欧州の風力発電から学ぶ ~日本は10年以上遅れをとっている~

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1 屋根貸しセミナー 「屋根貸し」の実例紹介 平成 26 年 2 月 13 日 小諸市太陽光発電屋根貸しマッチング事業 中村 嘉寿良.
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エネルギー変換技術の評価例:発電技術 立場 (ステークホルダー) 評価項目 評価細目 利用(適用)技術 放射性廃棄物処分費用?
電力小売自由化に伴う事業類型の見直し ○ 東京電燈の開業(明治19年)以降、各地に電力会社が誕生。工業化の進展や第1次世界大戦中の好景気等により電力需要増大。世界恐慌等を背景に過当競争(昭和7年:約850社(ピーク))が進み、事業者の合併・吸収が進展、5大電力に集約(東京電燈、東邦電力、大同電力、宇治川電力、日本電力)。
発電方法の分析と提案 ~風力発電に対する分析~ ~太陽熱発電に対する提案~
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本時の目標 エネルギーを有効に活用するにはエネルギー変換効率を髙める必要があることを知る。
太陽電池の特徴 玄海原発(347.8万kW)と同発電すると 福岡市の約0.68倍( 233km2 ) クリーンで枯渇のおそれなし
クイズ 世界のエネルギー事情             鳥居 大斗.
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どっちの言い分ショー!! ~どうなる日本の電力自由化~
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電力自由化における事業モデルの研究 ~電力システム改革に関わるフェールセーフについて~
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日本の原子力政策の現状と課題 c 大谷紗代.
電力自由化の是非 肯定派.
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核燃料サイクルとは何か ウラン 軽水炉 使用済み核燃料 高レベル 放射性廃棄物     再処理 プルトニウム 高速増殖炉 プルトニウム.
> > = = = 調整火力維持+蓄電池コストの抜本的低減 現状 将来 150円 25円 15円 発電 再エネ 再エネ
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電力改革と電力広域的運営推進機関.
長崎県五島市沖で国内初となる2MWの浮体式洋上風力発電施設を建造・設置・運転・評価
2014年モデルプラント試算結果 電源 原子力 石炭 火力 LNG 風力 (陸上) 地熱 一般 水力 小水力 バイオマス (専焼)
事例研究(ミクロ経済政策・問題分析 III) - 規制産業と料金・価格制度 -
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2014年モデルプラント試算結果 電源 原子力 石炭 火力 LNG 風力 (陸上) 地熱 一般 水力 小水力 バイオマス (専焼)
我が国のエネルギーの歴史:一次エネルギー供給量の推移と需給構造の変化
環境省 再エネ加速化・最大化 促進プログラム 2018年版 概要
原子力発電停止の影響 中京大学経済学部増田ゼミD班.
二次電池利用による 不動産オフィスビルの環境対応モデル
「市場と社会」研究会 原子力ルネッサンスvs再生可能エネルギー 次世代エネルギーシステムの展望
「ベトナムにおける協同組合とマイクロインシュアランスを活用した保険市場開拓の可能性」
中国電力の脱原発の可能性 アカデミー6班 2年 川島 昭紀 (大東・経済) 久保田 藍 (大東・経済) 白根 秀一 (日本・経済)
地球環境と技術 エネルギー安全保障と技術開発
新エネルギーシステム (New Energy System)
水素社会の実現に向けたロードマップ フェーズ1 水素利用の飛躍的拡大
◆各電気事業者の電力供給の計画を取りまとめると共に、地域間連系線の増強等に関する長期方針や個別の増強計画を策定する。
地球温暖化防止に必要なものは何か E 石井 啓貴.
九州気候区の高専における太陽光発電 ◯葉山清輝,大山英典 (熊本電波高専) 中川重康 (舞鶴高専) 仲野 巧 (豊田高専)
蓄電池 必要な 電気・熱 (温水を含む)を供給 再生可能 エネルギー 水電解装置 水素貯蔵タンク 燃料電池 給水タンク 水素を活用した
九州電力 ~脱原発の可能性~ 小山 夏未(日大・経済) 稲葉 弘樹(日大・経済) 狩野 陽一(日大・経済) 西﨑 美帆(日大・経済)
7基 12基 16基 7基 18基 原子炉設置 変更許可済 新規制基準への適合性審査中 適合性審査 未申請 稼働中 廃炉決定済 ※
EDF 47% Engie 64% Iber. 54% ENEL 61% RWE 43% E.ON 65% 電力→ ガス→ 電力→ 電力→
2日間の活用調整力(kW)と発電電力量(kWh)
環境省 再エネ加速化・最大化 促進プログラム 2018年版 概要
離島の再生可能エネルギー・蓄エネルギー導入促進事業
一次エネルギー消費上位国 消費mote % 生産mote 自給率(%) 米国 中国
Green Powersを 世の中に広めよう
今年の冬の厳寒期における 四国電力管内での電力の需給状況 四国電力 アカデミー7班 1年 後藤 友彦 (日大・産業経営) 小林 航
10kwからの企業用太陽光発電 ソーラーパワージャパン (商標登録出願中).
我が国の再エネポテンシャル 担当課:地球局事業室技術L( )
3日間の活用調整力(kW)と発電電力量(kWh)
環境省 再エネ加速化・最大化 促進プログラム 2018年版 概要
日本の原子力発電所の運転・建設状況 (商業用・2010年3月末現在) 運転中 建設中 着工準備中 4-4 出力規模 50万kW未満
269 万kWh/km % 1% 9% 181 万kWh/km % 12% 4%
E.ON(独) Iberdrola(西) DONG Energy(デンマーク) Centrica(英)
東京電力エナジーパートナー 九州電力 関西電力 中部電力 大阪ガス 神戸製鋼所 販売窓口50拠点、販 売スタッフ250名体 制を目指す。
5.9GW※ 1.4 GW ※ 6.7 GW ※ 海外比率10% 海外比率5% 20 GW 10~12 GW 10 GW 海外比率25%
資料1 2015年度夏季の電力需給対策について (概要) 2015年5月22日 電力需給に関する検討会合.
木下 健(東大生研)、寺尾 裕(東海大)、高木 健(阪大)、田中 進(三井昭島)、井上憲一(IHIMU)
「エネルギー・環境に関する選択肢」 原子力の発電コストに係る検証
発電方式別の二酸化炭素排出量
RE100とは? 2014年に結成した、事業を100%再エネ電力で賄うことを目標とする企業連合 RE100企業 再エネ 100% 調達.
新エネルギー ~住みよい日本へ~ E 山下 潤.
Presentation transcript:

欧州の風力発電から学ぶ ~日本は10年以上遅れをとっている~ CASA東京支部定例会 欧州の風力発電から学ぶ ~日本は10年以上遅れをとっている~ 2014.2.16

日本は風力資源が豊か ~2011年環境省~ 日本の年間電力消費:10000億kWh 陸上風力の導入ポテンシャル:2.8億kW (稼働率20%で、年間4900億kWh) 洋上風力の導入ポテンシャル: 16億kW (稼働率30%で、年間42000億kWh) 導入ポテンシャル:エネルギーの採取・利用に関する種々の制約要因による設置の可否を考慮したエネルギー資源量 導入ポテンシャル:エネルギーの採取・利用に関する種々の制約要因による設置の可否を考慮したエネルギー資源量。賦存量の内数。

風力発電の電力量割合 ~2012年~ デンマーク  33.7% ポルトガル  22.0% スペイン    16.5% アイルランド 14.5% ドイツ      7.4% →欧州では、風力発電は立派な基幹電源 日本       0.4% →日本では、大量導入は無理だと思われている IPCC:国際連合環境計画(United Nations Environment Programme: UNEP)と国際連合の専門機関にあたる世界気象機関(World Meteorological Organization: WMO)が1988年に共同で設立。 1000人以上の科学者が、9000以上の科学論文を整理して、合意してまとめる。

欧州と日本の差は? チャレンジして、ノウハウを積み重ねて来た欧州 できない理由を挙げて努力しなかった日本 (10年以上の差がついている) 今、日本で言われている風力発電のデメリットは、欧州では既に解決済 欧州の風力発電から学ぼう! IPCC:国際連合環境計画(United Nations Environment Programme: UNEP)と国際連合の専門機関にあたる世界気象機関(World Meteorological Organization: WMO)が1988年に共同で設立。 1000人以上の科学者が、9000以上の科学論文を整理して、合意してまとめる。

風力発電は高くない 出所:コスト等検証委員会最終報告書

出所:「風力発電のための電力系統工学」オーム社 「集合化」で細かな変動はなくなる 風車200基 「集合化」すれば、蓄電池は不要 青森県六ヶ所村二又風力発電所 34基の風車にNAS電池 風車15基 出所:「風力発電のための電力系統工学」オーム社

1日の電力需要の変化と従来の対応 個々には、スイッチは突然オンオフされ、需要は変動している。 従来、個々の需要変動は気にせず、全体をまとめて傾向をつかんで対応している。 需要

従来の需要の予測と発電 1日前に電力の需要を予測し、発電計画を立て、発電所の準備をする。 予測に従い、発電所を動かし、実績との微妙な差を、即時調整可能な発電機で対応

等価需要 等価需要=需要-変動電源(風力など) 変動電源の予測ができれば、対応可能 等価需要

欧州の等価需要の予測と発電 天気予報を活用 1日前に等価需要(需要-変動電源)を予測し、計画を立て、発電所の準備をする。 さらに、3時間前により正確な予測を立て、発電所準備の精度を上げる。 予測に従い、発電所を動かし、実績との微妙な差を、即時調整可能な発電機で対応

出所:「風力発電のための電力系統工学」オーム社 年々高まる予測精度 欧州は予測のノウハウを積み重ねている 出所:「風力発電のための電力系統工学」オーム社

風力発電予測がビジネスに 風力発電予測の精度が上がると、発電調整の無駄が少なくなり、コストダウンになる。 欧州では、風力発電予測がビジネスになっている。

柔軟性(frexibility) 電力の等価需要を正確に予測し、 柔軟性(frexibility)で、発電の調整をする 柔軟性:水力、ガスタービン火力、コジェネ、      揚水、連系線、デマンドレスポンス、等      (調整には、多様な選択肢)

アイルランドの柔軟性 風力電力量:14.5%(設備容量で34.4%) ガスタービン(コンバインドサイクル発電CCGT)

ポルトガルの柔軟性 風力電力量:22.0% 水力発電:柔軟性の供給に最適な電源 (日本では、原発同様の一定量発電) 変動電源の瞬間的比率が90%以上を記録したことがあるが、系統の安定度を損ねることなく、対応できた。 → ノウハウをつかんだ ポルトガル:原発非導入決定国

デンマークの柔軟性 風力電力量:33.7% コジェネ(系統運用者が遠隔制御できる) スウェーデン、ノルウェーとの連系線(市場取引) ・・・連系線の先には、水力発電  スウェーデン、ノルウェーは、余った安い風力の  電気を買い、高い時に水力の電気を売れる ・・・北電、東北電、東電の連系のようなもの

欧州の柔軟性 連系線に頼らない国も多い。 火力発電だけでなく、水力発電、コジェネなど、多様な柔軟性で対応をしている。

出所:エネルギー白書2011(資源エネルギー庁) 日本の会社間連系線 出所:エネルギー白書2011(資源エネルギー庁)

日本の会社間連系線の設備容量比率 ~2011年ピーク需要に対する容量比~ 北海道電力: 12.4% 東北電力 : 55.4% 東京電力 : 14.8% 中部電力 : 27.4% 北陸電力 :110.6% 関西電力 :105.2% 中国電力 :228.1% 四国電力 : 69.8% 九州電力 : 36.5% 意外に多い!

総発電電力量に対する会社間取引電力量の比率 2010、2011、2012年度 北海道電力: 0.8%、 9.5%、 0.1% 東北電力 :23.1%、13.3%、10.2% 東京電力 : 6.9%、 3.4%、 3.0% 中部電力 : 4.1%、 2.2%、 4.5% 北陸電力 :20.8%、 3.5%、 3.3% 関西電力 : 4.1%、 4.5%、 4.7% 中国電力 : 1.5%、 4.1%、 3.2% 四国電力 :15.3%、13.1%、 2.9% 九州電力 : 0.1%、 1.5%、 2.7% 連系線は余っている!

連系線が余っているのは制度的問題 変動電源を広域運用するルールがない ・変動成分をそのまま流してはいけない ・当日、トラブル以外で、連系線利用計画を変えてはいけない ルールを変えて、電力会社間の変動電力の市場取引を可能にするとともに、風力適地の北海道電力等の電力を、大量消費地の東電に送るための連系線の強化も必要

欧州の言説 電力系統に連系できる風力発電の量を決めるのは、技術的・実務的制約よりも、むしろ、経済的・法制的枠組みである。 風力発電は今日すでに、大規模電力系統では深刻な技術的・実務的問題が発生することなく電力需要の20%までを占めることができると、一般にみなされている。 20%以上というさらに高い導入率のためには、電力系統および風力発電を受け入れるための運用方法における変革が必要である。

日本は 日本は、欧州より10年以上遅れている。 まずは、風力などの変動電源を、最低20%程度は導入する方針を定め、ノウハウを獲得しながら、欧州に追いつき、追い越す努力をすべきである。 それができたら、さらにその上をめざす。 日本の技術力で、できないはずがない。

終 情報は「日本の知らない風力発電の実力」安田陽著、オーム社 より得ました