梶田隆章 & Arthur B. McDonald 2015ノーベル物理学賞 梶田隆章 & Arthur B. McDonald
梶田さんの受賞理由 岐阜県にある装置スーパーカミオカンデで素粒子ニュートリノを観測し、「ニュートリノ振動」という現象を初めて確認。質量(重さ)がないとされていたニュートリノに質量があることを証明
Arthur B. McDonald カナダ人 太陽ニュートリノの観測 In August 2001, a collaboration at the Sudbury Neutrino Observatory (SNO), a detector facility located 6,800 feet (2,100 m) underground in a mine outside Sudbury, Ontario, led by Arthur B. McDonald, checked in with a direct observation suggesting that electron neutrinos from the Sun really were oscillating into muon and tau neutrinos.
ニュートリノが現れる反応-β崩壊 中性子→陽子+電子+反電子ニュートリノ ニュートリノは電荷を持たず極めて軽いため、上の反応でニュートリノの存在が分からなかった。 中性子→陽子+電子 が起きていると思われていた。この反応をβ崩壊という
β崩壊の例 原子炉内でウラン238からプルトニウムが生成される際に、U239がβ崩壊でネプツニウムになり、ネプツニウム中の中性子が弱いβ崩壊でプルトニウムになる。 U238->U239->Np(ネプツニウム)->Pu(プルトニウム) β崩壊 β崩壊
νは物と殆ど相互作用しない ニュートリノは、私達の体を1秒間に約1兆個も突き抜けている しかし、我々はそれを感じない 理由は、ニュートリノは物(原子核と電子)と相互作用をほとんどしないため この性質のため、ニュートリノは観測装置にもかかりにくく、長く発見されなかった
スーパー・カミオカンデ 岐阜県神岡にある鉱山の中に設置された観測装置のこと。最初カミオカンデが作られ、その後より大きなスーパー・カミオカンデが作られた。左写真の人がいる部分には水を入れて実験を行う。壁に配置された電球のようなものが光電子倍増管といわれる光を感知する装置。1万個以上設置。
カミオカンデで捉えた放射光 ニュートリノが水原子中の電子と衝突して弾く 電子が水の中を運動する際に光を出す(チェレコフ光) チェレコフ光は放射状に放出されるため、光電子倍増管が捉えると右のように、円形に捉えれる。 方向やエネルギーから元の粒子を調べ、ニュートリノかどうかを判定する
kamiokandeの由来 SuperKamiokande→神岡 岐阜県飛騨市神岡町にある神岡鉱山内に設置された観測施設なのでkamikokandeと名付けられた。 Kamiokandeは最初、陽子崩壊を調べるために作られた。 1987年の超新星爆発の際に、このKamiokandeで超新星からのニュートリノを観測し小柴教授が2002年にノーベル物理学賞を受賞した SuperKamiokandeは、Kamiokandeの後継観測機器
神岡鉱山 神岡鉱山の亜鉛鉱石に含まれるカドミウムが神通川に流れ込み、下流にある水田に流れ込んだ。その米を食べた人に骨がもろくなるイタイイタイ病が発生した(1910年代から1970年代前半にかけて)
ニュートリノの質量 電子の質量は軽いことが知られている 電子の質量は、陽子の質量の約1/2000 ニュートリノの質量は約百万分の1 では何グラムか? 1/(6x1023x2x103x106)=1/(12x1032)=1/(1.2x1033)=8x10-34 ~10-33[g] ※因みに太陽の質量は2×1033[g]
標準模型 素粒子の標準模型では粒子には レプトン クォーク ゲージ場 がある
クォーク(quark) 6種類ある u c t d s b u:up, d:down, c:charm,s:strange, t:top,b:bottom これら3個から陽子、中性子などができている。 陽子=uud、中性子=udd
quark & lepton
標準模型での質量 標準模型の理論では、ニュートリノの質量は0とされた。一方観測では、長い間、直接質量を測ることはできなかった。 標準模型は、様々な事象を説明できるので、「ほぼ」正しいと思われる しかし、ニュートリノの質量に関しては、正しくなかった。 標準模型に何らかの修正が必要になった
素粒子は粒子であり波でもある 光は波動の性質と粒子の性質を持つ 電子も粒子の性質と波動の性質を持つ ニュートリノも粒子であり波でもある
アインシュタインの光量子仮説 光電効果とは金属表面に光を当てると電子が出てくる現象 当てる光を強くしても飛び出す電子の運動エネルギーは強くならない→光は波でない 当てる光を強くしたときは同じ運動エネルギーの電子の個数が増えるだけである→光を粒子と考え強い光とは粒子の個数が多いと考える この説明のため、アインシュタインは光のエネルギーEを、E=hν(νは振動数)とした(光量子仮説)
光の波動性の証明 ヤングの干渉実験
上はスリット間の間隔が狭い場合。下は広い場合。
νの分類は質量があれば2通りある
各ニュートリノは異なる質量のニュートリノの混合状態である
νを波で表す:混合割合が変化し、 フレーバが変わる(ニュートリノ振動)
SuperKamiokandeの実験 宇宙線が大気と衝突してミューオン・ニュートリノが発生 神岡の上空でも、神岡の地球の裏でも同じくらいの数が発生しているはず 検出器の上から入るミューオン・ニュートリノの数が、下から(地球の裏から)入るミューオン・ニュートリノの数よりも多かった
実験から分かったこと 検出器の下から来たミューオン・ニュートリノの一部は、タウ・ニュートリノに変わっていたので数が減っていた。 これは、ニュートリノ振動が起きていたことを示している ニュートリノ振動はニュートリノに質量があるときにのみ起こる ニュートリノに質量があることを示した!!