g-2/EDM実験紹介 実験実現に向けて頑張り中 実験の概要と私が担当して来た部分を紹介 飯沼裕美 (KEK) for

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g-2/EDM実験紹介 実験実現に向けて頑張り中 実験の概要と私が担当して来た部分を紹介 飯沼裕美 (KEK) for  New g-2/EDM@J-PARC collaboration 実験実現に向けて頑張り中 2009年12月にJ-PARC PACにプロポーザル提出 今度のPACでStage-1を目指す 実験の概要と私が担当して来た部分を紹介

標準模型は正しいのか? ミューオン貯蔵リングB=0.17ppm 14m (1)エネルギーフロンティアLHC@CERNなど (2)精密測定フロンティア Higgsらしい 14m 基本粒子であり、かつ身近な存在のミューオン(レプトンの一つ)の磁場中のスピン歳差運動を測定し、標準模型の計算値と一致するのかを精密比較する。米国E821実験など。 身近な素材で、緻密に勝負! ブラックホールを作ったり、重力子が放出されたりする“かも”しれない。 TeV領域を目指し、ビックバンに近付き、未知粒子を探索。力で勝負! 8km ミューオン貯蔵リングB=0.17ppm Hiromi Iinuma 2019/7/3

+ B ミューオン歳差運動の精密測定 ミューオンは基本粒子である! 標準模型により高精度で運動の様子を記述できるはず。 スピンを持っているので磁場中でくるくる回転する。 電荷を持っているので一様磁場中で周回運動する。 一様磁場の中で歳差運動する。 B 寿命がくると弱い力により、陽電子とニュートリノに崩壊する。 陽電子はミューオンのスピンの方向に出やすい。 陽電子検出の時間変動を見れば、ミューオンのスピン歳差運動周期がわかる。 e+ + Hiromi Iinuma 2019/7/3

ミューオンスピン歳差運動の精密測定の現状 標準模型 実験 最新実験結果 2006年論文 結果は3標準偏差、違っている! 通常は、5標準偏差の違いがあると、“違い”と認める。 < 0.17 ppm 標準模型以外の“力“が働いているのか? あるいは、基本粒子のはずのミューオンに電気双極子(EDM)があるのか? いずれにせよ、標準模型を“越えた“新物理の兆候かもしれない!? Hiromi Iinuma 新実験目標<0.1ppm 2019/7/3

Electric Dipole Moment 電気双極子(EDM)を測定するには? ミューオンが水分子みたいに分極? 電場をかければ分かるはず。 + + + + + + +        Electric Dipole Moment 光速で走るミューオンは磁場を電場と感じる(特殊相対論) 電場! 基本粒子のはずのミューオンに内部構造がある!? 標準模型ではありえないこと。 もしもEDMがあるならば、歳差運動は、g-2からの寄与と、EDMからの寄与の2成分になる。 ノーベル賞級の世紀の大発見! 両方同時に精密測定に挑戦! 最新実験の上限値 ~ 1e-19 e.cm(2006年論文) 新実験目標 <1e-20 e.cm Hiromi Iinuma 2019/7/3

JPARC のミューオンビームを使って実験します Yokohama KEK 日立市 Bird’s eye photo in Feb. 2008 J-PARC Facility (KEK/JAEA) P, 3GeV  -beam High intensity muon beam in Japan, J-PARC. Details of J-PARC will be given by Prof. Saito on Thursday. P, 30GeV Hiromi Iinuma 2019/7/3

極冷 + 源 と LINAC New Muon g-2/EDM Experiment at 3 GeV陽子ビーム ( 333 uA) New Muon g-2/EDM Experiment at J-PARC with Ultra-Cold Muon Beam グラファイト標的 (20 mm) 表面ミューオンビーム (28 MeV/c, 4x108/s) ミューオニウム生成 (室温) (300 K ~ 25 meV⇒2.3 keV/c) ほぼ静止状態 Surface muon 光速の94.3%まで加速 超精密磁場 (3T, ~1ppm ローカル) Ultra Cold m+ Source ビーム貯蔵用 磁石 Muon LINAC (300 MeV/c) 極冷 + 源 と LINAC Laser Proton beam (3 GeV, 1MW, 25 Hz) Muon Linac (300 MeV/c) (2.3 keV/c) (28 MeV/c) Hiromi Iinuma 2019/7/3

ビーム入射・貯蔵 陽電子検出器 New Muon g-2/EDM Experiment at 3 GeV陽子ビーム ( 333 uA) New Muon g-2/EDM Experiment at J-PARC with Ultra-Cold Muon Beam グラファイト標的 (20 mm) 表面ミューオンビーム (28 MeV/c, 4x108/s) ミューオニウム生成 (室温) (300 K ~ 25 meV⇒2.3 keV/c) ほぼ静止状態 Surface muon 光速の94.3%まで加速 超精密磁場 (3T, ~1ppm ローカル) Ultra Cold m+ Source ビーム貯蔵用 磁石 Muon LINAC (300 MeV/c) ビーム入射・貯蔵 + beam 陽電子検出器 直径0.66 m =3 and B=3 [T] Hiromi Iinuma 2019/7/3 (note: 14 m for E821)

新g-2実験の技術的挑戦の紹介 0.1ppm以下! + 超精密磁場を乱さずに、どうやって小型貯蔵リングにビームを入射すれば良いのか? 異常磁気モーメント 0.54ppmで計測 標準理論と3のズレ BNL/E821実験 0.1ppm以下! 磁場制御・測定精度向上     一体型磁石の貯蔵リング、MRIなど 貯蔵リング内のビーム制御精度を向上     超ストレートミューオンビーム 0.66m + 大きさのイメージ 貯蔵磁場3テスラ、ビーム運動量300MeV/c、 直径0.66mの貯蔵リングに決定した。 超精密磁場を乱さずに、どうやって小型貯蔵リングにビームを入射すれば良いのか? Hiromi Iinuma 2019/7/3

どうやってビーム入射するか? + 適切な径方向磁場で垂直運動量を水平方向に変える 2次元軌道 垂直方向キック 66cm コンパクト強磁場リングへの水平入射は技術的に難しい: 3[T] 磁石のフリンジフィールドをキャンセル 1ターン以内に水平キック(~ 60 mrad) 7.4nsec 貯蔵空間の磁場に影響なし! らせん軌道入射 らせん軌道入射 インフレクター 適切な径方向磁場で垂直運動量を水平方向に変える + 2次元軌道 垂直方向キック Hiromi Iinuma 貯蔵リング平面 貯蔵リング平面 2019/7/3

+ らせん入射に適した磁場の概念設計 OPERA らせん軌道入射に適したBrの空間分布が重要。 円筒形リターンヨーク(鉄) 天板ヨーク(鉄) ポールチップ(鉄) ビーム入射用トンネル 超電導メインコイル内径1.6m OPERA 1.8m 上下対称 Hiromi Iinuma 2019/7/3 4.6m

磁石外部からトンネルを通過し磁石内部へ軌道がつながった!(シングル+) + ビーム軌道直径 0.66m 1周2.1m (サイクロトロン周期=7.4 nsec) Hiromi Iinuma 2019/7/3

どうやってソレノイド軸方向のビーム運動を制御するか? 貯蔵リング設計準備進行中 KEK低温センター、加速器施設、日立製作所(共同研究) + “ビーム“入射条件見積もり 低エネルギー電子ビームを用いた実証試験の準備中 どうやってソレノイド軸方向のビーム運動を制御するか? 誤差磁場100m/1ppm 温度制御、振動制御 NMPプローブとホールプローブで空間磁場分布を測定 放医研 どうやって磁場測定をする? どうやって磁場を制御する? Hiromi Iinuma 2019/7/3

貯蔵リング内部の総合シミュレーション OPERA+GEANT4 OPERA計算からメイン磁場マップを得て、理想的なキッカー磁場(パルス動径磁場)と弱収束磁場を加えて、ミューオンの軌道と、スピン追跡や、陽電子検出など貯蔵リング内すべてのシミュレーションツールを構築中。 シリコン検出器 Hiromi Iinuma 2019/7/3

静磁場とパルス磁場によるビーム軌道の制御 サイクロトロン周期 7ナノ秒 回転軌道直径66cm キッカーで垂直運動を止める ニュートリノ +崩壊 動径静磁場 OPERA+GEANT4 トンネル出口入射角度 0.43rad  5mrad程度までしか偏向できない OPERA 垂直キッカー(パルス動径磁場) 0.43rad 入射角度5mrad  5rad未満まで (キック精度0.1%程度を想定) ビームサイズ、軌道を考慮し、径方向・軸方向の或る程度の体積内で、均等な軸対称キック磁場が欲しい。 Br(t)=Bpeak sin(t) 半周期150ナノ秒 (20周分)   5mrad This is a conceptual design of vertical kicker. We will use two pairs of coils to apply….within few tens of turns. Proto… Br(t) ±10cm 例:ヘルムホルツタイプコイル Hiromi Iinuma 2019/7/3

+ どうやってスピン歳差運動周期を測るか? e+ 直交成分を分離するにはどうすれば良いか? 崩壊陽電子の数をシリコン検出器で数え、その時間変動をみると、スピン歳差運動周期でウネウネしている。 灯台(ミューオン)の光(陽電子)の強さを観測するイメージ。 e+ + 直交成分を分離するにはどうすれば良いか? Hiromi Iinuma 2019/7/3

どうやってaとEDMを分離するか? EDM測定のキモは、ミューオンビーム軌道制御!! example 動径方向電場に対する陽電子の放出角度の時間変動に現れる。 EDM測定のキモは、ミューオンビーム軌道制御!! Let’s think of EDM is finite value, say 2 times 10 to the minus 20. If we take up-down time spectra separately, we can see such plots. EDM effect appears in amplitude of the up-down asymmetry. This amplitude can be calculated by analytically, and consistent with this simulation result. In this way, we can measure EDM effect and extract pure g-2 effect from precession frequency. These two wiggles are our goal plots. Hiromi Iinuma 2019/7/3

物理ゴール: ミューオンg-2, EDMを同時に超精密測定 シリコン検出器で測る NMRで測る g-2物理結果が出る シリコン検出器で測る NMRで測る EDM物理結果が出る J-PARC の大強度ミューオンビームを用いた極冷+ビーム 高統計、高品質なビーム コンパクト貯蔵リングを用いた高精度貯蔵磁場 崩壊するまで高精度なビーム制御 Hiromi Iinuma 2019/7/3

まとめ 身近な基本粒子であるミューオンを用い、超精密磁場の中 でスピン歳差運動を起こし、g-2とEDM値を精密測定する実 験を行います。 2015年実験開始を目指して頑張っています。 今度のJ-PARC PACでConceptual Design Report提出 Stage1 R&D項目は多い! 極冷+源開発チーム(理研・KEK物構造研など) 高精度貯蔵磁場プロジェクトチーム KEK低温センター、加速器施設、日立製作所(共同研究) ミューオンビーム再加速チーム KEK加速器施設など Hiromi Iinuma 2019/7/3