大型で高エネルギー分解能の CdTe半導体検出器の開発

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大型で高エネルギー分解能の CdTe 半導体検出器の開発 2011年3月25日 京大理 平木貴宏、市川温子、木河達也、 中家剛、南野彰宏、山内隆寛 1 @関西高エネ発表会.
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大型で高エネルギー分解能の CdTe半導体検出器の開発 2011年3月25日 京大理 平木貴宏、市川温子、木河達也、 中家剛、南野彰宏、山内隆寛 @関西高エネ発表会

ダブルベータ崩壊 p n W e- ν 2ν ダブルベータ崩壊 (Z,A)→(Z+2,A)+2e-+2ν 2ν ダブルベータ崩壊 (Z,A)→(Z+2,A)+2e-+2ν 普通のダブルベータ崩壊は2つのβ崩壊が 同時に起こるような過程 電子2つと反電子ニュートリノ2つが出る 連続的なエネルギースペクトルを持つ 0ν ダブルベータ崩壊 p n W e- (Z,A)→(Z+2,A)+2e-(+0ν) もしニュートリノがマヨラナ粒子ならば 右図のようなダイアグラムで崩壊することが 可能になり電子2つしか出ない ほぼ単一のエネルギースペクトルを持つ 未だ誰も見たことがない

CdTeに含まれるダブルベータ崩壊核種 CdもTeもダブルベータ崩壊を起こす 他にも114Cd、108Cd、120Teがある (将来的に)CdTe検出器で0νDBDを見たい そのためには大型のCdTe検出器が必要 自然存在比 Q値(MeV) 崩壊形式 130Te 34% 2.53 β-β- 116Cd 7.5% 2.80 128Te 31% 0.866 106Cd 1.5% 1.75 β+/EC

CdTe検出器とは 化合物の半導体であるCdTe(テルル化カドミウム)の結晶を用いた放射線検出器 アクロラドより 半導体 バンドギャップ (eV) 電子移動度 (cm2/V/s) ホール移動度 密度 (g/cm3) 電子寿命 (μs) ホール寿命 Ge 0.67 3800 1900 5.33 >1000 1000 Si 1.11 1400 500 2.33 2000 CdTe 1.44 1100 100 5.85 3 2 化合物の半導体であるCdTe(テルル化カドミウム)の結晶を用いた放射線検出器 バンドギャップが大きいためリーク電流が小さく常温で使用可能 14Siや32Geよりも原子番号が大きい(48Cd52Te)ので   光電吸収断面積が大きい ホールの移動度が低い 大型化するとSiやGeに比べエネルギー分解能は著しく低い

キャリアの再結合 ドリフト中にキャリアが不純物等に再結合される ホールはドリフト速度が遅くこの影響が大きい キャリアの再結合は分解能を 悪化させるため通常は厚さ 2-3mm以下のものを使うが   高いエネルギーの放射線を   検出しにくい 大型のCdTe検出器でも高い分解能を得られないか? 荷電粒子 + - CdTe ホール 電子 陽極 陰極

PC セットアップ CdTe FADC preamp CdTe結晶: (株)アクロラド製 特注品 5mm CdTe セットアップ プリアンプを通し電圧をかける 15mm 10mm CdTe bias supply preamp CdTe 0V-1000V FADC PC CAEN v1724 まず20℃に設定 PCでデータ取得のコントロール CdTe結晶: (株)アクロラド製 特注品 5mm×5mm×5mm 15mm×15mm×10mm(極板間) プリアンプ: (株)クリアパルス製  時定数600μs gain約10倍 Flash ADC: CAEN社製 sampling rate 100MHz resolution 14 bit

CdTe検出器で見た波形 5mm×5mm×5mm CdTe に極板間に750Vかけた時 FADC count ホールのドリフト FADCで取得 ホールのドリフト 電子のドリフト ドリフト時間 time(μs) 電子はすぐにドリフトしきるがホールはドリフトしきるのに数マイクロ秒かかる その間にホールの一部が再結合されてしまう

波高とドリフト時間の求め方 波高はペデスタル(信号が来る手前のFADCの値)と max(FADCの値が最大)の差をとる ドリフト時間は波高の5%と95%となる高さでの時間の差をとる drift time = endtime - starttime Voltage t(max) pulse height t(pedestal) start end time

波高の補正 60CoをCdTe検出器に当てる まっすぐになるよう補正 上の図のように、ドリフト時間が長くなると再結合の効果により波高が下がり、 エネルギー分解能が悪くなってしまう そこで、プログラムで波高がまっすぐになるよう補正する 上の図の赤線の間のイベントを1333keVのγ線由来だとして多項式でfitし 得られた曲線がまっすぐになるような係数を全eventに掛ける

エネルギー分解能を求める FWHM 1.7% 1333keV γ線 補正 5mm×5mm×5mm CdTe検出器に60Co線源(1173keVと1333keVのγ線を出す)を当てて データを取得し、上に述べた波高の補正を行いエネルギー分解能を求めると 1333keVのγ線でFWHM1.7%を得た

151510mmCdTe検出器の分解能 FWHM 4.1% 補正 補正 一方、大型のCdTeでは同様の方法で補正しエネルギー分解能を求めると 20℃ 1000V 補正 一方、大型のCdTeでは同様の方法で補正しエネルギー分解能を求めると FWHM4.1%と5mm角に比べてかなり悪い

分解能に影響する要因 生成されるキャリアの数のふらつき 再結合されるホールの数のふらつき キャリアの熱励起による内部リーク電流 CdTe結晶の表面で発生するリーク電流 電子回路(プリアンプなど)で発生するノイズ CdTeにかかる電場の非一様性 CdTe結晶の非一様性 波高やドリフト時間をプログラムで求める時に発生する誤差

ノイズの評価 CdTe検出器のリーク電流と電子回路由来のノイズを 合わせたノイズの大きさを調べる ペデスタルのふらつきの時間依存性 を測定 時間と分布のRMSの相関を見ると 時間が経つにつれRMSが大きく なっていく RMS time (μs)

ノイズからの分解能への影響の評価 モンテカルロシミュレ-ションで上で述べたノイズによる ふらつきのみが乗った1333keV γ線の分布を生成 ノイズが分解能に与える影響を見る シミュレーションで 生成したノイズの分布 FADC count (換算値) time (μs) この分布を同様に補正し分解能を求め FWHM1.0%(5mm厚)、1.7%(10mm厚)を得る

分解能を決める要因 キャリア統計の寄与は~0.1% CdTeにかかる電場の非一様性は~0.2% 他の要因の大きさについては現在study中 5mm角CdTe(FWHM 1.7%@1333keV)だとリーク電流のノイズが主な原因の1つ 151510mm CdTe(FWHM 4.1%@1333keV)だとノイズ以外の要素の影響が大きい

温度を変えた時の測定 恒温槽を用い低温での分解能を見る 冷やすとノイズは小さくなる 冷やすとキャリアのドリフト速度が落ちる (20℃から0℃で10%程度遅くなる) 5mm×5mm×5mm 750V FWHM -10℃ 0℃ 10℃ 20℃ Co(1333keV) 1.5% 1.4% 1.6% 1.7% Cs(662keV) 2.1% 2.3% 2.4% 15mm×15mm×10mm 1000V FWHM -10℃ 0℃ 10℃ 20℃ Co(1333keV) 4.0% 3.9% 4.2% 4.1% Cs(662keV) 5.7% 5.8% 6.4% 6.6% 0℃あたりが分解能が良い

まとめと将来 ドリフト時間から波高に補正をすることにより、 5mm×5mm×5mmのCdTe検出器で1333keVのγ線に対しFWHM1.7%(20℃)のエネルギー分解能を得た。 15mm×15mm×10mmのCdTe検出器で1333keVのγ線に対しFWHM4.1%(20℃)のエネルギー分解能 測定条件を最適化したり解析方法を改善してO(10cm3) でFWHM0.5% (@2.5MeV)を目指す 上手くいけば更に大型化をしてダブルベータ崩壊の観測を目指す

back up

波形サンプル short drift time event long drift time event

CdTe検出器の個体差 5mm×5mm×5mmと15mm×15mm×10mmのCdTeは それぞれ3つあり、分解能の個体差を調べる 5mm×5mm×5mm 750V 20℃ FWHM cdte1 cdte2 cdte3 Co(1333keV) 1.6% 1.7% Cs(662keV) 2.4% 2.3% 15mm×15mm×10mm 1000V 20℃ FWHM cdte1 cdte2 cdte3 Co(1333keV) 4.1% 5.1% Cs(662keV) 7.0% 8.6% 6.6%

CdTe 線吸収係数 コンプトン効果 光電吸収 by XCOM 60Coの出すγ線エネルギー(1173keV,1333keV)ではほとんどコンプトン散乱される 60Coのヒストグラムのピークの多くが複数回散乱されて全てのエネルギーを落としたもの

MC 手法 ノイズによる揺らぎのpeaking time依存性を測定 peaking timeとdrift timeの関係は実データを用いた乱数を使う pulse heightにpeaking timeに依存するノイズを与えdrift timeとの2D plotを作成 pulse heightに補正をかけエネルギー分解能を求める

研究室で測定したバックグラウンド 15mm×15mm×10mm CdTe検出器で測定した background放射線のスペクトラム 208Tlは放射性核種の中で最も高い単一のγ線を放出する 15mm×15mm×10mm CdTe検出器で測定した background放射線のスペクトラム 40K(1461keV)や208Tl(2615keV)が見える