福島第一原発事故による放射能汚染測定器の開発

Slides:



Advertisements
Similar presentations
放射能汚染から子供を守る市原の会 代 表 林 由吉 代 表 林 由吉 NPO 法人 放射能測定センター 連絡先 連絡先 時田 孝二
Advertisements

CsIシンチレータと マルチアノードPMTを用いた 硬X線撮像装置の性能測定
原子核物理学 第3講 原子核の存在範囲と崩壊様式
高エネルギー加速器研究機構 物質構造研究所-中性子科学研究施設 佐藤節夫
μ→e+γとμ→e+γ+νe+νμ を探索する
「おはなし会」 In広島 日時:2015年2月14日(土) 13:30~15:30 場所:三篠公民館 おのみち-測定依頼所-
電磁カロリーメーターを使って中性パイ中間子を見よう!
実習B. ガンマ線を測定してみよう 原子核・ハドロン研究室 永江 知文 新山 雅之 足立 智.
金箔にα線を照射して 通過するα線の軌跡を調べた ラザフォードの実験 ほとんどのα線は通過 小さい確率ながら跳ね返ったり、
W e l c o m ! いい天気♪ W e l c o m ! 腹減った・・・ 暑い~ 夏だね Hey~!! 暇だ。 急げ~!!
単色X線発生装置の製作 ~X線検出器の試験を目標にして~
物質(人体含む)が吸収した放射線のエネルギー
高エネルギー加速研究機構 放射線科学センター 波戸芳仁
Double Beta Decay 木河達也、福田泰嵩.
安価な教育用放射線検出器の開発 立教大学理学部 川茂唯順 高橋達矢*,竹谷篤*A,村上浩之A ,二宮一史*A ,足利裕人B,
○ 化学反応の速度     ・ 反応のある時点(たいていは反応開始時、ξ=0)について数値      として示すことが可能
TPC(Time Projection Chamber) 慶応大学医学部、京大医学部、薬学部、法政大学、日立メディコと共同開発
放射線(エックス線、γ線)とは? 高エネルギー加速器研究機構 平山 英夫.
CsIシンチレータとMAPMT ヘッドアンプユニットを用いた 動作実験
新しいダブルベータ崩壊探索実験にむけた CdTe検出器の大型化
オルソポジトロニウムの 寿命測定によるQEDの実験的検証
2次元蛍光放射線測定器の開発 宇宙粒子研究室 氏名 美野 翔太.
MPPCアレイによる放射線測定 2009年度P6シンチ班 青野正裕&橋本暁弘 2010年3月8日.
SEDA-APのデータ解析 ~Albedo中性子の検出~
CERN (欧州原子核研究機構) LEP/LHC 世界の素粒子物理学研究者の半数以上の約7000人が施設を利用
単色X線発生装置の製作 副島 裕一.
XTE/ASM, PCA, HEXTEの感度と観測成果
大橋 英雄 東京海洋大学 海洋科学部 海洋環境学科
光子モンテカルロシミュレーション 波戸、平山 (KEK), A.F.Bielajew (UM)
BGOを用いた 液体キセノン検出器の較正 ICEPP 森研究室M1千葉哲平.
トリガー用プラスチックシンチレータ、観測用シンチレータ、光学系、IITとCCDカメラからなる装置である。(図1) プラスチックシンチレータ
 宇宙線断層撮像装置2  理工学部 物理学科   宇宙粒子研究室               大道玄礼.
テーマⅧ:低気圧放電の基礎と電子密度・電子温度計測
Radiation dosimetry of 137Cs γray for a long time irradiation
飛行時間法を用いた2次イオン 質量分析器の設計及び開発
JT-60Uにおける 中性子-ガンマ線弁別多視線計測
体内、食物中の自然放射性物質 ●体内の放射性物質の量 カリウム40 4,000Bq 炭素14 2,500Bq ルビジウム87 500Bq
八角シンチレータ偏光計の性能 性能実験 ~八角シンチレータとは~ 結果 第3回宇宙科学シンポ
GeneratorのX線スペクトル解析 私は、generatorのX線スペクトルを測定し、解析をしました。 宇宙物理実験研究室 星 理沙.
高エネルギー陽子ビームのための高時間分解能 チェレンコフビームカウンターの開発
[内容] 1. 実験の概要 2. ゲルマニウム検出器 3. 今後の計画 4. まとめ
大型で高エネルギー分解能の CdTe半導体検出器の開発
宇宙線ミューオンによる チェレンコフ輻射の検出
京大他、東大やアデレード大学など日豪の16機関が共同で、オーストラリアの砂漠地帯に望遠鏡4台を建設しTeVγ線を観測している。
EMCalにおけるπ0粒子の 不変質量分解能の向上
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
NaIシンチレーターを使った 放射線検出システムの開発
最近の宇宙マイクロ波背景輻射の観測 銀河の回転曲線 回転曲線の測定値 NASAが打ち上げたWMAP衛星が観測
宇宙史実習報告会 筑波大学 宇宙観測研究室 長崎岳人 2010/3/22
教育用放射線検出器の開発 立教大学物理学科4年 指導教員 07CB024F 川茂唯順 竹谷篤 07CB049K 高橋達矢 村田次郎
プラスチックシンチレータを用いた 原子炉ニュートリノ検出器の開発 2010/12/04 長岡技術科学大学 第39回日本物理学会新潟支部例会
石田恭平, 川崎健夫, 高橋克幸 小野裕明A, 宮田等、宮本賀透
京大理 身内賢太朗 平成20年度東京大学宇宙線研究所 共同利用研究成果発表会
京大理 身内賢太朗 平成22年度東京大学宇宙線研究所 共同利用研究成果発表会
報告080710 東大 ICEPP 森研 M2 金子大輔.
計算と実測値の比較 高エネルギー加速器研究機構 平山 英夫.
早稲田大学 理工学術院 鳥居研究室 宇宙線の観測 宇宙線はどこから? 電子望遠鏡CALET LHCf加速器実験 卒業生の進路 研究活動
軽い原子核ビームに対する無機シンチレータの応答の研究の発表を行います。
Geant4による細分化電磁 カロリメータのシミュレーション
増倍管実装密度の観測量への影響について.
宮本 八太郎(日大、理化学研究所) 三原 建弘、桜井 郁也、小浜 光洋(理化学研究所)
電子ビームラインの構築と APDを用いた電子計測試験
ASTRO-E2搭載CCDカメラ(XIS)校正システムの改良及び性能評価
ポジトロ二ウムの寿命測定と量子振動 P1 岩島 呂帆 杉浦 巧.
5×5×5㎝3純ヨウ化セシウムシンチレーションカウンターの基礎特性に関する研究
 宇宙線断層撮像装置2  理工学部 物理学科   宇宙粒子研究室               大道玄礼.
CsI結晶を用いた検出器の基礎特性に関する研究
ネットワークを介した 計測制御システムの開発
シンチレーションファイバーを 用いた宇宙線の観測
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
Presentation transcript:

福島第一原発事故による放射能汚染測定器の開発  宇宙粒子研究室  10861007  大谷 尭之

目的: 概要: 開発した検出器 検出器の較正 今後の課題 2011年3月11日に、東日本大震災が発生した。 この震災が発端となり、福島第一原発で事故が発生し、多くの放射性物質が撒き散らされた。この事故による土壌汚染・農作物への影響など深刻な被害が生じている。簡単で効率よく放射能を測定できる検出器を開発し、被災地で運用する。 概要:  開発した検出器  検出器の較正  今後の課題

・マイクロコンピュータを通してふたの開閉を   検知する。 ・試料の重さを検知し、試料が無いときはBG   を測定する。 ・試料があるときは、そのガンマ線の  エネルギー分布を測定する。 ・試料とBGの測定データを解析し、試料の  放射能をBq/kgの単位で表示する。 ・試料の出入れ以外は全自動。

NaI検出器での測定図 ・検出器は角田市役所に設置し、農作物の検査、 除染計画の作成に活用している。 シンチ   PMT ・検出器は角田市役所に設置し、農作物の検査、  除染計画の作成に活用している。 ・BGが大きいため検出器を鉛で囲んでいる。 ・試料は、測定器の先に引っ付ける。

・ 試料を検出器にいれると、自動的に試料の放射能と質量を測定して表示する。 ・ 簡単に操作でき理解しやすいように工夫されている。 ・ 原発から出たCs-134とCs-137の存在比を測定して検出器を更正する必要がある

検出器の較正をするために、福島で採取した土壌をGe検出器で測定し標準線源を作製した 目的: (原子核研究室の)Ge検出器を使い事故により汚染されたCs-137,Cs-134の比を測定し、NaI検出器のみで放射能を検出できるようにする。

測定結果1 La, Lu, Kを使いGe半導体検出器を較正。 福島、宮城で採取した土壌に含まれるCsの量をGe検出器で測定。 Cs-137(661kev) ↓ Cs-134 (605kev) → Cs-134(795kev)  ↓ K40(1461keV)  ↓ ・これは、福島県で採取した土を測定したものである。 ・Cs-134,Cs-137のピークが、はっきりと見えているのが分かる。 ・この土に含まれているCsは5708[Bq/kg]だった。

まとめ ・NaIシンチレータを使い、だれでも簡単に扱える放射線検出器を開発した。 ・Ge検出器を使って福島の土を測定し、その土を開発したNaI検出器で計測し検出器のガンマ線検出効率を求める。 ・NaI検出器については今後、東北大学と共同で研究・開発を行い 宮城県角田市で運用しており、農作物の検査、除染計画の作成に使われている。

終わり

測定器について ・NaIシンチレーション検出器 ・タリウム活性化ヨウ化ナトリウムと光電子増倍管及び、 プレアンプからなる。  プレアンプからなる。 ・NaIは、ガンマ線を高い効率で検出

MCA(Malti-Channel Analyzer)について ・現在使用中の装置では、光電子増倍管からのパルスを測定する ・光電子増倍管の出力は、ネガティブパルス ・現在使用中のMCAは、ポジティブパルスのみ測定可能

位相反転増幅回路について ・オペアンプが使われている。 ・光電子増倍管の出力を、パルス整形する

実験回路図

現在行っている測定装置の開発

ソフトについて ・コンピューターから機器を制御して、データーを解析、結果を表示 するためのソフト  するためのソフト ・このソフトは様々な機能を持つが、最も重要な機能は、ふたを閉めたら測定を開始、ふたを開けたら測定を終了すること

La2O3: La(ランタン):原子番号57 原子量A=138.905 1.La,Lu,Kからのガンマ線放出率の計算 La2O3: La(ランタン):原子番号57 原子量A=138.905 139Laが安定  138Laは存在比0.0009 138Laは、788.742keVと1435.795keVのガンマ線   を放出する。 放出効率は、それぞれb=0.32,0.66 分子量Mr=325.8082 標準線源をM[g]とおくと、 La2O3の物質量M2[mol]は、 M2=M/Mr よって、この試料に含まれる 138Laの数N0はアボガドロ数をNaとして N0=(M/Mr)×Na×2×a

ここで 138Laの半減期をT[y]とすると、試料の放射能 Ac[Bq]は ガンマ線の放出率Ng [/s]=Ac×b

標準線源によるGe検出器の更正 Ⅰ. ガンマ線のエネルギーに相当するピークの位置を求める。 Ⅱ. ピークの幅RMSを求める。 Ⅲ. ピークから    最小2乗法で、ベースラインを求める。 Ⅳ. ピークから     検出率CPS(count per second)を積分 Ⅴ. BGのデータでも同じ計算をし、BG成分を引く ±6RMSの範囲で±4RMSの範囲を除き ±4RMSの範囲でベースライン以上の BG成分を引いた後のCPSを使うと、ガンマ線の検出効率    ε=CPS/Ngにより求まる。

2. 福島、宮城で採取した土、堆肥の測定 3. NaIによる更正線源の測定 Ⅰ. 原発事故で汚染された試料で、更正線源の作成 Ⅰ. 原発事故で汚染された試料で、更正線源の作成 Ⅱ. 汚染された土、堆肥を測定 Ⅲ. Cs134とCs137から放出されるガンマ線を計測   検出効率で割り試料の放射能を求める。  3. NaIによる更正線源の測定 Ⅰ. 検出効率の測定を、NaIにより行う。   これまでの手順で従った、やり方で測定結果を示す。

表1 資料 Soil18 Soil2 KCl 核種 La : (La2O3) Lu : (Lu2O3) K 質量数 138 174 40 存在比 0.0009 0.0259 0.00012 半減期[y] 1.05e11 3.78e10 1.25e9 γ線E[keV] 788.742 1435.795 201.83 306.78 1460.83 放出率 0.32 0.66 0.86 0.94 0.11 質量[g] 2.971 1.026 29.1989 0.999 50.0 放射能 2.07 46.8 20.3 45.5 854.0 γ線放出率[/s] 0.662 1.37 40.2 44.0 6.51 13.4 39.2 42.8 93.9 検出率[/s] ---- -------- 0.469 0.334 0.0153 0.0164 0.428 0.323 0.1150 検出効率 0.00117 0.00761 0.00221 0.00122 0.01093 0.00755 0.00123

表2 試料 福島土① (Mad3) 核種 Cs134 Cs137 γ線E[keV] 604.72 661.66 795.86 0.003285 0.002961 0.002394 放出効率[/s] 0.9762 0.8510 0.8553 検出率[/s] 0.747 0.771 0.438 γ線放出率[/s] 227.3 260.4 182.9 放射能[Bq] 232.8 306.0 213.9 質量[g] 102.5 Bq/kg 2271.0 2985.4 2086.8 計[Bq/kg] 5256.4

福島土② (Mad4) 角田市堆肥 Cs134 Cs137 604.72 661.66 795.86 0.003285 0.002961 0.002394 0.9762 0.8510 0.8553 0.292 0.286 0.175 0.200 0.201 0.118 88.8 96.7 72.9 60.9 68.0 49.4 91.0 113.6 85.2 62.3 79.8 57.7 102.1 24.9 891.3 1112.6 834.5 2502.0 3204.8 2317.3 2003.9 5706.8

表3 試料 福島土③ (Mad5) 角田市土 (Mad6) 核種 Cs134 Cs137 γ線E[keV] 604.72 661.66 795.86 検出効率[/s] 0.003285 0.002961 0.002394 放出効率[/s] 0.9762 0.8510 0.8553 検出率[/s] 0.139 0.133 0.079 0.241 0.245 0.145 γ線放出率[/s] 42.4 44.8 33.1 73.4 82.9 60.4 放射能[Bq] 43.4 52.7 38.6 75.1 97.4 70.6 質量[g] 89.6 143.1 Bq/kg 484.4 588.2 430.8 524.8 680.6 493.4 計[Bq/kg] 1072.6 1205.4

概要 ・放射線測定は、Ge検出器が使われるのが一般的 ・しかしGe検出器は高価で、扱いも難しい ・NaI検出器だと扱いが簡単、さらに検出効率が高い ・エネルギー分解能に劣る(異なるガンマ線の分離不可)

NaIシンチレーション検出器のデータ例 福島県の土 ・Cs134とCs137のピークが分離できない。 ・原発から出たCs134とCs137の存在比を測定してNaI検出器を更正  する必要がある。