極冠域電離圏における低エネルギー降下電子の起源について 2011年6月1日(水) SPTセミナー 15時~ 極冠域電離圏における低エネルギー降下電子の起源について On the origin of low-energy downward electrons in the polar cap ionosphere *北野谷有吾[1]、阿部琢美[2]、向井利典[2] [1]東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻 [2]ISAS/JAXA
Fig. Ion up-flow (Polar wind) Background1: Ion up-flow in the polar cap Potential [V] Ion velocity [km/s] H+ O+ Altitude RE [km] Fig. Ion up-flow (Polar wind) Fig. Simulation of ion velocity and electric potential altitude profile on dayside during solar activity [Su et al.,1998] - + E O+ e- ・圧力勾配に拡散の際、O+と電子との質量差から、分極電場が発生し、軽いH+などのイオンが上向きの加速を受ける。 ・H+=~20km/s, O+=~5km/s at ALT 2RE ・高度2RE以上では、顕著なイオンの加速が見られない。 Fig. 分極電場
Background2: Ion outflow in the polar cap ・H+=~45km/s, O+=~27km/s(平均) at 8 RE by POLAR衛星 ・極冠域の昼側において、低エネルギーの降下電子(≒10-60eV)を観測(anomalousな結果) by ISIS-1,DE-2, Akebono衛星 ・電離圏起源の光電子(≒10-60eV)が、極冠域の高高度に存在するthe potential barrierにより下向きに加速を受け、低エネルギーの降下電子( ≒10-60eV)を生成? ※電子 → 下向きに加速、イオン → 上向きに加速 Fig. The potential barrier in the high-altitude polar cap [Su et al.,1998]
Objectives: 極冠域高高度における加速メカニズムの解明 ・Akebono衛星の低エネルギー降下電子の長期間の観測データ ↓ ・統計解析から、極冠域高高度に存在する示唆されるthe potential barrierについて詳細な理解 ・極冠域高高度における加速メカニズムの解明 磁気圏 Altitude Ion outflow The potential barrier Ion 2RE ※The potential barrierの発生案: 流出する光電子 → 電離圏が正に帯電 → 降下する光電子 [Winningham and Gurgiolo, 1982] Photoelectron (~10-60eV) 電離圏 - Potential [V] Photoelectron ≒ 109 [/cm2s] Polar wind ≒ 108 [/cm2s] Polar rain = 107-108 [/cm2s] Fig. 極冠域のポテンシャルの高度分布案
Fig. Akebono (EXOS-D) Satellite Using observation data: Akebono satellite 打ち上げ目的:オーロラに関連した磁気圏の物理現象の解明 打ち上げ日: 1989年2月 運用期間: 現在も運用中 衛星軌道: 極軌道、1日に地球を約8周 搭載測定器: (1) 3軸フラックスゲート磁力計 (MGF) (2) 電場計測器 (EFD) (3) 低エネルギー荷電粒子分析器 (LEP) (4) 熱的および非熱的イオン分析器 (SMS) (5) 熱的電子検出器 (TED) (6) VLF波動受信機 (VLF) (7) HF波動受信機および トップサイド・サウンダー (PWS) (8) 可視・紫外オーロラ撮像カメラ (ATV) Fig. Akebono (EXOS-D) Satellite LEP (Low Energy Particle) → 電子・イオンのエネルギー別(in 10-10keV)、ピッチ角別のカウント → 特に低エネルギー降下電子(≒10-60eV)に注目(1989年3月~1997年12月)
Fig. Akebono observations in the polar cap Observations1: Low energy downward electron 1990/1/30 19:46-20:20 North-Hemisphere MLT 12h 6h 18h Second Harmonic Current (Thermal Electron energy Distribution) 80° Probe Bias [eV] 70° 0h MLAT 熱的電子(数eV以下) Fig. Akebono orbit Downward Electron ① ②←研究対象 Energy [eV] Upward Electron (Photoelectron) Dayside Nightside Fig. Akebono observations in the polar cap ・領域②:一般的な極冠域では、低エネルギーの降下電子が観測される。 ・領域①:極冠域に侵入したSED/TOI(プラズマ圏からのプラズマ輸送)内では、一般的な極冠域に比べ、プラズマ密度が大きく、低温など特殊な環境下であり、また低エネルギーの降下電子の量は小さい。 ※The potential barrierの大きさが何か(プラズマ環境)に依存して変化すると考えられる。
Fig. Electron energy distribution of each pitch-angle by Akebono Observations2: Low energy downward electron 1990/1/30 19:46-20:20 North-Hemisphere Upward (Photoelectron) ① ② 一般的な極冠域 研究対象 Pitch Angle [°] Energy [eV] Downward Fig. Electron energy distribution of each pitch-angle by Akebono ②より、 ・低エネルギー降下電子は、光電子と異なり、より低エネルギーに分布を持つ。 ・The potential barrierの大きさは、30eV付近と示唆できる。
Fig. Up photoelectron .vs. Down low energy electron by Akebono 統計解析1: Up光電子と低エネルギーDown電子との相関 ※低エネルギーの降下電子の起源は、 電離圏からの光電子? ・観測データの条件:1990年, ILAT>80, ALT3000-10000km Event Count = 3934 (☆) (☆)の領域に、プロットがない。 →低エネルギー降下電子は、Up光電子の量を上回らない。 つまり、低エネルギーの降下電子は、磁気圏起源ではなく、Up光電子が起源である可能性を示唆。 Down(13-60eV) ×106[/cm2s] Up(13-60eV) ×106[/cm2s] Fig. Up photoelectron .vs. Down low energy electron by Akebono
観測統計2: Up光電子に対する低エネルギーDown電子の割合の観測頻度 ・観測データの条件:1990年, ILAT>80, SZA<90, ALT3000-10000km Event Count=1484 Event Count=1040 Kp≦2 Polar rain時 Event Count=662 Event Count=1484 Kp≧4 Kp≦2 Observation Fraction [%] DOWN/UP(13-60eV) [%] DOWN/UP(13-60eV) [%] Fig. Observation fraction of low energy downward electron ratio ・ Up光電子に対する低エネルギー降下電子の割合は幅広く分布している。 (i) 静穏時(Kp≦2):約60-100% (ii) 擾乱時(Kp≧4):約40-80% ← SED/TOIによるプラズマ環境の変化が原因? (iii) Polar Rain時:約80-100% ← 高エネルギー降下電子によるプラズマ環境の変化が原因? ・極冠域高高度に存在する? The potential barrierの大きさが何かに依存し、大きく変化していると示唆。
[A] [B] Polar Rain ☆1. 高エネルギー降下電子に対する低エネルギー降下電子の割合の変化 [A] Polar Rainなし ・観測データの条件:1990年, ILAT>80, SZA<90, ALT3000-10000km [A] Polar Rainなし 36,47,60eV ×106 ×106 UP DOWN Polar Rain [B] Polar Rainあり [A] [B] ×106 ×106 ・高エネルギーの降下電子が極冠域に降り込むとき、なんらかのメカニズムが働き(プラズマ環境の変化?)、the potential barrierの大きさが増加していることを示唆。
[1] [2] [1] [2] UP 13eV DOWN 28eV 47eV ☆2. Up光電子に対する低エネルギーDown電子の割合の変化 ・観測データの条件:1990年, ILAT>80, SZA<90 13eV 28eV 47eV [1] [2] [1] UP DOWN [2] ・低エネルギー降下電子が減少するにつれて、エネルギーの高いほうの低エネルギーの降下電子から減っている。 ※低エネルギー降下電子の割合は、the potential barrierの大きさを反映していると示唆。
Summary and future works ・極冠域(高度10000km以下)において、Up光電子起源と考えられる低エネルギー降下電子が観測されている。 by Akebono(ISIS-1,DE-2と同じ結果) ○低エネルギー降下電子のFlux量は、 1. 極冠域に、一般的に存在する。 2. 平均的には、Up光電子のFlux量の約80%。 3. 磁気圏起源ではないと示唆。 4. そのFlux量は、ポテンシャルの壁の大きさを反映していると示唆。 ○また低エネルギー降下電子の特徴から、 5. ポテンシャルの壁の大きさは、平均的に約20-30eV。 6. 地磁気活動活発時、高密度時に、ポテンシャルが減少(≦約10eV) 7. 高エネルギー降下電子の観測時に、ポテンシャルが増加(≧約50eV) ※the potential barrierの存在を示唆 ※the potential barrierは、極冠域のプラズマ環境に依存していることを示唆。 ☆統計的な観測事実から、極冠域の高高度に存在すると示唆されるthe potential barrierのメカニズムについて、さらなる解釈を試みる。
2. 観測事実を再現するモデルの作成と考察 (7,8月) Future works 36,47,60eV ※The potential barrierの発生案: 流出する光電子 → 電離圏が正に帯電 → 降下する光電子 [Winningham and Gurgiolo, 1982] Polar Rain 過去の研究と逆相関な結果 磁気圏のhot plasma/電離圏のcold plasma = 強い電場を生成?? 1. 観測事実を再現する理論を調査 (6,7月) 2. 観測事実を再現するモデルの作成と考察 (7,8月)