MD計算による血小板細胞膜蛋白とリガンド結合の立体構造および結合の力学特性の解明(loss of function 型変異体に関して)

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MD計算による血小板細胞膜蛋白とリガンド結合の立体構造および結合の力学特性の解明(loss of function 型変異体に関して) EX18307 (東京大学情報基盤センター推薦課題) 後藤信一 (慶應義塾大学 循環器内科 ・ 東海大学 循環器内科) MD計算による血小板細胞膜蛋白とリガンド結合の立体構造および結合の力学特性の解明(loss of function 型変異体に関して) 目的 方法 GP1bα VWF アミノ酸変異の情報からGP1bαとVWFの結合構造および結合エネルギーの変化を分子動力学計算で解明する. 背景 Figure 1. GP1bαとVWFの結合は血小板接着の初期に重要  血管の破綻による出血を早期に食い止めるため, 血小板接着の初期には血小板の活性化状態に無関係に接着できるGP1bαとVWFの結合が重要である. この結合はアテロームプラークの破綻により惹起される急性冠症候群等の初期にも重要である. Figure 2. 結合力の計算  結合エネルギーの計算は重心間距離0.5Åごとに拘束条件を設定しそれぞれの安定構造を計算, Weighted Histogram Analysis Method (WHAM)を用いてPotential of mean forceを計算しその曲線を微分することで力を割り出す. 実際にこの方法でwilt-typeのGP1bαとVWFの結合力を計算し, 過去の生物学的実験と近い値を得ている. この手法はGP1bα mutantに対しても同じように適用できる. GP1bαの変異 VWFとの結合 G233V Gain of function (乖離しにくい) G233A Equal function (野生型と同程度) G233D Loss of function (乖離しやすい) GP1bα VWF Gly→Vsp mutation of Amino Acid 233 of GP1b Gly Asp Table 1. 機能既知のGP1bα アミノ酸変異  GP1bα 233位のアミノ酸変異により, VWFとの乖離が大きく変化するアミノ酸変異が知られている (Matsubara Y, et al. J Thromb Haemost, 2016 ). 分子動力学計算の生物学的検証を容易にするため, まずはこれら機能既知の変異に着目して研究を開始した. Gain of functionであるG233V, Equal functionであるG233Aに関する結合構造及び結合エネルギーの計算はすでに終了しており, 生物学的実験と矛盾しない結果が得られている. 本研究では, Loss of function 変異であるG233D変異に関して同様に計算し, シミュレーションの有用性を明らかにするとともに, GPIbαとVWFの生物学な接着特性を規定するアミノ酸配列とその3次元動的構造を明らかにする. Figure 3. In-silicoでのmutation導入  G233D変異は233位にあるグリシンのアスラギン酸への置換である. この変異はIn-silico データで同部位のアミノ酸を書き換えることで行う. グリシンとアスパラギン酸は構造が異なるため, 変更により局所のポテンシャルエネルギーが大きく変化する. MD計算を行うことにより, タンパク質全体のエネルギーが安定する構造を計算し, G233Dの安定結合構造を明らかにする. その後Figure2に示す方法で重心間距離を変化させながらエネルギーを計算することでGP1bαとVWFの結合力を解明する