5.3, 5.4 D2 岡本 和也.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
有限幾何学 第 2 回. 有限幾何学 第 2 回 1. 様々なグラフの例 2. 道と最短経路問題 1. 用語の説明 2. 最短経路問題 3. ダイキストラのアルゴリズム.
Advertisements

G 問題 コードアート オンライン 原案:西出 ライタ:伊藤 テスタ:西出. 問題概要 0 大きさのさまざまな n 個の円に多角形 m 個を入れら れるか判定する問題 0 ただし、同じ円に複数の多角形を入れることはでき ない 0 もし、入れられる場合は、辞書順最小の入れ方を出 力 ① ② ③ ① ②.
0章 数学基礎.
Probabilistic Method 7.7
区間グラフにおける区間表現からMPQ-treeを効率よく構成するアルゴリズム
凸関数じゃないですか (最大値/最小値を求める問題) 目的関数を固定する (最大値/最小値を最小/最大化する問題)
3.2.3~3.3 D3 川原 純.
黒澤 馨 (茨城大学) 情報セキュリティ特論(4) 黒澤 馨 (茨城大学) 2017/3/4 confidential.
ラベル付き区間グラフを列挙するBDDとその応用
近似アルゴリズム 第10章 終了時刻最小化スケジューリング
確率・統計Ⅰ 第11回 i.i.d.の和と大数の法則 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均
    有限幾何学        第8回.
曲面上のグラフの彩色 ~種数の増加,面の制限及び局所平面性~
Extremal Combinatorics 14.1 ~ 14.2
An Algorithm for Enumerating Maximal Matchings of a Graph
    有限幾何学        第5回.
Probabilistic Method.
Extremal Combinatrics Chapter 4
Approximation of k-Set Cover by Semi-Local Optimization
一般化マクマホン立方体パズルの 問題例生成
JAG Regional Practice Contest 2012 問題C: Median Tree
    有限幾何学        第12回.
Bias2 - Variance - Noise 分解
Designs M1 後藤 順一.
【第三講義】 1次元写像の軌道と安定性.
Probabilistic Method 6-3,4
A path to combinatorics 第6章前半(最初-Ex6.5)
Probabilistic method 輪講 第7回
8.Intersecting Families
s a b f c e d 2016年度 有限幾何学 期末試験 問1:15点
5.5 The Linear Arboricity of Graphs (グラフの線形樹化数)
線形代数学 谷津 哲平 第1章 ベクトル 1.1 ベクトル空間 1.2 ベクトルの一次独立性 1.3 部分ベクトル空間
第25章 単一始点最短路 3節 Bellman-Fordのアルゴリズム
確率・統計Ⅰ 第3回 確率変数の独立性 / 確率変数の平均 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均
グラフアルゴリズムの可視化 数理科学コース 福永研究室 高橋 優子 2018/12/29.
連星BH半周定理 東工大 椎野克 @市大.
Probabilistic Method 2007/11/02 岩間研究室M1 市場孝之.
7.4 Two General Settings D3 杉原堅也.
【第二講義】1次元非線形写像の不変集合とエントロピー
Basic Tools B4  八田 直樹.
1.標本平均の特性値 2.母分散既知の標本平均の分布 3.大数法則と中心極限定理
Extractor D3 川原 純.
25. Randomized Algorithms
計算量理論輪講 chap5-3 M1 高井唯史.
First Course in Combinatorial Optimization
Additive Combinatrics 7
ポリゴンメッシュ (2) - 変形と簡略化- 東京大学 精密工学専攻 大竹豊 資料および授業の情報は :
連続領域におけるファジィ制約充足問題の 反復改善アルゴリズムによる解法 Solving by heuristic repair Algorithm of the Fuzzy Constraint Satisfaction Problems with Continuous Domains 北海道大学.
階層的境界ボリュームを用いた 陰関数曲面の高速なレイトレーシング法
7 Calculating in Two Ways: Fubini’s Principle
CGと形状モデリング 授業資料 1,2限: 大竹豊(東京大学) 3,4限: 俵 丈展(理化学研究所)
福永 拓郎 (京都大学) Magnús M. Halldórsson (Reykjavik University) 永持 仁 (京都大学)
5 Recursions 朴大地.
SUNFLOWER B4 岡田翔太.
2016年度 有限幾何学 中間試験 問1 次のグラフを描け.(描けない場合は理由を述べよ) 各20点
14. The Basic Method M1 太田圭亮 14.3 Spaces of polynomials
Selfish Routing 4章前半 岡本 和也.
    有限幾何学        第5回.
依存関係の局所性を利用した プログラム依存グラフの 効率的な構築法
Max Cut and the Smallest Eigenvalue 論文紹介
7.8 Kim-Vu Polynomial Concentration
Additive Combinatorics輪講 6章
2017年度 有限幾何学 期末試験 注意:ループと多重辺がないグラフのみを扱う. 問1 次の定理と,その証明の概略を読み,各問に答えよ.
Chapter5 Systems of Distinct Representatives
計算の理論 I 反復補題 火曜3校時 大月 美佳 平成16年7月13日 佐賀大学知能情報システム学科.
わかりやすいパターン認識 第6章 特徴空間の変換 6.5 KL展開の適用法 〔1〕 KL展開と線形判別法 〔2〕 KL展開と学習パターン数
問2 次の問に答えよ. (ただし,握手補題,オイラーの定理,Oreの定理 は授業で紹介したものとする) (1) 握手補題を書け.
図2 x11 図1 x6 x10 x12 x3 x5 x7 x9 x13 x2 x4 x8 x14 (0,0) (1,0) x1 x15
参考:大きい要素の処理.
Speaker: Kazuhiro Inaba Paper Introduction from WSDM 2015
Presentation transcript:

5.3, 5.4 D2 岡本 和也

5.3 Ramsey Number の下限の改良 The Local Lemma を利用する。

Ramsey Number の復習 R(k, l) n節点の完全グラフKnの枝を2色(赤・青)で  塗り分けるとき、どんな塗り分け方をしたとしても、  赤枝のみを持つ完全部分グラフKkか青枝のみを  持つ完全部分グラフKlが存在するような最小のn。 完全グラフ  どの2頂点間にも枝が存在するグラフ。

Ramsey Number の復習 R(k, l) n節点の完全グラフKnの枝を2色(赤・青)で  塗り分けるとき、どんな塗り分け方をしたとしても、  赤枝のみを持つ完全部分グラフKkか青枝のみを  持つ完全部分グラフKlが存在するような最小のn。 R(3, 3) = 6

Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, k) ) ランダムに辺に色を塗る。 S ・・・ 完全グラフ Kn の k 頂点からなる頂点集合 AS ・・・ S の頂点間の枝が単色になる事象 Pr(AS) = AS は他のほとんどの事象 AS’ と互いに独立である。 S と S’ が2頂点以上共有していない場合 ・・・ 互いに独立である。 S と S’ が2頂点以上共有している場合 ・・・ 互いに独立でない。 互いに独立でない S’ は多く見積もっても          以下である。 1/2 1/2 1/2 n頂点(Kn) k頂点(S)

The Local Lemma; Symmetric Caseの復習 事象 A1, A2, …, An がある。 任意の事象 Ai に関して Pr(Ai) ≦ p 任意の事象 Ai は最大 d 個以外の事象と互いに独立。 ep(d+1) ≦ 1                   ならば 全ての事象が起きない可能性がある。

Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, k) ) ランダムに辺に色を塗る。 S ・・・ 完全グラフ Kn の k 頂点からなる頂点集合 AS ・・・ S の頂点間の枝が単色になるイベント Pr(AS) = AS は他のほとんどのイベント AS’ と互いに独立である。 S と S’ が2頂点以上共有していない場合 ・・・ 互いに独立である。 S と S’ が2頂点以上共有している場合 ・・・ 互いに独立でない。 互いに独立でない S’ は多く見積もっても          以下である。 p n頂点(Kn) d k頂点(S)

Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, k) ) Proposition 5.3.1 ep(d+1) ≦ 1 ならば R(k, k) > n ヒント > p. 26 の 3.1.1 より2倍良くなった。

The Local Lemma 互いに独立でない事象が多いと効果が薄い。 symmetric でない場合 (k = l) を考える。 symmetric な場合、k が大きくなるにつれて d が大きくなる。 symmetric でない場合 (k = l) を考える。 さらに、l が小さい場合を考える。 例えば、R(k, 3)

Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, 3) ) 辺を確率 p で青色に塗る。(後は赤色に塗る。) T ・・・ 完全グラフ Kn の3頂点からなる頂点集合 AT ・・・ T の頂点間の枝が青色になる事象 S ・・・ 完全グラフ Kn の k 頂点からなる頂点集合 BS ・・・ S の頂点間の枝が赤色になる事象 Pr(AT) = p3 Pr(BS) = AT は 3C2(n – 3) < 3n の AT’ と nCk 以下の BS と独立でない。 BS は kC2(n – k) < k2n/2 の AT と nCk 以下の BS’ と独立でない。

The Local Lemma; General Case の復習 事象 A1, A2, …, An がある。 Ai, Aj が独立でない場合、(i, j) ∈ E とする。(必要十分条件) 任意の事象 Ai に関して、 (1 ≦ i ≦ n)                   ならば 全ての事象が起きない可能性がある。

Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, 3) ) 辺を確率 p で青色に塗る。(後は赤色に塗る。) T ・・・ 完全グラフ Kn の3頂点からなる頂点集合 AT ・・・ T の頂点間の枝が青色になる事象 S ・・・ 完全グラフ Kn の k 頂点からなる頂点集合 BS ・・・ S の頂点間の枝が赤色になる事象 Pr(AT) = p3 Pr(BS) = AT は 3C2(n – 3) < 3n の AT’ と nCk 以下の BS と独立でない。 BS は kC2(n – k) < k2n/2 の AT と nCk 以下の BS’ と独立でない。

Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, 3) ) Ai = AT ならば xi = x Ai = BS ならば xi = y AT : BS : ならば R(k, 3) > n 最も n が大きくなるように p, x, y を定めると・・・ > (c は定数)

Ramsey Number の下限の改良 k = l の場合 ( R (k, 3) ) R(k, 3) > c k2 / log2k 1961年に Erdös が複雑な確率的手法で          求めたものと一致している。 R(k, 3) > c’ k2 / log k [Kim ‘95] R(k, 4) > k5/2+o(1) The Local Lemma を用いないどんな証明よりも      良い結果である。

5.4 Geometric Result ユークリッド空間 R3 が open unit ball で充満している。 任意の点( x ∈ R3 )が k 個以上の open unit ball に含まれているとき、 R3 の k-fold covering という。 1-fold covering は単に covering ということもある。 k-fold covering F を互いに素な F1 と F2 に分解し、 F1 と F2 がそれぞれ covering となっているとき、 分解可能(decomposable)という。 1 open unit ball (本当は3次元)

Mani-Levitska and Pach (1988) 任意の k ( ≧ 1 )に対して、 分解不可能な k-fold covering を作成した。 どの点も c 2k/3 個以上の open unit ball でカバーされていないような k-fold covering は分解可能であると示した。 いささか驚くべき現象であると述べられている。 正確な記述は、Theorem 5.4.1(次ページ)。 分解不可能な k-fold covering を作成しようとすると、            多くの open unit ball に覆われるような点が出来てしまう。 (個人的見解)

Theorem 5.4.1 ならば F = {Bi}i∈I を k-fold covering とする。 R3 のどの点も t 個以上の open unit ball に    含まれていない。 e・t 3 218 / 2 k-1 ≦ 1 F は分解可能である。 ならば Theorem 5.2.1 を利用して導く。

Proof of Theorem 5.4.1 ハイパーグラフ H = (V(H), E(H)) V(H) は F = {Bi}i∈I Ex は x (∈ R3) を含んでいる open unit ball の集合 E(H) は Ex の集合 但し、Ex = Ey の場合、どちらか一方しか含まない。 1 V(H) = {1, 2, 3} E(H) = { {1}, {2}, {3}, {1, 2}, {2, 3}, {1, 2, 3}} Ex = {2}, Ey = {2} 2 x y 3

Proof of Theorem 5.4.1 主張 任意の枝 Ex は t 3 218 本未満の枝としか依存関係にない。 半径4の球の体積は 半径1の球の体積の 43 = 26 倍である。 どの点も t 個以上の open unit ball で カバーされていないため、 半径4の球に最大 26t 個含まれる。 m 個の球が重なったとき、 最大 m3 個の部分に分かれる。 よって、主張が正しいことがわかる。 Bj’’’’ Bj’’ Bj’ x Bj’’’ 1以下 3以下 Bi 4以下 Bj

m 個の球が重なったとき、 最大 m3 個の部分に分かれる? 2次元 m +1個目 2m 本 m2 + 2m + 1 = (m + 1)2 展開 m 個の円 m 個の円が重なった時、 最大 m2 個の部分に分かれる。 3次元 m 個の球の中に、m +1 個目の球を入れる。 さらに、無理やり展開する。 2次元の議論から、 最大 m2 個の部分に 分かれている。 m3 + m2 + 1 < (m + 1)3 m 個の球が重なった時、 最大 m3 個の部分に分かれる。

Proof of Theorem 5.4.1 主張 任意の枝 Ex は t 3 218 本未満の枝としか依存関係にない。 半径4の球の体積は 半径1の球の体積の 43 = 26 倍である。 どの点も t 個以上の open unit ball で カバーされていないため、 半径4の球に最大 26t 個含まれる。 m 個の球が重なったとき、 最大 m3 個の部分に分かれる。 よって、主張が正しいことがわかる。 Bj’’’’ Bj’’ Bj’ x Bj’’’ 1以下 3以下 Bi 4以下 Bj

Proof of Theorem 5.4.1 ハイパーグラフ H の有限のサブハイパーグラフ L を考える。 L の各枝は k 個以上の頂点からなる。(k-fold covering) L の各枝は最大 d < t 3 218 本の L に含まれる枝と依存関係にある。 ハイパーグラフ H’ = (V’, E’) 各枝 (∈ E’) は k’ 個以上の頂点からなる。 各枝 (∈ E’) は最大 d’ 本の他の枝と依存関係にある。 e(d’+1) ≦ 2k’-1 H’は2彩色可能である。 Theorem 5.4.1 の仮定 (e・t 3 218 / 2 k-1 ≦ 1) より、L は2彩色可能である。 Theorem 5.2.1 e(d’+1) ≦ e・t 3 218 ≦ 2k’-1 ならば 単色の枝が無い

Proof of Theorem 5.4.1 ハイパーグラフ H の有限のサブハイパーグラフ L を考える。 L の各枝は k 個以上の頂点からなる。(k-fold covering) L の各枝は最大 d < t 3 218 本の L に含まれる枝と依存関係にある。 ハイパーグラフ H’ = (V’, E’) 各枝 (∈ E’) は k’ 個以上の頂点からなる。 各枝 (∈ E’) は最大 d’ 本の他の枝と依存関係にある。 e(d’+1) ≦ 2k’-1 H’は2彩色可能である。 Theorem 5.4.1 の仮定 (e・t 3 218 / 2 k-1 ≦ 1) より、L は2彩色可能である。 青の頂点を F1 とし、赤の頂点を F2 とすれば、L は分解可能である。 Theorem 5.2.1 x x Ex = {3, 5, 8, 9} 3, 5, 8, 9 5 e(d’+1) ≦ e・t 3 218 ≦ 2k’-1 ならば 単色の枝が無い

Proof of Theorem 5.4.1 Compactness Argument (Theorem 5.2.2 と同じ) 有限のサブハイパーグラフ L が分解可能である。 ハイパーグラフ H が分解可能である。 位相空間・開被覆・コンパクト・ the axiom of choice (選択公理)で うんたらかんたら・・・