重心系エネルギー200GeVでの金金衝突におけるPHENIX検出器による低質量ベクトル中間子の測定

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重心系エネルギー200GeVでの金金衝突におけるPHENIX検出器による低質量ベクトル中間子の測定 27aWA6 重心系エネルギー200GeVでの金金衝突におけるPHENIX検出器による低質量ベクトル中間子の測定 ~ Contents ~  ・研究動機  ・金金衝突の実状  ・解析手法  ・結果  ・今後の改善点  ・結論と今後 広島大学理学研究科 中宮 義英 for the PHENIX Collaboration

研究動機:高温下におけるQGP相転移付近でのベクトル中間子の 性質変化を調べる。(カイラル対称性の回復による質量変化) K.Rajagopal,Avta Phys.Polon. B31(2000)3021 化学ポテンシャル 温度 √sNN = 200GeV, 金金衝突で実現 できる領域 < √sNN = 200GeV, 金・金衝突でのΦ中間子の観測> 何故、φ中間子か?⇒φ中間子の寿命と高温状態の継続時間が同じオーダーである。 何故、e+e-崩壊モードなのか?⇒レプトン対は強い相互作用をしないため、QGP冷却後 のハドロン相の影響を受けにくい。 <実験的なジグナル> ・質量(不変質量分布の平均値)変化。 ・寿命(不変質量分布の幅)変化。 ・崩壊比変化。

金金衝突( √sNN = 200GeV,)の実状 ~電子陽電子対崩壊粒子の成分~ ・π0やphoton conversion起源の電子 S.S.Adler et al, Phys.Rev.Lett.96,032301(2006) ・99%はπ中間子、電子は約0.1% ・φ→e+e-への崩壊比は10-4 ・π0やphoton conversion起源の電子 がドミナントである。

解析手法: 電子識別 ・RICHによる電子識別 衝突点 ・Emcによるタイミングカット ・エネルギー/運動量カット

解析手法: 不変質量分布とイベントミキシング 解析手法: 不変質量分布とイベントミキシング イベントミキシング法の概念図 黒:実際の分布 赤:イベントミキシング法による分布 衝突1 e+ φ e- e- 衝突2 e+ e- e- イベントミキシング ピークのある部分を除いてよく一致している。 中間子起源の電子・陽電子

結果:(1)φ中間子の不変質量分布 衝突中心度 0-20% 衝突中心度 40-94% 衝突中心度 20-40% Minimum bias 質量1Gev/c^2 付近を拡大 衝突中心度が大きい程 周辺衝突

結果:(2)無相関な分布を差し引いた後のφ中間子の不変質量分布 衝突中心度 0-20% 衝突中心度 20-40% 衝突中心度 40-94% Minimum bias

今後の改善点:Φ中間子のシグナルとコンビナトリアル 現状:φ→e+e-のシグナルのコンフィデンス レベルはコンビナトリアルバックグランド が多いため低い。 電子・陽電子に崩壊するドミナントな親粒子 ・Dalitz崩壊成分 ・photon conversion成分 ⇒コンビナトリアルを減らす為に  ・Dalitz崩壊成分  ・photon conversion成分 を起源とする電子・陽電子を 除去する必要がある。

今後の改善点 :(1) Dallitz崩壊成分の除去  ・π0→γe+e-  ・η→γe+e- ⇒エネルギーの大部分を γが持っていくのでDalitz崩壊の e+e-で組んだ不変質量のピークは 0 GeV/c^2 近傍にできる。 <Dalitz崩壊の電子によるコンビナトリアルを除去する方法>  1.Low mass cut ⇒質量が0 GeV/c^2付近になるような電子をカットする。  2.‥Hadron Blind Detectorの実装(数年後)

今後の改善点 :(2) photon conversion成分の除去 主にビームパイプから生じる。 *0.02GeV/c^2にピークをもつ理由* ビームパイプ 検出点 衝突 θ θ:計算されるオープニングアングル <photon conversionの電子によるコンビナトリアルを除去する方法>  1.Low mass cut ⇒質量が0 GeV/c^2付近になるような電子をカットする。  2.PhiV cut ⇒ photon conversionから生じる電子陽電子対はmasslessの為、    磁場に対して垂直なベクトルを持つので磁場ベクトルと    e+e-の作る平面の法線ベクトルが平行になるような電子    を除去する。 γ e+ e-

結論と今後 <結論と今後> ・核子対当たり重心系エネルギー200GeVの金+金衝突 におけるφ→e+e-崩壊モードの不変質量分布を各衝突中心度 ごとに求めた。 ・今後の課題は不変質量分布のコンビナトルバックグラウンドを 作る主な成分であるphoton conversionやDalitz崩壊による電子 を除去し、シグナルのコンフィデンスレベルを向上させることである。

Back up

物理的背景 <Goldstone模型> <南部-Jona-Lasino模型> フェルミオン場とスカラー場の相互作用系のラグランジアン密度 を持つ。 ・カイラル変換 の下でLが不変でない為に 質量項 ・この時のフェルミオンの質量はg<σ>である。 ・<σ>は温度・密度に依存するので、高温状態下では ハドロンの質量変化が見られるであろう。

高エネルギー重イオン実験の描像 φ e+ e- Φ中間子(  ) 質量:1.02GeV/c2 寿命: 1.6×10-22s

不変質量分布の成分

不変質量分布の成分 ・DD-bar起源 Dallitz崩壊:π0→γe+e- η→γe+e- photon conversion 黒:実際の分布 赤:イベントミキシング法による分布 J/ψ中間子(  ) 質量:3.1GeV/c2 寿命:7.2×10-21s ・DD-bar起源 ・熱的電磁放射 Dallitz崩壊:π0→γe+e- η→γe+e- photon conversion

生成断面積のズレ CERES/NA45の結果:1995‐1996 0.2~0.6GeV/c2の領域で生成断面積が増加 →カイラル対称性の回復に伴うρ中間子の質量変化?

衝突中心度と衝突関与核子数 y x 周辺衝突 ・衝突中心度:原子核の衝突の重なりの程度を 表す値 ・衝突関与核子数:衝突関与部に存在する 衝突関与核子数:この場合は8個 反応傍観部 Z D C へ 反応関与部 反応関与 Z D C へ 反応傍観部 周辺衝突 ・衝突中心度:原子核の衝突の重なりの程度を          表す値 ・衝突関与核子数:衝突関与部に存在する             核子数のこと ・衝突中心度→衝突関与核子数とする理由:衝突 中心度を定義できない陽子・陽子衝突実験の 結果と比較できるようにする為。 中心衝突

電子・陽電子の識別1 : RICH x z <本解析で電子・陽電子である純度を高めるために> ・光電子増倍管が複数本ヒット 光電子増倍管を上から見た図 ヒットのあった光電子増倍管 実際のチェレンコフリング 飛跡から求めたチェレンコフリング 荷電粒子の進行方向 θ 球面鏡 光電子増倍管 チェレンコフ光 <本解析で電子・陽電子である純度を高めるために>  ・光電子増倍管が複数本ヒット  ・ヒット点から作られるチェレンコフリング   の形が最もらしい  ・粒子飛跡から予想される光電子増倍管の   ヒット点と実際にヒットした点が近い

電子・陽電子の識別2:その他の検出器 エネルギー/運動量カット Emcタイミングカット

・EMCヒット点と外挿から予想されるヒット点との差を小さくする。 ・ゴーストトラックの除去 信頼度の高い飛跡の選別 y EMCの実際のヒット点 δφ EMC内の電磁シャワー 飛跡から外挿された点 x 荷電粒子の飛跡 PCによる検出位置 DCによる検出位置 ゴーストトラック BBCによる衝突点 <信頼度の高い飛跡を選別するために> ・EMCヒット点と外挿から予想されるヒット点との差を小さくする。 ・ゴーストトラックの除去