第10回 商法Ⅰ 2006/06/14
前回の内容 有価証券の意味 約束手形 無因証券性と設権証券性 小切手
無因証券性 原因関係 手形関係 原因関係が消滅しても手形関係に影響なし
設権証券性 約束手形用紙 手形要件を記入 受取人に交付 権利が発生
手形債務は、手形上の記載で決まる 文言証券性とは 手形行為の内容は、手形証券上に記載された文言によって決められ、手形行為をおこなった者は、手形上の文言どおりの債務を負担する
手形債務は、手形上の記載で決まる 500万円 売主 買主 誤って5000万円 約束手形振出
厳格な要式証券性とは 無因証券性 設権証券性 手形上の権利は原因関係に関係なく手形の内容から判断 文言証券性 証券の記載内容があらかじめ法定する必要
約束手形の手形要件(手形法75条) 1 約束手形文句 2 支払約束手形文句 3 支払期日(満期) 4 手形金額 5 支払地 6 受取人の名前 1 約束手形文句 2 支払約束手形文句 3 支払期日(満期) 4 手形金額 5 支払地 6 受取人の名前 7 振出日 8 振出地 9 振出人の署名(銀行に届け出た印鑑)
約束手形
手形要件の事例(振出日の未記載) 振出日!書いてないけど? 振出人 裏書人 手形所持人 不渡り!
考えてみよう! Bさんは、10万円の商品の売買代金として、Aさんから、約束手形を受け取った。しかし、手形に記載された金額は100万円になっている。どうやら、Aさんが書き間違えたようだ。Bさんは、ラッキーと思い、100万円の借金があったCさんに、その手形で支払った。Cさんは、Aさんに手形上の記載どおり、100万円請求できるのだろうか 上の例で、Aさんは、実は手形に署名するのを忘れていたとしたらどうなるだろう。
空欄のある手形も有効? 振出人、受取人、満期、手形金額 手形要件の記載を欠けば・・・無効 欠けている要件の補充を将来行う権利(白地補充権)が存在している
手形法10条(白地手形) 未完成ニテ振出シタル為替手形ニ予メ為シタル合意ト異ル補充ヲ為シタル場合ニ於テハ其ノ違反ハ之ヲ以テ所持人ニ対抗スルコトヲ得ズ 但シ所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ為替手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
金額白地の補充 Aさん Bさん 100万円の範囲で金額を補充する約束 白地手形 1000万円 白地手形
白地の補充はいつまでに 満期の記載がある手形 満期から3年以内 満期の記載がない手形 振り出されたときから5年以内 裏書人がいるときは満期に支払呈示するまでに補充しておかなければならない
手形法70条①(時効期間) 引受人ニ対スル為替手形上ノ請求権ハ満期ノ日ヨリ3年ヲ以テ時効ニ罹ル 新商法522条(商事消滅時効) 商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる
考えてみよう! Xさんは取引先であるYの工場に原材料を納入している。通常は現金で決済しているが、あるとき、Yの都合で手形による決済が行われることになった。ところが、その手形をよく見ると、満期日の欄が空欄になったままである。はたして、この手形は有効なものと言えるのだろうか。
手形を譲渡するには便利な方法 手形は原則として裏書により譲渡されます。裏書とは手形上の権利を移転しようとする者(裏書人)が手形の裏面に被裏書人またはその指図人に対して手形金を支払うことを約束する旨を記載して被裏書人に交付すること
民法の定める債権譲渡方法 通知 前の債権者 (貸し主) 債務者 (貸し主) 承諾 譲渡人 承諾 債権譲渡 新しい債権者 (貸し主) 譲受人
裏書 手形の担保効力 振出人 裏書人 所持人 振出 裏書 再遡及 遡及 手形金請求 拒絶
考えてみよう! オートバイの売買代金として、約束手形を受け取ったAさん。その手形を、Bさんから購入する自動車の代金の支払にあてることにした。だが、手形で支払するのはAさんにとってまったく初めてのこと。友人に「裏書をして譲渡すればいいんだよ」と言われたものの、そもそも裏書の意味がわからない。いったい、どうすればいいのか。
権利行使が簡単 所持人 被裏書人 振出人 第一裏書人 第二裏書人 Dは実質的権利を証明することなく、Aに手形金を請求できる
考えてみよう! Dさんは、A→B、B→C、C→Dと裏書が連続している手形を持っていた。満期が近づいてきたので、Aさんに手形金の支払を請求しようと考えているDさんだが、一つ疑問があった。「自分がCさんから手形を譲り受けたのをAさんは見ていたわけではない。それでも、Aさんに手形金を請求できるのか?」。Dさんは、AさんがBさんへ振り出した手形がさらにCさんに渡り、そしてそれを最終的にCさんからDさんが譲り受けたことを証明しなければならないのか。
裏書の連続 乙野次郎 印 丙野三郎 丙野三郎 印 丁野四郎 丁野四郎 印 戊野五郎
乙野の署名が偽造 乙野の別名が戊野 乙野次郎 印 丙野三郎 乙野次郎 印 丙野三郎 丙野三郎 印 丁野四郎 戊野五郎 印 丁野四郎
乙野次郎 印 北野武 社会通念上同一と認められる場合は裏書の連続は認められる たけし 印 丁野四郎
乙野株式会社代表取締役 乙野次郎 印 丁野四郎 裏書の記載が明確性を欠いており、会社名義とも個人名義とも読める場合