのジェットの不変質量が Wの質量になる様に キャリブレーションする 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

ホーキング温度(時間発展やgrey-body factorの効果) 時間発展 :on grey-body factor :on 電子のエネルギースペクトル(Truth)(MP=1TeV,n=2,MBH=5-5.5TeV) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

MBH vs TH (efficiency、smearingの効果) 再構成された粒子と対応のついたTruthのみ (電子のefficiencyの効果) Smearing後 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

MBH vs TH (その他の効果) ブラックホールから直接放射された イベントセレクションの効果 電子とtop等の崩壊から来た電子の エネルギー分布 イベントセレクションの効果 (レプトンの横運動量に対するセレクション) 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京

MBH vs TH 電子のefficiencyだけを補正したもの ->他の補正をきちんとしないと難しい 2007年3月26日 日本物理学会@首都大東京