リニアコライダーでの ビームサイズ測定方法の研究 加速器グループ 4年 佐藤 優太郎
目次 ILCについて pair monitorについて Simulationによる性能評価 今後の計画
1. ILCについて International Linear Collider(ILC)とは 電子陽電子衝突型線形加速器 目的 特徴 重心エネルギー : 500GeV 全長 : 約30km 目的 新粒子(Higgs粒子、超対称性粒子など)の探索 トップクォークの精密測定 特徴 長所 : クリーンな環境で観測ができる。 短所 : 線形なので、衝突機会が1回しかない。 第1期計画は500GeV、第2期計画は1TeV。 質量の起源となるヒッグス粒子、すべての素粒子のパートナーとして存在する超対称性粒子。 超対称性理論によると、ボソンにはほかの性質は全く同じで質量の重いフェルミオンのパートナーが、 フェルミオンにはほかの性質は全く同じで質量の重いボソンのパートナーがいると考えられている。 ハドロンコライダー : 陽子-陽子もしくは陽子-反陽子の衝突。 陽子、反陽子は3つのquarkからなる複合粒子のため、quark同士の反応が複数並行して起こり、反応は複雑。 レプトンコライダー : 電子-陽電子の衝突 電子陽電子は内部構造をもたない基本粒子なので、素粒子の素過程を観測することができる。 LHCと違って、Higgs粒子の発見だけでなく精密測定も期待されている。 高ルミノシティを保つためには、ビームサイズを ナノメーターまで絞り込むことが必要。
ナノメーターレベルでモニターできるのはペアモニターのみ。 ILCのビーム 2×1010個 バンチ 厚さ5.7nm 幅639nm 長さ300μm 1トレイン = 2625バンチ ………… 969.2μs ………… ~ 199ms 電子とその反粒子である、陽電子はそれぞれが”バンチ”と呼ばれる状態で加速される。 1つのバンチにおよそ200億個の電子(陽電子)がガウス分布で詰まっている。 毎秒1万4000回の割合で衝突。 nominal 衝突地点でビームサイズ等をモニタし、補正することが必要。 ナノメーターレベルでモニターできるのはペアモニターのみ。
2. ペアモニターについて 目的 要求性能 400cm 半径10cmの円盤 衝突地点から400cm ビームの情報を得ること 衝突地点 10%のビームサイズ測定精度 衝突地点 400cm 紫色 → シリコントラッカー 半径10cmの円盤 衝突地点から400cm
ペアバックグラウンド ペアバックグラウンドとは ペアモニターは、ペアバックグラウンドを利用して、ビームの情報を得る。 ILCでの主なバックグラウンドの1つ。 2つの光子から電子・陽電子ペアが生成されること。 以下のプロセスで生成される。 Breit-Wheler process Bethe-Heiter process Landau-Lifshitz process beamstrahlung photon 光速近くまで加速された高エネルギーの荷電粒子(電子・陽電子)が磁場によって曲げられるとき放射する。 beam中の粒子が向かってくるbeamの電磁場によって曲げられるときに放射するシンクロトロン光。 real photon ビームストラールング光 virtual photon 高エネルギービームに付随する仮想光子(off-shell photon cloud) BW(ブライト ウェーラー プロセス) real photonが2つ(2つのphotonからe±を対生成する) BH(ベーテ ハイター プロセス) real photonとvirtual photonが1つずつ LL(ランダウ リフシッツ プロセス) virtual photonが2つ リニアコライダーにおいて考慮されるべきバックグラウンド 電子対生成で出来るペアバックグラウンド ニュートロンバックグラウンド ビームのコリメーションによって出来るミューオンバックグラウンド ペアバックグラウンドはリニアコライダー実験で主なバックグラウンドであり、ビームサイズを極限まで小さくするリニアコライダー実験では十分その影響を研究されな くてはならない。
衝突地点での振る舞い E B 衝突地点 ペアバックグラウンドとして、電子・陽電子ペアが生成。 向かってくるビームと同電荷の粒子は大きく散乱。 + - - + + - 衝突地点 ペアバックグラウンドとして、電子・陽電子ペアが生成。 向かってくるビームと同電荷の粒子は大きく散乱。 同じ方向に進むビームの電磁場からは影響受けない。 測定器内の磁場によってらせん運動して、ペアモニターに衝突。 ビームの電磁場はビームの形状に依るので、 散乱の様子からビーム形状を測定できる。
ペアモニター 半径10cmの円盤 衝突地点から400cm 一様磁場 e−ビーム y x z 14mrad e+ビームとe−ビームのなす角が14mrad。 座標軸を… z軸の正の方向に一様磁場3.5T。 e+ 側のペアモニターと、e−側のペアモニターがある。 シミュレーションは全てe+ 側のペアモニターで行った。 実際にはビームが通る穴(ビームパイプ)が開いている。 衝突地点 + e+ビーム ペアバックグラウンドの方向 +
) 3. Simulationによる性能評価 Simulationの目的 ペアモニターのHit分布から、どのようにしてビームの情報を得るかを考える。 主なパラメーター ペアバックグラウンド生成プログラム : CAIN ビームエネルギー : 500GeV 交差角 : 14mrad 衝突地点からの距離 : 400cm 一様磁場 : 3.5T ビームサイズ(nominal) GLD:3[T] LDC:4[T] → ILD:3.5[T]? ) 50バンチ分のペアバックグラウンドを生成。 ILC測定器概念研究グループとして、アジアをベースとしたGLD、ヨーロッパをベースとしたLDC、米国をベースとしたSiDがある。 厚さ5.7nm 長さ300μm 幅639nm
陽電子のHit分布 ↓ ↑ nominal nominal y[cm] R[cm] x[cm] [rad] R e−out e+in 10 8 4 y[cm] R[cm] 6 -4 2 -8 -4 4 8 - 50バンチ分のペアバックグラウンドをプロット。 1.7×1013個のe+がペアモニターにヒット。(1バンチあたり3.4×1011個) x[cm] [rad] y R x 座標変換 ↓ ↑ e−out e+in
Simulation項目 ビームサイズ (厚さ・幅) を変えたときにどのようにHit分布が変化するか。 nominal 厚さ5.7nm 長さ300μm 幅639nm 厚さ 幅
ビームの厚さの測定 青領域内のHit数 Ratio = 赤領域内のHit数 nominal 3倍の厚さ ビームの情報を引き出すために、 2 6 10 [rad] R[cm] 2 6 10 [rad] R[cm] - - ビームの情報を引き出すために、 ある領域内にHitした粒子数に注目。 Ratio = 青領域内のHit数 赤領域内のHit数
Ratio 青領域内のHit数 Ratio = 赤領域内のHit数 Ratio ビームの厚さに対して、相関がある。 2 6 10 1 3 5 nominalビームに対する厚さの比 Ratio ビームの厚さに対して、相関がある。
ビームの幅の測定 ビームの幅の変化に対するHit分布の変化 R nominal R 2倍の幅 R 3倍の幅 4 8 -4 -8 R nominal 4 8 -4 -8 R 2倍の幅 4 8 -4 -8 R 3倍の幅 y[cm] y[cm] y[cm] x[cm] x[cm] x[cm] ビームの幅が大きくなるにつれて半径が小さくなっている。 E E
最大半径 : 全Hit数のうち、99%のHit数が入る半径 1/xで fitting すると、 8 最大半径[cm] nominalのビームサイズを、 2.5%の精度で測定できる。 6 4 4 8 12 nominalビームに対する幅の比
まとめ ビームの幅の情報は最大半径を用いて、2.5%の精度で得られる。 ビームの厚さの情報はRatioを用いて相関を見ることができた。最適化はこれから。
4. 今後の計画 一様磁場に加え、anti-DIDを導入する。 x z → 低エネルギーの e± をビームパイプに導く。 ペアモニター ペアバックグラウンドの方向 低エネルギー z