第2章 電子工学の基礎 2.1 半導体素子 2.2 電子回路 2.3 4端子網.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
情報技術基礎 論理素子による進歩. 計算機の歴史 計算機の歴史 1649 パスカル 歯車式加減算機 1839 バベッジ 階差機関 1890 ホレリス パンチカードシス テム ※歯車式の計算機は 1960 年(昭和30年)代ま で 便利な計算機として実際に使われてい た.
Advertisements

SiC半導体による放射線検出器の開発・研究
半導体デバイス工学 講義資料 第4章 バイポーラデバイス (p.68~p.79).
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第8回光エレクトロニクス(1) 光電変換:太陽電池、CCDカメラ
pn接合容量測定実験装置の製作 発表者:石田 俊介 指導者:前川 公男 教官 では、只今から前川卒研班、石田による中間発表を行います。
授 業 内 容 8回5/28 学生の材料調査 飯村(鮫島)&TA 9回6/4 有機物体についての解説 飯村
前時の確認 身のまわりで電波が使われているものは?
5 LED回路 センシング演習基礎(2S) センシング基礎演習(第5回) LED回路 (担当 高橋)
放射線計測エレクトロニクスの信号処理の為の アナログ電子回路の基礎 第四回
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0023教室 第6回 光電変換
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0035教室 第6回 光電変換
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0031教室 第7回 光電変換
MPPCの基礎 東京大学ICEPP大谷研究室 M1 柴田直哉.
単一分子接合の電子輸送特性の実験的検証 東京工業大学 理工学研究科  化学専攻 木口学.
W e l c o m ! いい天気♪ W e l c o m ! 腹減った・・・ 暑い~ 夏だね Hey~!! 暇だ。 急げ~!!
素粒子実験に用いるガス検出器の原理と動作
2006年度 回路基礎 第1回資料 電気技術 熱や光への応用 動力への利用 通信への利用 コンピュータへの利用.
物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第5回半導体の色(2) ー半導体の電気的性質ー
固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流 -アノード酸化皮膜の表面欠陥とカソード材料の接触界面-
電子物性第1 第6回 ー原子の結合と結晶ー 電子物性第1スライド6-1 目次 2 はじめに 3 原子の結合と分子 4 イオン結合
次世代半導体材料による 省エネルギーエレクトロニクス
磁歪式振動発電の 高出力化と発電床への応用
金属使用の歴史 ●優れた材料: 強度が高くて、一定の形を作るのが容易 ●有史以前の単体金属: 金、銀、銅、鉄、錫、鉛、水銀
電子回路Ⅰ 第2回(2008/10/6) 今日の内容 電気回路の復習 オームの法則 キルヒホッフの法則 テブナンの定理 線形素子と非線形素子
電子回路Ⅰ 第12回(2009/1/26) 整流回路、電圧安定化回路.
電子回路Ⅰ 第11回(2009/1/19) 電力増幅.
半導体 N型半導体 P型半導体.
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
ボルタ電池 (-)Zn|H2SO4aq|Cu(+)
   電気回路について学習する。        (センサを使用した電気回路) 〇 めあて トランジスタを使った、電気回路を つくろう。
電子回路Ⅰ 第3回(2008/10/20) バイポーラトランジスタの動作原理.
第8回  論理ゲートの中身と性質 論理ゲートについて,以下を理解する 内部構成 遅延時間,消費エネルギー 電圧・電流特性 瀬戸.
セラミック化学 無機固体化合物の構造と特性.
メカトロニクス 12/1 アナログ電子回路 メカトロニクス 12/1.
電界効果トランジスタの動作原理 トランジスタを用いた回路のバイアス
ATLAS実験 SOI Transistor TEG の測定
メカトロニクス 12/8 OPアンプ回路 メカトロニクス 12/8.
電界効果トランジスタの静特性 FET(Field Effective Transistor)とは 電圧制御型の能動素子
電界効果トランジスタの動作原理 トランジスタを用いた回路のバイアス
半導体.
エレクトロニクスII第3回: 半導体について知ろう pn接合の原理を知ろう
エレクトロニクスII 第9回FET 実用エレクトロニクス: ディスプレイ(3)PDP
物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0023教室 第8回 光エレクトロニクスと材料[1] レーザー
エレクトロニクスII第2回: ACアダプターを分解しよう ーダイオードと整流回路ー
電力 P ( Power ) 単位 ワット W = J / sec
コイルのはたらき コイルの5つのはたらきについて説明.
電子回路Ⅰ 第7回(2008/12/1) 小信号動作量 トランジスタ回路の接地形式.
半導体デバイスの基本構成要素 pn junction diode
エレクトロニクスII第6回 佐藤勝昭.
光電効果と光量子仮説  泊口万里子.
分子軌道理論(Molecular Orbital theory, MO理論)

[内容] 1. 実験の概要 2. ゲルマニウム検出器 3. 今後の計画 4. まとめ
半導体の歴史的経緯 1833年 ファラデー AgSの負の抵抗温度係数の発見
電子物性第1 第11回 ー金属の電気的性質ー 電子物性第1スライド11-1 目次 2 はじめに 3 導電率(電子バス) 4 欠陥の多い結晶
光スイッチングデバイス.
情報通信基礎実験1 第4回.
光速の測定 A班:   岩下  大脇       瀬尾 瀬戸口       辻川  富野       福田 教員:南野     TA:岡崎.
FETの等価回路 トランジスタのバイアス回路(復習)
電子回路Ⅰ 第10回(2008/1/7) 電力増幅.
キャリヤ密度の温度依存性 低温領域のキャリヤ密度                   ドナーからの電子供給→ドナーのイオン化電圧がわかる                              アクセプタへの電子供給→アクセプタのイオン化電圧がわかる             常温付近                            ドナー(アクセプタ)密度で飽和→ドナー(アクセプタ)密度がわかる.
電子回路Ⅰ 第5回(2008/11/10) 理想電源 トランジスタの等価回路.
ディラック電子系分子性導体への静電キャリア注入を目的とした電界効果トランジスタの作製および物性評価
13族-遷移金属間化合物の熱電材料としての応用
物理学実験 II ブラウン運動 ー 第2日目 ー 電気力学結合系の特性評価 物理学実験II (ブラウン運動) 説明資料.
紫外線LEDの特性測定 理工学部 物理学科 宇宙粒子研究室   澤田 晃徳.
電子ビームラインの構築と APDを用いた電子計測試験
第四級アマチュア無線技士 養成課程模擬試験(工学)問題4
セラミックス 第3回目 4月 30日(水)  担当教員:永山 勝久.
シンチレーションファイバーを 用いた宇宙線の観測
Presentation transcript:

第2章 電子工学の基礎 2.1 半導体素子 2.2 電子回路 2.3 4端子網

2.1 半導体素子 2.1.1 半導体 2.1.2 pn接合とトランジスタ 2.1.3 各種半導体素子

2.1.1 半導体 (1)半導体とは 導体と絶縁体の 中間の電気抵抗を持つ物質 導体 半導体 絶縁体 銀・銅 鉄 ニクロム ゲルマニウム 2.1.1 半導体 (1)半導体とは 導体と絶縁体の 中間の電気抵抗を持つ物質 銀・銅 鉄 ニクロム ゲルマニウム セレン シリコン 10-8 10-6 10-4 10-2 10 104 108 1012 ベークライト 塩化ビニール ダイヤモンド マイカ 石英 1016 導体 半導体 絶縁体 現時点では, Si(シリコン)が最も使われているが,  ① GaAs(ガリウム・砒素),  ② GaP(ガリウム・リン),  ③ InSb(インジウム・アンチモン) 等も今後使われるようになりそう。

(2)n型半導体 n型半導体(n-type semiconductor) 半導体に微量に添加した不純物(ドナー)が 電子を供給してキャリアとなる半導体。 半導体のSi(シリコン)やGe(ゲルマニウム)は族番号14であるが, これに族番号15のP(リン),As(ヒ素),Sb(アンチモン)などを 添加することでn型が得られる。 族番号14の原子は,4個の共有結合を持つが, 族番号15の原子では,5個の最外殻電子の1個が余るため, 原子から離れてキャリアとなる。 合金であるGaAsでは,Se(セレン)やSi(シリコン)を 添加することでn型となる。

(3)p型半導体 p型半導体(p-type semiconductor) 半導体に微量に添加した不純物(ドナー)が 正孔を供給してキャリアとなる半導体。 半導体のSi(シリコン)やGe(ゲルマニウム)は族番号14であるが, これに族番号13のB(ホウ素),Al(アルミニウム)などを 添加することでp型が得られる。 族番号14の原子は,4個の共有結合を持つが, 族番号13の原子では,3個の最外殻電子の1個が不足するため, 周りの原子から電子を取り込み,取り込めない場合は正孔を形成する。 合金であるGaAsでは,Zn(亜鉛)やC(炭素)を 添加することでp型となる。

2.1.2 pn接合とトランジスタ (1)p型とn型の違い 2.1.2 pn接合とトランジスタ (1)p型とn型の違い ① n型は,電子が動き回ることによる電気伝導 ② p型は,ホールに電子が取り込まれたり, 離れたりすることによる電気伝導 p型とn型を接合すると, 電流を一方向のみに流す性質を持つようになる。 ダイオードという

(2)p型とn型の接合 - - - + + + - - + + - + + - - - + + - - - + + + + + + + - 外部から電圧を加えない状態では 接合近傍と電子と正孔は結合して キャリアが存在しない領域(空乏層という) を形成する。 P型領域には負の, N型領域には正の 固定空間電荷ができ, 内部電位が生じる p型半導体 n型半導体 - - - + + + - - + + - 外部から電圧を加えて, 内部電位差を低くすると, 電流が流れる。 内部電位差を高くすると, 電流は流れない。 + + - - - + + - - - + + + 空乏層 拡散電位 ECp 電導体 フェルミ準位 + + ECn + + アクセプタ準位 EF - EVp - - ドナー準位 - 整流作用となる 空間電荷 EVn 価電子体

(3)エネルギー順位 - - - - + - + + + + + + - - - - - - - + + + + - - - + - - - 電圧をかけていないとき - - - - + - + + + + + + p型にー, n型に+をかけると 電子や正孔が移動できなくなる - - - - - - - n型 + + + p型 p型に+, n型にーをかけると 電子や正孔が移動する (ー) + - - - + - - - 電子 - + - - - - + + - + + + - - - + + - + + + (+) (+) n型 p型 (ー) n型 - - - + + + + + + 正孔 p型

(4)もう一つのモデル - + - + + - + - + - - + - + - + - + + - + + + - - キャリアーだけで考える N型 P型 逆電圧をかけると, 両キャリアは 境界部から遠ざかる方向に 力を受けるので 中央にほぼ絶縁体の層ができる - + - + (+) + (ー) - + - + - N型 P型 順電圧をかけると, 両キャリアは 互いに他方の半導体側に 流れ込んでいくので 接合を通って大きな電流が流れる - + - + - + (ー) (+) - + + - + + + - -

(5)PN接合の整流特性 順方向のときの電流 ただし逆電圧を大きくすると, ある電圧(ツェナー電圧: Zener voltage)以上で 急に電流が流れ出す(ツェナー効果)。 電流(I) ツェナー電圧 電圧(V)

(6)トランジスタ NPN型 PNP型 通常は,エミッタの不純物を最大にし, コレクタの不純物を最小にする。 (E) N P N (C) ベース(B) ベース(B) エミッタ (E) コレクタ (C) エミッタ (E) コレクタ (C) ベース(B) ベース(B) 通常は,エミッタの不純物を最大にし, コレクタの不純物を最小にする。

2.1.3 各種半導体素子 ① 太陽電池とフォトダイオード ② 可変容量ダイオード(バリキャップ,バラクタ) 2.1.3 各種半導体素子 ① 太陽電池とフォトダイオード ② 可変容量ダイオード(バリキャップ,バラクタ) ③発光ダイオード(LED),レーザダイオード(LD) ④ 定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)

(1)太陽電池とフォトダイオード ① 光を直接電力に変換する素子 ② シリコン,ガリウム・ヒ素,硫化カリウム等によりP型,N型半導体を作る。 ① 光を直接電力に変換する素子 ② シリコン,ガリウム・ヒ素,硫化カリウム等によりP型,N型半導体を作る。 ③ シリコンとしては,単結晶シリコン,多結晶シリコン,アモルファスシリコン 等が使われるが,光吸収係数が大きく光伝導度が高いアモルファスシリコンが最も材料として適している。 ④ 接触面で光子が吸収され,1 対の電子と正孔ができる。 ⑤ 電子がN型へ,正孔がP型に移動することで,電流が生じる。 [注]アモルファス状態とは, 規則正しい格子を作らず集合している固体の状態

フォトダイオード 与えられるバイアス電圧によって3モードに分類できる。 特に,逆電圧をかけて,なだれ増倍現象を利用するフォトダイオードを 電流 VB 光起電力 電圧 暗電流 アバランシェ フォトダイオード (APD) フォトダイオード (PD) 太陽電池 (PD) 特に,逆電圧をかけて,なだれ増倍現象を利用するフォトダイオードを APD(Avalanche Photodiode)という。

フォトダイオードの動作 太陽電池と同じく,光起電力効果によって電圧が発生する。 これを利用して光検波器として使われる。 N層 空乏層 P層 接続 フェルミ準位 光 - n p - qVb 価電子帯 R Vb 光 空乏層 + + (a) pn接合の例 (b) pn接合のエネルギー帯

(2)可変容量ダイオード ① pn接合に加える逆方向電圧を大きくすると, 静電容量が減少することを利用した素子。 ① pn接合に加える逆方向電圧を大きくすると, 静電容量が減少することを利用した素子。 ② ダイオードの空乏領域はコンデンサと同様の働きを持ち, 逆電圧が増加すると 空乏領域の幅も広がるので, コンデンサの極板間隔が広がったのと同じことになり, 結果的に静電容量が減少することとなる。 ② バリキャップ,バラクタとも呼ばれる。 ③ TV,ラジオ等の電子チューナとして利用されている。

(3)発光ダイオード,レーザダイオード ① pn接合で順方向電流を流すと電子と正孔の再結合の際, 光を発するダイオード。 ① pn接合で順方向電流を流すと電子と正孔の再結合の際, 光を発するダイオード。 ② GaP,GaAsなどが材料。 ③ LEDの場合数mA~数10mA,LDの場合100mA程度を流す。 ④ LEDは長寿命,高効率で動作が高速であるため,計測器の文字表示等に使用される。 ⑤ LDは特定の波長の光を放出できるので,光通信等の光源として使用される。

(4)定電圧ダイオード(ツェナーダイオード) ① pn接合で逆方向電圧をかけ降伏現象を利用して基準電圧を作る。 ② 不純物濃度によりツェナー電圧が調整される。 ③ 6~8Vぐらいのものがよく使われる。