TES型X線マイクロカロリメータの開発(VII) ― エネルギー分解能の追求 ―

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TES型X線マイクロカロリメータの開発(VII) ― エネルギー分解能の追求 ― 広池哲平、大橋隆哉、山崎典子、石崎欣尚、森田うめ代 (都立大) 満田和久、藤本龍一、伊予本直子、 大島泰、二元和朗、竹井洋 (宇宙研) 工藤寛之、佐藤裕崇、中村友亮、小林秀臣、 庄子習一、本間敬之、逢坂哲彌 (早大理工) 黒田能克、大西光延、後藤雅也 (三菱重工業) 田中啓一、師岡利光、中山哲、茅根一夫 (セイコーインスツルメンツ) エネルギー分解能 13 eV@5.9 keV

カロリメータ 吸収体 入射X線を素子の微小な 温度変化として検出 エネルギー分解能 (FWHM) は X線 フォノン数の揺らぎで決まる V 定電圧バイアス V 0 吸収体 温度計 ~100 mK C : 熱容量 R : 温度計や動作条件 によるパラメータ 熱接触 α:温度計の感度 低温熱浴 ~40 mK SQUID 極低温(~100 mK)で 優れた分解能を発揮 X線エネルギー 電流変化を測定

TES: Transition Edge-Sensor 作製:セイコーインスツルメンツ 超伝導遷移端 を利用した 高感度温度計 2 mm TES Ti 40 nm Au 110 nm SiNx膜 (1μm厚) ln R R ∝T α 空洞 Ti (超伝導体) Au(常伝導体) 二層薄膜 α= 10~1000 膜厚比を変えることで 遷移温度 Tc が変化 Tc T

SII #6 (秋の物理学会にて発表) 問題点 ポイント ① ポイント ② ② ① これらを改良・・・ 転移温度 120 mK 温度計感度 α 100 エネルギー分解能 140 eV (ノイズ成分 52 eV) ポイント ① エッチング不良による 残留物の存在 パルス波形が大きくばらつく ポイント ② 手作業での 吸収体(Sn)の接着 充分に大きなパルスが出ない カロリメータの顕微鏡写真 ② ① 吸収体 TES SiNx Si SiO2 これらを改良・・・ 断面図

SII #14 (改良版!) 改良点 ポイント ① ポイント ② 2 mm Si TES 空洞 ② ① 裏面くり抜きにより 残留物の除去 Au 吸収体を形成 2 mm Si 0.5 mm TES 0.5 mm Au 吸収体 0.3 mm × 0.3 mm 空洞 Nb 配線 300 nm 200 nm 断面図 ② Au 吸収体 TES TES SiNx Au 110 nm Si ① Ti 40 nm 拡大図

実験セットアップ SII #14 吸収体に照射 0.5 mm ~1.6 K 0.3 mm 125 cm SQUID 0.2φ サファイアコリメータ 吸収体に照射 55 Fe 線源 希釈冷凍機 最低到達温度 ~20 mK ~20 mK

動作パラメータ 熱浴温度 45 mK バイアス電圧 1.3 μV TES 抵抗値 42 mΩ TES 温度 105 mK TES R -T 特性 動作点 Tc = 105 mK α ~ 100 X線パルス Time (ms) Output Signal (μA) 4.8 μA ΔT ~ 2 mK 150 μs

エネルギースペクトル 11 eV 12.6±0.6 eV Mn Kα 5.9 keV ノイズ成分@5.9 keV Kβ ピーク付近拡大図

まとめ と 今後 分解能 13 eV を達成 SII #6 ⇒ SII #14 への改良点 今後 ・残留物のない、設計通りの熱特性の素子作製に成功 熱伝導度 減少 → TES 充分に熱化 ⇒ パルスのばらつき抑制 ・吸収体:Sn 箔(接着) → Au(スパッタ) に変更 吸収体内部での熱伝導度向上 → TES を一様に熱化 熱容量 減少 → パルスハイト 増大 ⇒ S/N 向上 分解能 13 eV を達成 今後 ・分解能を決めている ・エネルギー分解能を保ちつつ、多ピクセル化

性能評価 期待される分解能@5.9 keV (熱揺らぎ&熱雑音の寄与) ΔE = (1.6 eV) + (読出し 3.3 eV) 2 2 見積もり 3.7 eV ノイズ成分 10.6±0.3 eV 実測結果 12.6±0.6 eV パルス成分 の揺らぎ 見積もりの 不完全性?

パルス波形の揺らぎ ⇒ 改善方法 ノイズ成分 11 eV 実測結果 13 eV 6.7 eV 相当 パルス波形のばらつきの影響 熱の伝わり方が一様でない 温度、バイアスの不安定性 原因 TES の熱化を 改善方法 配線の熱伝導を悪く 充分に TES の Au を厚く 迅速に 吸収体の熱伝導を良く 一様に ⇒

ノイズの寄与を小さくするために 原理的には 抵抗 小 → パルスハイト 大 ⇒ 動作点の 抵抗 小 が良い ⅰ パルスハイトが頭打ちになる 原理的には 抵抗 小 → パルスハイト 大 ⇒ 動作点の 抵抗 小 が良い ⅰ パルスハイトが頭打ちになる R-T 曲線の傾きの変化 TES に流れる電流密度に関係? ⇒ TES/吸収体の形状の工夫 流す電流を少なく(熱伝導度 ↓) ⅱ Excess Noise (∝ 1/R ) 遷移端に特有な現象か?