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社会保険神戸中央病院 緩和ケア病棟 新城 拓也編

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1 社会保険神戸中央病院 緩和ケア病棟 新城 拓也編
緩和医療教育スライド 消化器症状 社会保険神戸中央病院 緩和ケア病棟 新城 拓也編

2 消化器症状のマネージメント 1. 嘔気・嘔吐 2. 消化管閉塞 3. 便秘 4. Case study 現場での対応

3 消化器症状のマネージメント 1. 嘔気・嘔吐 2. 消化管閉塞 3. 便秘 4. Case study 現場での対応

4 Q1 がん患者のどのくらいの人に嘔気・嘔吐があるのか?
1.嘔気・嘔吐の一般的事項 Q1 がん患者のどのくらいの人に嘔気・嘔吐があるのか? 頻度 Grond S1) 1994 ペインクリニック初診時 1635名がん患者 27% 嘔気 20% 嘔吐 Morita T2) 1999 ホスピス入院患者 嘔気・嘔吐 29%入院時 48% 死亡まで Grond S J Pain Symptom Manage. 9: , 1994 Morita T J Pain Symptom Manage 18: ,1999

5 Q2 嘔気・嘔吐という言葉はどう使い分けているのか?
嘔気・嘔吐の定義 Nausea=嘔気,悪心 嘔吐に先だって起こる不快な感覚 Vomiting=嘔吐 消化管内容物を,口から排出する現象 金芳堂 内科診断学より

6 Q3 嘔気・嘔吐は,何を観察したらよいのか? 嘔気 持続時間 1日のうちで○時間 強さ 10段階で○ 嘔吐
 持続時間 1日のうちで○時間  強さ     10段階で○ 嘔吐      回数      1日のうちで○回(エピソードで数えることが多い*) (*補足 嘔吐 1エピソードとは1回嘔吐したことではなく,嘔吐発作の一連の経過を指す。すなわち 短時間に連続して,2,3回の嘔吐があったとしてもそれは「1エピソード」として数える 〜 JCOG 有害事象共通用語規準 v3.0日本語訳より)  量       一回○mL  性状(色調,臭い) 食物残渣、消化液(黄緑)、              便(茶・便臭)、出血(黒・赤) 嘔気・嘔吐に対する患者本人の評価  STAS**    0-1  今の治療で満足           2    もう少し緩和してほしい、急いでいない           3<  緩和してほしい **STAS 日本語版より 2.症状が患者に及ぼす影響:痛み以外の症状が患者に及ぼす影響 症状名( ) 0= なし 1= 時折の、または断続的な単一または複数の症状があるが、日常生活を普通に送っており、患者が今以上の治療を必要としない症状である。 2= 中等度の症状。時に調子の悪い日もある。病状からみると、可能なはずの日常生活動作に支障をきたすことがある。 3= たびたび強い症状がある。症状によって日常生活動作や物事への集中力に著しく支障をきたす。 4= 持続的な耐えられない激しい症状。他のことを考えることができない。

7 Q4 嘔気・嘔吐は,なぜ起こるのか? まず,二つに分けて考える 嘔気・嘔吐 消化管閉塞なし 消化管閉塞あり 第2章へ 次のスライドへ

8 CTZ VC 肝 腸 消化管閉塞がないときのモデル 前庭神経 高位中枢 化学受容体引金帯 嘔吐中枢 迷走神経 血流
H1 Achm CTZ 化学受容体引金帯 VC 嘔吐中枢 D2 5HT3 H1 Achm 5HT2 迷走神経 血流 (薬剤,毒物,代謝物の影響) 伸展受容器 Achm D2 5HT3 伸展受容器 CTZ:chemoreceptor trigger zone VC:vomiting center (Oxford Textbook of Palliative Medicine 3rd 2004より改変)

9 例1 薬剤による嘔吐(モルヒネの場合) モルヒネ CTZ VC 肝 腸 前庭神経 高位中枢 抗ヒスタミン薬 トラベルミン ドラマミン
H1 Achm ノバミン CTZ 化学受容体引金帯 VC 嘔吐中枢 セレネース D2 5HT3 H1 Achm 5HT2 迷走神経 血流 (薬剤,毒物,代謝物の影響) 伸展受容器 Achm D2 5HT3 伸展受容器

10 例2 薬剤による嘔吐(抗がん剤によるearly emesisの場合)
(シスプラチンなど) 前庭神経 高位中枢 H1 Achm CTZ 化学受容体引金帯 VC 嘔吐中枢 カイトリル ゾフラン ナゼアなど D2 5HT3 H1 Achm 5HT2 迷走神経 血流 (薬剤,毒物,代謝物の影響) 伸展受容器 Achm D2 5HT3 伸展受容器

11 例3 消化管が原因の嘔気・嘔吐(消化管運動麻痺や便秘)
前庭神経 高位中枢 H1 Achm CTZ 化学受容体引金帯 VC 嘔吐中枢 D2 5HT3 H1 Achm 5HT2 迷走神経 血流 (薬剤,毒物,代謝物の影響) 伸展受容器 プリンペラン ナウゼリン D2 Achm 5HT3 伸展受容器 便秘 (腸管拡張) 消化管運動麻痺 下剤

12 例4 高カルシウム血症による嘔吐 高カルシウム血症 CTZ VC 肝 腸 前庭神経 高位中枢 化学受容体引金帯 嘔吐中枢
H1 Achm CTZ 化学受容体引金帯 VC 嘔吐中枢 アレディア,ビスフォナールなど (ビスホスホネート製剤) D2 5HT3 H1 Achm 5HT2 迷走神経 血流 (薬剤,毒物,代謝物の影響) 伸展受容器 Achm D2 5HT3 伸展受容器

13 例5 脳病変による嘔吐(脳腫瘍など) 頭蓋内圧の亢進 脳腫瘍 CTZ VC 肝 腸 脳浮腫 前庭神経 高位中枢 薬物療法 ステロイド
グリセオール 頭蓋内圧の亢進 脳浮腫 脳腫瘍 抗ヒスタミン薬 トラベルミン ドラマミン 脳の様々な場所への作用 前庭神経 高位中枢 H1 Achm CTZ 化学受容体引金帯 VC 嘔吐中枢 D2 5HT3 H1 Achm 5HT2 手術,放射線療法 迷走神経 血流 (薬剤,毒物,代謝物の影響) 伸展受容器 Achm D2 5HT3 伸展受容器

14 Q5 嘔気・嘔吐の治療の流れは? 治療の選択 原因に応じた,薬物と治療の選択 原因の同定 何が原因なのか? 目標の設定 原因は一つなのか?
腹部のレントゲン 頭部のCT,MRI 血液検査 電解質の異常 肝障害 腎障害 など

15 Q6 嘔気・嘔吐の治療で,目標設定をどの様に組み立てるか?
結果 治療効果はどうか? 嘔気 持続時間・強さ 嘔吐 回数・量 経口摂取 総合評価 STAS 目標の設定 嘔気,嘔吐を扱うstudyでは 嘔気の評価としては持続時間、強さ;嘔吐の評価としては回数(エピソード数) などで表現されている。 結果,個別性をふまえた 個々の目標設定 個別性 患者自身の考えはどうか? 1)吐くくらいなら食べたくない 2)吐いたとしても食べたい 3)吐かないものだけ食べたい など

16 Q7 嘔気・嘔吐の治療薬には何があるか? CTZ VC 中枢性 末梢性 セレネース プリンペラン ナウゼリン ストロカイン アトロピン
D2 セレネース D2 D2 H1 Achm Achm プリンペラン ナウゼリン フェノチアジン系 ピーゼットシー,トリラホン(ペルフェナジン) ノバミン(プロクラルペラジン) コントミン,ウインタミン(クロルプロマジン) ストロカイン アトロピン ブスコパン コリオパン 5HT3 D2 H1 5HT3 Achm カイトリル ゾフラン セロトーン ナゼア ナボバン シンセロン ヒルナミン(レボメプロマジン) オランザピン(ジプレキサ) ガスモチン セレキノン ガナトン H1 抗ヒスタミン薬 ドラマミン,トラベルミン クロールトリメトン 前庭神経 CTZ 化学受容体引金帯 VC 嘔吐中枢 高位中枢 5HT3 D2 H1 5HT2 Achm 迷走神経 H1 Achm ピレチア,ヒベルナ(プロメタジン) その他 副腎皮質ステロイド剤 ベンゾジアゼピン系薬剤

17 Q8 嘔気・嘔吐の治療におけるevidenceは?
嘔気・嘔吐に関するRCTs Author Sample Stydy design Regime Findings 1 Hardy J, 2002 92 オピオイドによる嘔気 RCT ゾフラン 24mg/日 vsプリンペラン30mg/日 vs placebo 嘔気,嘔吐消失率 17,48% 36,52% 23,33% 3群間に差なし 2 Mystakidou K, 1998 280 除外 化学,放射線療法,消化管閉塞,薬物,中枢神経,代謝性 プリンペラン 40mg/日 +ステロイド (デカドロン 2mg/日) vs コントミン+ステロイド vs ナボバン 5mgなど 7通りの組合せ 嘔吐の消失率 ナボバン 78.9% >コントミン+ステロイド 33.3% >プリンペラン+ステロイド 23.6% ナボバンを含む群が有意に高値 3 Bruera E, 2000 26 胃内容物停滞 プリンペラン 80mg/日 (徐放剤,本邦未発売) プリンペラン>placebo 17 ± 12 mm vs 12 ± 10 mm VAS値が有意に低い Ondansetron ゾフラン Tropisetron ナボバン Metoclopramide プリンペラン Chlorpromazine コントミン,ウインタミン Hardy J Support Care Cancer 10: ,2002 Mystakidou K Cancer 83: ,1998 Bruera E J Pain Symptom Manage 19: ,2000

18 Evidenceの高いtrialではないが,有効性が示唆されているもの
Author Sample Study design Regime Findings 1 Bentley A, 2001 (PalliatMed 15: ) 40 35% 胃内容停滞,消化管閉塞 30% 薬剤,電解質異常 Prospec-tive audit 原因(7つに分類)に応じたガイドラインに従い治療を行う (薬剤 セレネース,プリンペラン,ブスコパン,ナウゼリン,レボトミン,シクリジン,ステロイドなど) 嘔気(score 1 best-5 worst) 82%(28/34)が消失 嘔吐(score 1best-5 worst) 84%(26/31)が消失 2 Wilson J, 2002 (J Palliat Care 18:84-91) 48 胃内容停滞 open プリンペラン mg/日 (徐放剤,本邦未発売) 症状に合わせて漸増 嘔気の改善度 Not 27%,Slightly 7% Moderately 29% Moderately to Highly 2% Highly 33% 3 Bruera E, 1996 (J Pain Symptom Manage 11: ) 100 連続100例 Retrospective cohort プリンペラン60mg-120mg/日 デカドロン 0-20mg/日 の組合せで3段階 Step 4はセレネースなどその他の薬剤とし4段階のladder 嘔気,嘔吐(score 0 best-4 worst) 3.6,3.5 (n=89 step 1) 3.1,3.3 (n=12 step 2) 2.7,3.3 (n=13 step 3) 3.3,2.6 (n=25 step 4) 98%の改善率 4 Passik SD, (J Pain Symptom Manage 23: ) 15 オピオイド治療中 ジプレキサ 0-10mg/日 嘔気(score 0 best-4 worst) Score 0mg 5mg 10mg (人数)

19 消化器症状のマネージメント 1. 嘔気・嘔吐 2. 消化管閉塞 3. 便秘 4. Case study 現場での対応

20 Q1 消化管閉塞とはどんな状態か?原因は何か? 口腔から,肛門に至るまでの消化管に閉塞が生じること。 原因 1.悪性腫瘍 ・消化器がん
 ・消化器がん  ・骨盤内悪性腫瘍 (卵巣,子宮,膀胱,前立腺がん)  ・がん性腹膜炎 2.良性  ・手術後の癒着  ・ヘルニア

21 Q2 消化管閉塞の嘔吐に特徴はあるのか? 閉塞部位による,嘔吐の特徴 上部消化管(食道,胃,十二指腸)
 未消化,胃液,十二指腸液や胆汁が混ざる  黄色・緑色  食後すぐに嘔吐、胸焼け  腹痛・腹満は少ない 下部消化管(小腸,大腸)  便汁,便臭のある吐物  黒色・茶色  腹痛・腹満

22 化学物質の産生(プロスタグランジン,VIP等)
Q3 消化管閉塞の症状はどの様に起こるのか? 消化管閉塞 (完全もしくは部分閉塞) 腸管運動の低下,停止 腸管収縮運動の亢進 疼痛(疝痛) 腸管の拡張 腸管内容物の↑ 腸粘膜面積の↑ 腸管内分泌の↑(H2O,Na,Cl) 持続した疼痛 (腸管の膨張,腫瘍,肝腫大) 腸管粘膜の損傷 腸管の浮腫,うっ血を伴う炎症 化学物質の産生(プロスタグランジン,VIP等) 嘔気 嘔吐 (Oxford Textbook of Palliative Medicine 3rd 2004より改変)

23 化学物質の産生(プロスタグランジン,VIP等)
Q4 消化管閉塞の治療は? 外科的手術 バイパス術 人工肛門 PEG PTEG ブスコパン オピオイド 消化管閉塞 (完全もしくは部分閉塞) 腸管運動の低下,停止 腸管収縮運動の亢進 疼痛(疝痛) 腸管の拡張 腸管内容物の↑ 腸粘膜面積の↑ 腸管内分泌の↑(H2O,Na,Cl) 持続した疼痛 (腸管の膨張,腫瘍,肝腫大) 腸管粘膜の損傷 腸管の浮腫,うっ血を伴う炎症 化学物質の産生(プロスタグランジン,VIP等) 嘔気 嘔吐 ステロイド 中枢性制吐剤 サンドスタチン ドレナージ 経鼻胃管 イレウス管 プリンペラン

24 Q5 消化管閉塞に対する,手術,ドレナージの処置の使い分けは?
食道での閉塞 原因 食道がん,肺がん 薬剤 効果が期待できない 手術 ステント留置術 バルーン拡張術 胃,十二指腸での閉塞 原因 胃がん,膵臓がん,肝臓がん 薬剤 あまり効果が期待できない 手術 PEG (胃ろうから外に内容物を排出) PTEG 消化管バイパス術 (ステント留置術) 処置 経鼻胃管(=short tube,NG tube) 小腸,大腸での閉塞 原因 大腸がん,がん性腹膜炎 薬剤 サンドスタチン ステロイド     中枢性制吐剤 手術 消化管バイパス術 人工肛門造設術 (ステント留置術) 処置 経鼻胃管 イレウス管 個々の患者様の全身状態や,処置の侵襲度により選択する方法が異なる

25 Q6 消化管閉塞の治療のevidenceは? 消化管閉塞の治療に関するRCTs(steroidの治療) Author Sample
Stydy design Regime Findings 1 Hardy J, 1998 39 消化管閉塞の患者(28日以内に化学療法を受けた患者も含む) RCT デカドロン 16mg 5日間 vs placebo 5日間 (cross over) 消化管閉塞の改善率 ステロイド 13/21 62% Placebo 8/14 57% 統計学的な有意差なし 2 Laval G, 2000 52 手術不適応の消化管閉塞(28日以内の化学療法の患者は除外) ソルメドロール 40mg or ソルメドロール 240mg vs placebo 経鼻胃管なし (40名) ステロイド 19/28 68% Placebo / % 全患者(52名) (経鼻胃管あり 12名を含む) ステロイド 22/37 59% Placebo / % 有意差なし ステロイドの濃度による差はなし 3 Feuer DJ, 2003 Cochrane database,Review メタ分析 NNT=6 (ステロイド剤で1人の消化管閉塞を治癒を得るために6人の患者が必要) Hardy J Palliat Med 12: ,1998 Laval G Palliat Med 14:3-10,2000 Feuer DJ Cochrane database of systematic reviews,2003 Dexamethasone デカドロン Methylprednisolone ソルメドロール

26 サンドスタチンの治療に関するRCTs Author Sample Regime Findings 1 2000
Stydy design Regime Findings 1 Mercadante S, 2000 18 手術不適応の消化管閉塞, 他の制吐剤,経鼻胃管なし RCT サンドスタチン 0.3mg vs ブスコパン 60mg 投与前から48時間後まで 嘔気(スコア 0,1,2,3) サンドスタチン 1.5→0.4 ブスコパン 2→1.7 嘔吐(episode) サンドスタチン 5.5→0.4 ブスコパン 5.3→2.8 サンドスタチン>ブスコパン 2 Mystakidou K, 2002 68 手術不適応の消化管閉塞 サンドスタチン mg (+ クロルプロマジン 15-25mg) Vs ブスコパン 60-80mg (クロルプロマジン 15-25mg) 投与前から,3日目まで 嘔気 サンドスタチン -93.4% ブスコパン -86.2% 嘔吐 サンドスタチン -82.1% ブスコパン -67% Octreotide サンドスタチン Hysoscine butylbromide ブスコパン Mercadante S Support Care Cancer 8: ,2000 Mystakidou K Anticancer Res 22: ,2002

27 消化器症状のマネージメント 1. 嘔気・嘔吐 2. 消化管閉塞 3. 便秘 4. Case study 現場での対応

28 Q1 便秘はなぜ起こるのか? 便秘 薬剤 腫瘍による 基礎疾患 消化管閉塞 腫瘍による腸管の圧迫 オピオイド 抗うつ剤 利尿剤 など
脊椎転移による 膀胱直腸障害 麻痺性イレウス 高カルシウム血症 病状の進行による 基礎疾患 糖尿病 甲状腺機能低下症 痔核 長期臥床 食事量の低下 抑うつ

29 Q2 便秘をどの様に診断するか? 診断 排便回数 便の性状(硬さ、量) 腹部レントゲンで残留便を評価する 直腸診で糞塊を確認する

30 Q3 便秘をなぜ治療するか? 嘔気・嘔吐 便秘 食欲低下 新たな症状の出現を防ぐ 疼痛(腹痛) 便塊の停滞による不快感 裂肛など

31 Q4 どの様に治療をするのか? 1.便を軟らかくする薬 3.直腸を刺激する 酸化マグネシウム ラクツロース 大黄末
レシカルボン,テレミンソフト坐薬 グリセリン浣腸 2.腸管の動きを強くする薬 4.ケア ガナトン,ガスモチン ラキソベロン アローゼン,プルゼニド 腹部のマッサージ 全身運動 温罨法 ツボ

32 消化器症状のマネージメント 1. 嘔気・嘔吐 2. 消化管閉塞 3. 便秘 4. Case study 現場での対応

33 症例1 絶飲食中の患者が「のどがすごく渇く」と訴える
イレウスのため絶飲食の指示 時々嘔気があるが、嘔吐はない 口腔内の乾燥と口渇が強い 口臭も目立ち始めている

34 症例1 ANSWER ★口腔内を定期的に観察する 口渇の原因(汚染、乾燥、感染)をアセスメントする ←患者の口腔内セルフケアが薄くなる
  ←患者の口腔内セルフケアが薄くなる ★乾燥させない(=唾液の分泌を促す) * 乾いた分泌物の除去 * 濡れガーゼ、氷水、レモンなど柑橘系の汁を少量含む、うがい *水溶性潤滑剤(オーラルバランス・アズノール・ウエットケア)、白ごま油 *加湿器 ★感染を起こさない  *舌苔の除去、消毒剤  *抗菌剤(ファンギゾン・フロリード)←ステロイド使用中 ★口臭予防 *ダラシン含嗽 *齲歯、歯周病、入れ歯の不良 ★口腔ケアチームへコンサルト

35 症例2 肝腫大のため、 「食べるとおなかがすぐいっぱいになるけど、 もう少し食べたい」
肝腫大が著明 食べると嘔気があり食残渣物を嘔吐する 消化管閉塞はない もう少し食べるために何とかして欲しい

36 症例2 Answer ★病態を理解する *肝腫大によって胃・十二指腸の圧迫→胃の排出障害 *肝の主要の炎症が、胃・十二指腸に波及→胃の不快感
 *肝腫大によって胃・十二指腸の圧迫→胃の排出障害  *肝の主要の炎症が、胃・十二指腸に波及→胃の不快感 ★対処【薬物的】  *プリンペランやガスモチンなど蠕動促進薬を使用する  *食直前、または、持続投与で!!  *炎症を抑えるためにステロイド剤を投与する  *制酸剤、抗潰瘍剤は症状改善が得られないことも多い ★対処【ケア】  *食後は右側臥位    (肝臓が重力で下にさがりスペースができる)  *食事の工夫     1回あたりの量を少なく、回数を工夫する。

37 症例3 胃管が入っているが、 「水が飲みたい」
イレウスにてNGチューフが挿入されている 口渇が強く「水を飲みたい」と言ている 医師の指示は絶飲食である

38 症例3 Answer ★「NGチューブが入っているから絶飲食ではなく 入っているからこそ水分摂取できる」と考える
 ←「飲めば少しでも身体の栄養になる」と考える患者もいる  ←「嘔気や腹痛は耐えられても、口渇に耐えられない」患者もいる  *間欠的にNGチューブ挿入しているなら、水を飲んでから挿入する  *持続的に留置しているなら、飲水は可とする ★かき氷は量が少なくても爽快感がある ★口腔ケアをおこない口渇を防ぐ ★上記を評価して患者の意向をまとめた上で、主治医に相談する

39 症例4 胃管で、「鼻が痛い」 NGチューブが留置されている 鼻が痛くなってきて、発赤している 入れ替えもつらい

40 症例4 Answer ★固定方法をかえる *下向き(鼻孔に密着させない) *アダプター(鼻管アタッチメント) ★毎日観察する
  *下向き(鼻孔に密着させない)    *アダプター(鼻管アタッチメント) ★毎日観察する ★チューブはできるだけ細いものを使う(E-8など):嚥下チームに相談 ★生活スタイルにあわせて間欠挿入を試してみる (症状のある時、夕方入れて抜く、夕方入れて夜間留置し朝抜く) ★PEG、PTEGについて早期に相談する ★消化管液を減らす内科的治療を主治医に相談する   (サンドスタチン、ステロイド、輸液減量)

41 症例5 胃管が入っているが、 「食べたい…」 イレウスにてNGチューブが挿入されている 「食べたい」と言われている。
医師の指示は絶飲食である。

42 症例5 Answer ★患者の気持ちを理解する *現実的に食べることは無理かもしれないと感じていても、
 *現実的に食べることは無理かもしれないと感じていても、    現状と希望とのギャップに苦悩していることを理解する  ←「飲めば少しでも身体の栄養になる」と考える患者もいる  ←「先がないならせめて味わうことを楽しみにしたい。そのためなら嘔気・腹痛のリスクは背負える」と考える患者もいる   *少量でも入れることが重要か?味を楽しむことが重要か?   *患者の気持ちに共感する ★患者の認識を踏まえて、主治医と検討する ★可能であれば流動食を考慮してみる  *場合によっては、「もどしても食べる」「噛んで味わって吐き出す」という選択肢もある

43 症例6 嘔吐しているが、胃管を拒否する イレウスのため嘔吐がある 薬剤を使用したが効果はない 医師からの指示はNGチューブ挿入の指示がある

44 症例6 Answer ★なぜ、拒否しているかを知り、不安に応じる *嘔吐が苦痛であっても、患者にとっての対処や段階であることが多い
 *嘔吐が苦痛であっても、患者にとっての対処や段階であることが多い 「何でこんなに吐いてしまうのだろう」⇒病態の説明(理解の不足)か否認 「病気がこのまま、どんどん進んでいくのだろうか」 「他の患者は管を入れてからどんどん悪くなった」 ⇒不安に共感 「以前に管を入れた時はとても辛かった」    ⇒つらくない方法の提示(細いチューブ、鎮静薬使用、途中でやめてもよい)   「管が入ったらこのままずっと抜けないのではないか」    ⇒間歇的方法、薬物などにより抜去できる可能性を希望として提示 ★間欠的挿入を患者の認識にあわせて考える  *NGを入れる=留置ではなく、症状の強い時、夜間だけなど間欠的な方法  *「いれてみたらそう苦しくもなかった」なら留置するか患者にきく ★ 嘔吐のパターンをアセスメント⇒速やかに対処できるように工夫する   *はきそうな時間帯にガーグルベース、シート、訪室、薬物  E.g., 食後、1回たまって抜いた後12時間くらい、夕方・・・など

45 症例7 嘔吐はないが、 「食欲がわかない・・・」
悪液質が進んでいるため嘔気があり、食欲がわかない 消化管閉塞はない 工夫する方法は?

46 症例7 Answer ★食事の内容の工夫をする *口当たりの良いもの(フルーツ シャーベット かき氷など)
 *盛り付け(少なく)、ラッピング(臭い混じらないように)の工夫 *栄養科へ相談  *家族に好みのものを差し入れしてもらうようにする ★食事の時間を工夫する *嘔気の少ない時間帯へ調整する ★食事の場所を工夫する  *家族と一緒に食事ができるように ★食思不振の原因を評価。治療する   高カルシウム血症、脳転移、薬物、便秘・・・   悪液質⇒ステロイド、プロゲステロン、EPAなど

47 症例8 プリンペランを投与すると、 「痛くなる」「よけい吐く」
嘔気、嘔吐に対してプリンペランを投与している 最初は効果があったが、 最近、プリンペランを投与すると嘔気や腹痛が目立つ

48 症例8 Answer ★症状が悪化するのは本当か、再現性をもう一度確認する *カルテを見直す:プリンペランと症状増悪は一致しているか?
 *カルテを見直す:プリンペランと症状増悪は一致しているか?  *症状悪化時の腹部蠕動を聞く(亢進しすぎているか?) ★消化管閉塞がある場合、閉塞が悪化するとプリンペランで嘔気や疼痛が悪化する  ⇒状態の再評価を主治医に依頼する  ⇒レントゲン・腹部所見  ⇒中枢性制吐剤、サンドスタチン、ステロイドなどへ変更を検討  *中枢性制吐剤は時に眠気がでることがあるので患者・家族と相談する    (眠気が出るなら使いたくない患者・家族もいる)

49 症例9 モルヒネを飲むと、「吐く」 モルヒネを始めてから嘔吐が強まっている モルヒネのための嘔吐でいいのか?

50 症例9 Answer ★症状が悪化するのは本当か、再現性をもう一度確認する *カルテを見直す:モルヒネ内服と症状増悪は一致しているか?
 *カルテを見直す:モルヒネ内服と症状増悪は一致しているか?  *他の原因は?     高カルシウム血症、便秘、脳転移・・・・ ★ 複数の原因のため治療対応が一つに絞り込めないこともある ★嘔気・嘔吐の原因として便秘を忘れない。おなかを見る  *全身衰弱による活動低下時は特に便秘になりやすい  *一見、下痢があっても、溢流性下痢もある

51 症例10 胃管挿入中だが 嘔吐がみられ、夜も口角から流れ出る
NGチューブ挿入中であるが少しずつ嘔吐する 夜間口角から吐物が垂れる NGを適宜サクションするものの少量しか引けてこない 薬剤を嘔吐に対して使用するが効果が乏しい

52 症例10 Answer ★NGチューブを挿入していても嘔吐することがある *胃内容が小さい *吐物が粘稠・出血でつまる *腫瘍からの刺激
 *吐物が粘稠・出血でつまる  *腫瘍からの刺激  *咽頭の刺激  *臭気 ★側臥位、ベットアップをし、誤嚥を防ぐ ★口腔ケアを忘れない ★前駆症状がないか観察し、嘔吐する前にサクション・投薬する  E.g., しゃっくり、時間間隔 ★消化液を減少させる薬物(サンドスタチン、ステロイド、輸液減量)


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