シンクロトロン放射・ 逆コンプトン散乱・ パイオン崩壊 ~HESS J は陽子加速源か?

Slides:



Advertisements
Similar presentations
硬 X 線で探るブラックホールと銀河の進化 深沢泰司(広大理) 最近の観測により、ブラックホールの形成と 銀河の進化(星生成)が密接に関係することが わかってきた。 ブラックホール観測の最も効率の良い硬 X 線で 銀河の進化を探ることを考える。 宇宙を構成する基本要素である銀河が、いつ どのように形成され、進化してきたか、は、宇宙の.
Advertisements

宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
2013 年度課題研究 P6 Suzaku によるガンマ線連星 LS I の観測データの解析 2014 年 02 月 24 日 種村剛.
X線で宇宙を見る ようこそ 講演会に 京大の研究
較正用軟X線発生装置のX線強度変化とスペクトル変化
高原文郎(大阪大学) 2010年11月16日 宇宙線研研究会
実習B. ガンマ線を測定してみよう 原子核・ハドロン研究室 永江 知文 新山 雅之 足立 智.
SNRから逃げた 宇宙線電子からの放射 内容
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
W e l c o m ! いい天気♪ W e l c o m ! 腹減った・・・ 暑い~ 夏だね Hey~!! 暇だ。 急げ~!!
論文紹介06: 最近のγ線観測とGLASTとの関連
宇宙線起源研究の展望 藤田 裕 (大阪大学 宇宙進化グループ).
ガンマ線連星LS 5039におけるTeVガンマ線放射とCTA
放射線(エックス線、γ線)とは? 高エネルギー加速器研究機構 平山 英夫.
松本浩典 (名古屋大学現象解析研究センター)
GRB 観測 相対論的 Jet の内側を探る 金沢大学 米徳 大輔、村上敏夫 今日のトピックは Inverse Compton
エマルションチェンバーによる 高エネルギー宇宙線電子の観測
銀河団の非熱的放射とCTA 藤田 裕(大阪大学).
すざく衛星によるTeV γ線天体HESS J の観測 --dark accelerator?--
「すざく」搭載XISのバックグラウンド ――シミュレーションによる起源の解明
パルサー星雲を伴うパルサーの 回転進化について 田中 周太 大阪大学 宇宙進化グループ D2 共同研究者 高原 文郎
ガンマ線バーストジェット内部における輻射輸送計算
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
単色X線発生装置の製作 副島 裕一.
超新星残骸から 逃走した宇宙線(e- , p) 大平 豊 高エネルギー加速器研究機構(KEK) 内容 SNRから逃走した宇宙線
内山 泰伸 (Yale University)
高エネルギー天体理論 ~特に宇宙線陽電子について~
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
信川 正順、福岡 亮輔、 劉 周強、小山 勝二(京大理)
物質中での電磁シャワー シミュレーション 宇宙粒子研究室   田中大地.
巨大電波銀河 3C 35 の「すざく」による観測 磯部直樹 (京都大学, kyoto-u. ac
(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
「すざく」によるHESS J の観測 --dark accelerator?--
「すざく」衛星と日本のX線天文学 July 10, 2005
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
X線天文衛星「すざく」による HESS未同定天体の観測
RXJ1713方向分子雲の 高感度サブミリ波観測 洞地 博隆 名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理系
パルサーって何? 2019/4/10.
CTA報告19: CTA時代におけるSNR研究
XMM-Newton 衛星による電波銀河 Fornax A の東ローブの観測
ガンマ線連星 LS I 放射モデル 2009/12/14 永江 修(広島大学).
Fermi Bubble における粒子加速の時間発展と放射の空間依存性
Fermi Bubble における粒子加速の時間発展と放射の空間依存性
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
鉄輝線で解明したSgr A* の活動性: 京都大学 小山勝二 ブラックホールSgrA*の時空構造を鉄輝線で解明する
電波銀河 Fornax A の東ローブのEnergetics の XMM-Newton による調査
暗黒加速器とパルサー風星雲 --HESSJ とPSR
S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
XMM-Newton 衛星による電波銀河3C 98の観測
京大他、東大やアデレード大学など日豪の16機関が共同で、オーストラリアの砂漠地帯に望遠鏡4台を建設しTeVγ線を観測している。
宇宙線研究室 X線グループ 今こそ、宇宙線研究室へ! NeXT
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
「すざく」搭載XISのバックグラウンド ――シミュレーションによる起源の解明
ーラインX線天文学の歴史と展望をまじえてー
ガンマ線偏光観測で探る ガンマ線バーストの放射メカニズム 米徳大輔(金沢大) 村上敏夫、森原良行、坂下智徳、高橋拓也(金沢大)
早稲田大学 理工学術院 鳥居研究室 宇宙線の観測 宇宙線はどこから? 電子望遠鏡CALET LHCf加速器実験 卒業生の進路 研究活動
Introduction to the X-ray Universe
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
スーパーカミオカンデ、ニュートリノ、 そして宇宙 (一研究者の軌跡)
XMM-Newton衛星による 電波銀河 3C 98 の観測
研究紹介:山形大学物理学科 宇宙物理研究グループ 柴田研究室
高地におけるγ線エアシャワー地上観測のシミュレーション
ASTRO-E2搭載CCDカメラ(XIS)校正システムの改良及び性能評価
シェル型の超新星残骸G からの非熱的X線放射の発見
BH science for Astro-E2/HXD and NeXT mission
巨大電波銀河 3C 35 の 「すざく」による観測 磯部 直樹(京都大学,
すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
ローブからのX線 ~ジェットのエネルギーを測る~
Presentation transcript:

シンクロトロン放射・ 逆コンプトン散乱・ パイオン崩壊 ~HESS J16161-508は陽子加速源か? CRコロキウム 2006年1月25日 内山 秀樹

動機 すざく AO-1で未同定ガンマ線源 HESS J1614-518を提案したのは良いが・・・ HESSのTeVガンマ線が陽子起源or電子起源であることに対してX線の観測で何が言えるかをはっきりさせたい。 シンクロトロン放射、逆コンプトン散乱、パイオン崩壊を復習・勉強。

目次 宇宙線加速と超新星残骸 シンクロトロン放射 逆コンプトン散乱 パイオン崩壊 HESS J1616-508は陽子加速源か? まとめ

宇宙線加速 宇宙からは高エネルギー(1012~1020eV)の宇宙線が等方的にやってくる。 主成分は陽子。陽子の1%程度が原子核。   電子も1%程度含まれる。 加速現場はいったい どこか? →超新星残骸  (衝撃波加速) knee ankle 宇宙線粒子の積分エネルギー分布

超新星残骸 X線 シンクロトロン放射 100TeV以上の電子加速の直接的証拠 電子が加速→同様に陽子も加速されているであろう  電子が加速→同様に陽子も加速されているであろう →陽子加速の間接的証拠 

超新星残骸 TeVガンマ線 TeVガンマ線が見える →TeV以上のエネルギーの粒子の存在の直接証拠 逆コンプトン散乱:電子起源 パイオン崩壊:陽子起源→陽子加速の直接証拠

シンクロトロン放射 高エネルギー粒子が磁場で曲げられて放射を起こす過程 エネルギーEe電子の放出光子の典型的エネルギーEp  Ep~4keV×(B/10μG)×(Ee/100TeV)2  速度βの粒子のpower (erg/s) →同じβの時、電子のシンクロトロン放射に比べて陽子の    放射は非常に弱い(~3×10-7) →強度はUBβ2γ2に比例 :磁場のエネルギー 密度(erg/cm3)

シンクロトロン放射 RX J1713 n(E)∝E-pの粒子分布の時→冪(p-1)/2のパワーロー E5/2 E(p-1)/2 Synchrotron Log(E/1MeV) 自己吸収が効く E5/2 RX J1713 E(p-1)/2

逆コンプトン散乱 高エネルギー粒子に光子(CMB)が叩かれてTeVガンマ線になる過程。 エネルギーEe電子の放出光子の典型的エネルギーEp  ETeV ~10TeV×(hν0/2×10-4eV)×(Ee/100TeV)2   hν0:ターゲット光子(CMB)のエネルギー kB・(2.7K)~ 2×10-4eV 速度βの粒子のpower (erg/s) →強度はUphβ2γ2に比例 Uph=a(2.7K)4 =4×10-13 erg / cm3 :CMBのエネルギー密度

逆コンプトン散乱 IC スペクトル:n(E)∝E-pの粒子分布の時 RX J1713 →冪(p-1)/2のパワーロー:シンクロトロンと同じ Synchrotron E(p-1)/2 E(p-1)/2 IC Log(E/1MeV)

パイオン崩壊 高エネルギー陽子がガスとぶつかってパイオンを作り、そのパイオンが崩壊してガンマ線が放出 pp → π0 → 2γ  pp → π0 → 2γ 放出光子の典型的エネルギー: 1GeV~ σpp(Ep) ~30[0.95+0.06ln(Ekin/1GeV)] mb (Ekin>1GeV) ~ 0 mb (Ekin < 0.3 GeV) 強度(積分フラックスJγ) Jγ(>0.3GeV) ~ 3 ×10-8 ×A cnts/s/cm2 A=(WCR/1050erg)(d/1kpc)-2(n/1cm-3) WCR:全陽子の持つ全エネルギー d:ソースからの距離 n:ガスの密度 →陽子のエネルギーと周りのガスの密度だけで強度が決まる。

パイオン崩壊:スペクトル Γp=2.0 Γp=2.5 Γp=2.75 Log(E/1GeV)

=(逆コンプトン散乱TeVガンマ線の上限値を決めること) X線とTeVガンマ線の関係 シンクロトロン放射と逆コンプトン散乱 どちらも電子起源 Psyn / PIC = UB / Uph (速度βの電子1個当たり) →逆コンプトン散乱の強度∝シンクロトロン放射の強度 磁場>星間磁場~3μG (X線強度の上限値を決めること) =(逆コンプトン散乱TeVガンマ線の上限値を決めること) パイオン崩壊   パイオン崩壊によるTeVガンマ線強度は陽子のエネルギーと周りのガスの密度だけに依存。

HESS J1616-508 FX(2-10keV) < 2×10-13erg/cm2/s HESSの銀河面サーベイによって見つかった新TeVガンマ線源。X線・電波の対応天体は無い。 TeVガンマ線では非常に明るい。   Fγ(>0.2TeV)=4×10-11erg/cm2/s ~0.19Crab すざくPVフェーズで観測 FX(2-10keV) < 2×10-13erg/cm2/s すざく 2-10keV HESS

HESS J1616-508は陽子加速源か? HESS J1616のTeVガンマ線は 逆コンプトン散乱では説明できない! F(>0.2TeV) =4.3×10-11/cm2/s Γ=2.4 103yr SNR WCR= 1051erg, d=1kpc, n=1/cc (A=1) π0 (A=1) IC Log(E/eV) HESS J1616のTeVガンマ線は 逆コンプトン散乱では説明できない! Fx (2-10keV) =3.8×10-11 erg/cm2/sの時 (Vela Jr. 3.2 ×10-11 erg/cm2/s) Fx (2-10keV) =2×10-13 erg/cm2/sの時 (HESS J1616の上限値)

HESS J1614-518ですざくは何を見たいのか? 同じくHESSの新TeVガンマ線源。 X線、電波に対応天体無し。(X線ではASCA,Chandra,XMMいずれもそもそも観測が無い。) TeVガンマ線では今回発見された新ソース中で最も明るい。  F(>0.2TeV) = 0.25 Crab すざくAO-1で提案中。 →何か見えたらもちろん嬉しい。 →厳しいX線強度上限値は   陽子起源を示唆。嬉しい。 「見えないことを見たい」 すざくは大面積、低バックグラウンド、   迷光少ない→上限値決めに適する。

まとめ シンクロトロン放射X線と逆コンプトン散乱TeVガンマはどちらも電子起源なので強度は比例する。 HESS J1616のTeVガンマ線強度はICでは説明できないことがすざくによるX線の観測から分かった。 本当はこんな単純な話では無いのかもしれませんが・・・。   ・X線が見えない→TeVはパイオン崩壊が見えているかも ○ ・TeVはパイオン崩壊が見えている →X線は見えない   × この場合どうX線が見えるかは更に勉強が必要。

いろいろと 反省します おまけ ・つっちー(正) と 1Jy(ジャンスキー)=10-23erg/s/cm2/Hz カール・ジャンスキー:GCからの電波を発見(1931) 間違えやすいもの ・HESS J1616-508(正)とHESS J1614-518(正)と HESS J1614-508(誤)とHESS J1616-518(誤) ・つっちー(正) と うっちー(誤) いろいろと 反省します