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Published byちかこ あかさか Modified 約 8 年前
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なぜ、消費税引上げ でなければならないのか? 学習院大学経済学部教授 鈴木 亘
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1. 社会保障と税の一体改革の評価 ① 年金、医療、介護、保育、雇用、貧困と いった社会保障分野の非効率、不合理な制 度、既得権益に一切踏み込まずにそれを温 存し、 ② さらに機能強化として、焼け太りさせた挙 句、 ③ そのツケを、相変わらず、現在の現役層や 将来世代が中心に負担する消費税引上げで 賄おうとするもの。 ④ 財政再建につながる程のインパクトもなく、 景気・税収へのマイナス効果が大いに懸念 される。 ⑤ 震災後という状況変化に、全く適合してな い。
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2. 社会保障の給付増と負担増は、 はたして国民の意思(選好)か? 小さい政府を目指す「新自由主義」と誤 解されている経済学であるが、「給付 増・負担増」か「給付減・負担減」とい う選択は、同じ予算制約上の国民の選好 の問題であり、一概に、どちらが良いと いうものではない。 しかし、社会保障の給付増・負担増とい う今回の選択肢は、官僚、政治家には都 合の良い「選好」であっても、はたして 国民の意思(選好)と言えるのだろう か?
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国民の選好に関する研究 少なくとも、国民の意思、選好を確認す べきだが、(愚かな?)国民の意思は、 給付増・負担減を望む矛盾するものとし て軽視される。 しかし、ほぼ全社会保障制度が賦課方式 で、負担する人々と給付を受ける人々が 異なっている現状では、矛盾はむしろ当 たり前。財政赤字の長期間の放置が拍車 をかける。 本来は、給付増には負担増が伴う財政規 律の下での選好を計測する必要がある。
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鈴木・金子 (2011) による 高齢者コンジョイント・スタ ディー 選考表明法 (Conjoint Analysis) を用いた費用便益 分析によれば、給付減の B/C 比の方が負担増より も大きく、医療保険の給付減に高齢者の選好が ある。 引用)鈴木亘・金子能宏「第 4 章 高齢者医療において政府はどこまで責任を持つべきか」八代尚宏・鈴木亘編 『成長産業としての医療と介護』日経新聞出版(現代経済学シリーズ)、近刊
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3. 給付増は、将来 3 倍返しの法則 高齢者 / 現役比率は、 1 : 3 から約 1 : 1 へ 注) 2009 年までは実績値 ( 総務省統計局「国勢調査」および「人口推計」 ) 、それ以降は予測値 ( 国立社会保障・人口問題研究所「わが国の将来推計人口 (2006 年 (平成 18 年) 12 月推計 ) 」 ) を筆者加工。
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ほぼすべて賦課方式をとっている社会保険制 度は、おおざっぱにいえば、現在の負担が 3 倍になる計算。 つまり、現在の給付増は、将来の 3 倍の負担 増を生む。現在 2 倍の給付増ならば、将来負 担は 6 倍( 2×3 )となる。おつりは 3 倍返し。 現在の高齢者の選好はともかく、現役世代、 将来世代が給付増・負担増を選好することは、 さらにありえないと思われる。 逆にいえば、給付減は、将来は 3 倍楽になる わけなので、現役・将来世代に優しい選択。 公的保険の給付減でも、フェアな民間保険 (企業年金や民間医療保険、介護保険)で補 えば良い。
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4. 社会保険への多額の消費税投入は、 一種の「麻薬」 そもそも現在、消費税が充てれており、さら に消費税引き上げ分を充てる高齢者 3 経費とは、 後期高齢者医療制度、介護保険、基礎年金の 「本体」ではない。 本来、保険料や自己負担で賄うことが筋出る 「社会保険」に、合理的な説明が不可能なほ ど多額(全て 5 割)に投じられている公費であ る。 現役層の社会保険(国保、きょうかい健保、 共済)や保育などの分野も同様の構図。 この状況は、「町内会の夏祭りの屋台」。
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つまり、多額の公費投入で直面価格が安い ために、大きな超過需要が生じる。 特に、高齢者は公費投入率が高く、加えて 賦課方式なので、ますます大きな需要。 また、直面価格が安いので、供給側のサー ビスの質の低さ、非効率などにも消費者の 厳しい目が向かない。業界の既得権、高コ スト体質が温存され、給付削減や効率化が 困難。 たとえ目的税であったとしても、こうした 歪みをもたらす公費投入(消費税投入)を 放置することは望ましくない。定義上、究 極の目的税である保険料引き上げこそが、 まず、望ましい。
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相続資産から財源調達(死後一括 清算方式)と積立制度の導入 さらに、保険の原則(リスクが高いものは 保険料も高い)からすれば、特に、現在の 高齢者には受益分の高負担を課すべき。 しかし、約 800 兆円の家計貯蓄を持つ現在 の高齢者世代であっても、いきなり生前の 徴収は困難であろうから、高所得者以外は、 相続資産からの死後一括清算方式を併用し てはどうか。 相続資産は毎年 85 兆円。現在、その中から の徴収は、相続税の 1 兆円余りに過ぎない。
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相続資産は高齢化で増え続けるので、そこ からの徴収は安定財源。 社会保険への公費投入分を返却するという クローバックの考え方を適用しても、十分 に「大義名分」が立つ。 現役世代、将来世代は、今から高齢期の負 担増のための「積立」を開始してゆけばよ い。社会保険の公費投入も少なくしてゆく ので、相続資産課税は将来的には必要ない。 世代間不公平の改善の為には、「現在」の 高齢者の資産から財源確保することが不可 欠。
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当然、高齢者は生前贈与や消費を増やして、 相続資産を減らす「戦略的行動」をとること が予想される。しかし、現在の高齢者の資産 の多くは、予備的貯蓄や死亡時の不確実性に 伴うものであり、 85 兆円の一部を徴収するこ とは十分に可能。 また、生前贈与や消費増はむしろ、現状のよ うな景気には、プラスの効果があり、望まし い。 景気にマイナスで、世代間格差もほとんど変 えない(現在の高齢者からの徴収わずか、税 率も将来増加)消費税を社会保障財源にする 意味は?。 消費税は社会保障財源ではなく、むしろ震災 復興や将来的な財政再建の財源に充てるべき (恒常的な増税とは認識されず、消費減少効 果も小)。
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