日射環境の違いがトマトの 水分動態に与える影響 生物生産システム学科 灌漑排水学研究室 山崎彩恵 日射環境の違いがトマトの水分動態に与える影響と題しまして.生物生産システム学科灌漑排水学研究室のヤマザキアヤエが発表します. 生物生産システム学科 灌漑排水学研究室 山崎彩恵
南北畝東西株では西株の裂果が多い (農家より) ↑裂果 はじめに 裂果の要因 水分管理・養分管理 西株 南北畝東西株では西株の裂果が多い (農家より) 水分動態 南北畝東西株における水分動態の考察 まず, トマトの障害果のひとつには裂果があります. その発生要因として水分管理や養分管理があげられますが、どれが決定的要因なのかは明確ではないとされています。 が、★多くのトマト農家からは、南北畝東西株でトマトを栽培するときに西株の裂果の発生率が多いと言われています。 そこで、★東西株の日射環境の違いが水分動態にどのような影響を与えているのかを検討することで、裂果の要因が解明できないかと考えました。 ★本研究ではこの南北畝の日射環境の違いが東西株に与える水分動態の違いを検討していきます。 日射環境の違いは茎内流に差を与えるのか?
この環境の違いによる水分動態と環境要因を考察。 試験概要 太陽光照射時刻:午前 太陽光照射時刻:午後 東 西 試験概要です。 先述しましたように、西側の株に裂果の発生しやすい南北畝東西株の条件下でのトマトの株の水分動態を調べるために、★大学内の実験圃場を使用しました。 ★東株は太陽光が午前中に、西株は太陽光が午後に、それぞれ照射されます。この畝の方向の違いが、水分動態に影響をあたえているかを把握するために、★東西の株の間に遮光シートを設置しました。★また畝の中央部には灌水チューブを通しました。 ★この環境の違いによる、水分動態と環境要因の影響を考察します。 この環境の違いによる水分動態と環境要因を考察。
茎基部、果梗部、葉柄部にフローセンサー設置 試験方法 畝 茎基部、果梗部、葉柄部にフローセンサー設置 葉柄部:果梗部の2段上の葉柄 茎基部、果梗部、葉柄部 茎内流の測定 果梗部の果実にデンドロメータ設置 果実ひずみ量の測定 環境要因 日射量 気温 飽差 試験方法です.水分動態つまり茎内流を把握するために,★茎基部、★果梗部、★葉柄部にフローセンサーを設置しました。また、通導組織の関連から果梗部の2つ上の葉柄を葉柄部として使用します。 ★果梗部の果実にデンドロメータを設置し、果実のひずみ量を測定しました。 なお、環境要因として比較したのは,日射量・気温・及び飽差の3点になります。
試験概要 実験は,株を変えて5日間の実験を計4回、7月中旬から8月中旬の20日間にわたって行いました.各タームの試験日程は図のようになっています. 流量などに変化を及ぼさないように,東西株の生長具合は同じようなものを選びました.
実験結果 ・茎基部流量 ・葉柄部流量 ・日射量 ・日射量 ・葉柄部流量 ・気温 ・果梗部流量 ・飽差 ・果実のひずみ量 同様の傾向 実験結果です。茎基部、葉柄部、果梗部、果実のひずみ量の4つの測点結果と、日射量・気温・飽差のこれら3つの環境要因を調べ、 経時変化の様子や相関図から、それぞれを考察しました。 また、★茎基部と葉柄部は環境要因による変化が同様であったため、★今回はより顕著な値となった葉柄部の結果を発表します。最初に日射量との関連についてです。
葉柄部流量と日射量について 1 東側株⇒午前 西側株⇒午後 東側株<西側株 :最大茎内流量時刻: :最大茎内流量: 日射量(MJ/m^2) 葉柄部流量と日射量について 1 日射量(MJ/m^2) :最大茎内流量時刻: 東側株⇒午前 西側株⇒午後 :最大茎内流量: 東側株<西側株 葉柄茎内流と日射量との関係について発表します.これは,第3タームの葉柄部の茎内流量と日射量とのグラフです.左軸が茎内流量,右軸が日射量,横軸は時刻を表しています. 1つのヤマが一日となっていますので,この図ですと(ヤマをさしながら)5日間,となります. このように,葉柄部では★★東西株によって最大流量の時差が見られました.この★一日のデータをピックアップすると, ★東株,★西株がそれぞれ,★このようになります.★流入開始時刻は6時付近に開始され,流入時間に株の差は見られないながらも ★東株ではその後急速に流量が増加し最大流量を記録,★西株では徐々に流量が増加し最大流量を記録しました. ★★このように東西株では午前と午後にわけれてそれぞれ最大茎内流量を記録しました. ★また,最大流量及び積算流量も西株のほうが多くなりました. ****** 東株では10時20分に2.20g/10min,西株では15時20分に2.48g/10min.葉柄部ではこのような最大茎内流量の時差がみられ(2~4時間), 13時付近を境にして東側の株が早く,西側の株が遅く測定され,また最大茎内流量・積算流量及び日積算茎内流量ともに, 西側が多く測定されました. 図 10分間あたりの茎内流と日射量
葉柄部流量と日射量について 2 日射量 増 ⇒ 葉への流入 増 東株 西株 午後 午前 葉柄部流量と日射量について 2 日射量 増 ⇒ 葉への流入 増 東株 西株 午後 午前 これは,10分間積算値の葉柄部流量と日射量のグラフです.縦軸は株ごとの葉柄部流量,横軸は日射量となっています. 左が東株,右が西株になり,このように,★★葉柄部では日射量が大きくなるほど,葉への流入も増え,正の相関がみられました. 西株のグラフについて, ★色分けすると,このように★午前が下に★午後が上に測定され,輪のような結果になっています. ★このように同じ日射エネルギーでも午後の流量のほうが高くなったのは,この後で述べます気温の上昇の影響を受けているからだと考えられます. ***** 気温が高い午後に,日射が低いため,気温の効果が低くなるので,東株では↑のような傾向はみられない. :::第3ターム:::東株r=0.57~0.95 西株r=0.68~0.91となる
実験結果 ・茎基部流量 ・日射量 ・葉柄部流量 ・葉柄部流量 ・気温 ・飽差 ・気温 ・果梗部流量 ・飽差 ・果実のひずみ量 同様の傾向 葉柄部の茎内流とその他の環境要因である,★気温及び飽差との関係を発表します.
葉柄部流量と気温について 東株 西株 気温 増 ⇒ 葉への流入 増 気温 増 ⇒ 葉への流入 増 10分間積算値の葉柄部流量と気温のグラフです.縦軸が葉柄部の茎内流量,横軸が気温になります. ★左が西株,右が東株になり,日射と同様に,気温が高くなるほど,★葉柄への流入が増え,正の相関がみられました. このように,葉柄部流量は日射及び気温の影響を受け,流量が変化していると考えられます. ****** 気温との相関係数は全タームで東は51-95.西は66-89となり,第3は0.95と0.88であった.日積算は0.70と0.64.
葉柄部流量と飽差について 飽差 増 ⇒ 葉への流入 増 東株 西株 飽差 増 ⇒ 葉への流入 増 東株 西株 次に,葉柄部流量と飽差について発表します.縦軸は葉柄部の茎内流量,横軸は飽差になります. ★左が東株,右が西株となり,ほうさが大きくなるほど葉への流量が増えるという結果になりました. (飽差は天気によってわけてみたもの,明確な変化は得られなかった.)
実験結果 ・茎基部流量 ・日射量 ・葉柄部流量 ・気温 ・果梗部流量 ・飽差 ・果実のひずみ量 同様の傾向 次に,★果梗部流量について説明します.
果梗部流量について 東側株・西側株 東側株>西側株 :最大茎内流量時刻: ともに早朝に記録 最大茎内流量 積算流量 最大茎内流量 積算流量 東側株>西側株 果梗部の経時変化です.縦軸が果梗部の茎内流量,横軸は時刻をそれぞれあらわしており, ★一日をピックアップしてみますと,★このようになり,★果梗部では測定期間を通して最大茎内流量は早朝に記録されました. ★当初の西株の流量が大きく,最大茎内流量に時差がみられると思っていた仮定とは違い,最大茎内流量と積算流量ともに東株の果実が多くなりました. 図 10分間あたりの茎内流と日射量
果梗部流量について 果梗部と環境要因との関連についてです.上は東株、下は西株になります。これらいずれのグラフも縦軸が果梗部の茎内流量,横軸がそれぞれ日射量・気温・飽差となっていす. ★これらの結果から,環境要因との関連性は見られませんでした.これは相対湿度についても同様に,測定されました. 今回の実験では,このように果梗部と環境要因との影響はみられませんでした.
実験結果 ・茎基部流量 ・日射量 ・葉柄部流量 ・気温 ・果梗部流量 ・飽差 ・果実のひずみ量 同様の傾向 次に,果実のひずみ量についてです.
果実ひずみ量ついて 肥大期:膨張 完熟期:収縮 肥大期 完熟期 完熟期 左軸が果実のひずみ量,右軸が日射量の経時変化のグラフになります.(#2と#4) 果実のひずみ量を肥大期と完熟期とでわけてみると,★肥大期では徐々に膨張を,★完熟期では午前に膨張,午後に収縮,を繰り返しながら★少しずつ収縮していました. このようにひずみ量は果齢によって変化することがわかりました.
まとめ 葉柄部・茎基部茎内流は環境要因に影響を受けて変化. 西株は東株よりも流量が多い. ⇒気温の高い午後に十分な日射エネルギーが発生 葉柄部・茎基部茎内流は環境要因に影響を受けて変化. 西株は東株よりも流量が多い. ⇒気温の高い午後に十分な日射エネルギーが発生 したため,西株の流量増大が起こったのでは? 果梗部では,影響を見出すことはできなかった. (最大茎内流量:早朝 東株:活発) 果実のひずみ量は果齢によって,日射量及び気温の 影響に違いがあった. 葉柄部及び茎基部の茎内流は,ともに環境要因と関係がみられました.また葉柄部は茎基部よりも高い相関がみられたことからより一層環境要因の影響をうけていると考えられます. また,西側の株は東側の株よりも最大茎内流量及び積算流量を多く記録しました。 これは気温が高くなった午後に十分な日射エネルギーが発生したことが流量増大を引き起こしたのではないかと考えました. 今回の結果から果梗部における環境要因の影響を見出すことはできませんでしたが,東株はより活発に活動し,最大茎内流量が東西株ともに早朝に観測されるということがわかりました. 果実のひずみ量については果齢によって,日射及び気温の影響の違いが生じていました. このように、ひずみ量は,環境要因の影響を受けていながらも、果梗部の水分動態とは関係がみられなかったことから、 水分動態は、裂果と直接的な関係が少ないのではないだろうかと考えられました。 ただし今回の実験では実際に裂果した果実の茎内流等は測定できなかったため、 今後の展望として各段ごとの果実の水分動態を調べ、裂果との関係性を検討する必要があると考えられます。 ***** 通導組織として関連があると思われていた葉柄部及び果梗部流量その相関関係は見出せず,通導組織の連結は見出せなかった. 水分動態と裂果には直接的な関係が少ない のではないだろうか.
ご静聴ありがとうございました 以上で発表を終わります.ご静聴ありがとうございましたm(_ _”m)ペコリ