ガンマ線偏光観測で探る ガンマ線バーストの放射メカニズム 米徳大輔(金沢大) 村上敏夫、森原良行、坂下智徳、高橋拓也(金沢大)

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(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
GAmma-ray burst Polarimeter : GAP
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60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
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ガンマ線偏光観測で探る ガンマ線バーストの放射メカニズム 米徳大輔(金沢大) 村上敏夫、森原良行、坂下智徳、高橋拓也(金沢大) 郡司修一 (山形大) 三原建弘 (理研) 當真賢二 (大阪大) GAP チーム 次世代の多波長偏光サイエンスの開拓 (2011/09/29)

GRBと偏光観測 1052-54 erg ものエネルギーを数10秒間のガンマ線放射で 一気に解放する宇宙最大の爆発現象 νFν ∝ Eα ∝ Eβ ピークエネルギー (Ep) GRBと偏光観測 ガンマ線バースト検出からの時間 (秒) ガンマ線強度 (カウント/秒) 1052-54 erg ものエネルギーを数10秒間のガンマ線放射で 一気に解放する宇宙最大の爆発現象 ガンマ線放射のメカニズムが良くわからない 方向、時間変動、スペクトルの他に、 電磁波のもう一つの情報である「偏光」の観測が重要

GAmma-ray burst Polarimeter 70 – 300 keV で偏光測定 GAP (センサー) 17 cm, 3700g ■ コンプトン散乱の散乱異方性を測定 ■ 幾何学的な対称性が高い r0 : 古典電子半径 E0 : 入射光子のエネルギー E : 散乱光子のエネルギー 100 300 散乱ガンマ線の強度 散乱角度 200

GRB021206 (RHESSI) Π = 80 ± 20 % Rutledge & Fox (2004) : Π < 100 % Coburn & Boggs (2003, Nature) 0.15 – 2.0 MeV, 入射角度 18 度 Π = 80 ± 20 % Confidence level > 5.7 σ (Chance Prob. = 3.5 x 10-8) Rutledge & Fox (2004) : Π < 100 % Wigger et al. (2004) : Π = 41 (+57, -43) 制限できない という結果 It seems unlikely that a constraint will emerge from further RHESSI observations.

GRB041219A (INTEGRAL) Götz et al. 2009 (INTEGRAL-IBIS) Karemci et al. 2007 (INTEGRAL SPI)

GRB041219A (INTEGRAL) ■ Götz et al. 2009 (IBIS: 200 – 800 keV ) ■ McGlynn et al. 2007 (SPI: 100 – 350 keV) First peak 63 (+31, -30) 70 (+14, -11) ■ Kalemci et al. 2007 (SPI: 100 – 350 keV) First peak 100 ± 36 48.3 ± 3.8 Total 98 ± 33 45.4 ± 5.2

どの情報が真実なのか、全くわからない

IKAROS Interplanetary Kite-craft Accelerated by Radiation Of the Sun 2010年 5月21日 打ち上げ成功 Interplanetary Kite-craft Accelerated by Radiation Of the Sun

GAPが今までに観測したGRB GRB名 トリガー時刻 入射角 1 100707A 00:47:22:878 93.24 16 11:38:01.865 - 2 100715A 00:12:32.568 18.61 17 110301A 05:05:34.911 48.07 3 100719B 23:44:14.348 145.14 18 110406A 03:42:51.624 132.93 4 100722A 02:17:25.963 33.74 19 110423A 09:00:38.039 5 100804A 02:28:45.837 62.768 20 110428A 09:17:25.068 109.02 6 100809A 00:33:06.227 21 110505? 15:19:12.044 7 100820A 08:55:31.699 33.55 22 110510? 8 100826A 22:57:20.805 20.03 23 110514 22:13:01.550 70.49 9 101014A 04:12:15.610 54.03 24 110604A 14:50:07.295 43.21 10 101021A 00:14:23.267 41.33 25 110625A 21:09:03.022 41.32 11 101013A 11:37:44.000 25.91 26 110708A 14:03:10.305 66.93 12 101123A 22:51:43.277 74.16 27 110715A 13:18:33.571 88.32 13 101126A 04:45:50.000 61.91 28 110717B 07:40:34.885 25.41 14 101219A 02:35:02.551 51.82 29 110721A 04:47:38.891 29.98 15 101231A 01:33:26.597 62.66

機上エネルギーキャリブレーション カウント (5時間積分) エネルギーチャネル 241Am (59.5 keV) ±2 % LD cut

入射角 GAP 正面より 20.0 度方向 スペクトル情報 α = -1.31 β = -2.1 Ep = 606 GRB100826A の時間変動 入射角 GAP 正面より 20.0 度方向 スペクトル情報 α = -1.31 +0.06 - 0.05 β = -2.1 +0.1 - 0.2 Ep = 606 +134 - 109 Fluence = (3.0±0.3)×10-4 erg/cm2 前半の大きなフレア、後半の小さなパルス群に分けて偏光解析を行った。 検出器に 入射した光子数 プラスチック – CsI 同期光子数 (偏光データ) 前半 32,924 photons 4,821 photons 後半 19,007 photons 2,733 photons

角度応答に関する系統誤差の評価 57Co (122keV) 1m Geant4 57Co (122keV) を用いた実験 入射角度 20度 系統誤差 (標準偏差) 0 < θ < 40 度の範囲では 入射角度に依らず 1.8 % 程度 1.8%

GRB100826A の散乱強度分布 偏光角は 99.9% の信頼度で 変化していると言える 偏光度 偏光角 前半 25±15% (信頼度 95.4%) 159±18度 後半 31±21% (信頼度 89.0%) 75±20度 前半+後半 同時フィット 27±11% (信頼度 99.4%) 偏光角は 99.9% の信頼度で 変化していると言える

ジェット内部の議論1 偏光 正面 ジェットの開き角 θj 相対論的ビーミング効果 1/Γ ジェットを駆動するための らせん状の磁場構造 ■ 偏光が検出されることは、軸対称ジェットでも説明できる。 ■ 偏光角の時間変化を説明するためには、 (1) 一様な光度や磁場を持った軸対称ジェットではなく、 (2) 1/Γ よりも小さなスケールのパッチが存在すると良いだろう。

ジェット内部の議論2 ジェット内部の議論3 偏光 独立な衝撃波内で、 良く揃った磁場が生成される場合 大局的には乱れているが 局所的にはそこそこ揃った磁場 偏光 やはりパッチ構造が必要か? 磁場を揃えるメカニズムは?

ガンマ線バーストの想像図

ガンマ線バーストの想像図 重い星が爆発してブラックホールが誕生すると、 中心からほぼ光速のジェットが飛び出す。 (2) 「ガンマ線の偏光が検出された」ことから、   放射領域には数万ガウス程度のよく揃った   強磁場が存在していると考えられます。   背景の図において、ジェット内部の赤線は   強磁場を表現したものです。 (3) 「偏光方向が短時間で変化した」ことは、   ジェット内部にはガンマ線を作り出す領域が いくつか点在していて、それぞれの磁場の   向きは異なっていると考えられます。 (4) 電子・陽電子が強磁場に絡みつくことで ガンマ線を作り出していると考えるのが自然です。

まとめ ■ これまでに 3 例の GRB からガンマ線偏光を検出した。 ■ 偏光が存在することを最も単純に解釈すると、 ガンマ線の放射領域には磁場が存在し、 シンクロトロン放射で輝いていると考えられる。 ■ 偏光角の変化から ガンマ線の放射領域は複数個存在するか、 1/Γ よりも小さいスケールのパッチ状になっていると 考えられる。 ■ ガンマ線偏光をプローブとして、ジェット内部の磁場や 内部構造などを議論することができるだろう。 ただし、photospheric emission モデルでも 説明可能な状況は存在するため議論が必要です。