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第4章 労働に関する統計 ー 経済統計 ー
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この章の内容 Ⅰ 経済活動人口に関する統計 Ⅱ 賃金、労働時間に関する統計 ) 経済活動人口のとらえ方 ) 就業状態の区分
Ⅰ 経済活動人口に関する統計 ) 経済活動人口のとらえ方 ⅰ) アクチュアル方式による経済活動人口 ⅱ) ユージュアル方式による経済活動人口 ) 就業状態の区分 ) 失業に関する問題 Ⅱ 賃金、労働時間に関する統計 ) 賃金に関する統計調査 ※ ワーキングプアの問題 ) 労働時間に関する統計 <おもなポイント> 経済活動人口をとらえる2つ方式はどのような違いがあるのか。 年齢階級別女子労働力率に、どのような特徴がみられるか。 若年層の就業環境に関連して、どのような問題があるか。 賃金の相違の原因としてどのようなものがあるか。 など
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Ⅰ 経済活動人口に関する統計 a) 経済活動人口のとらえ方 経済活動人口=働いている人+働きたいのに仕事がない人 =働く意思のある人口
Ⅰ 経済活動人口に関する統計 a) 経済活動人口のとらえ方 経済活動人口=働いている人+働きたいのに仕事がない人 =働く意思のある人口 アクチュアル(actual)方式 - 特定期間内に少しでも仕事をした人、および求職活動をした人をとらえる → 労働力人口 ユージュアル(usual)方式 - 普段の状態として仕事をしている人をとらえる → 有業者人口 ※ 普段仕事をしていない人(主婦など)が、調査期間内にたまたま日雇いのアルバイトをした場合、労働力人口には含まれるが有業者人口には含まれない。
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ⅰ) アクチュアル方式による経済活動人口 国勢調査 労働力調査(基幹統計、総務省統計局)
国勢調査の際に、9月末1週間の就業状態について調査している。 → 労働力に関する全数調査 労働力調査(基幹統計、総務省統計局) 毎月末1週間の就業状態について調査するものであり、全国約4万世帯、10万人を選ぶ標本調査である。 調査世帯は2ヶ月間継続して調査され、1ヶ月ごとに半数がいれかえられる。 ← ローテーションシステム このローテーションシステムによって、入職・離職の動きをとらえることができ、標本誤差の動きを小さくすることができる。 また調査世帯は翌年の同時期に、2ヶ月間継続して調査され、入職・離職の動きを前年と比較することも可能となっている。
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b) 就業状態の区分 アクチュアル方式(労働力調査) 就業者 完全失業者 労働力人口 非労働力人口(通学、家事、リタイヤ) 15歳以上人口
2013年8月現在(単位:万人) 就業者 完全失業者 労働力人口 非労働力人口(通学、家事、リタイヤ) 6310 6581 15歳以上人口 271 11086 4499 労働力率= 労働力人口 15歳以上人口 ×100= ×100≒59.4(%) 完全失業率= 完全失業者数 労働力人口 ×100= ×100≒4.1(%) 季節調整後 4.1% 完全失業者 - 現在仕事がなく、仕事を探している者のうち、仕事があれば すぐ就ける者
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ⅱ) ユージュアル方式による経済活動人口 就業構造基本調査(基幹統計、総務省統計局) ユージュアル方式(就業構造基本調査) 仕事が主な者
5年ごとにおこなう大規模標本調査であり、平成19年調査では約45万世帯、約100万人を調査した。 就業の有無に加え、転職希望、追加就業希望の有無などが調査される。 平成14年調査と平成19年調査では、ユージュアル方式に加え、アクチュアル方式の設問も入れた。 ⇒ 労働力調査では誤差が大きくなってしまう都道府県別失業率の推計 (ただし、平成19年調査では集計されていない) ユージュアル方式(就業構造基本調査) 2012年10月現在(単位:万人) 仕事が主な者 仕事は従な者 5339 有業者 無業者 1086 6442 15歳以上人口 11082 4539
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同時点におけるユージュアル方式とアクチュアル方式の比較(平成19年 就業構造基本調査)
2007年10月現在(単位:万人) 仕事が主な者 仕事は従な者 5469 有業者 無業者 1124 6598 15歳以上人口 11030 4498 ※ この調査におけるアクチュアル方式の設問では下のようになる 2007年10月現在(単位:万人) 就業者 完全失業者 労働力人口 非労働力人口(通学、家事、リタイヤ) 6506 6769 15歳以上人口 264 11030 4098
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<女子の就業状況>
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失業率の国際比較(単位: %) † OECD(経済協力開発機構)が、各国の失業率をILO基準にできるだけ近づけるような調整を行った標準化失業率である。
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c) 失業に関する問題 失業率 - 以前は3%に達すれば多かった。1999年から5%前後の状態が4,5年続いていた。2005年中ごろから4%前後で推移していたが、2008年の金融危機を経て、2009年から急激に悪化し、2012年には少し落ち着いてきている。 失業率増加の主な原因 中高年のリストラ → 1990年代後半に増加した原因。 学卒未就業 → 現在もなお問題。 などがある。
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失業率にあらわれない雇用環境の悪化 ニート フリーター 失業者 就業者 完全失業者 非労働力人口
不完全就業 - 正社員ではなく、パート・アルバイト、契約社員などの形での雇用(特に若者) ⇒ 就業者に入る 潜在的失業 - 労働市場に出ることをはじめからおこなわない(主婦、ニート) ⇒ 非労働力人口に入る ※ニート(Not in Education, Employment, or Training) 学校に通っておらず、働いてもおらず、職業訓練もおこなっていない者 15歳~34歳の非労働力人口のうち、通学も家事もおこなってない者⇒2004年で約64万人と推計(厚生労働省による)される。 ニート フリーター 失業者 就業者 完全失業者 非労働力人口
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労働力調査詳細集計 労働力調査特定調査票 - 労働力調査の2年目2か月目の世帯(約1万世帯)に、労働力調査の通常の質問にくわえ、完全失業者の求職状況、非労働力人口の今後の就労の意思などを質問している。 → 結果は3カ月ごとに詳細集計で。 特定調査票の前身は、労働力調査特別調査(総務省統計局)である。この調査では、 毎年2回(2月と8月)約4万世帯に、転職の希望、不完全就業、就業異動などを調査していた。 ⇒ 2002年1月より労働力調査に統合された。
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雇用状況を表す業務統計 職業安定業務統計(厚生労働省) - 職業安定所(ハローワーク)にくる求職者数と求人数の業務統計
職業安定業務統計(厚生労働省) - 職業安定所(ハローワーク)にくる求職者数と求人数の業務統計 有効求人倍率= 有効求人数 有効求職者数 平成25年8月は =0.94 → 0.95(季節調整値) 新規求人倍率= 新規求人数 新規求職者数 平成25年8月は =1.63 → 1.47(季節調整値) 求人倍率は、求職者1人あたりにどの程度の求人があるのかを示す指標であり、1を超えている場合には求職者が全員何らかの職に就けるということを示している。⇒ミスマッチの問題 雇用保険業務統計(厚生労働省) - 失業して職業安定所に登録し、雇用保険の給付を受けている者の統計
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Ⅱ 賃金、労働時間に関する統計 a) 賃金に関する統計調査 毎月勤労統計調査(基幹統計、厚生労働省)
Ⅱ 賃金、労働時間に関する統計 a) 賃金に関する統計調査 毎月勤労統計調査(基幹統計、厚生労働省) 全国調査(約33000事業所) - 全国の結果を出すことが目的 地方調査(約43000事業所) - 都道府県別の結果を出すことが目的 特別調査(約77000事業所) 常用労働者1~4人の事業所について毎年7月実施 各事業所全体での労働者数、労働時間、賃金を調査する。 ⇒ 1人あたりの平均賃金が分かる 常用労働者5人以上 毎月実施
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賃金指数(事業所規模30人以上、現金給与総額、2010年=100)
厚生労働省『毎月勤労統計調査』より作成 名目賃金指数 - 物価上昇を考慮に入れない 実質賃金指数 - 物価上昇を考慮に入れる
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事業所全体で支払う賃金の合計と労働者数から1人あたりの平均賃金が分かる
事業所全体で支払う賃金の合計と労働者数から1人あたりの平均賃金が分かる ⇒ 労働者の構成を考慮されていないという欠点がある。 (例) 事業所Aは50歳以上がほとんど、事業所Bは20~30歳代中心 → 事業所Aの方が1人あたり平均賃金は高くなって当たり前 事業所全体だけでなく、そこで働く個人別の賃金についても調査する必要がある。
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賃金構造基本統計調査(基幹統計、厚生労働省)
毎年7月に、6月分の賃金について調査をおこなう。 全国の常用労働者5人以上の事業所の中から約70000事業所、およびそこで働く労働者約 人を選び調査する。 事業所全体の労働者数などだけではなく、個人別の賃金、労働時間などが調査される。 <給与の分類> 所定内給与 決まって支払われる給与 本給、家族手当など 現金給与総額 所定外給与 特別に支払われた給与 時間外手当 休日出勤手当 など 賞与(ボーナス)など
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標準労働者 - 学校を卒業してからただちに就職し、同一企業に勤めているとみなされる労働者
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企業規模別賃金格差(男子、全産業、決まって支払われる給与)
(厚生労働省『賃金構造基本統計調査』より作成) (大企業=100)
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男女間賃金格差(標準労働者、所定内給与)
(厚生労働省『平成24年賃金構造基本統計調査』より作成) (同条件の男子を100としたときの女子)
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※ ワーキングプアの問題 ワーキングプアとは? 正社員として、もしくは正社員なみの時間を働いているにもかかわらず、貧困の状態にある人 ワーキングプア(Working Poor)という言葉は、新しい言葉ではなく、20世紀はじめぐらいに、イギリスで「発見」された、先進国に見られる新しい種類の「貧困」(アフリカなどの「貧困」とは異なる)である。 日本では、2006年7月に、NHKスペシャル「ワーキングプア ~働いても働いても豊かになれない~」が放送された頃から広まった。 ワーキングプアといわれる人はどれぐらいいるのか?統計でとらえられるのか? → まず第1に「貧困」を定義することの難しさ
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「貧困」かどうかの判定基準には、収入が考えられる。 同じ年収でも「貧困」である場合と、「貧困」ではない場合がある。
「貧困」とは 「貧困」かどうかの判定基準には、収入が考えられる。 同じ年収でも「貧困」である場合と、「貧困」ではない場合がある。 → 世帯人員およびその年齢、持ち家の有無、住んでいる地域などによって異なる。 (例) 年収250万円という人がいたとする。 山口県の20歳代の単身者であれば、「お金持ち」ではないが、「貧困」とはいえない。 東京の50歳代で、妻と子供2人(高校生と中学生)であれば、「貧困」となるであろう。 ワーキングプアの問題を考えるとき、「生活保護受給世帯と同程度以下」という基準がよく用いられる。 生活保護は、家や土地などの資産を持っておらず、親族(2親等以内)からの扶養が不可能であるという条件があるので、生活保護受給世帯以下の収入でも、働かざるをえない。(もちろん、仕事に対するプライドの側面もある。) この基準にもとづき、2人以上世帯で、200万円や300万円などという基準が用いられることが多い。
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ワーキングプアの世帯がどれぐらいかをとらえるには、下のような統計調査が考えられる。
ワーキングプアをとらえる統計調査 ワーキングプアの世帯がどれぐらいかをとらえるには、下のような統計調査が考えられる。 賃金構造基本調査 支払う企業側からの調査、6月分の賃金と過去1年間の賞与を調査 民間給与実態調査(基幹統計、国税庁) 源泉徴収の対象となる、全国の従業員1人以上の事業所とそこで働く従業員を対象とする調査で、全国約21000事業所の約280000人を選んでいる。 支払う企業側からの調査、年間収入を調査 就業構造基本調査 賃金を得る世帯側からの調査、年間収入を調査 家計調査、全国消費実態調査 家計収支の調査が目的である、世帯側からの調査、対象月の収入と年間収入を調査している (詳しくは第5章で)
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左の2つのグラフは民間給与実態調査の結果である。
給与所得者の構成比の推移(男) (出典: 民間給与実態調査) 左の2つのグラフは民間給与実態調査の結果である。 男性は、200万円以下、300万円以下、400万円以下といった世帯が増加していることが分かる。 女性は200万円以下が増えているが、他の階級では、はっきりとした傾向はとらえられない。 女性の方が低所得の人の割合が多いが、これはアルバイト・パートを含んだ結果であり、配偶者に十分な収入があり、「望んで年収を抑えている」人も含まれているからである。 事業所に対する調査のため、2箇所以上の事業所から収入を得ている人などは、その人の収入とはいえない面もある。 給与所得者の構成比の推移(女) (出典: 民間給与実態調査)
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年間収入階級別雇用者数を、雇用形態によって見ると、正規雇用者に比べて、非正規雇用者の多くは収入が低い。
ここでも、「望んで年収を抑えている」人が非正規雇用に含まれるので、簡単にはいえないが、雇用の不安定がワーキングプアの原因と考えられる。 出典: 平成19年就業構造基本調査 ワーキングプアといわれる人たちの多くは、非正規雇用者である。 就職氷河期に新卒で正規雇用につけなかった人、母子世帯、高齢者などが主であり、「貧困」の状態から抜け出すことができずにいる。
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b) 労働時間に関する統計 毎月勤労統計調査 賃金構造基本調査 これらから労働時間に関する統計を得ることができる。 <労働時間の分類>
<労働時間の分類> 所定内労働時間 総実労働時間 正規の始業時間と終業時間の間の実労働時間 所定外労働時間 早出、残業、休日出勤などの実労働時間 総生活時間 - 労働時間 ≒ 余暇 余暇のすごし方についての統計は「社会生活基本調査」(基幹統計、総務省統計局)がある。 これらから労働時間に関する統計を得ることができる。
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