Lemon-Relman 報告の 意味するところ 講義 その 16 応用編

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Lemon-Relman 報告の 意味するところ 講義 その 16 応用編 本講義に関する追加の情報は、以下のスライドに設けられた右の各リンクボタンより参照可能です。 追加情報

1. 目次 Lemon-Relman 報告とは? 生命科学の世界的拡散 危険なのは病原体だけではない. スライド 2-3 生命科学の世界的拡散 スライド 4-10 危険なのは病原体だけではない. スライド 11-12 とくに注意を要する分野: スライド 13-19 合成生物学 散布技術 異なる技術の結合 推奨される方針 スライド 20 Notes: The lecture starts with a detailed discussion of the concerns raised by the 2006 Lemon-Relman Committee: that biotechnology of concern is global and that the potential threat is much wider than just from pathogens and toxins. Examples of concern in regard to traditional agent modifications and new types of agent are introduced to illustrate the dangers.

2. Lemon-Relman報告とは? 2006年に全米科学アカデミーの医学研究所と国家研究会議は「グローバリゼーション、バイオセキュリティならびに生命科学の未来」と題する報告を刊行した。この報告は共同委員長の名を冠して「Lemon-Relman報告」とよばれることが多い。 追加情報

3. Lemon-Relman報告とは? 報告では現在の科学の潮流を検証し 研究の進展が敵対的に使用される可能性を吟味し、 両刃の剣となる可能性を現状ならびに将来について特定し、 そうした科学技術の破壊的可能性を防止し、それに対処するための知識や方策を特定し、推奨する。

4. 生命科学技術の世界的拡散 生命科学技術は私たちの生活のさまざまな領域に利用されている。 製薬 医学 農業 生物材料 生物防衛 追加情報

5. 生命科学技術の世界的拡散 拡大する生命科学技術の市場 製薬市場 地域 年価値 シェア 成長率 北米 2040億ドル 51% 12% ヨーロッパ 1020億ドル 25% 8% 日本 470億ドル 1% アジア、アフリカ、 オーストラリア 320億ドル 11% ラテンアメリカ 170億ドル 4% -10% 追加情報

6.生命科学技術の世界的拡散 成長する生命科学技術大国 合衆国の生命科学技術産業 年 売上高 1994 77 億ドル 70億ドル 1,311 研究開発費 会社数 従業員数 1994 77 億ドル 70億ドル 1,311 103,000 1999 161億ドル 10.7億ドル 1,273 162,000 2004 333億ドル 198億ドル 1,444 187,500 米国の生命科学技術産業の売上高は4倍に増加した。 会社数と従業員数も、それより遅い速度ではあるが、増加している。 追加情報

7.生命科学技術の世界的拡散 拡大する世界市場 - 農業 主要な生命科学技術作物として下記のものがある: ダイズ, トウモロコシ, 綿花, アブラナ 遺伝子改変作物の作付面積が急速に拡大している。 米国 57.7 (百万ヘクタール) アルゼンチン 19.1 ブラジル 15.0 カナダ 7.0 インド 6.2 中国 3.8 Notes: Executive summary of the ISAAA Brief 37 is available from the ISAAA website. Ref: International Service for the Acquisition of Agri-Biotech Applications (2007) ISAAA Brief 37-2007: Executive Summary: Global Status of Commercialized Biotech/GM Crops: 2007. ISAAA Briefs. Available from http://www.isaaa.org/resources/publications/briefs/37/executivesummary/default.html 追加情報

8.生命科学技術の世界的拡散 拡大する世界市場 - 農業 成長率は先進国よりも途上国においてはるかに高い。 成長率は先進国よりも途上国においてはるかに高い。  遺伝子改変作物を栽培している23カ国の2006年から2007年の増加率は12%(1230万ヘクタールに相当)であり、その増加のほとんどは途上国においてである。 (ISAAAのウェブサイトから、ISAAA文書第37の要約が入手可能である) Notes: Executive summary of the ISAAA Brief 37 is available from the ISAAA website. 追加情報

9.生命科学技術の世界的拡散 知識の世界的拡散 出版物 特許 情報技術 人材の拡散 高等教育 追加情報 Notes: Executive summary of the ISAAA Brief 37 is available from the ISAAA website. 追加情報

10.生命科学技術の世界的拡散 “途上国は、既存の科学技術に投資するだけで先進国に追いつこうとはしていない。今日の世界規模の科学において競争に打ち勝つには、どの国も科学技術予算のある部分を先端的科学技術に集中させねばならない。” Truner T. Isoun,ナイジェリアの科学技術大臣 Notes: Executive summary of the ISAAA Brief 37 is available from the ISAAA website. 途上国は、既存の科学技術に投資するだけで先進国に追いつこうとはしていない。今日の世界規模の科学において競争に打ち勝つには、どの国も科学技術予算のある部分を先端的科学技術に集中させねばならない。 Truner T. Isoun ナイジェリアの科学技術大臣 追加情報

11. 危険なのは病原体だけではない 生物化学兵器スペクトラム 追加情報

12.危険なのは病原体だけではない 2次元的分類 生物化学兵器の 赤い四角の中は、今後十数年間にさらに急速に進歩するであろう薬剤を示す。 The diagram is cited from Dando and Kobayashi (2008).

13. とくに注意を要する分野 生命科学技術の、急速に拡大し、懸念される分野 新たな生物学的ないし分子的多様性の獲得 目的指向型設計 生物学的システムの理解と操作 生産、散布、梱包

14.とくに注意を要する分野 A) 多様性の獲得 DNA合成 DNAシャフリング 生物資源探査 コンビナトリアルケミストリー ハイスループットスクリーニング

15.とくに注意を要する分野 B) 目的指向型設計 合理的医薬品設計 合成生物学 ウイルスの遺伝子工学

16.とくに注意を要する分野 B) 目的指向型設計 合成生物学 絶滅した病原体の再構成や、生命体に新たな遺伝形質を導入することはSFではなくなった。 合成生物学の進歩と遺伝子情報への自由なアクセスは、世界中の研究室に新たな生物兵器を生み出す能力を与えてしまった。

17.とくに注意を要する分野 C) 生物学的システムの理解と操作 RNA干渉 高親和性結合試薬 コンピュータ生物学と生命情報学 システム生物学 遺伝子医学 恒常的システムの調節因子

18.とくに注意を要する分野 D) 生産、散布、梱包 バイオファーミング マイクロ流体工学とマイクロ加工技術 ナノテクノロジー エアロゾル技術 マイクロカプセル化 遺伝子治療技術 ターゲッティング技術 科学技術の相補性と相乗効果

19. とくに注意を要する分野 D) 生産、散布、梱包 ナノテクノロジー、エアロゾル技術、マイクロカプセル化 ほとんどの微生物は安定化させ、効果的に散布するのが困難なために、生物兵器として使用できない。上記の技術はこうした困難を解決するための幅広い方策を提供する。生物兵器の候補となる製剤のリストが近い将来急速に拡大するだろう。

20.推奨される方針 生命科学の情報の自由で制限ない交換を促進するために、本委員会は以下のことを推奨する。 脅威となる生物や薬剤の範囲を従来より広く捉える。 安全保障担当者の集団の内においても、外に置いても科学技術の知識と経験を強化する。 生命科学者の社会の中で、この問題に対する意識を共通の文化として醸成・浸透させ、責任感を共有する。 そして公衆衛生の社会資本や現有の対応能力・回復能力を強化する。

21.参考文献 参考文献