電磁気学C Electromagnetics C 6/15講義分 電磁波の偏波と導波路 山田 博仁
(確認)講義について 今後のスケジュール ・ 6/15(第9回目) 電磁波の偏波と導波路 (第2回レポート締め切り) ・ 6/15(第9回目) 電磁波の偏波と導波路 (第2回レポート締め切り) ・ 6/22 大学創立記念日のため休講 ・ 6/29(第10回目) 光導波路と光共振器 ・ 7/6(第11回目) 電磁ポテンシャルとゲージ変換 (第3回レポート出題) ・ 7/13(第12回目) 遅延ポテンシャルと先進ポテンシャル ・ 7/20(第13回目) 電気双極子による電磁波の放射 (第3回レポート締め切り) ・ 7/27(第14回目) まとめ ・ 定期試験 8/1(水)、8/3(金)、8/10(金)のうちのいずれかの日 成績評価 a) 出席点: 2点×14回 b) レポート 8点×1回、12点×2回 (6/1, 7/6予定 ) c) 定期試験: 40点 a), b), c) の合計で、60点未満D(不合格) 60点以上70点未満C 70点以上80点未満B 80点以上90点未満A 90点以上AA 得点の補正は行いません 追試、再試も行いません
電磁波の波長と周波数
電磁波の偏波 x-y 平面内に電場ベクトルを有し、+z 方向に進む平面電磁波は、電場ベクトルを x 成分 y 成分に分けて考えられ、その和として以下の式で表される 電場ベクトルの x 成分と y 成分の間の位相差 上の2つの式から、以下の方程式が導かれる E H x y z k
電磁波の偏波 まず、電場ベクトルの x 成分と y 成分の位相差 j がゼロの場合を考えると、 よって、 従って、電場ベクトルは x-y 平面内に直線状の軌跡を持つベクトルとして伸び縮みしながら +z 方向に伝搬して行く。このような電磁波の偏り方を直線偏波 (linear polarization) と言う。 電場ベクトルを含むこのような面を偏波面と言う E x y z k Ex Ey
電磁波の偏波 次に、電場ベクトルの x 成分と y 成分の位相差 j が±p/2 の場合を考えると、 従って、電場ベクトルは x-y 平面内に楕円状の軌跡を持つベクトルとして回転しながら +z 方向に伝搬して行く。このような電磁波の偏り方を楕円偏波 (elliptic polarization) と言う。 j が-p/2のとき、進行方向に向かって左回りに回転しながら伝搬していく (左旋性) この図は左旋性円偏波を表す E x y z k 逆に j が+p/2のときは、進行方向に向かって右回りに回転しながら伝搬していく (右旋性)
電磁波の偏波 一般には、電場ベクトルの x 成分と y 成分との位相差 j は、-p/2 ≦ j ≦ +p/2 の任意の値となるので、電場ベクトルは x-y 平面内に軸を有する楕円状の軌跡を持つベクトルとして回転しながら +z 方向に伝搬して行く。 左旋円偏波 任意の偏波状態は、Poincare球の表面上の位置で表される Ex Ey a b 赤道上は a = 0 垂直偏波 水平偏波 b = 0 右旋円偏波 ポアンカレ(Poincare)球
各種偏波用アンテナ 電波においては、直線偏波の偏波面が、地面に対して垂直になっているとき垂直偏波、平行なときには水平偏波と言う。我が国の中波ラジオ放送は垂直偏波、一般に都市部のTV放送やFM放送は水平偏波で送信されている。垂直偏波と水平偏波とは互いに干渉しないので、周波数が接近しており混信の恐れのあるような場合には、相互に偏波を違えることによって混信を防ぐことができる。山間部などでTVアンテナの素子が縦に設置されているのは、このような理由によるもの。ただし偏波は、電波伝搬中に反射や回折により変化してしまうので、必ずしも送信された偏波状態のままで受信アンテナに届くとは限らない。 水平偏波用 垂直偏波用 タクシー無線のルーフアンテナ 東京タワーの送信アンテナ 八木アンテナと八木先生
各種偏波用アンテナ 円偏波用ヘリカルアンテナ(アマチュア無線用) 1号館屋上の衛星通信用偏波ダイバーシティ アンテナ
電磁波の導波路 平行平板による導波路 (Slab導波路) 完全導体による平行平面で挟まれた空間に斜めに入射した電磁波は、図のように反射を繰り返しながら伝搬していく。従って、電磁波の導波路として機能する。 完全導体 完全導体
電磁波の導波路 平行平板による導波路 (Slab導波路) 完全導体による平行平面で挟まれた間隙に入射角度 q で斜めに入射した電磁波は、図のように導体表面で全反射を繰り返しながら伝搬していく。 このとき、導波路を伝搬している電磁波の自由空間における波数を k0 とすると、電磁波の伝搬方向での波数 kg は、 kg = k0 cosq となる。また、伝搬方向と垂直方向での波数を kt とすると、 kt = k0 sinq となる。 従って、 完全導体 q q kt d k0 kg 完全導体 kt = k0 sinq kg = k0 cosq d: 導体間の間隙の距離
電磁波の導波路 それぞれの波長との関係は、k = 2p/l より、 lg は導波路内での波の伝搬方向の波長で、管内波長と言う 導波路を伝搬することが許されるのは、伝搬方向と垂直方向に対して定在波条件つまり、kt 2d = 2qp (qは自然数)の関係が成立するときのみ。 即ち、 (q = 1, 2, 3, ‥‥であり、モード番号という) q = 1 の時が、伝搬することが許される最低次のモードで、lt = 2d となる。 この最低次のモードでは、入射角度 q が大きくなるにつれて、波長 l0 が長くなる。 完全導体 d q kt = k0 sinq lt q = 3 kt 2qp q = 2 q = 1
電磁波の導波路 従って、伝搬することが許される最も長い自由空間中での波長 l0 をカットオフ波長 lc と言い、 この時、q = p/2 となることより、電磁波波の伝搬方向への波数 kg は kg = 0 となり、もはや電磁波は伝搬しなくなる。 従って、カットオフ波長においては、 の関係が成り立つ 完全導体 q q = p/2 kt 2p lt d q = 1 完全導体 kc = kt
導波管 電磁波(特にマイクロ波、ミリ波)の伝送には、図のような中空の金属導波管が用いられることがある。 このような導波管内での電磁波の伝搬を以下で扱う。 導波管の中の電磁場が角周波数 w で正弦波的に時間変化をする場合を考える。 つまり、 g : 伝搬定数 波動方程式 より、 x y z E の z 成分 Ez は、 従って、 ただし、 方形導波管
導波管 同様に、波動方程式 より H の z 成分 Hz は、 Ez と Hz は全く同形で別々の微分方程式に従うことから、Ez = 0 で Hz ≠ 0 の解と、 Ez ≠ 0 で Hz = 0 の解が独立に存在し、一般解はこれらの解の重ね合わせとして表せる。 Ez = 0 で Hz ≠ 0 の波を、電場成分が進行方向に垂直なことから(Transverse Electric) TE波、Ez ≠ 0 で Hz = 0 の波を磁場成分が進行方向に垂直なことから(Transverse Magnetic) TM波と呼ぶ。 x y z ところで、k = 0 の場合には となり、 z 方向に光速で伝搬する電磁波が期待される。 この場合、 Ez = Hz = 0 であり、(Transverse Electric Magnetic) TEM波と呼ぶ。 方形導波管
導波管 導波管の断面を x-y 面にとり、内部の辺長を a, b とする。 電磁場に対する境界条件は、導波管壁で E・t = 0 および H・n = 0 だから、 Hz = 0 の電磁波、 即ちTM波について考えると、Ez に対する微分方程式の解は、 (Aは定数) x y z b a で与えられ、この場合の境界条件は、導体壁(x = 0, a; y = 0, b)で Ez = 0 となるから、 (m と n は整数) 従って、 方形導波管 (mn ≠ 0)
導波管 前式で、整数 m と n がいろいろな値をとれば、それに対応する電磁波のモードが導波管の中に存在する。 一般に、TE波に対応するモードをTEmn、 TM波に対応するモードをTMmn で表す。 電磁波が導波管の中を z 方向に伝搬するためには、伝搬定数 g は実数である必要がある。 g が実数でない、即ち とすると、 a がゼロでなければ、これは z 方向に伝搬するにつれて減衰する波となる。 従って、z 方向に伝搬する電磁波が存在するためには、 方形導波管の例
導波管 従って、g = 0 のときには電磁波は伝搬できなく(カットオフと)なり、この時の w の値 wc は、 従って、カットオフ波長は、 となり、 (mn ≠ 0) lc よりも波長の短い電磁波しか伝搬できない。 最長のカットオフ波長は、条件 mn ≠ 0のもとで k を最小にする TM11 モードの場合であり、この時のカットオフ波長は、 となる。 一方、TE波の場合のカットオフ波長は、 となる。 (例題12.6) (ただし、a < b)
光導波路 コア クラッド n2 n1> n2 n1 光ファイバー 屈折率分布 スラブ導波路 屈折率分布 n1 n2 n1> n2
光導波路が光を導くメカニズム n2 n1 j1 j2 入射波 屈折波 反射波 n1< n2の場合 n2 n1 n1> n2の場合 全反射 臨界角 qc Snellの法則 全反射 n1 n2 n1>n2 放射モード qc 2qmax 光が伝搬可能な入射角度の範囲 開口数: NA=sin(qmax)
全反射角 コアとクラッド界面での全反射角 qcは、前スライドの臨界角より で与えられるが、 ここで、 と置いたが、D は比屈折率差と呼ばれている。 従って、n1 と n2 との差が小さい時、全反射角 qc は以下の式で与えられる。 さらに、導波路が受け入れることのできる受光角(2qmax)は、 また特に、 を開口数 (Numerical Aperture)という。
導波路内での光伝搬 -f: Goos-Haenchen Shift n2 -f -f a k0n1 n1 k0n1sinq コア q -a クラッドへの光の浸み出し -f: Goos-Haenchen Shift n2 -f -f a k0n1 n1 k0n1sinq コア q -a k0n1cosq n2 n1>n2 -f 自由空間中での伝搬定数: k0=2p /l (l: 波長)は、媒質中では k0n1 となる。 光の伝搬方向の伝搬定数成分 b は、b = k0n1cosq 光が伝搬方向に伝わる速度は、 であり、vgを群速度(Group Velocity)という。 (c は光速度) 光の伝搬と垂直方向の伝搬定数成分(k0n1sinq)に対して、以下の式が成り立つ時、光伝搬と垂直方向に定在波ができる。 N: モード番号 (0, 1, 2 ‥‥)
導波モードと定在波 E N =0 Df =0 E N =1 2p E N =2 4p
入射角度 光伝搬と垂直方向での定在波条件の式より、モード番号 N に対する入射角度qNは、 ここで、 Goos-Haenchen Shiftの値 fNは、入射角度qNの関数になるが、 qNが全反射角 qcよりも十分に小さい場合には、 と近似できる。 従って、モード番号N に対する入射角度qNは、 モード番号がある値よりも大きくなると、全反射条件が満たされなくなり、伝搬できなくなる。つまり、伝搬可能なモードは、以下の条件を満たす。 従って、導波路内を伝搬可能なモード番号の最大値 Nmaxが存在し、以下の条件を満たす。
モードの数 導波路内を伝搬可能なモード番号の最大値 Nmaxは以下の式で与えられる。 ここで V は、Vパラメータ或いは規格化周波数と呼ばれている。 Nmaxよりも大きなモード番号のモードは伝搬できないので、カットオフにあると言う。 N=3 カットオフ領域 (放射モード) N=2 群速度 w/c (k0) 1/n2 曲線の傾きは vg/c で 、群速度に対応 N=1 1/n1 モードによって群速度の値は異なる。 N=0 b 単一モード条件: V < p/2 導波路の分散関係