CTA報告42: CTA 大口径望遠鏡用 焦点面検出器の開発

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CTA報告42: CTA 大口径望遠鏡用 焦点面検出器の開発 ○梅原克典、片桐秀明、田中駿也(茨城大理)、粟根悠介、窪秀利、今野裕介、林田将明(京大理)、上野遥、小山志勇、寺田幸功(埼玉大理)、大岡秀行、齋藤浩二、中嶋大輔(東大宇宙線研)、手嶋政廣(東大宇宙線研、Max-Planck-Inst. fuer Phys.)、奥村曉、渋谷明伸、田島宏康、日高直哉(名大STE研)、折戸玲子、菅原隆希(徳島大総科)、株木重人(東海大医)、櫛田淳子、小谷一仁、門叶冬樹、西嶋恭司(東海大理)、郡司修一、萩原亮太(山形大理)、佐々木浩人、山本常夏(甲南大理工)、高橋弘充、深沢泰司、水野恒史(広大理)、千川道幸(近畿大理)、中森健之(早大理工)、馬場彩、吉田篤正(青学大理工)、Razmik Mirzoyan、Olaf Reimann、David Fink、Thomas Schweizer (Max-Planck-Inst. fuer Phys.)、 ほかCTA-Japan Consortium

大口径望遠鏡用焦点面検出器の要求仕様 光検出器の 光検出器の 使用総数 使用総数 1855本 1855本 光検出器モジュールの開発 ~23 m 分割鏡 焦点面検出器 (ライトガイド  +光検出器  +読み出し回路) 光検出器モジュールの開発        光検出器+読み出し回路 冷却系の開発 (CTA報告43 大岡) 高速読み出し回路(2GS/s, >300MHz) 省電力(2W/channel) 低コスト コンパクト 軽量 インストールと メンテナンスが 容易に可能 光検出器の 使用総数 1855本 光検出器の 使用総数 1855本 本講演 CTA報告44 萩原 CTA報告 45~47 Large Size Telescope(LST) の要求仕様 口径23 m エネルギー領域 20 GeV~1TeV カメラ視野 4.4度 (0.1度/pixel) 光検出器チャンネル数 1855 カメラ重量 <~2 t カメラ直径 ~2.25 m (光検出器面のみ) カメラ内に読み出しエレクトロニクス 光検出器劣化防止と安定動作のためのシール 温度コントロール インストールと メンテナンスが 容易に可能 大口径望遠鏡(LST)

光検出器モジュールの開発 光電子増倍管 (PMT) 省電力高圧回路 高速プリアンプ モニタ・制御部 高速読み出し回路 を1クラスタとして開発 7 PMTs CW-HV preamp Slow- Control ~14cm ~48cm Trigger(L0+L1) +DRS4 readout 光電子増倍管 (PMT) 省電力高圧回路 高速プリアンプ モニタ・制御部 高速読み出し回路 を1クラスタとして開発 LSTでは265クラスタ 使用予定 CTA-Japan では、PMT 7本を一つの束とし、省電力コッククロフト・ウォルトン型高圧回路(CW-HV)、プリアンプ、Slow-Control、高速読み出しエレクトロニクスを搭載した高性能な光検出器モジュールの開発を行っている。 日本グループはこの光検出器モジュールの開発で、CTA内で大きく貢献している。 つまり、PMTで光を受光してから増幅、読み出しという一連の動作が可能であるということが、他国より評価を得ているところである。 開発状況 PMT+省電力高圧回路 ← 今年度から量産開始 高速プリアンプ ← 要求を満たすプリアンプの試験 モニタ・制御部 ← プリアンプに合わせて変更予定 高速読み出し回路 ← v.3から最終版へ (CTA報告44:萩原)

PMTの量産スケジュール <タイムスケジュール> 2010-2014年 計画準備期間 詳細デザイン、サイト準備           詳細デザイン、サイト準備           プロトタイプ望遠鏡開発・建設 2015-2020年 本格的な建設開始 2017-2020年 部分観測開始 2020-2040年 フル観測運転 上記のタイムスケージュールに従い、今年度からPMTを生産   開始 浜松ホトニクス株式会社に生産を依頼、来年の2月末までに  約1000本のPMTが納入される予定 量産に伴い生産されたPMTのcalibration方法について現在   検討中 PMTのアフターパルス測定の準備は整いつつある

現在のクラスタに使用されているプリアンプ 広いダイナミックレンジ  (1~1000 photoelectron) 高速応答(帯域300MHz 以上) 低ノイズ・低消費電力 CTAの 要求 CTA ではPMTの劣化を最小限に 抑えるために、4×104 という低い ゲインが標準動作ゲインとして要求 されている。 入力上限 ~800 p.e. プリアンプの役割: PMT の増幅率を補助する。 ( PMT は常に夜光、星光にさらされている。そのためPMT の劣化を最小限にし、さらに安定したゲインで運転するために4×104 というきわめて低いゲインで運用する。 ) エレクトロニクスに要求される仕様 ・ダイナミックレンジ: 望遠鏡のエネルギーレンジが25GeV〜1TeV程度であること、そしてチェレンコフ光が1本のPMTに偶然集中する事を考えて、3000倍のダイナミックレンジを持たせる事が必要。 ・高速性: 1本当たりの夜光のレートが数10MHz程度になる事が予想される。その中で本当の信号が来た場合には、隣接する数本のPMTが同時にヒットする。そのコインシデンスを正確に調べるために、PMTからの信号の時間幅は2.3nsecに調整してある。この様な速い信号を扱うため、使用するオペアンプの帯域幅は300MHz以上必要。 ・消費電力: 1台当たり~2千本のPMTを使用しており、それぞれにエレクトロニクスが存在する。低消費電力を心がけない限り、発熱で回路が壊れるおそれがある。 そのため、我々は今までにない超高速で低消費電力のエレクトロニクスを開発している。 Mini-Circuits社 LEE-39+ プリアンプボードの仕様 消費電力 ≈ 183mW ゲイン 18.3 dB (4GHz) 20.8 dB (2GHz) 1 p.e. ~1.3mV 要求を満たしきれていない

今回試験したプリアンプ High Gain Low Gain PACTAプリアンプ 評価ボードの仕様 スペインで制作されたより低消費電力 なASIC Chip を用いたテスト基板 PACTAv1.2 1000 p.e. 4000 p.e. 10 p.e. 1 p.e. 入力上限 High Gain Low Gain PACTAプリアンプの試験理由 CTAの電力要求値が厳しく、現在使用中のLEE-39+よりさらに低消費電力化する必要が出てきた。 そこで、去年の春の会議でGasconの方から改良したASICの結果が報告され、性能がCTAで使えるレベルになってきた。 ASICなので、市販アンプよりも低消費電力化できる長所がある。 そこで、手嶋さんが、Gasconとコンタクトをとり、日本でもテストしたいと伝え、サンプル品が日本に届き、テストしているという流れ。 日本でテストした結果は、ASICの改良に反映され、CTAに最適化していく。 1 p.e. ~0.24mV High Gain Low Gain 帯域500MHz以上 消費電力 150 [mW] PACTAプリアンプ 評価ボードの仕様

ダイナミックレンジの下限値について ダイナミックレンジの下限値はノイズレベルによって決まり、以下のように定義する。 Signal-to-Noise Ratio(SNR)が3 以上の時に、信号とノイズを分離できることから、SNR(=S/N)=3 をダイナミックレンジの下限値とする。 S:PMT標準動作ゲイン   (=4×104)で1 p.e. 相当   の光量が入射した時に、   PMTから出力される波  形をある時間幅で積分し  たもの N:ノイズの標準偏差(=σ) N S

PMT標準動作ゲインでの1p.e. 測定 Setup 暗箱 Pulsar KEITHLEY 3390 DRS4ボード PMT (R11920-100CWA2) プリアンプ 暗箱 LED + diffuser NDフィルター + シャッター PC Trigger FEC (メイン アンプ)

(LEEの場合標準動作ゲインでは1p.e.を分離できなかったので5×104で比較) PMT標準動作ゲインでの1p.e. 測定 (LEEの場合標準動作ゲインでは1p.e.を分離できなかったので5×104で比較) LEEアンプ使用時 PACTAアンプ使用時 SNR=3.3 p3:S => 33.4×10-12 [V・s] p2:N => 10.2×10-12 [V・s] SNR=5.6 p3:S => 166.2×10-12 [V・s] p2:N => 29.5×10-12 [V・s]

プリアンプの比較 諸特性 LEE PACTA 消費電力 [mW] 183 150 周波数帯域 [MHz] >2000 >400 ダイナミックレンジ [p.e.] 1.2~781 0.7~4167 PMTゲインで4万で 1p.e.測定時のS/N ノイズに埋もれて測定不能 3.9 PMTゲインで5万で 3.3 5.6 スケジュール的な問題でPACTAが採用されずLEEが採用された場合、ダイナミックレンジ要求を満たしていないので、要求をクリアできるような対策が必要である。      PMTのアノードの直後に50Ω の抵抗をつけることで      信号を1/2に減衰させ、ダイナミックレンジの上限値を      かせげるかを試験した。

LEEアンプのダイナミックレンジ調整 PMT+LEE のセットアップで1p.e. 相当の波形を比較 Anode Out直後に 50Ωいれる前 期待した通り波高値の減衰が確認できたので、波形に問題はないと思われる。

LEEアンプのダイナミックレンジ調整 Anode Out直後に 50Ωいれる前(1 p.e. 測定) HV:1100V HV:1100V PMTゲイン 46.5×104 PMTゲイン 46.5×104 SNR=8.6 S => 37.3×10-12 [V・s] N => 4.4×10-12 [V・s] SNR=5.2 S => 16.5×10-12 [V・s] N => 3.2×10-12 [V・s] 55.6%減 26.4%減

LEEアンプのダイナミックレンジ調整 予想通り信号の減衰を確認できたので、ダイナミックレンジの上限値は~781p.e.から~1600p.e. 程度になることが期待される。 ダイナミックレンジの下限値については、まだPMT標準動作ゲインでの1p.e. の分離ができていないので、ノイズの発生個所をつきとめ対策を行い1p.e. の識別ができるようにする必要がある。

まとめ 日本グループで製作中のCTA-LST用光検出器モジュールを、最終仕様に向けて改良を進めている。 PMTの量産スケジュール   今年度から量産、calibration体制に移行していく。 低消費電力かつ広いダイナミックレンジをカバーするため、LEEとPACTAの2つのプリアンプの試験を行った。今後は試験結果を比較しどちらを採用するかを決め、プリアンプより後段の仕様を最終版に向けて改良していく。 プロトタイプカメラ製作に向け今後は、複数クラスタでの同時読み出し試験等を行っていく。