ガス電子増幅器を用いた タイムプロジェクションチェンバー(GEM-TPC)の研究開発

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ガス電子増幅器を用いた タイムプロジェクションチェンバー(GEM-TPC)の研究開発 東大CNS, 早大理工総研A, 高エ研B, 理研C 織田勧, 浜垣秀樹, 小沢恭一郎, 犬塚将英, 坂口貴男, 磯部忠昭, 郡司卓, 齋藤翔太, 森野雄平, 山口頼人A, 澤田真也B, 四日市悟C 1. GEM-TPC開発の動機 2. GEM-TPCプロトタイプ 3. ビームテストによる性能評価 4. まとめ 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 1/10

GEM-TPC開発の動機 高エネルギー重イオン衝突実験により高温高密度状態の研究をしたい ex. PHENIX-RHIC-BNL, ALICE-LHC-CERN 高レート、高粒子密度下で使える分解能(位置、近接飛跡、エネルギー)の良い飛跡検出器が欲しい 広い横運動量領域(0.1GeV/c – 20GeV/c)の粒子に興味があるので磁場は低く抑えたい~0.3T dpT/pT2~10-3 (GeV/c)-1 半径2mの円筒型だとして、位置分解能200mm以下が必要 粒子密度が高いので、1cm以上の近接飛跡を識別したい 以上の要求を満たす飛跡検出器として、信号増幅部にガス電子増幅器(Gas Electron Multiplier)を用いたTPCが考えられる イオンフィードバックが抑えられると期待できる 2次元対称性があるので入射角依存性がない ワイヤーを用いるときより大型化が容易だと期待できる http://gdd.web.cern.ch/GDD/ 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 2/10

GEM-TPCプロトタイプ フィールドケージ 35cm(ドリフト方向) x 17cm x 17cm GEM(3枚) 10cm x 10cm (有感領域), CERN製 パッド 長方形・ジグザグ 1.09mm x 12mm 電荷応答型プリアンプ 時定数1ms 100MHz FADCで24chを読み出す 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 3/10

性能評価のためのビームテスト GEM-TPCの性能評価のためのビームテストをKEK PS p2ビームラインで行なった ガスは3種類  Ar(90%)+CH4(10%)(P10), Ar(70%)+C2H6(30%), CF4(100%) GEM-TPCの評価項目 検出効率 位置分解能 ビームレートの影響 エネルギー損失の測定 近接飛跡分解能 Ar+C2H6, ドリフト長85mm, 長方形パッド 1GeV/c 電子ビームのとき セットアップの模式図 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 4/10

測定結果1. 検出効率 検出効率を2種類の方法で求めた 97% 99.5% 1. SSDで飛跡を求め、幅1.8mmの領域に入った飛跡に対応するTPCのヒットがある割合を求めたら、ゲインが4000程度で一定値(97%)になった →3%の損失は多重散乱によりTPCのアクセプタンス(幅10mm)から外れてしまうため 2. 前後の2層のパッドにヒットがあるイベントで、真ん中のパッドにヒットがある割合を求めたら、一定値は99.5%に達した Ar(70%)+C2H6(30%) と CF4でも同様に99.5%以上になった ビームプロファイル 赤 : TPCにヒットがある飛跡 青 : 検出効率の計算に使った領域 97% 99.5% Ar(90%)+CH4 (10%) ジグザグパッド ドリフト長 20mm 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 5/10

測定結果2. 位置分解能 パッド3層ごとに、電荷を重みにした加重平均によりX方向(パッド面内)とZ方向(ドリフト方向)の位置を求めた 測定結果2. 位置分解能 X方向 パッド3層ごとに、電荷を重みにした加重平均によりX方向(パッド面内)とZ方向(ドリフト方向)の位置を求めた 前後の2層から求めた位置と真ん中の層での位置との残差から、X方向とZ方向の位置分解能を求めた Ar+C2H6でドリフト長13mmのとき、X方向の分解能は80mmだった 赤 : Ar+CH4 ジグザグ 青 : Ar+CH4 長方形 黄 : Ar+C2H6 長方形 緑 : CF4 ジグザグ 電場 ドリフト 速度 拡散(横方向) @1cm 拡散(縦方向) Ar(90%)+CH4(10%) 130 V/cm 5.5 cm/ms 570 mm 360 mm Ar(70%)+C2H6(30%) 390 V/cm 5.0 cm/ms 320 mm 190 mm CF4 570 V/cm 8.9 cm/ms 110 mm 80 mm Z方向↑ 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 6/10

イオンフィードバックは十分に抑えられていると考えられる 測定結果3. ビームレートの影響 X方向 目的: イオンフィードバックが抑えられるかどうかを調べる ビームスリットの幅を変えることでビームレートを変化させ、位置分解能が悪化するかを調べた ビームレートは2.5cm角のプラスチックシンチで数えた 出すことのできたレートの範囲内(<5000cps/cm2)では位置分解能は変化していない RHIC (Au-Au, √sNN=200GeV) : dNch/dh|h=0~300, Luminosity=1.4x1027/cm2/s, sinel=7barn  ⇒500cps/cm2 @vertexから30cm LHC (Pb-Pb, √sNN=5.5 TeV) : dNch/dh|h=0~5000?, Luminosity=1x1027/cm2/s, sinel=8barn?  ⇒7000cps/cm2 @vertexから30cm Z方向 赤 : Ar+CH4 ジグザグ 青 : Ar+CH4 長方形 イオンフィードバックは十分に抑えられていると考えられる 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 7/10

測定結果4. エネルギー損失の測定 s=13% 55FeのX線(5.9keV) CF4 測定結果4. エネルギー損失の測定 55FeのX線(5.9keV) CF4 s=13% 55FeのX線(5.9keV)を用いて求めたGEM自体のエネルギー分解能はs=11%(Ar(90%)+CH4(10%)), s=13%(CF4) であった。統計的ゆらぎの1.7倍と1.3倍 0.5GeV/c ~ 3.0GeV/cの運動量の領域でエネルギー損失を測定した 各運動量間でゲインが変動したので、パイオンが計算上の値になるように補正した(最大12%) GEMのゲインの変動の原因の候補 チャージアップ:電圧を掛け始めて数時間で数十%上昇する。GEMの穴の形状による 1.0GeV/cのp+の エネルギー損失 緑 : e+ ピンク : m+ 赤 : p+ 青 : p 水色 : d Ar+CH4, ドリフト長85mm, 距離36mm 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 8/10

測定結果5. 近接飛跡分解能 ビームレートを高くし(~4000cps/cm2)、1イベント(6.4ms)の中に複数のヒットがあるようにし、そのヒット間のドリフト方向の距離から近接飛跡分解能を評価した 散乱で生じる2次粒子はヒット間の距離が~20mm以下であって、その影響はビームレートの低い場合のデータをもとに評価した ガスはAr+CH4, ドリフト長は85mm 拡散1.7mm(横), 1.0mm(縦) ヒット間の距離が12mm以上だと識別できる Accidental coincidence 2次粒子 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 9/10

まとめ 期待をほぼ満足している 高レート・高粒子密度下で使える飛跡検出器を目指し、GEM-TPCのプロトタイプを製作した 検出効率 : 99.5% 位置分解能 : 80mm (X方向), 320mm (Z方向) (Ar(70%)+C2H6(30%)) ビームレート : 5000cps/cm2でも位置分解能は変わらなかった エネルギー損失 : 最大12%のゲインの変動があった 近接飛跡分解能 : 12mm (Z方向) 今後 GEM : 放電、チャージアップの問題、大型化 磁場中でのテスト シミュレーション 読み出しチャンネル数を多くしたい 高速、低ノイズ、小型、安価なエレクトロニクス 期待をほぼ満足している 2004/09/28 日本物理学会 2004年秋季大会 高知大学 28aSB-7 東大CNS 織田勧 10/10