miniTAO望遠鏡による Be型星の Paschen α観測

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miniTAO望遠鏡による Be型星の Paschen α観測 田辺俊彦: miniTAO望遠鏡による Be型星の Paschen α観測 田辺 俊彦, 本原 顕太郎, 松永 典之, 小西 真広, 利川 興司, 大澤 亮, 越田 進太郎, 宮田 隆志, 酒向 重行, 中村 友彦, 浅野 健太郎, 加藤 夏子, 峰崎 岳夫, 田中 培生, 川良 公明, 土居 守, 河野 孝太郎, 吉井 讓(東京大学), 板 良房、 米田瑞生(東北大学), 半田 利弘 (鹿児島大学) 1. Introduction 2. MiniTAO 1m望遠鏡 Paschen α (波長 1.8751μm, 以下 Paα) を含む HバンドとKバンドの間の波長帯は地球大気の水分子 (のΩバンド) による吸収が強く, 通常のサイトでは (高分散分光観測以外は) 観測することが難しいが, miniTAO 1m望遠鏡が新設された標高 5640mでは可視から 2.5μmまでが連続して透明となり, Paαが観測可能になる. 小マゼラン雲に存在する NGC330 は若い (<30 Myr) 星団で, 赤色超巨星, 青色超巨星がともに存在し, 以前から恒星進化モデルの検証のため多くの観測がなされてきた. さらに 90年代になって, これら超巨星より暗い光度のところに classical Be型星 (B型輝線星, 以下 Be型星) が数多く発見され, Be型星の研究には欠かせない星団となっている. Be型星は, 可視域水素バルマー線が輝線となっている星で, 非常に高速で自転しているため星の赤道部外側にディスクが形成され, そこから輝線が放出されていると考えられている星である. 世界最高地点の光赤外線望遠鏡 口径1m (F12/Ritchey-Chretien光学系) 2009/3 First Light 各種性能 ポインティング:1.8”rms ハルトマン定数:0.19” シーイング:0.5”-1” @ Visible 二つの観測装置: 近赤外線カメラANIR 中間赤外線カメラMAX38 3. 観測 3.1 近赤外カメラ ANIR 3.2 NGC330 観測 Paα観測に特化した狭帯域フィルター Paα filter (λ=1.8751μm, Δλ=0.0079μm) Paα-off filter (λ=1.910μm, Δλ=0.033μm) 0.31”/pixel, 視野約 5.6‘ NGC330 α=00:56:18.0 δ=-72:27:50.0 obs. Date: 2009/10/26 ~4h UT J, H, K: 30 sec x 9 dithers Paα, Paα-off: 120sec x 9 dithers Paα, Paα-off フィルターと大気の透過率 NGC330 J, H, Ks 3色合成図 4. データ解析 4.1 標準処理 4.3 絶対校正: J, H, Ks 4.4 絶対校正: Paα, Paα-off (0等の定義) 4.5 エラー dark subtraction, flat fielding, bad-pixel masking, cosmicray removal, coadd 9 images, put WCS 視野内の星々の2MASS等級と の差の median instrumental mag  J, H, Ks (右図) 視野内の星々で 0.6<J-K<1.0にある星の m(Paα) – K, m(Paα-off) - K の median 値が 0 となるように定義. 即ち 0.6<J-K<1.0 で m(Paα) - K = 0 m(Paα-off) - K = 0 (右図) 4.2 測光 IRAF DAOPHOT 5. 結果 5.1 輝線天体の検出 5.2 2色図及び色等級図 5.3 HαとPaαの強度 Paαが輝線であれば m(Paα) - m(Paα-off) < 0 である. 多くの天体が輝線を出して いることが判る (右図). は可視の観測から既知のBe型星. (Keller, Wood, Bessel 1999, Martayan et al. 2007). Be型星は全て m(Paα) – m(Paα-off) が負. Paα輝線が最も強い天体は惑星状 星雲 Lindsay305, 次に強いのは特異 天体 (post-AGB or Be supergiant or ?). Be型星は H-Ks が赤い Paαが検出されたBe型星 では Hα輝線の等価幅 EW と Paαの強さには相関がある. 5.4 検出率 5.5 Be型星 candidate 既知のBe型星の Ks vs. V (下図)で図中の×は Paα が検出 できなかった天体, 図左下の×は Ks でも受からなかった 天体. この図は, 1m望遠鏡及び狭帯域フィルターにとって 暗い天体からは Paα を検出することはできなかったが, 明るい Be型星からは全て Paαを検出したことを示して いる. 既知のBe型星以外に m(Paα) - m(Paα-off) < 0 を示す天体がある. 誤差 0.3等以下でかつ m(Paα) - m(Paα-off) < -0.3 である天体は 9星 (下図の青い点) ある. 6. 結論 Be型星が多く存在する NGC330 領域をJ, H, Ks 及び狭帯域Paα-on Paα-off フィルターで観測し, 明るい Be型星からは全て Paα輝線を検出した. Hαの強さと Paαの強さには相関がある. これまでに知られていない Be型星 (の候補) を複数発見した.