ATLAS実験におけるSUSY の発見能力

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ATLAS実験におけるSUSY の発見能力 日本物理学会 2007年9月21日 @北海道大学 岸本圭司, 金谷奈央子A, 浅井祥仁, 小林富雄A 東京大学理学系研究科,                      東京大学素粒子物理国際研究センターA

Introduction 研究の動機 これまでmSUGRAをベースにSUSY事象の最適化を行ってきたが、他のモデルではどうか。 Full Optimizationは実用的でないので、他の最適化を考える。

超対称性モデル mSUGRA (minimal Super Gravity model) 今回解析した超対称性モデル mSUGRA (minimal Super Gravity model)   最大限に強い仮定を入れて、パラメータ数を最小にしたSUGRAモデル NUHM (Non Universal Higgs Masses model)   SUGRAの1種だがminmalでない、Higgsinoのmassをフリーにしたモデル GMSB (Gauge Mediated Symmetry Breaking model)   Gauge相互作用により超対称性の破れが伝わるとするモデル 実験的にはこれらのイベントトポロジーは同じ missing Et + high Pt multi Jet + (leptons)    しかし、これら3つの比率はモデルやパラメータに依存する (例えば、モデルによってleptonが多かったり少なかったりする。) LSPについて mSUGRA → lightest neutralinoがLSP NUHM → 同上 ただし GMSB → GravitinoがLSP、今回はsleptonがNext LSPとなる(Nm=5)を仮定  mSUGRAだとlightest neutralinoはBino-likeな粒子になりやすいが、NUHMではそうではない (Higgsino-like にもなりうる!)

発見能力の評価方法 これら全てを独立に最適化するのでFull Optimizationと呼んでいる。 「発見可能」を以下で定義する。 # of signal : S > 10 かつ significance : S/sqrt(B) > 5  Significanceが最大になるようにCutを決定し、その上で発見可能かどうかの判定をする。 最適化したcut変数は以下の3つ missing Et cut 1st Jet Pt cut 4th Jet Pt cut    これら全てを独立に最適化するのでFull Optimizationと呼んでいる。

mSUGRAの発見能力 1fb-1 ⇒1fb-1で 1.5TeV程度までのsquark,gluinoが発見可能 Full OptimizationでmSUGRAの発見能力を評価した結果が下図である。               (ラインより下の領域でmSUGRAが発見可能であることを示している。) 1fb-1 ⇒1fb-1で 1.5TeV程度までのsquark,gluinoが発見可能

10fb-1 0.1fb-1 →2TeV程度までのsquark,gluino が発見可能 (2008年末までに到達予定)

mEt Optimization luminocityの増加にともない、missing Et cutを強くすればよい。 そこで、missing Et cutのみを最適化する(mEt Optimization)  mass scaleが大きいほど、大きなmissing Et cutが必要 到達可能なmass scaleと積分luminocityは対応  luminocityの増加にともない、missing Et cutを強くすればよい。

mEt Optimizationのパフォーマンス 0leptonモード 1 leptonモード 赤が1に近い領域

mSUGRAの発見能力2 mEt Optimizationにより、mSUGRAの発見能力を再評価した。(破線はFull) → Discovery Reachはほとんど変わらない。 ⇒ 以下では、mEt Optimizationを他のモデルにも適用する。

NUHMの発見能力 1fb-1 mEt Optimizationを用いて、NUHMの発見能力を評価した。 ⇒mSUGRAと同程度の発見能力を持つ 1fb-1で1.5TeV程度のsquark,gluinoが発見可能である。

NUHM と mSUGRA の比較 mSUGRAのDiscovery Reach(破線)を重ねると mSUGRA NUHM mSUGRA 2leptonモードの発見能力がmSUGRAより、良くなっている なぜなら、NUHMはHiggsinoが軽くなる →重いgauginoにWino成分が混ざる  ⇒ 崩壊の段数が増え、レプトンが増える

GMSBの発見能力 1fb-1 mEt Optimizationを用いて、GMSBの発見能力を評価した。 発見能力が高い    GMSB(sleptonがNLSPである場合) はSUGRAに比べて放出されるleptonがかなり多い(下図) mEt Optimization ⇒ 1fb-1 でおよそ1.5TeV程度までのgluino,squarkが発見可能

Summary シンプルな最適化の方法として、mEt Optimizationが有効である。 mSUGRAは、0.1fb-1で1TeV程度のmass scaleまで発見可能 1fb-1で1.5TeV程度のmass scaleまで発見可能          10fb-1で2TeV程度のmass scaleまで発見可能 NUHM,GMSBの発見能力も同程度である ことが分かった。 今後はAMSBなどの他のモデルの発見能力も評価していきたい。

backup

バックグラウンドの系統誤差を含めた発見能力 バックグラウンドを2倍にして、発見能力を評価した。(破線はエラーなし)