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Published byたけなり あいしま Modified 約 8 年前
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蕁麻疹と漢方 (皮膚科) 熊本大学 熊本大学 寺 田 英李子 寺 田 英李子
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現代医学における蕁麻疹 痒みを伴う赤い発疹が突然現れ、数時間で消える もの。 皮膚;真皮の血管拡張により、血漿成分が滲み出 た状態。 症状;痒み、局所の熱感、患部の膨張、声枯、む かつき、気分の不快 皮膚の血管透過性の亢進と血管拡張に基づく真皮 上層の浮腫 マスト細胞由来のヒスタミンが関係
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現代医学における蕁麻疹 原因治療法 抗ヒスタミン剤 抗アレルギー剤 脱感作療法 食品 食品添加物 吸収抗原 虫毒 物理的刺激
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現代医学における分類 原因による分類 1.アレルギー性蕁麻疹 2.コリン性蕁麻疹 3.物理的蕁麻疹 (寒冷、日光、温 熱、水性、圧迫、機械 性) 4.接触蕁麻疹 5.血管性浮腫 経過による分類 1.急性蕁麻疹 2.慢性蕁麻疹
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中医学における蕁麻疹 風疹塊、陰疹(古い文献) 正気と邪気が拮抗し、邪気が肌表鬱滞し ているもの。 衛営の気;バランスの乱れ、不足 → 邪気が侵入しやすい。 風邪の侵入
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中医学における蕁麻疹 気や血の不足 衛営の気の不調 飲食の 不摂生 邪気が 皮膚表面 に鬱滞 蕁麻疹
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病機
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治療の方針 急性蕁麻疹;多くは外風による。 消風散など、風邪を除く 慢性蕁麻疹;内風によることが多く、様々 なタイプがある。 気や血を補う 胃腸を整える 証に よって 衛営の気を養う 方針を 立てる
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4 .弁証論治 風熱証 風寒証 衛外不固証 血虚受風証 肝鬱化火生風証
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風熱証; 発疹は赤みが強く 熱感があり、かゆみが非常に強い。 上半身や顔面を中心とする。 温まると増悪し冷やすと軽減する。 舌紅、苔薄黄~白、脈浮数。 疏風清熱止痒: 消風散(地黄 3 、石膏 3, 防風 2 、蒼朮 2 、木通 2 、牛蒡子 2 、知母 1.5 、蝉退 1 、苦参 1 、荊艾 1 、甘草 1 、当帰、胡麻は除く) 消風散合越婢加朮湯(越婢加朮湯;麻黄 6 、石膏 8 、生姜 3 、大 棗 3 、甘草 2 、朮 4 ) 十味敗毒湯加連翹(柴胡 2.5 、桔梗 2.5 、川穹 2.5 、茯苓 2.5 、防風 2.5 、甘草 1.5 、乾生姜 1 、荊艾 1.5 、連翹 2 、桂皮 2.5 、独 活 1.5 )など 4 .弁証論治 急性、 温熱性 蕁麻疹 に 相当
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4 .弁証論治 風寒証; 発疹は淡色で、冷風、冷水で悪化し、 温めると減る。 比較的短時間で軽快することが多い。 下半身、四肢を中心に広がる。 舌淡、舌薄白、脈は浮緊あるいは遅 緩。 一時的に衛気と営気の調和が乱れた状態に、 寒を伴う風邪が侵入。 疏風散寒: 桂麻各半湯加防風荊艾( 桂枝 3.5 、芍薬 2 、生姜 2 、甘草 2 麻黄 2 、大棗 2 、杏仁 2.5 麻黄附子細辛湯( 寒冷蕁麻疹の基本処方、麻黄 4 、附子 0.5 ~ 1 、細辛 3 ) 慢性蕁麻疹の一部、 寒冷蕁麻疹
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4 .弁証論治 衛外不固証; 常に自汗が出て、汗をかいた状態で風を 受 けると針頭~空豆大の皮疹が生じる。 舌淡、苔薄、脈沈細。 もともと虚弱体質の人。衛気が不足して皮膚を引き締める ことができず汗をかきやすい。 衛営の気の虚弱 → 風邪を追い払えない 固表御風: 玉屏風散 (黄耆 18 、白朮 12 、防風 9 ) 桂枝湯加減 (桂枝 4 、芍薬 4 、生姜 4 、甘草 2 、大棗 4 )
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4 .弁証論治 血虚受風証; 皮疹の発作が一日のうちに何度も反復し、 長 期に及び治りにくい。午後や夜間に増悪するこ とが多 い。心煩、動悸、イライラ、口渇、不眠、眩暈 などを伴う こともある。舌体は細、脈は細。 当帰飲子加蝉退 (当帰 5 、芍薬 3 、地黄 4 、何首烏 2 、川穹 3 、白疾斄 3 、 防風 3 、荊艾 1.5 、黄耆 1.5 、甘草 1 、蝉退) 当帰飲子合消風散 (かゆみが強いとき) (当帰飲子プラス地黄 3 、石 膏 3, 防風 2 、蒼朮 2 木通 2 、牛蒡子 2 、知母 1.5 、 蝉退 1 、 苦参 1 、荊艾 1 、甘草 1 、当帰、胡麻) 長期化した慢性蕁麻 疹
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4 .弁証論治 肝鬱化火生風証; ストレスや、怒りっぽい性質の人に見られ る。 イライラ、ほてり、口苦、頭痛、高血 圧、目の充血な どを伴う。皮疹の消長は情緒の影響を 受ける。 舌赤、脈弦数。 ストレスや怒りが溜って肝気が鬱結し、熱をおびて炎上(肝火上炎)し、 体内に風を生じる。 竜胆瀉肝湯 (当帰 4. 地黄 5. 木通 3. おうごん 3 、沢瀉 3 、車前子 3 、龍胆 1 、 山 梔子 1 、甘草 1 ) 合消風散 (地黄 3 、石膏 3, 防風 2 、蒼朮 2 、木通 2 、牛蒡子 2 、 知母 1.5 、蝉退 1 、苦参 1 、荊艾 1 、甘草 1 、当帰、胡麻) 、 竜胆瀉肝湯合大柴胡湯 (大柴胡湯;柴胡 6 、黄ごん 3 、半夏 4 、大黄 1 、枳実 3.0 、芍薬 4.0 、大棗 3.0 生姜 2.0 ) コリン性蕁麻疹、 ストレス性蕁麻疹
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4 .弁証論治 風熱証 風寒証 衛外不固証 気血両虚証 血虚受風証 衝任失調証 心経欝熱証 脾胃不和証 虫積傷脾証 毒熱煩営証 血於経脈証 肝鬱化火生風証
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漢方治療 寒冷蕁麻疹 温熱性蕁麻疹 心因性蕁麻疹 副作用で抗ヒスタミ ン剤が使えない場合 各種の現代薬が効か ない時 左以外の場合 ・・・対症療 法として抗ヒスタミ ン投与 西洋学的治療 慢性蕁麻疹は、ほとんどが非アレルギー性で、現代 医学的には原因不明の場合が多い。 西洋医学的な対症療法で効果がない場合、漢方 薬が用いられる。
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症例 2 27 歳、女性 主訴;身体各所の強いかゆみと搔破により生じる膨疹。 既往歴;アレルギー性鼻炎 数か月前より皮膚を強く圧迫したり摩擦したりすると 痒みが生じ、掻破により膨疹を生じるようになった。 その後徐々に症状が高度になり、ハンドバッグを下げ るような軽度の刺激だけでも痒みと膨疹を生じるよう になった。機械的刺激だけでなく、入浴などの温熱刺 激でも蕁麻疹を生じることがある。また、水仕事に よって増悪する両手の角質層の肥厚と湿疹性の変化が ある。 舌質は赤く、薄黄色を帯びた白苔がある。
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症例 2 (続き) 弁証;風熱証 (舌の状態、温熱刺激での反応などか ら) 十味敗毒湯エキスの単独投与で、 2 ~ 3 日で 痒みは減少したが膨疹は変化なし。2週 間後に白虎加人参湯を合方し、痒みはさ らに減少したが膨疹はやはり変化なかっ た。さらに 1 週間後、十味敗毒湯合黄連解 毒湯とすると、皮疹はほぼ軽快した。
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風熱証; 発疹は赤みが強く 熱感があり、かゆみが非常に強 い。 上半身や顔面を中心とする。 温まると増悪し冷やすと軽減す る。 舌紅、苔薄黄~白、脈浮数。 疏風清熱止痒:消風散(当帰、胡麻は除く) 消風散合越婢加朮湯、 十味敗毒湯加連翹など 4 .弁証論治 急性、 温熱性 蕁麻疹 に 相当
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症例 3 2 歳、男児 主訴;体が温まった時を中心に生じる膨疹と痒み。全身 の 軽度の落屑と掻破痕。関節部のアトピー性湿疹。 生後六か月で離乳を始めたところ、皮膚がカサカサして きた。 1 歳頃から、体を動かして温まると躯幹を中心に膨疹が生 じる。 1 時間ほどで軽快するが、しばらくすると繰り返す。特に 風呂 上がりがひどい。食物アレルギーだと小児科で言われた が検 査は行っていない。 全身皮膚の、ごく軽い落屑があり、搔破痕がみられる。 肘や 膝の関節内部には湿疹性の変化があり、発赤もある。 やや 色白で痩せている。知能面、身体の発育に問題はない。 腹部にわずかに膨疹がある。膨疹の色調は赤みが少な い。
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症例3(続き) 弁証;血虚受風証 血色が悪く痩せており、皮膚の乾燥が あることから、血虚が基本に存在すると 考える。 治療;当帰飲子加減 と抗ヒスタミン剤 を処方した。漢方薬のみで、2~3日目 には膨疹は全く生じなくなった。皮膚の 乾燥も軽快した。
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4 .弁証論治 血虚受風証; 皮疹の発作が一日のうちに何 度も反復し、長期に及び治りに くい。 午後や夜間に増悪することが多 い。 心煩、動悸、イライラ、口渇、 不眠、 眩暈などを伴うこともある。 舌体は細、脈は細。 当帰飲子加蝉退 当帰飲子合消風散(かゆみが強いと き) 長期化した慢性蕁麻 疹
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主な方剤 【急性蕁麻 疹】 1.十味敗毒湯 ・急性蕁麻疹の第一選択薬として用いられることが多い。 祛風・清熱解毒・解表 2.消風散 ・盛り上がっている部位が赤く、痒みが強い場合 ・温熱蕁麻疹 祛風養血・清熱除湿 3.葛根湯 ・盛り上がっている部位が赤くないか、青白い場合 ・寒冷蕁麻疹 辛温解表
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1.加味逍遙散合香蘇散 自律神経失調気味の人、ストレス、うつ状態になり やすい人。 女性では生理が乱れがちの人や更年期障 害の人などに効果が高い。 加味逍遙散; 疏肝解鬱・健脾補血、調経 2.十全大補湯合香蘇散 体力、気力が低下していたり、病後や、食欲がな く食が細い人などに効果がある。 十全大補湯; 温補気血 3.防風通聖散 便秘気味、尿量が少ない、食欲がある、肥満傾向、 肌が荒れやすい、 通常は丈夫で暴飲暴食などをしやすい人など。 清熱解毒、利水、解表 【慢性蕁麻 疹】
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その他 当帰飲子; どちらかというと虚証。皮膚が乾 燥し痒みのある皮膚疾患など。 養血潤燥・祛風 竜胆瀉肝湯; 実証で、排尿痛、頻尿などの場 合。肝経。 清肝潟火・清熱利湿 越婢加朮湯; 実証で、浮腫、熱感、尿量 減少などがある場合 宣肺利水・ 健脾 麻黄附子細辛湯; 虚証、寒証に用いる。 助陽解表 桂麻各半湯; 比較的体力があり、病気の初期。 体の熱や腫れ、痛みやカユミを 発散 発汗解表・止咳 玉屏風散; 虚弱、風邪に侵されやすく、疲れ やすい人の多汗症、寝汗、疲労 倦怠感 益気固表・止汗
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おしまい
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