2.6 スループットと伝送品質 以下の2つの点からデータ伝送を評価する ■スループット : データの実効転送速度

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2.6 スループットと伝送品質 以下の2つの点からデータ伝送を評価する ■スループット : データの実効転送速度 ■スループット : データの実効転送速度 ■伝送品質 : データの劣化程度の値が低い

2.6.1 スループット (通過量:throughput) 1秒間に受信側に届いたデータ量 ■データ長がある程度短いとき,データ長が長くなることで符号誤りの可能性が増え,わずかにスループットが下がる。 ■ある程度以上長くなると徐々にスループットが上がってくる。  (伝送路の性能にもよるが,LANでは伝送速度の8~9割程度) 符号誤りの影響 限界スループット値 (伝送速度の8~9割) スループット データ長が長くなること によるスループットの向上 データ長(対数軸)

2.6.2 伝送品質 (1)符号誤り率 データ伝送品質は,正確にデータが伝送されたかどうかによって判定する。 ① ビット誤り率(BER:Bit Error Rate) 送信ビット数と誤って受信されたビット数の比. すなわち,Nビットが送信され,n個の受信ビットが誤っている場合,    ビット誤り率=n/N とする.基幹回線の場合は10-8以下,End to End では,10-5 ~10-7 程度。 ② キャラクタ誤り率(誤字率) (CER:Character Error Rate) 送信された文字数に対して,誤って受信された文字数の割合. 利用者にとっては文字数の誤りのほうが理解しやすいので, 加入電信回線の品質を評価する場合等に使われる. ③ ブロック誤り率 (Block Error Rate) 送信ブロック数に対して,誤って受信されたブロック数の割合.

バースト的符号誤りの評価 ビット誤り率等はランダム誤りが前提であり,データ,ファクシミリ, 映像信号等のバースト性符号誤りを表現するのには向いていない. そこで,単位時間 T 0 における平均誤り率がしきい値 10-m を超えるような 単位時間の数が観測時間長 Ti に占める時間率を%で表す方法が採用される ようになってきている. (考え方)  FAXなどの画像では, 気づけない程度のノイズであれば正常のうち, あまりにノイズが多すぎれば異常とみなす。

時間率を用いる場合の測度 ① %ES(Errored Seconds) 稼働時間中に符号誤りのある秒の割合.すなわち,単位は秒,mは ∞ . (1ビットの符号誤りも許されないサービスの評価) ② %EFS(Error Free Seconds) ESの逆.符号誤りのない時間と測定時間の比率である. ③ %DM(Degraded Minutes) 電話サービス用.稼動時間中で,%SESを除く連続時間中に しきい値10-6を超える符合誤りのある分の割合. すなわち,単位は分,mは 6 である. (符号誤りが雑音として検知可能な電話サービスに適する) ③ %SES(Severely Error Seconds) 単位は秒,mは 3 である. 瞬断,同期外れ,フェージング,降雨減衰等を要因とする バースト誤りを検討する際に役立つ.

用語 ① アベイラブル時間 伝送品質を規定する上で対象とする時間。 全観測時間のうち,通信不可能と考えられるアンアベイラブル時間を除く。 ② アンアベイラブル時間 全観測時間のうち,通信不可能な時間。安定品質の規格対象である。 アンアベイラブル時間は,連続10秒間のそれぞれの秒の ビット誤り率が1×10-8より悪い場合を意味する。

(2)伝送遅延(delay time / latency) 伝送路での伝播遅延と,端末や中継機器での一時的な蓄積遅延により発生。 データ長が長ければ長いほど悪くなる。 ■データ通信:通信途中の接続断 ■音声通信 :送信者エコーの増大,音声の到達遅延      (衛星通信の場合は,片道240m秒) ■マルチメディア通信:音声と映像の等時性が破られる ■パケット通信では,パケットの伝送遅延時間の平均値(平均伝送遅延時間)で評価する。単位 秒(s),ミリ秒(ms),マイクロ秒(μs) [音声の許容伝送時間] 片方向伝送遅延 ITU-T勧告 規定の条件 0 ~ 150 ms 許容 150 ~ 400 ms 許容 エコー抑圧機器の適用。 300ms以上では接続に注意 400 ms以上 不許容 極端な場合を除き接続禁止

(3)遅延ゆらぎ(delay variation) 伝送遅延時間の最大値と最小値の差。単位は,ms,μsなど。 データ長が長くなればなるほど悪くなる。 ■音声通信 :語頭,語尾切れ,雑音の原因 ■映像通信 :フレーム同期外れの原因 ■ATM基幹網では,許容値1ms以下。

(4)パケット損失率(packet loss rate) 送信パケット数に対する破棄パケットの割合。 トラヒックの増大,通信路の故障等で多くなる。 ■十分な品質が得られなかったり,回線切断の原因ともなる。 ■再送処理が行われる場合,伝送遅延の原因ともなる。

2.6.3 待ち行列 (1)待ち行列理論(queuing theory)とは ネットワークの理論的解析には,待ち行列を用いたシミュレーション等が 多用される。 サーバ(server) キュー(Queue) 客の到着 サービス完了 客の待ち行列 サービス実行

(2)ケンドール記号 X / Y / S (N) X : 客の到着分布 Y : サービス時間分布の種類 S : 窓口数 M : ポアソン分布または指数分布 D : 一定分布 G : 一般分布

ケンドール記号の例 M / M / 1 客の到着 : ランダム(ポアソン分布) サービス時間 : ランダム(指数分布) 窓口 : 1 サービス時間 : ランダム(指数分布) 窓口 : 1 キュー : 無限大 M / M / 1(200) 客の到着 : ランダム(ポアソン分布) キュー : 200 M / D / 3 客の到着 : ランダム(ポアソン分布) サービス時間 : 一定 窓口 : 3 M / G / 1 客の到着 : ランダム(ポアソン分布) サービス時間 : 一般分布(標準偏差と平均値既知) D / Ek / 1 客の到着 : 一定 サービス時間 : k相アーラン分布

M/M/1モデルでの計算例 ① 平均到着率(単位時間当たりの処理要求数) : λ ① 平均到着率(単位時間当たりの処理要求数) : λ ② 平均サービス率(単位時間当たりの論理的な利用可能者数) : μ ③ 窓口への平均到着時間 : 1/λ ④ 平均サービス(処理)時間 : 1/μ ⑤ 窓口利用率 : ρ ρ =窓口への平均到着時間÷平均サービス時間      =( 1/μ)÷(1/λ)=λ/μ ⑥ 待ち行列にいる利用者数(処理要求数) : L     L =ρ/(1-ρ) ⑦ サービス(処理)時間を含まない平均待ち時間 : W1     W1 =待ち行列にいる利用者数×平均サービス時間      =L×1/μ={ρ/(1-ρ)}/μ=ρ/{μ・(1-ρ)} ⑧ サービス(処理)時間を含む平均待ち時間 : W     W =サービス時間を含まない平均待ち時間+平均サービス時間      =W1+1/μ =ρ/{μ・(1-ρ)}+1/μ      ={ρ+(1-ρ)}/{μ・(1-ρ)} = 1/{μ・(1-ρ)  または = 1/{μ・(1-λ/μ)}=1/(μ-λ)

2.6.4 通信サービス品質 (1)QoS(Quality of Service)とは  サービスしようとする通信のトラフィック特性や伝送品質に関する要求をあらかじめ申告し,要求に応じたコネクションを提供して,通信の品質を満足または保証するときの要求.  [ATMの場合]   セル転送遅延,セル遅延変動,セル廃棄率 ■サービス品質について交渉(ネゴシェート)  呼の設定時または呼の通信中に,サービス品質について交渉(ネゴシェート)が行われる.サービスの品質についての交渉では,トラフィック特性面からQoSをクラス分けし,必要なパラメータを明示的あるいは暗黙的に申告する.

(2)ATM(B-ISDN)のサービスクラス トラフィック特性分類 CBR VBR ABR UBR 主な対象 音声 可変速度 ファイル転送 アプリケーション 動画像 符号化 LAN間接続 擬似回線 音声/動画像 PCR PCR 申告パラメータ PCR SCR MCR なし MBS セル損失率 セル損失率 保証される品質 セル遅延時間 セル遅延時間 セル損失 なし セル遅延変動 セル遅延変動

サービスクラスの説明 申告受付制御を,コネクション受付制御(CAC: Connection Admission Control)という。 ■固定ビットレート CBR(Constant Bit Rate)   PCR(Pack Cell Rate)を申告。最大のセルレートとなる。 ■可変ビットレート VBR(Variable Bit Rate)   平均的なセルレートSCR(Sustainable Cell Rate)とPCRが継続する度合いである最大バーストサイズ(MBS:Maximum Burst Size)を指定。 [統計的分割多重のとき] ■ ABR(Available Bit Rate) 通信中にネットワークの混雑度合いを端末にフィードバックし,端末はそれに応じて,セルの送出を制御する。 ■ UBR(Unspecified Bit Rate) ネットワークに運よく空きがあれば転送されるが,そうでないときは破棄される。 [申告と異なる場合]  使用量パラメータ制御(UPC:Usage Parameter Control)が行われる。  UPCは,ポリシング(policing)とも呼ばれる。