大規模並列計算による原子核クラスターの構造解析と 反応シミュレーション

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大規模並列計算による原子核クラスターの構造解析と 反応シミュレーション EX1611 (北海道大学情報基盤センター推薦課題) 升井 洋志 (北見工業大学情報処理センター) 大規模並列計算による原子核クラスターの構造解析と 反応シミュレーション 研究分担者 谷口 億字(香川高等専門学校情報工学科), 平林 義治 (北海道大学情報基盤センター), 木村 真明 (北海道大学理学研究院), 千葉 陽平 (北海道大学理学研究院) 1. 研究の背景と目的 2. 構造解析の手法 Anti-symmetrized Molecular Dynamics (AMD) approah 本共同研究では、炭素、酸素、カルシウム等の軽い原子核が持つクラスター共鳴の構造と反応研究を行った。クラスター共鳴は、原子核の基底状態とは大きく異なる構造を持つため、その構造と反応の理解は、基礎科学である原子核研究にとって重要な課題である。また、放射線の一種である陽子線や重粒子線が人体を構成する原子核に衝突することでクラスター共鳴が生成されるため、その反応メカニズムの理解は、放射線を用いた癌治療技術の開発にとっても重要な意味を持つ。そこで申請者らは,大規模並列計算によるクラスターの構造解析と核反応シミュレーションを目指して共同研究を行った。 原子核の波動関数を反対称化したGauss波束で記述 3. 結果 個別の構造を仮定すること無く原子核の構造を統一的に解析することが可能 Isoscalar-Dipole励起 “Isoscalar dipole transition as a probe for asymmetric clustering”, Y. Chiba, M. Kimura, Y. Taniguchi, Phys. Rev. C93, 034319 (2016). Cluster-Orbital Shell Model (COSM) approach 価核子の波動関数をGaussの重ね合わせで正確に記述 Inversion Doublets “Inversion doublets of reflection-asymmetric clustering in 28Si and their isoscalar monopole and dipole transitions”, Y. Chiba, M. Kimura, Y. Taniguchi, Phys. Rev. C 95, 044328 (2017). 非対称クラスター励起はIsoscalar-Dipole遷移で非常に強く現れる Laplace Expansion for Reduced Width Amplitude “Laplace expansion method for the calculation of the reduced width amplitudes”, Y. Chiba and M. Kimura, Prog. Theor. Exp. Phys. in print AMD波動関数をLaplace展開する手法を用いることで、RWAを広い一般性 をもって解析することが可能となった Deuteron-Like Correlaiton “Deuteron-like neutron-proton correlation in 18F studied with the cluster-orbital shell model approach” H. Masui and M. Kimura, Prog. Theor. Exp. Phys. 2016, 053D01 (2016). Isoscalar-MonopoleおよびDipole遷移がInversion Doublets の解析に有用であることを示した 4. まとめ 軽い原子核のクラスターが持つ構造とその励起エネルギーを原子核構造模型によって解析した。 フッ素、スカンジウム、銅原子核が持つ重水素クラスター構造を、クラスター軌道殻模型を用いて解析し、特にフッ素原子核において、コア核からのスピン-軌道が重水素クラスター形成に重要な関わりを示し、基底状態においてクララスター状態の発達が顕著である事を示した。また、反対称化分子動力学を用いた数値計算により、マグネシウム、シリコン原子核に現れるヘリウムクラスター、炭素クラスターのエネルギーを求めた。 重陽子的相関が18Fのような比較的強く束縛される系においても現れる