全球気候モデルMIROC5によるヤマセ型気圧配置の再現性 (3:風の再現性について)

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Presentation transcript:

全球気候モデルMIROC5によるヤマセ型気圧配置の再現性 (3:風の再現性について) 菅野洋光 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター

研究目的 北日本の農業にとって、将来ヤマセがどの程度吹くのか、予測して対応技術を開発することが農業の安定化に重要となる。気候モデルを用いた遠藤ほか(2007)によれば、ヤマセ型の低温は将来も出現し、その発現する季節は現在とずれる可能性がある。また、遠藤(2010)はCMIP3マルチモデルによるヤマセの将来変化について解析し、5月に減少、8月に増加する傾向があることを指摘している。このように、将来においてもヤマセの吹走は依然として発現する可能性があり、今後はより確度の高い情報が必要である。 本研究では、MIROC5のヤマセによる低温の再現性について検討し、将来の冷害発生リスクについての研究を進めるための基礎資料とすることを目的とする。

使用データ(MIROC5)について 東大AORI/国立環境研/JAMSTEC共同開発の全球気候モデル(a Model for Interdisciplinary Research On Climate) CMIP5/AR5に向けた新版 (Watanabe et al. 2010, JC) 水平解像度はT85 (256x128)、鉛直40層 GHG排出シナリオ:RCP4.5( SRES A1bに比較的近い) アンサンブル3本のうちのrun01 1980-2100年の日データ(2005年までが20世紀再現実験)

八戸気温バイアス補正について RCMによるダウンスケールは行なっていない。 各格子点について1980-2005年における値を日別に平均し、9年移動平均を3回かけて平年値とする。 2006年以降の各年について、日別平年値からの偏差を求め昇温量とする。 八戸における日別観測平年値に当該格子点の昇温量を加えて将来気温とする。 稚内、仙台における海面気圧は、当該格子点の値をそのまま用いる。

Frontal zone Pm air mass Tm air mass Yamase wind 284 Yamase wind Frontal zone Tm air mass 300 Fig. 1. Monthly mean temperatures (K, contours and shading) and winds (vectors) at 1000 hPa during a cool summer (July 2003). Contour interval is 1 K. The large white arrow indicates Yamase winds. Pm, polar maritime; Tm, tropical maritime.

Fig. 2. Locations of meteorological observation stations. Wakkanai Hachinohe Sendai PDWS: Pressure Difference between Wakkanai and Sendai Fig. 2. Locations of meteorological observation stations.

Fig. 3. Time series of July and June-July-August (JJA) mean temperatures at the Hachinohe meteorological observation station from 1980 to 2100. Observed temperatures (red curves) and normal mean values (gray horizontal lines) for 1981 to 2010 are also shown.

Fig. 4. Scatter plots of temperature at Hachinohe versus the PDWS during JJA from 1980 to 2005. White circles, observation data; black circles, MIROC5-simulated data.

Fig. 5. Results of the regression of the PDWS against the JRA-25 1000 hPa temperature (°C) and wind fields during JJA from 1979 to 2011. Contour interval is 0.2 °C. Shading indicates temperature correlations significant at the 5% level. Fig. 6. Results of the regression of the PDWS against the MIROC5 1000 hPa temperature and wind fields during JJA from 1980 to 2005. Other information is as in Fig. 5.

Fig. 7. Scatter plots of MIROC5-simulated temperature at Hachinohe versus the MIROC5-simulated PDWS during JJA from 2006 to 2100. Fig. 8. Regression of the PDWS against the MIROC5-simulated 1000 hPa temperature and wind fields during JJA from 2006 to 2100. Other information is as in Fig. 5.

Fig. 9. Results of the regression of sea level pressure (hPa) from 2006 to 2100 (JJA mean) against EOF1. Shading indicates correlations significant at the 5% level. The rectangle shows the EOF analyzed area (20°N to 70°N latitude; 100°E to 160°W longitude).

Table 1 Proportion of variance of PCs and correlation coefficient among Hachinohe temperature. Bolds indicate statistically significant at 1% (**) and 5% (*) levels. 八戸JJA気温の直線回帰式: Y=0.0327X+20.135

Fig. 9. Scatter plots of MIROC5-simulated temperature deviation at Hachinohe versus the MIROC5-simulated PDWS during JJA from 2006 to 2100.

Fig. 9. Results of the regression of sea level pressure (hPa) from 2006 to 2100 (JJA mean) against EOF1. Shading indicates correlations significant at the 5% level.

Fig. 10. Time series of PC1, PC2, and the MIROC5-simulated temperature at Hachinohe during JJA from 2006 to 2100.

Fig. 11. The same as Fig. 9 but against EOF3.

Fig. 15. Regression of the PC3 time series of sea level pressure during JJA against the 1000 hPa temperature and wind fields. Other information is as in Fig. 13. Fig. 16. Regression of the PC4 time series of sea level pressure during JJA against the 1000 hPa temperature and wind fields. Other information is as in Fig. 13.

R(PC3): -0.43 R(PC4): -0.32 Fig. 12. Time series of PC3, PC4, and the MIROC5-simulated temperature deviation at Hachinohe during JJA from 2006 to 2100.

まとめ 東大AORI/国立環境研/JAMSTEC共同開発の全球気候モデル「MIROC5」によるヤマセの再現性について検討した。MIROC5では稚内と仙台の気圧差指数(PDWS)と八戸気温の関係が、現在の実測値と同様に明瞭に再現されている。 海面気圧データに主成分分析を行ったところ、ヤマセ型の気圧配置及び気温の東西コントラストを再現している2成分が抽出できた。これらの2成分は将来も頻出しており、ヤマセ型の気圧配置は将来も出現することが予想される。