算法数理工学 第7回 定兼 邦彦.

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算法数理工学 第 7 回 定兼 邦彦 1. グラフ グラフ G = (V, E) –V: 頂点 ( 節点 ) 集合 {1,2,…,n} –E: 枝集合, E  V  V = {(u,v) | u, v  V} 無向グラフ – 枝は両方向にたどれる 有向グラフ – 枝 (u,v) は u から.
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算法数理工学 第7回 定兼 邦彦

スタックとキュー 動的集合,挿入と削除をサポートする スタック (stack) では,DELETEでは最後に挿入された要素が取り除かれる 後入れ先出し (last-in, first-out; LIFO) という キュー (queue) では,最初に挿入された要素が取り除かれる 先入れ先出し (first-in, first-out; FIFO) という

スタック (Stack) INSERT, DELETEの代わりにPUSH, POPと呼ぶ PUSH(S,x): 集合 S に要素 x を加える. POP(S): S から最後に PUSH された要素を削除し, その要素を返す PUSH(S,15) POP(S) 15 6 9 2 9 2 6 15

配列によるスタックの実装 最大 MAX 要素を格納できるスタックを実装 スタックを表す構造体 要素は S[1..top] に格納される S: 要素を格納するサイズMAXの配列(へのポインタ) MAX: 配列 S のサイズ 要素は S[1..top] に格納される S[1]: スタックの底 S[top]: スタックの最上部 top  MAX typedef int data; typedef struct { int top; int MAX; data *S; } stack;

実装例 PUSH(S,x) POP(S) topを1増やし,x を配列に入れる topがMAXを超えたらエラー O(1) 時間 スタックが空ならエラー サイズを1減らし,最上部の要素を返す O(1) 時間 void PUSH(stack *s,data x) { if (s->top == s->MAX) { printf("オーバーフロー\n"); exit(1); } s->top = s->top + 1; s->S[s->top] = x; data POP(stack *s) { if (STACK_EMPTY(s)) { printf("アンダーフロー\n"); exit(1); } s->top = s->top - 1; return s->S[s->top + 1];

その他の関数 STACK_EMPTY(S) MAKE_STACK(size) スタックが空なら1を返す O(1) 時間 int STACK_EMPTY(stack *S) { if (S->top == 0) return 1; else return 0; } stack *MAKE_STACK(int size) { stack *s; data *S; s = malloc(sizeof(stack)); S = malloc((size+1)*sizeof(data)); s->top = 0; s->MAX = size; s->S = S; return s; }

キュー (Queue) INSERT, DELETEの代わりにENQUEUE, DEQUEUEと呼ぶ 人の並んだ列と同じ DEQUEUE(Q) Q ENQUEUE(Q,x) 15 6 2 9

配列によるキューの実装 最大 MAX1 要素を格納できるキュー キューを表す構造体 Q: 要素を格納する配列 MAX: 配列 Q のサイズ head: キューの先頭の位置 tail: 次に追加される位置 typedef struct { int head; int tail; int MAX; data *Q; } queue; 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 15 6 9 8 4 head tail

環状バッファ (Ring Buffer) 配列 Q の右端と左端はつながって輪になっていると考える Q[MAX] の右は Q[1] だとみなす 要素は Q[head..MAX] Q[1..tail1] に格納される DEQUEUEの際に全要素を左にずらす必要がない 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 3 5 15 6 9 8 4 17 tail head

空のキューの作成 MAKE_QUEUE(size) size 個の要素を格納できる空のキューを作成 queue *MAKE_QUEUE(int size) { queue *q; data *Q; size = size+1; q = (queue *)malloc(sizeof(queue)); Q = (data *)malloc((size+1)*sizeof(data)); q->head = 1; q->tail = 1; q->MAX = size; q->Q = Q; return q; }

配列を用いたスタック,キューの問題点 最大要素数を初めに決める必要がある 任意の数を格納できるようにするには? 配列がいっぱいになったら,より大きい配列を用意する p = realloc(p, (新しいサイズ)); p のアドレスは変わることがあるので注意 配列の代わりにリストを用いる キューではリストの末尾に追加する スタックではリストの先頭に追加する

深さ優先探索,幅優先探索 木やグラフの探索法 深さ優先探索 (depth-first search, DFS) 行き止まりになるまで先に進む 幅優先探索 (breadth-first search, BFS) 全体を同時に探索する DFSはスタック(再帰),BFSはキューで実現できる 1 3 4 2 5 6 1 4 5 2 3 6 DFS BFS

最短路問題とダイクストラ法 有向グラフ G = (V, E) を考える グラフ G の各枝 (i,j)  E は長さ aij を持つ V: 節点集合, 節点数 n E: 枝集合, 枝数 m グラフ G の各枝 (i,j)  E は長さ aij を持つ ある節点 s  V から別の節点 t  V への路の中で, 最も長さの短いものを見つける問題を最短路問題という 1 2 3 4 5 50 80 20 15 10 30

路の長さはそれぞれ 95, 85, 120, 110, 95 なので, 最短路は 1235 である 下のネットワークで節点 1 を s, 節点 5 を t とすると,s から t へは 1245, 1235,1345, 12345,135 の5つの路がある 路の長さはそれぞれ 95, 85, 120, 110, 95 なので, 最短路は 1235 である 大規模なネットワークでは全ての路を数え上げる方法は実用的ではない 1 2 3 4 5 50 80 20 15 10 30

重み無しグラフの場合 重み無し ⇔ 全ての枝の重みが 1 幅優先探索で求まる O(n+m) 時間 s からの距離が d の点の集合を Vd とする (d  0) V0 = {s} Vd = (Vd 1の点から枝1本で行ける点の集合)  (V0, V1, …, Vd 1 に入っている点の集合) Vd を求めるには, Vd1 の各点 v に対し,v の隣接点でまだ訪れていない点を求めればいい Vd をキューで管理する

各頂点に色を付ける 初期状態: s 以外の全ての点 u に対し 始点 s については 白: 未発見 灰: 発見済みだが隣接リストの探索が未完了 黒:発見済みで隣接リストの探索も完了 初期状態: s 以外の全ての点 u に対し color[u] = 白 d[u] =  (s からの距離) [u] = NIL (最短路木での親) 始点 s については color[s] = 灰 d[s] = 0 [s] = NIL (最短路木での根)

BFS(G, s) Q   (空集合) ENQUEUE(Q, s) while Q   u  DEQUEUE(Q) for each v  Adj[u] if color[v] = 白 color[v] = 灰 d[v]  d[u] + 1 [v]  u ENQUEUE(Q, v) color[u]  黒

計算時間の解析 初期化以外で色が白になる点は無い ある点がキューに入れられるとき,その色は白で, キューに入ると灰になる ⇒各点は高々1回だけキューに挿入・削除される 各点 u の隣接リストが走査されるのは u がキューから削除されるときのみ ⇒各点の隣接リストは高々1回だけ走査される ⇒隣接リストの走査にかかる時間は全体で O(m) 初期化の時間は O(n) 全体で O(n+m)

正当性の証明 定義: s から v への最短路距離 (shortest-path distance) (s, v) を,s から v へのパスの辺数の最小値と定義する.パスが無ければ (s, v) = . 補題1:有向または無向グラフ G において, 任意の辺 (u, v)  E に対し, (s, v)  (s, u) + 1 証明: u が s から到達可能ならば v へも到達可能で,s から v へのパスは s から u への最短路に (u, v) を追加したものか,それより短いものとなる. u が s から到達不可能ならば (s, u) =  なので 不等式は成立する.

補題2:BFSが停止した時,各点 v  V に対し d[v]  (s, v) が成立する. 証明: ENQUEUEの操作回数に関する帰納法で証明する.最初の s だけが挿入された段階では d[s] = 0 = (s, s), 全ての点 v  V{s} に対し d[v] =   (s, v) なので成立. 点 u の隣接点 v を探索する場合を考える. 帰納法の仮定により d[u]  (s, u). d[v] を更新すると d[v] = d[u] + 1  (s, u) + 1  (s, v) (補題1より) となり,ENQUEUE後も成り立つ

補題3: BFSの実行中で,キュー Q が点 v1, v2, …, vr を含むとする (v1が先頭, vrが末尾). このとき d[vr]  d[v1]+1 かつ d[vi]  d[vi+1] (i=1,2,…,r1) 証明: キューの操作回数に関する帰納法を用いる. 初期段階はキューは s だけを含むので成り立つ. キューの先頭 v1 を削除すると v2 が新たな先頭になる.帰納法の仮定より d[v1]  d[v2]. このとき d[vr]  d[v1]+1  d[v2]+1 となり成立. キューに頂点 v を挿入するとき (vr+1 = v となる) 現在頂点 u の隣接リストを走査しているとする.

d[vr+1] = d[v] = d[u]+1(アルゴリズムの動作) u を削除する前のキューはu = v1, v2, …, vrなので 帰納法の仮定から d[vr]  d[u]+1. 従って d[vr]  d[u]+1 = d[v] = d[vr+1]. また, d[vr+1] = d[u]+1 = d[v1]+1. よって,u を削除後のキューでも d[vr+1]  d[v1]+1. 定理: アルゴリズムBFSは始点 s から到達可能な 全ての頂点 v  V を発見し,停止した時全ての v に対して d[v] = (s, v) が成立する.さらに,s から 到達可能な全ての v  s に対し,s から v への最短路の1つは,s から [v] への最短路の後に辺 ([v], v) を連接したものである.

証明:背理法で示す.最短路長に等しくない d 値 を受け取る頂点が存在すると仮定する.v を,そのような頂点の中で (s, v) が最小の頂点とする. 補題2より d[v]  (s, v) なので, d[v] > (s, v). v が s から到達不可能ならば (s, v) =  なので d[v] は正しい値 ().よって v は到達可能. u を s から v への最短路上の点で v の直前のものとすると (s, v) = (s, u) + 1 である. (s, u) < (s, v) であり,仮定より最短路長が (s, v) より短い場合は d[u] = (s, u) なので d[v] > (s, v) = (s, u) + 1 = d[u] + 1 …(1)

キューから u を削除する場合を考える. v の色は白,灰,黒のいずれかである. v が白の時 v が黒の時 d[v] = d[u] + 1 を実行するので式 (1) に矛盾. v が黒の時 v は既にキューから削除されている d[v]  d[u] なので式 (1) に矛盾. v が灰の時 ある点 w を削除した時に v は灰に彩色された d[v] = d[w]+1 w は u よりも先にキューから削除されたので d[w]d[u] よって d[v]  d[u]+1 となり式 (1) に矛盾.

以上より,全ての点 v に対して d[v] = (s, v). [v] = u ならば d[v] = d[u] + 1 が成り立つ.よって 辺 ([v], v) を連接すると最短路が求まる. グラフ G = (V, E) を次のように定義する V = {v  V | [v]  NIL}  {s} E = {([v], v)  E | v  V  {s}} V は s から到達可能な全頂点 全ての v  V に対し,s から v に至る唯一のパスが G に存在し,これが G における s から v への最短路になっている G は幅優先探索木(breadth-first tree)と呼ばれる

最適性の原理 節点 s から t への最短路 P が得られているとする 路 P に含まれる節点を1つ任意に選び, r とする 路 P は s から r までの部分 P1 と, r から t への 部分 P2 に分割できる.このとき,P1 は s から r への最短路で,P2 は r から t への最短路となる もし P1 より短い s から r への路 P1’が存在するなら, P1’と P2 をつないだ路は P より短くなる このような性質を最適性の原理と呼ぶ s r t P1 P2 P1’

ある節点 s からネットワークの他の全節点への最短路を求める問題を考える ダイクストラ法は,枝の長さに関する非負条件 aij  0 ((i,j)  E) の仮定の下で,節点 s から各節点 i  V への最短路の長さの上限値 d(i) を更新していく反復アルゴリズム 計算の途中では,d(i) の値が s から i への真の最短路の長さに等しいことがわかっている節点が存在する.そのような節点の集合を S で表す は S の補集合 V  S を表す

ダイクストラ (Dijkstra) 法 (0) S := , := V, d(s) := 0, d(i) :=  (i  V  {s}) とおく S = V なら計算終了.そうでないなら, である節点 を選ぶ (2) とし,(v,j) E かつ であるような全ての枝 (v,j) に対して d(j) > d(v) + avj ならば d(j) = d(v) + avj, p(j) := v とする.ステップ (1) に戻る p(i) は,s から i までの最短路において i の直前に 位置する節点を示すために用いられる

[初期化] (0) 1 2 3 4 5 d(1)=0 d(2)= d(3)= d(4)= d(5)= 15 50 30 20 10 80 20 15 10 30 d(1)=0 d(2)= d(3)= d(4)= d(5)=

(2) d(2) =  > d(1) + a12 =50 より d(2) = 50, p(2) = 1 [反復1] (1) (2) d(2) =  > d(1) + a12 =50 より d(2) = 50, p(2) = 1 d(3) =  > d(1) + a13 =80 より d(3) = 80, p(3) = 1 より v = 1 1 2 3 4 5 50 80 20 15 10 30 d(1)=0 d(2)=50 d(3)=80 d(4)= d(5)=

(2) d(3) = 80 > d(2) + a23 =70 より d(3) = 70, p(3) = 2 [反復2] (1) (2) d(3) = 80 > d(2) + a23 =70 より d(3) = 70, p(3) = 2 d(4) =  > d(2) + a24 =65 より d(4) = 65, p(4) = 2 より v = 2 1 2 3 4 5 50 80 20 15 10 30 d(1)=0 d(2)=50 d(3)=70 d(4)=65 d(5)=

(2) d(5) =  > d(4) + a45 =95 より d(5) = 95, p(5) = 4 より v = 4 [反復3] (1) (2) d(5) =  > d(4) + a45 =95 より d(5) = 95, p(5) = 4 より v = 4 1 2 3 4 5 50 80 20 15 10 30 d(1)=0 d(2)=50 d(3)=70 d(4)=65 d(5)=95

(2) d(5) = 95 > d(3) + a35 =85 より d(5) = 85, p(5) = 3 より v = 3 [反復4] (1) (2) d(5) = 95 > d(3) + a35 =85 より d(5) = 85, p(5) = 3 より v = 3 1 2 3 4 5 50 80 20 15 10 30 d(1)=0 d(2)=50 d(3)=70 d(4)=65 d(5)=85

[反復5] (1) (2) [反復6] 自動的に v = 5 (1) S = V なので終了 1 2 3 4 5 d(1)=0 50 80 20 15 10 30 d(1)=0 d(2)=50 d(3)=70 d(4)=65 d(5)=85

アルゴリズムが終了したときの d(i) は,節点 1 から i への最短路の長さを与えている 枝の集合 {(p(i),i)} が各節点への最短路を表す これを最短路木と呼ぶ 1 2 3 4 5 50 80 20 15 10 30 d(1)=0 d(2)=50 d(3)=70 d(4)=65 d(5)=85

アルゴリズムの正当性の証明 ダイクストラ法で,S は出発点 s からの最短路の 長さがわかっている節点の集合であることを確認 以下のことを帰納法で示す 全ての i に対し, d(i) = [S に含まれる節点のみを経由して s から i に至る最短路の長さ] (3.3) (S に含まれる節点のみを経由するのでは到達できない場合は d(i) = ) i  S ならば,d(i) = [s から i への最短路の長さ]

S の点 s では,s から s への最短距離は 0 で,d(s) と等しい Sの点から1本の枝で到達できる の点(2 と 3)では d(i) = [S に含まれる節点のみを経由して s から i に至る最短路の長さ] が成り立つ それ以外の点では d(i) =  で,命題は成立 1 2 3 4 5 50 80 20 15 10 30 d(1)=0 d(2)=50 d(3)=80 d(4)= d(5)=

帰納法の仮定:ある反復に入った時点で命題成立 ステップ(1)で が選ばれたときに,v に対し d(v) = [S に含まれる節点のみを経由して s から v に至る最短路の長さ] = [s から v への最短路の長さ] (3.4) それ以外の点に対して (3.3) が成り立つことを示す (3.4)を背理法で示す.s からv への最短路をP*とし, その長さが d(v) と異なるとする アルゴリズムの構成法より,各節点 i に対し,d(i) は s から i へのある路の長さを表しているので, 上の仮定は d(v) > [路 P* の長さ] を意味する

なので,(3.3) より,s から v への真の最短路 P* は,途中で の点を少なくとも1つ経由する P* において初めて現れる の点を u とすると,P* は と に分解できる 最適性の原理より, は s から u への最短路 は S の点のみを経由しているので,(3.3) より d(u) = [路 の長さ] が言える s u v p(v)

各枝の長さは非負なので, [路 P* の長さ]  [路 の長さ] よって,d(v) > d(u) よって,d(v)は s から v への最短路の長さに等しい (3.3) より,その路は S の節点のみを経由するので, (3.4) が成り立つ s u v p(v)

反復が終了した時点で (3.3) が保たれていることを示す 反復終了時の S を と書く アルゴリズムのステップ(2) を実行したとき を示す S+ に含まれる節点のみを経由して s から j に至る最短路は次の3つの場合が考えられる (a) v を経由しない,つまり S の節点のみを経由 (b) j に到達する直前に v を経由 (c) v を経由し,その後さらに S の節点をいくつか通って j に到達 [S+ に含まれる節点のみを経由して s から j に至る最短路の長さ]

k はそれ以前の反復で S に入っているので,S の節点のみを経由する s から k への最短路が存在するはず (c) はありえない.なぜなら,そのような路が最短路の場合,j の直前の節点を k とすると,最適性の原理より,その路の k までの部分は sから kの最短路 k はそれ以前の反復で S に入っているので,S の節点のみを経由する s から k への最短路が存在するはず よって,s から j への最短路は(a) か (b) のどちらか ステップ(2)で,d(j) > d(v) + avj ならば d(j) を d(v) + avj で置き換えるが,これは (a) よりも(b)の方が路が短いときに最短路を置き換えることに対応 以上より [S+ に含まれる節点のみを経由して s から j に至る最短路の長さ]

次の反復に入ったときも命題が成り立つことが示された 各反復が終了するたびに, のどれか1つの節点が S に入るので,アルゴリズムの反復の回数は 節点数 n に等しい ステップ(1) の計算量は各反復で O(log n), 全体で O(n log n) ステップ(2) では,ネットワークの各枝はアルゴリズムを通して高々1回だけ処理されるのでステップ(2)の計算量は全体で O(m log n) (m: 枝数) 以上より,ダイクストラ法の計算量は O(m log n)

注:上のアルゴリズムを実行するには,ヒープからの削除を実現する必要がある. サイズ n の配列を用いて,v の格納されているヒープの場所を管理する d の更新を挿入と削除ではなく,フィボナッチヒープ のdecrease_keyで行うと,総計算量は O(m + n log n)

選択問題 (selection problem) 入力: n 個の異なる数の集合 A, 整数 i (1  i  n) 出力: A 中のちょうど i 1 個の他の要素より大きい要素 x  A 選択問題は O(n lg n) 時間で解ける A の要素をソートする 出力配列の i 番目の要素を返す 選択問題は O(n) 時間で解ける

最悪線形時間の 選択アルゴリズム アルゴリズム SELECT: i 番目に小さい要素を返す 入力配列の n 要素をグループに分割 n mod 5 要素のグループ 高々1個 n/5 個の各グループを(挿入ソート等で)ソートし,それぞれの中央値を求める SELECTを再帰的に用いてステップ2で求めた n/5 個の値の中央値 x を求める

PARTITIONを修正したものを用い,入力配列を x によって分割する.左側の要素数を k とする. i  k ならば,左側で i 番目に小さい要素を再帰的に見つける. i  k ならば,右側で ik 番目に小さい要素を再帰的に見つける.

SELECTの実行時間の解析 分割に用いた x より大きい要素数の下界を求める 中央値が x 以上のグループには,x 以上の値が 3個以上ある x 以上となる要素数は少なくとも

同様に,x 以下となる要素数も少なくとも 3n/106 ステップ 5 で再帰的に呼ばれる SELECT の部分問題のサイズは高々 7n/10+6 ステップ 1,4: O(n) 時間 ステップ 2: 5 要素のソートを n/5 回⇒ O(n)時間 ステップ 3: T(n/5) 時間

n  80 に対して T(n)  cn と仮定する.    c を十分大きくとれば よって,SELECTの最悪実行時間は線形 これは比較しか用いていない