COBAND実験のためのSOI−STJの研究開発 I

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ニュートリノ崩壊からの遠赤外光探 索のための Nb/Al-STJ の研究開発 日本物理学会 第 68 回年次大会 広島大学 東広島キャンパス 筑波大学 数理物質科学研究科 物理学専攻 笠原 宏太 1.
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COBAND実験のためのSOI−STJの研究開発 I 日本物理学会 第72回年次大会 @大阪大学豊中キャンパス 八木 俊輔、金 信弘、武内 勇司、武政 健一、永田 和樹、笠原 宏太、若狭 玲那、先崎 蓮、森内 航也、 美馬 覚A、木内 健司A、新井 康夫B、倉知 郁生B、羽澄 昌史B、石野 宏和C、吉田 拓生D、加藤 幸弘E、松浦 周二F、 川人 祥二G、池田 博一H、和田 武彦H、長瀬 晃一H、馬場 俊祐H、志岐 成友I、浮辺 雅宏I、藤井 剛I、 大久保 雅隆I、Erik;RambergJ、Mark KozlovskyJ、Paul RubinovJ、Soo-Bong KimK 筑波大数理、理研A、KEKB、岡山大C、福井大D、近畿大E、関西学院大F、静岡大G、 JAXAH、AISTI、FermilabJ、Seoul Nat'l. Univ.K 講演番号 : 18pA12-7

ニュートリノ崩壊 ニュートリノ : レプトンに分類される中性粒子 既存の半導体検出器では検出不可 (Egap~数eV程度) ニュートリノ振動実験では世代ごとの質量自乗差が測定され、有限質量があることが判明している 現在知られている素粒子標準模型の中で唯一質量未決定 ニュートリノ崩壊を利用すれば質量を決定できる ニュートリノ崩壊図 ニュートリノ崩壊光のエネルギー m3= 50meV , m2=10meV を仮定すると Neutrino oscillation measure precisely! 既存の半導体検出器では検出不可 (Egap~数eV程度) 遠赤外領域(〜数meV)にも感度を持つ 超伝導トンネル接合素子光検出器(STJ検出器)を用いる 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

COBAND実験 (COsmic BAckground Neutrino Decay Search) ニュートリノ崩壊の寿命 : ※L-R対称模型を仮定 宇宙背景ニュートリノ(約110νi/cm3)崩壊光*未発見を探索 COBAND実験概要図 回折格子で分光してエネルギースペクトルを観測 地上200km〜300km , 約5分間のロケット実験 COBAND実験の目的 ニュートリノ絶対質量の決定 宇宙背景ニュートリノの存在の証明 ニュートリノの異常磁気モーメント 本実験で、ニュートリノ崩壊寿命測定下限値を、 に引き上げる 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

超伝導トンネル接合素子光検出器(STJ検出器) 超伝導トンネル接合素子 (Superconducting Tunnel Junction : STJ) Nb/Al - STJ検出器 超伝導体 / 絶縁体 / 超伝導体 のサンドイッチ構造 Nb Al Al2O3 SiO2 Si Ge Nb Al TC[K] - 9.23 1.20 Δ[meV] 1100 670 1.550 0.172 エネルギーギャップがSiやGeに比べて非常に小さい 磁場を印加することで クーパー対のトンネリングを抑制 動作原理 入射粒子が超伝導体中のクーパー対を破壊 このときに生成される準粒子のトンネル電流をSTJ検出器の信号として観測 クーパー対のトンネル電流(ジョセフソン電流)は 磁場を印加して抑制 超伝導体 超伝導体 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

リーク電流の温度依存性 産総研 藤井氏による測定 検出器への要求と極低温増幅器の導入 STJ検出器への要求 リーク電流 : < 100 pA 現状 : 50 pA (20μm□ Nb/Al-STJ) リーク電流の要求値は達成 しかし、測定系の雑音により、 遠赤外1光子観測達成には至っていない 検出器直近(冷凍機内部 : < 3K)に増幅器を設置し、信号に雑音が乗る前に増幅 リーク電流の温度依存性 産総研 藤井氏による測定 極低温増幅器に対する要求 300mK環境下でも動作可能 STJ検出器の信号増幅が可能 (※信号幅 : 数μsec) 冷凍機の配線容量負荷(〜数百pF)の環境下でも 信号伝送が可能 低消費電力 冷凍機の冷却能力 100μW@300mK , 0.25W@4.2K Nb/Al-STJ(50μm□) M.Ukibe et al., Jpn. J.Appl. Phys. 51, 010115(2012) M.Ohkubo et al., IEEE Trans. Appl. Super, 24, 2400208(2014) 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス FD-SOI-MOSFET FD-SOI (Fully Depleted – Silicon On Insulator)-MOSFET SiO2絶縁膜上にMOSFETを形成 チャネル層が非常に薄く形成されている 4K以下でも動作可能 Channel Width : W ~50nm FD-SOI-MOSFETの電流電圧特性 Channel Length : L 1.4 10-3 1.2 10-4 1.0 極低温環境下での特性 ドレイン電流値の上昇 閾電圧の上昇 10-6 ドレイン電流 Ids[mA] 0.8 室温環境 3K環境 室温環境 3K環境 0.6 10-8 0.4 0.2 10-10 冷却中(後)での性能劣化は見られない 特性変動を考慮して電圧をコントロールすれば 極低温環境下でも増幅器として用いることは可能 0.5 1.0 1.5 2.0 0.5 1.0 1.5 2.0 ドレイン電圧 Vds[V] ゲート電圧 Vgs[V] 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス SOI増幅器 回路デザイン SOI - STJ4 (the 4th prototype) ソース接地増幅回路 電流源としてMOSFETを使用 フィードバック回路 自己バイアス電圧を印加可能 ソースフォロア回路 アウトプットインピーダンスの低下 Vdd1 Vdd2 V2 Type W [μm] L [μm] M1 Nch-source tie 40 1 M2 Pch-source tie 10 M3 Nch-body tie 1.6 M4 70 M5 60 C1 MIM cap. 100 fF V3 OUTPUT INPUT Vb Vss1 V5 Vss2 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス 測定項目 SOI増幅器を用いた正弦波増幅試験 STJ検出器信号速度 : 〜1μsec(1MHz) 非常に速い信号に対しても十分増幅可能であるかを検証 Nb/Al-STJ検出器の電流電圧特性 STJ信号増幅の際にNb/Al-STJの動作電流の決定 SOI増幅器を用いたSTJ信号増幅試験 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス 正弦波増幅試験@300mK 100Hz正弦波に対する入出力波形 INPUT (Vpp = 1mV , 100Hz) 512Ave. OUTPUT 512Ave. 1mV 100mV 1MHz正弦波に対する入出力波形 75.5 Gauss 入力波形 1mV 1mV 出力波形 0.4μs 25mV STJの信号速度(~1MHz)のような高速な信号に対しても、 300mK環境下において増幅可能! 冷凍機配線容量負荷 : 0.5 nF 0.4μs 10mV 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

正弦波増幅試験@300mK Gain Frequency [Hz] STJの信号速度(~1MHz)のような高速な信号に対しても、 Frequency characteristic of cold pre-amplifier(SOISTJ4) @300mK Bias Voltage Vdd1 = 1.8V Vss1 = 0V Vdd2 = 1.1V Vss2 = -0.7V V2 = 0.4V V3 = 1.5V Input Vpp = 1mV 1 MHz Gain 75.5 Gauss STJの信号速度(~1MHz)のような高速な信号に対しても、 300mK環境下において増幅可能! 冷凍機配線容量負荷 : 0.5 nF Frequency [Hz] 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

SOI増幅器を用いたSTJ光応答信号増幅試験 @300mK オシロスコープ (AC結合 , 1 MΩ) GND 4.7 uF STJ 10MΩ Vdc ~ 0.43V Differential amplifier Differential amplifier Laser Inside the refrigerator STJの動作点電流40nAに設定するために 室温環境下から直流電圧を印加 SOI増幅器を動作させながらSTJに 可視光レーザーを照射 レーザーパルスからの信号をトリガーにし、 SOI増幅器の入出力波形を観測する ~40nA 可視光レーザー STJ光応答信号がSOI増幅器の方へ 伝送されたかどうか 伝送された光応答信号がSOI増幅器で増幅されたかどうか Wave length : 465nm Pulse width : 59psec を検証する 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

Flaser pulse=20kHzに対するSOI増幅器の応答 SOISTJ4への入力波形 入力が負の信号 STJ信号がSOI増幅器の方へ 伝送されたことを確認 70 60 Amp.IN [μV] 50 18μV 40 time [μsec] -100 -80 -40 -40 -20 20 40 60 80 100 SOISTJ4への出力波形 1600 64倍の反転増幅を観測 300mK環境下において SOI増幅器を用いた信号増幅は 可能であることが実証された 1200 1.2mV Amp.OUT [μV] 800 400 time [μsec] -100 -80 -40 -40 -20 20 40 60 80 100 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス まとめ COBAND実験(ニュートリノ崩壊光探索実験)に用いる検出器として、 超伝導トンネル接合素子光検出器(Nb/Al-STJ検出器)の研究開発を行っている しかし、読み出し系での雑音により遠赤外光1光子観測には至っていない STJ動作温度(~300mK)環境で動作可能なFD-SOI-MOSFETを用いた 極低温前置増幅器の研究開発を行っている SOI増幅器を用いて、Nb/Al-STJ検出器の信号増幅試験を行った 正弦波増幅試験により400kHzまで利得100程度の増幅を確認(配線負荷容量:0.5nF) Nb/Al-STJ検出器に可視光レーザーを照射し、 SOI増幅器を用いてSTJ検出器信号を増幅することに成功した 300mK環境下においてSOI増幅器を用いた信号増幅が可能であることを実証 素粒子実験分野に留まらず、低温読み出しを行う他分野への応用も期待できる 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス BACKUP 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス STJ エネルギー分解能 F : Fano Factor (Nb/Al-STJ検出器の場合は0.1〜0.2程度) E : 入射粒子のエネルギー エネルギー分解能を上げるには、エネルギーギャップが小さな超伝導体を用いる必要がある エネルギーギャップが小さな超伝導体は転移温度が低い だから、より低温の測定系構築が要求される 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス Nb/Al-STJ 準粒子生成個数の計算  Nb/Al-STJ検出器 準粒子生成個数 Gal : trapping gain E0 : Energy of photon Δ : energy gap The number of quasi-particles generated by 25meV single photon (Al layer : 70nm) 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス バックトンネリング効果 上部伝導体に入射した粒子がクーパー対を壊し、2つの準粒子が生成 2つの準粒子の内、1つは上部超伝導体のAl層の上伝導体中にトラップ もう1つは絶縁膜をトンネルして下部超伝導体のAl層の常伝導体にトラップ 下部超伝導体にクーパー対を作ろうと、上部伝導体の別のクーパー対が壊されて新たに2つの準粒子が生成 先に絶縁膜をトンネルした粒子同士が再結合してクーパー対をなす 残された準粒子は上部超伝導体のAl層上伝導体でトラップ 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス Nb/Al-STJ検出器 信号幅 200nsで10パルスの光が入射してきた場合、 STJの信号幅は1.5us 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

SOI増幅回路一体型STJ検出器(SOI-STJ) SOI回路基板上にNb/Al-STJ検出器を 直接形成した増幅器一体型検出器 STJ検出器 SOI回路基板 冷凍機配線を介さずに増幅可能 SN比向上が期待される 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス SOISTJ4 擬似パルス応答試験 Nb/Al-STJ検出器の信号を模した擬似信号をSOI増幅器に入力. 入力信号と増幅器の出力信号のそれぞれの信号雑音比を測定 積分時間 : 60μsec 入力波形と出力波形 @300mK Bias [V] Vdd1 = 1.8 Vss1 = 0.0 V2 = 0.55 V3 = 1.5 Vdd2 = 1.1 Vss2 = -0.7 V5 = 0.2 INPUT OUTPUT 極低温増幅器を導入することにより、S/Nの向上を確認 極低温環境下においても冷凍機内からの信号読み出しにSOI増幅器は有効! 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

SOI-STJ4 消費電力 バッファ段 : 120uA 増幅段 : 3uA バッファ段の消費電力が 支配的 増幅段とバッファ段、 それぞれの消費電力を 足し合わせると、230uW 測定開始時のHe3potは、 300mKであったのに対し、 測定終了時の温度は、 700mK程度まで上昇 Frequency characteristic of cold pre-amplifier(SOISTJ4) @300mK 230uW Bias Voltage Vdd1 = 1.8V Vss1 = 0V Vdd2 = 1.1V Vss2 = -0.7V V2 = 0.4V V3 = 1.5V V5 = 0.4V Input Vpp = 1mV 消費電力P [μW] 周波数f [Hz] 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス STJ検出器の動作原理 (拡大図) 磁場を印加することで クーパー対のトンネリングを抑制 準粒子 クーパー対 超伝導体 絶縁膜 超伝導体 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス SOISTJ4 レイアウト TypeA 増幅段とバッファ段が一体型 TypeB 増幅段とバッファ段が別 それぞれ個別に性能評価を行った(先崎修論) Cap. + Resi. 各素子の低温特性を評価 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス 測定環境(冷凍機) He3 Sorption冷凍機 (Oxford Instrument製) 読み出し配線 光ファイバー ヘルムホルツコイル サンプル 中を見ると He3減圧冷凍機 冷却能力一覧 ステージ 最低到達温度[K] 冷却能力 60Kステージ 60 25W @65K 3Kステージ 2.8 0.7W @4.2K 最低温ステージ 0.3 100μW @350mK 各ステージには 熱輻射を防ぐために シールドがある 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス

日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス Nb/Al-STJ検出器の電流電圧特性 STJの電流を測定 磁場 : 75.5 Gauss レーザーに反応して、 0.1mV程度電圧変動が見られる Rref 40nA 冷凍機内部 Function Generator 10nA STJ 0.5mV STJの電圧を測定 Wave length : 465nm Pulse width : 59psec SOI増幅器を用いたNb/Al-STJ検出器信号増幅試験の際には、 Nb/Al-STJの動作点電流を40nAに設定してレーザーを照射する 2019年4月12日(金) 日本物理学会 第72回年次大会@大阪大学豊中キャンパス