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通信デバイス工学 2012年 6/12, 6/19, 7,3, 7/10, 7/17講義分 山田 博仁
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講義について 1. 講義予定 6/12 第9回 半導体光デバイスの基礎 6/19 第10回 半古典論による物質と電磁場との相互作用 6/26 休講 7/3 第11回 電磁場の量子化と全量子論 7/10 第12回 半導体中での光学遷移、フォトダイオード、半導体レーザー 7/17 第13回 光増幅器、光変調器、光スイッチ、波長フィルターと光合分波器 2. 参考書 米津 宏雄 著、光通信素子工学 - 発光・受光素子 -、工学図書 霜田 光一 編著、量子エレクトロニクス、裳華房 山田 実著、電子・情報工学講座15 光通信工学、培風館 伊藤弘昌 編著、フォトニクス基礎、朝倉書店 第5章 3. 質問等 4. 講義資料のダウンロード URL:
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ネットワークを飛び交うデータ量の爆発的増加
国内のある基幹ネットワークノード(1台)が処理しているデータ量の推移 最近では約2~3年で倍増傾向 2倍/2~3年 2倍/年 データ量 (Gbit/s) 月/日/年
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国内のネットワーク トラフィックの推移 国内のインターネット トラフィック総量は、2008年末に1Tbpsを突破
現在もなお、年率40%で増加
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出展 http://www1.alcatel-lucent.com/submarine/refs/index.htm
海底光ケーブル網 出展
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ネットワーク機器の電力消費の予測 国内のインターネット トラフィックは年率40%で増加
ネットワーク機器の消費電力もそれに伴い増加すると仮定すると、2020年頃には、2007年の年間総発電量を超える見通し
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適用分野が広がりつつある光通信 光通信は今や、サーバーの筺体間データ通信から、パソコンにも サーバーのBackplane
(オレンジ色のケーブルは光ファイバー) SONY VAIO Zに搭載されたユニバーサルバス インターフェース(Light Peak)
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光通信に用いられる各種光デバイス 講義でカバーするデバイス 光通信に用いられる各種光素子(光デバイス)
1. 受動光素子(passive optical device, passive photonic device) - 光導波路、光ファイバー(optical waveguide, optical fiber) 光分岐器(optical splitter) - 光方向性結合器(optical directional coupler) - 光波長フィルター(optical wavelength filter) 光波長合分波器(wavelength multiplexer/demultiplexer) 偏光子(light polarizer) 光波長板(wave plate) - 分散制御素子(dispersion control device) - 光減衰器(optical attenuator) 光アイソレーター(optical isolator) - 光サーキュレーター(optical circulator) - 光スイッチ(optical switch, photonic switch) - 受光素子、光検出器、フォトダイオード(PD: photo detector, photo diode) 2. 能動光素子(active optical device, active photonic device) - 発光ダイオード(LED: light-emitting diode) 半導体レーザー(semiconductor laser, LD: laser diode) - 光増幅器(optical amplifier)
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21世紀の文化と生活を支える各種光デバイス 光通信以外の用途にも用いられる各種光素子(光デバイス)
CCDイメージセンサー(charge-coupled device image sensor) - CMOSイメージセンサー(CMOS image sensor) - 太陽電池(solar cell, photovoltaic cell) 光電子増倍管(photo-multiplier) - 撮像管(image pick-up tube) CRT、ブラウン管(CRT: cathode-ray tube, Braun tube) - 液晶ディスプレー(liquid crystal display) - プラズマディスプレー(plasma display) 有機EL(organic light emitting display) 各種光記録媒体(CD, DVD, BLD, ホログラム、フィルム、バーコード) 医療用、加工用などの各種レーザー(気体、固体、液体レーザー) - 非線形光学素子(non-linear optical device) これらのデバイスを総称して、「フォトニック デバイス」と呼んでいる フォトニクス分野は、日本が未だに強い技術競争力、産業競争力を維持している数少ない分野 21世紀の「産業の米」となるかも?
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半導体光デバイスの基礎 光デバイスに用いる半導体に求められる性質 受動素子(非発光素子) ・ 動作波長帯で透明であること
0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 波長: λ (μm) 光吸収係数: α (cm-1) T = 300K 105 104 103 102 Si InP GaAs Ge In0.53Ga0.47As ・ 動作波長帯で透明であること ・ 非線形光学効果が小さいこと (非線形光学素子は別である) ・ 材料分散もなるべく小さい方がよい ・ 複屈折もなるべく無い方がよい (偏波無依存) 能動素子(発光素子) ・ 動作波長帯で適度に光を吸収する、 つまり光との相互作用が可能なこと ・ 発光素子の場合は、発光遷移確率が 高いこと(直接遷移型半導体) ・ pn接合が得られる(電流注入素子が 実現可能な)こと 主な半導体材料の光吸収係数
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半導体のバンド構造 半導体とバンド構造 結晶中の電子の波動関数(電子状態)は、ブロッホの定理によると、波数と呼ばれる量子数によって規定される。このことが、エネルギーと波数との関係(分散関係)が原理的に示せることを保障している。バンド理論においては、このエネルギーと波数の関係を、エネルギーバンド(バンド構造)と呼ぶ。 バルクSiでは、ホール(正孔)はΓ点付近に分布しているのに対して、電子はX点付近に分布するので、間接遷移型半導体 バンドギャップは約1.1eV Si内の電子エネルギーの分散関係
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半導体のバンド構造 化合物半導体のバンド構造 GaAsもInPも、電子、ホール共にΓ点付近に分布 GaAsの電子エネルギーの分散関係
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半導体のバンド構造 Geのバンド構造 Ⅳ族半導体であるGeも間接遷移型であるが、歪を加えると、直接遷移likeになる
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半導体光デバイスの基礎 材料分散 分散とは ‥‥ 物質を電磁気学的に特徴付けている誘電率、透磁率、屈折率などが、それと相互作用する電磁波の周波数(波長)に依存すること 構造関係式は、 共鳴周波数付近では、誘電率(屈折率)も大きく変化する。一般的に、線形応答における周波数応答関数の実部と虚部の間には、クラマース・クローニッヒ(Kramers-Kronig)の関係が成り立つ。 セルマイヤー(W. Sellmeier)の式 媒質中の光の分散について,波長と屈折率との間の関係を現象論的に導いた式 ここで λi = c/νi であり、c は真空中の光速、νi は媒質の共鳴振動数で、Ai は定数である Siの誘電関数(電子系)εの第一原理計算
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半導体光デバイスの基礎 複屈折 複屈折とは‥‥異方性媒質においては誘電率、屈折率や透磁率がテンソルとなる (構造関係式)
出射光線 光学軸 (c軸) 異常光 結晶などは光学異方性媒質 入射光線 光線が結晶に入射すると、図のように2つの光線(常光と異常光)に分離する場合がある。このうち、電場の振動面に光学軸があると、Snellの法則に従わない異常光となる。 常光 複屈折結晶において、光を入射しても光が分かれない(即ち複屈折が生じない)方向を光学軸(optic axis) という。(通常の結晶のc軸に相当) 方解石の複屈折
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半導体光デバイスの基礎 非線形光学効果 非線形光学効果とは ‥‥ 物質の誘電率、透磁率、屈折率などが、電場や磁場の強さに依存する現象
構造関係式は、 全ての物質は、多かれ少なかれ非線形性を有している。特に光(電場)が強い場合に非線形性が現れる。波長変換デバイスなどでは、非線形光学効果を用いる。 入射光が弱い場合、光の電場 E に 比例した分極 P (線形分極: linear polarization)が誘起される。 線形分極 c : 電気感受率 入射光が非常に強くなると、電気感受率が電場に依存するようになる。
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半導体光デバイスの基礎 間接遷移型半導体では、光の放出または吸収にフォノン(格子振動)が介在
直接遷移型および間接遷移型半導体における電子遷移 間接遷移型半導体では、光の放出または吸収にフォノン(格子振動)が介在
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物質の発光現象 物質における光の吸収と放出(発光) 全ての光の源は原子と思ってよい 太陽からの光‥‥太陽の中での水素原子の核融合
励起状態 原子核 全ての光の源は原子と思ってよい 太陽からの光‥‥太陽の中での水素原子の核融合 蛍の発光‥‥有機物の化学反応による 光 基底状態 物が燃える時の発光‥‥有機物の化学反応による 励起準位 ν LEDなどの発光‥‥半導体結晶の中での電子遷移 ΔE 光 基底準位 ΔE = hν しかし何故、物質から光が放出されるのだろうか? 物質の発光現象を扱うには、物質と光(電磁波)との相互作用メカニズムについて学ばなければならない。 量子電子工学(Quantum electronics)という学問分野
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物質の発光現象 ラザフォードが提唱した原子は、古典電磁気学に依ると不安定であり、電磁波(光)を放出しながら10-11 秒程度の短い時間で潰れてしまうことが予測される。(私の電磁気学Ⅱの最終回の講義資料を参照) +e -e 電子 陽子 ラザフォードの水素原子の模型 m r v ω この矛盾を解消するために、量子力学が誕生 ボーアが提唱した原子の模型は、電子は原子核の周りを物質波という形で定在波を形作って回転いる。そしてその波が丁度「量子条件」によって規定される離散的な状態しか許されないため、安定に存在するというもの。また電子が、ある定常状態から別の定常状態へ移行(遷移)するときに、放射(吸収)される光の振動数は、振動数条件(ΔE = hν)を満たすというもの。 -e 陽子 +e では何故、電子が状態間を遷移する時に光が放出(吸収)されるのだろうか? ボーアの水素原子の模型
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光の吸収および発光現象を扱う理論 物質と電磁場との相互作用を扱うには、以下の3方法が考えられる。 1. 物質、電磁波共に古典論で扱う方法
つまり、半導体のバンド構造などは考えず、電磁場は波動として扱う方法。このモデルでは光の吸収は現象論的に扱えるが、発光現象は説明できない。 2. 物質は量子論で扱い、電磁波は古典論で扱う方法 つまり、半導体中の電子は量子化され、エネルギーバンド構造を為す。一方電磁場は波動として古典論で扱う方法。このモデルでは光の吸収、誘導放出(レーザーなどの原理)は扱えるが、自然放出は説明できない。 3. 物質、電磁波共に量子論で扱う方法 自然放出までを説明できるよう、つまり物質と電磁場との相互作用を厳密に扱うには、電磁場をも量子化した全量子論モデルで扱う必要がある。 古典論 半古典論 全量子論 電磁場 物質 量子論 解析モデル 説明可 光の吸収 誘導放出 説明不可 自然放出
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電磁場の記述 電磁場と物質との相互作用を理解するためにはまず、電磁場の記述の仕方や基本的性質を理解しておく必要がある。
Maxwell方程式は、 と書き表わせる。 また、電場 E と磁場 B は、電磁ポテンシャル A(x, t), ϕ(x, t) によって以下のように表わせる。 従って、上に示した一連のMaxwell方程式は、場の量としての電場 E と磁場 B を用いる代わりに、A と ϕ による式に置き換えることができる。
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電磁場の記述 さらに電磁ポテンシャルには任意関数 χ だけの不定性があるので、任意のスカラー関数 χ(x, t) を用いて、
と置き換えた電磁ポテンシャル AL と ϕL を用いても場の方程式の性質は変わらない。このような関数 χ(x, t) をゲージ関数と呼び、上のような新たな電磁ポテンシャル AL と ϕL を選ぶことをゲージ変換と呼ぶ。 電磁ポテンシャル AL と ϕL を、 の関係を満たすように χ(x, t) を選んだ場合を、ローレンス・ゲージと呼ぶ。この場合には場の方程式は、以下に示す AL と ϕL それぞれに対する簡単な波動方程式に帰着する。 或いは、ダランベール演算子 (d‘Alembertian)□を用いて ローレンス・ゲージは、ローレンツ変換に対して不変であるため、相対論で用いられる。
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電磁場の記述 ローレンス・ゲージ以外にも、ベクトルポテンシャルを発散のないように選び、
の条件式を満たすゲージをクーロン・ゲージ(Coulomb gauge)と呼ぶ。 この場合、場の方程式は以下のようになる。 電荷 ρe も電流 ie も存在しない自由空間では場の方程式は であり、 従って、電場 E と磁場 B は、ベクトルポテンシャル A から、 この場合、電磁場はベクトルポテンシャル A のみによって記述できる。つまり、スカラーポテンシャルについては扱う必要はない。 の関係により、導出できる。
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荷電粒子と電磁場との相互作用 電磁場内に1個の荷電粒子(電子)が存在するときの粒子系のハミルトニアンは、
で与えられる。(導出は各自試みられよ) ここで p は、粒子の運動量演算子、m は粒子の質量、ϕ はスカラーポテンシャル、e は電子の素電荷、そしてA はベクトルポテンシャルである。このうち、電磁場が無い中に荷電粒子のみが存在する成分 H0 を、主ハミルトニアンまたは無摂動ハミルトニアンと言い、荷電粒子と電磁場の双方の寄与からなる成分 Hint を相互作用ハミルトニアン(Interaction Hamiltonian)と言う。即ち、 となる。 Hint の最後の項は、A2 に比例することから高次の過程(非線形光学過程)であり、その確率は最初の項よりも通常は小さいので、ここでは無視することにする。
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相互作用の電気双極子近似 荷電粒子は、電磁場の正弦波的変動のための周期的な位置変動をするものと仮定 電子雲の偏り
そして、粒子の運動をニュートン力学的に求めると、 E r と書かれる。さらにベクトルポテンシャルを 原子の分極 e+iωt +e E と置くと、電場は、 e−iωt r −e と書かれる。従って、 電気双極子 ei2ωt や e−i2ωt の項は、時間積分すると消える と書ける。ただし、R = er で、電気双極子能率(electric dipole moment)と呼ばれている。
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相互作用の電気双極子近似 相互作用ハミルトニアン
には、電場による影響(クーロン力)と磁場による影響(ローレンツ力)の両方が含まれているはずであるが、上で導いた荷電粒子との相互作用の式では、電場による影響RE しか含まれていない。これは、荷電粒子の運動の形態を、 のように、ある限られた場所での振動と仮定したためである。もし荷電粒子に平行運動のような運動形態を仮定したならば、磁場による影響も含まれてくるはずである。 このように相互作用を、電場のみに影響すると仮定して RE のように近似することを、電気双極子近似という。近似による変位の部分を電場で展開すると、電気四重極子や電気八重極子のような多重極の分極が現れることもある。 工学で扱う物理現象は非常に複雑なものが多い。従って、全ての物理現象を取り入れた完璧な理論を構築することは不可能である。 良きエンジニアとは、それら複雑な物理現象の中で、何か本質的に重要かを見極め、近似をうまく使い、無視できる物理現象は思い切って無視し、シンプルな理論を構築できる人である。ただし、どんな近似を使ったのかは決して忘れてはいけない。
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半導体中での電気双極子 半導体中では、電子とホールが分極(電気双極子)を作る −e E + +e 半導体中における電気双極子 伝導帯 電子
値電子帯 半導体中における電気双極子
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量子統計と密度行列 電流値など、多くの粒子(電子)が関与する物理量は、多くの粒子による統計的な平均値となる。また単一事象において、複数回観測(測定)を行った場合の期待値なども統計的な扱いが必要となる。そのような多数の粒子或いは多数回の測定についての統計的性質について扱う。まず、ν 番目の粒子または ν 回目の測定における状態を、 と書くこととする。 ここで は、一つの粒子のみが存在する場合のエネルギー固有状態である。完備性が仮定されているので、 の1次結合によって任意の をつくれるはずであり、 には添え字 (ν) はいらない。 ある物理量に対する演算子を A とすると、 ν 番目の粒子における期待値は、 となる。 次に、粒子の集団全体における期待値の平均(ensemble average)を求める。 ν 番目の粒子が寄与する割合(粒子の抽出確率)を P(ν) とおき、規格化しておく。
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量子統計と密度行列 期待値の統計平均は、 と書ける。 ここで、以下のような書き換えを行う。
ρmn を要素にもつ行列 ρ を密度行列(density matrix)と呼ぶ。 密度行列を用いると、 と書き改められる。 は恒等演算子(identity operator) は行列 ρA の対角要素を全て足し合わせたもの、即ちTrace であり、 と表わすことができる。また、 である。
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密度行列の運動方程式 密度行列 ρ の性質が分かれば、集団内の個々の粒子についての状態 や抽出確率 P(ν) を知らなくても、統計性を含めた期待値 を知ることができる。そこで、密度行列 ρ を表現する方程式、つまり ρ が従うべき方程式を求めてみる。 まず、密度行列の行列要素の定義式を、以下のように書き直す。 従って密度行列は、 と書くことができる。 この式の両辺を時間 t で微分すると、 となる。 ただし、抽出確率 P(ν) の時間依存性はないとしている。
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密度行列の運動方程式 シュレーディンガー方程式 および、そのエルミート共役 より、 となる。
シュレーディンガー方程式 および、そのエルミート共役 より、 となる。 これは、密度行列の時間発展を表す式であり、密度行列の運動方程式或いは、量子リウヴィル(Liouville)方程式もしくはリウヴィル-フォン・ノイマン方程式とも呼ばれる。
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双極子との相互作用がある場合の密度行列 電子系の主ハミルトニアンを H0 とし、電気双極子能率を R とする。前に述べたように、電場が存在するときの相互作用ハミルトニアン Hint は、−RE となり、電子系全体のハミルトニアン H は、 となる。 これを、密度行列の運動方程式に代入すると、 となる。 ここで、最後の ≈ では、1個の電子が存在する領域が電磁波の波長に比べて十分に小さく、その範囲内で電場の分布は一定と見なせることを仮定している。実際、気体原子に束縛されている電子の存在範囲はせいぜい数Å程度であり、また半導体中の電子に至ってもせいぜい数十Å程度である。それに対して、相互作用する光の波長は数千Åもあるので、この仮定は妥当である。
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双極子との相互作用がある場合の密度行列 次に、密度行列の行列要素に対する方程式を導出する。エネルギー固有状態には時間依存性が無いので、
と表すことができ、従って、 と書くことができる。なお。ここで用いている固有状態は、主ハミルトニアン H0 の固有状態である。
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双極子との相互作用がある場合の密度行列 従って、状態 は、エネルギー固有値 Wn をとり、状態間には直交性があるので、 となる。
ただし ωmn は、順位 m と順位 n とのエネルギー差に対応する角周波数であり、 で与えられる。
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2準位系での相互作用 話を簡単にするためにまず、電子の取り得るエネルギー準位が2つしかない2準位系において、電磁場との相互作用を考える。
Wb Wa 上側(励起)準位を 、下側(基底)準位を とすると、 となる。ここで、 であり、双極子能率 R の行列要素の対角要素 Rbb も、一般的な媒質では 0 となる。従って、 となる。同様に、 が得られる。
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2準位系での相互作用 ここで は各々、上側および下側準位の電子分布であり、
ここで は各々、上側および下側準位の電子分布であり、 である。一方 は2つの状態間での量子相関(量子コヒーレンス)を表している。これらの式は、それらの時間的変化を記述しており、第1式は上側準位の電子分布の時間的変化を、第2式は下側準位の電子分布の時間的変化を、そして第3式と4式は、それら準位間での量子コヒーレンスの時間的変化を記述している。 これらの式は、光の吸収(absorption)や誘導放出(stimulated emission)を記述しているが、実際にはこれら方程式に含まれていない以下の現象が存在する。 上側準位の電子は誘導放出により下側準位に遷移し、やがて熱平衡状態での電子分布になったら正味の発光は起きなくなる。そこで、連続して発光させるためには、下側準位の電子を上側準位に汲み上げてやる必要がある。これをポンピングと言い、半導体レーザーや発光ダイオードなどでは、pn接合に電流を注入することによりポンピングを行っている。 上側準位の電子は、電磁場が存在しなくてもある一定の割合で光を放出して下側準位に遷移する。これを自然放出と言う。自然放出は電磁場を量子化した時の不確定性に起因するもので、電磁場を古典論で扱う場合(半古典論)には導出できない。 これまでの密度行列の導出においては、粒子同士の衝突やエネルギー準位の揺らぎなどは考慮していなかった。しかし実際は、粒子の衝突などによって双極子の調和振動が乱され、双極子振動は減衰していく。これを電子緩和効果という。
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2準位系での相互作用 このような効果を現象論的ではあるが付加してやる必要がある。
ポンピングによって上側準位の電子密度が増加(その分下側準位は減少するが、)する割合を Λp、自然放出による電子寿命時間(縦緩和時間とも言う)を τs、粒子同士の衝突などにより双極子振動が減衰していくが、その寿命時間(デコヒーレンス時間)(横緩和時間とも言う)を τd とする。ポンピングと自然放出は、密度行列の対角要素に付加され、双極子の寿命時間は非対角要素の変化として導入される。従って、これら現象論的な補正をした方程式として、 Wb Wa ρbb ρaa 自然放出 τs ポンピング Λp が得られる。
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2準位系での分極率 次に、微分方程式 の解を求めてみる。 電場が存在しない場合、上の方程式は同次方程式 となり、その解は
の形となる。ただし C は任意定数。そこで、電場が存在する場合については U(t) を変数として、 と表わせると考え、これを式(4)に代入すると、 となる。
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2準位系での分極率 従って、 の関係が得られる。 電場 E を と表し、上式を時間に関して積分すると、 となる。
積分時間内 0 ~ t で (ρaa – ρbb)Rab は一定とみなすと、 次のスライドに続く、、、、
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2準位系での分極率 ここで、t >> τd の定常状態を考えると であるから、 となる。
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2準位系での分極率 さらに ω ≈ ωbaであるから、{ }内の第1項の分母の虚部はほぼ 0 となるが、第2項の分母の虚部はかなり大きい。従って、 { }内の第2項は無視できる。そうすると、 となる。 同様にして ρba も求められるが、ρba は ρab の複素共役であり、 ρba = ρ*ab である。 となる。 ところで、古典電磁気学において分極 P は、 で与えられた。 従って、 ただし、Δt は 1/ω の数倍程度の時間間隔をとることとする。
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2準位系での分極率 ところで、双極子能率 R は、R = er と表わせたが、これを量子力学的な演算子とし、電子密度を Nt とすると分極 P は、 となる。 従って、 となる。 ただしここでは、前にも述べたように Raa = Rbb = 0 と見なしている。
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光増幅利得 分極率 χ の虚部は、それが正の場合は光を増幅する割合を示す光学利得定数を、負の場合は光減衰係数を表わしている。つまり、光学利得定数 g は、 磁性体でなければ、 となる。 準位 b と a に存在する電子数の合計は単位体積当たり Nt である。準位 b の電子密度を Nb、準位 a の電子密度を Na とする。ρbb と ρaa とは電子分布の比率を示すので、 と書かれる。従って光学利得定数は、 となる。
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反転分布 ポンピングを行わない熱平衡 (thermal equilibrium)状態では、電子分布はMaxwell-Boltzmann分布に従い、Nb < Na であり、従って光学利得定数 g の値は負となる。つまり、媒質によって光が吸収される。これを光物性学では、基礎吸収と呼んでいる。一方、ポンピングによって Nb > Na が実現されると、利得定数が正となり、光が増幅されて出てくる。これが誘導放出である。 Nb > Na の状態を反転分布(population inversion)という。また、Nb = Na の時、媒質は透明となる。 Wa Wb エネルギー E 熱平衡状態 (Nb < Na) Nb Na 粒子数 N E 反転分布 (Nb > Na) Nb Na Wb Wa 粒子数 N Maxwell-Boltzmann分布 k: ボルツマン定数 T: 媒質の温度
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光増幅のメカニズム Re χ ω ωba Im χ ρbb > ρaa ρbb < ρaa
分極 P に光電場 Ei が入射する場合、 と表わせ、Im χ が負の場合、分極は入射光 Ei より 0 ~ π/2 位相が遅れて振動する。この分極によって放射される光電場 Er は と表わされ、分極振動に対してπ/2 位相が遅れて放射される。従って、出力光電場は Ei とEr との合成となるため、出射光は減衰する。(右図) 一方、Im χ が正の場合、分極は入射光 Ei より 0 ~ π/2 位相が進んで振動する。この分極によって放射される光電場 Er は分極振動に対してπ/2 位相が遅れて放射される。従って、出力光電場は増幅される。 P Ei Er Eout 0 ~ π/2 減衰 P Ei Er Eout 0 ~ π/2 増幅
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レーザー レーザとは、光の発振器 Amp. 電気の発振器 正帰還回路 + 光増幅媒体 光の正帰還回路 鏡 レーザー
光増幅媒体とはどのようなものか? 光の吸収 自然放出 誘導放出 減衰 増幅 入射光 出射光 発光 物質(原子系)と光との相互作用 以下の3つの課程が同時に起きている 二準位系 (原子など) E1 E2 電子など
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熱平衡状態 E1 E2 Maxwell-Boltzmann分布 P(E) E 熱平衡状態では、励起準位の原子数は基底準位の原子数よりも少ない
k: ボルツマン定数 T: 媒質の温度 n1> n2 吸収 誘導放出 n2: 励起状態の原子数 n1: 基底状態の原子数 正味では減衰 誘導放出の起きる確率 = Bn2 I 吸収の起きる確率 = Bn1 I I: 入射光の強度 B: アインシュタインのB係数 自然放出の起きる確率 = An2 A: アインシュタインのA係数 Bn1 I > Bn2 I 熱平衡状態では、吸収の確率 > 誘導放出の確率となり、入射光は減衰して出てくる
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反転分布 反転分布 E1 E2 P(E) E 励起準位の原子数が基底準位の原子数よりも多い状態を反転分布という Tが負(負温度状態)
n1< n2 誘導放出 吸収 n2: 励起状態の原子数 n1: 基底状態の原子数 正味では増幅 Bn1 I < Bn2 I 反転分布では、誘導放出の確率 > 吸収の確率となり、入射光は増幅されて出てくる レーザーとは、何らかの方法で反転分布を作り出し、放射の誘導放出(Stimulated emission)を用いて光を増幅する装置
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レーザー レーザー(laser)の語源 light amplification by stimulated emission of radiation 光増幅 誘導放出 放射 メーザー(maser) microwave amplification by stimulated emission of radiation レーザーの種類 A. 固体レーザー a. 結晶体レーザー ルビー(Cr3+: Al2O3)レーザー 1960年世界で最初に発振したレーザー。 光励起で発振。λ = 694.3nm(赤) Nd3+: YAGレーザー λ = 1064nm(近赤外) b. ガラス・レーザー 光学ガラスにNdを ドープ。高出力
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レーザー B. 液体レーザー 有機色素(ローダミンなど)を光励起して発振。広範囲に波長可変可能。 C. 気体レーザー a. 中性気体レーザー
He-Neレーザー He-Neの混合ガスで グロー放電を起こして発振。 λ = 632.8nm(赤) b. イオンレーザー Ar+レーザー, Kr+レーザー 中性原子のガスでアーク放電を起こして発振。 Ar+レーザー λ = 488nm(青), 514.5nm(緑) Kr+レーザー λ = 647nm.1, 676.4nm(赤), c. 分子レーザー CO2レーザー 大出力のため、金属加工用や医療用レーザーメスなどに使用 λ = 10.6μm(赤外) D. 半導体レーザー コンパクトで低消費電力のため、光通信用途を始め各種 民生機器で広く使用。
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レーザーとコヒーレント光 レーザー光は、コヒーレント(coherent)な光
コヒーレントとは、波の位相が揃った状態。高スペクトル純度、良好な収束性を有する 時間的コヒーレンス 空間的コヒーレンス インコヒーレント光 (コヒーレントでない) t 光の電界 f 又は λ 光の強度 コヒーレント光 t 光の電界 f 又は λ 光の強度 自然界に存在する光は全てインコヒーレント光 例: 太陽光、炎から出る光、蛍の光、白熱電球、蛍光灯、LED コヒーレントな光を人工的に発生させる装置がレーザー
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場の量子論基礎 電磁場の量子化 誘電率 ε の物質中の電磁場のベクトルポテンシャル A は、以下のように与えられる。
ここで Q は、時間変化を表わす量子力学的演算子であり、x は電磁場(ベクトルポテンシャル)の偏り(偏波)の方向を表わす単位ベクトルである。F(x, y, z) は電磁場の空間分布を表わす実数関数で、古典的なMaxwell方程式から求められる関数と同じであり、波動方程式 を満たす。 ω は、古典的電磁場の角周波数であり、上式においては、演算子 Δ において、電磁界分布 F(x, y, z) を定める固有値として導入されている。 なお電磁界分布関数 F(x, y, z) は、定義された空間全体 V で以下の様に規格化しておく。
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場の量子論基礎 扱う物質の運動速度が光速度に比べて遥かに小さい場合、相対論は考慮しなくてもよい。非相対論的な量子力学では、時間に依存する物理量のみが量子力学的演算子として扱われる(ハイゼンベルク描像) 。つまり Q は、電磁場の振幅の時間変動を表しているので演算子であり、 F(x, y, z) は電磁場の空間分布を表わすが時間には依存しないので、量子力学的演算子ではなく、古典的なMaxwell方程式から得られる分布関数と考えてよい。 電場 E と磁場 B は、真電荷が存在しない場合即ちスカラーポテンシャルが全空間で一定の場合、ベクトルポテンシャル A のみから、 で与えられる。 演算子 Q の時間微分に対応した新しい演算子 P を定義する。 (量子力学では、古典力学のように物理量を直接的に「微分」できないことに注意。)
54
場の量子論基礎 従って、電場 E と磁場 B は、 と書ける。
ここで、量子力学における要請より、演算子 Q と P との間には以下の不確定性関係が成立しなければならない。 ここで、演算子 Q と P とからなる以下の新たな演算子 a と a† を定義する。 これまでの議論より、演算子 Q と P は古典的には cosωt と ‒ωsinωt に対応し、a と a† は、オイラーの公式を用いて、ω2 =1 と置いてやれば e‒iωt と ‒ eiωt に対応していることが推測できる。
55
場の量子論基礎 a と a† の間には、[a, a†] = 1 の交換関係が成り立つ。何故なら、
また、n を整数値とし、 を整数値 n (ただし、n ≥ 0)に対応する固有状態とすると、a は整数値を一つ下げ、 a† は逆に整数値を一つ上げる演算子である。 従って、 a を消滅演算子(annihilation operator)、a† を生成演算子(creation operator)と呼ぶ。
56
場の量子論基礎 また、 a† と a の積をとった演算子 N = a†aは、
から分かるように、状態 に作用すると、整数値 n を固有値として返す演算子であり、数演算子(number operator)と呼ばれている。 より、 より、 従って a と a† を用いると、電場と磁場は、 と表せる。
57
場の量子論基礎 これらから、電磁場のハミルトニアンを求めると、 となり、電磁場エネルギーの期待値が、 と書かれる。
このように、電磁場のエネルギーは量子化すると離散的となり、電磁場(光)のエネルギー量子のことを光子(photon)と言い、n を光子数(photon number)と呼ぶ。ここで、光子が無い、即ち n = 0 であっても、ħω/2 の電磁場エネルギーが残ることとなる。これは所謂ゼロ点振動エネルギーであり、取り出すことはできないが、実は後で述べるように、これが光の自然放出にとって非常に重要な役割を果たす。即ち、自然放出はこのゼロ点振動があるため起こり、ゼロ点振動(真空場の揺らぎ)がないと自然放出は起こらない。
58
全量子論による物質と電磁場との相互作用 電磁場中を1個の電子が運動している時、系全体のハミルトニアンは、
と表わせる。ここで p は、電子の運動量演算子、m は電子の質量、ϕ はスカラーポテンシャル、A はベクトルポテンシャル、Hf は電磁場のハミルトニアンである。電磁場のベクトルポテンシャル A は、 であることから、 と表わせる。 ここでベクトルポテンシャルは、クーロン・ゲージならば の関係になっているので、 運動量演算子 との交換関係は 0 である。 従って、
59
補) 系全体のハミルトニアンの導出 ところで、系全体のハミルトニアン は、以下のようにして求められる。
古典力学で、電子に働く力はローレンツ力 で与えられる。 これは、 という相互作用のポテンシャルエネルギーから求められる。 従って、この系のラグランジュアン L は、 これをラグランジュの方程式で、x, ẋ をそれぞれ共役変数とすると、 から系の運動方程式が求められる。
60
補) 系全体のハミルトニアンの導出 また、 より、x に対する共役な変数 p は、 である。 従って、電磁場内の電子系のハミルトニアンは、
となる。 これと、電磁場自身のハミルトニアン Hf を加えて、系全体のハミルトニアン H は となる。
61
全量子論による物質と電磁場との相互作用 系全体のハミルトニアン を、電子と電磁場が互いに
系全体のハミルトニアン を、電子と電磁場が互いに 独立に存在している場合の主ハミルトニアン H0 と、電子と電磁場との相互作用に基づくハミルトニアン Hint とに分解する。 主ハミルトニアンの固有状態を 、これに対応するエネルギー固有値を u とする。これらは、電子の固有状態 とエネルギー固有値 W、および電磁場の固有状態 と光子数 n により、以下のように表わせる。
62
全量子論による物質と電磁場との相互作用 相互作用ハミルトニアンが存在しなければ、状態は初期状態 から変化しない。相互作用ハミルトニアンが存在すると、状態が遷移し、その遷移確率は、 に比例する。ここで添字 i は変化前の状態、f は変化後の状態を示す。 これをフェルミの黄金律(黄金則) Fermi’s Golden Ruleと呼び、量子系のあるエネルギー固有状態から別のエネルギー固有状態への単位時間あたりの遷移確率を、摂動法の最低次数の近似によって計算する方法である。 相互作用ハミルトニアン Hint は、電子に対する演算子 p および、電磁場に対する演算子 a と a† を含んでいるが、p は電子状態 だけに作用し、a と a† は電磁場の状態 にだけ作用する。従って、相互作用ハミルトニアン の行列要素は、 となる。 Hint のうちで A2 は、二つ以上の光子が同時に作用する場合にのみ意味を持ち、通常その確率は小さいので、ここでは無視することにした。(つまり、非線形光学効果は無視した。)
63
全量子論による物質と電磁場との相互作用 消滅および生成演算子には以下の性質があったので、 は、以下の二つの場合にだけ値を持つ
このことから、状態 ui から状態 uf への遷移確率 Pif が、 となる。このように、電子が上側準位から下側準位に遷移して、光を放出する時の遷移確率は n + 1 に比例し、逆に光を吸収して、電子が下側準位から上側準位に遷移する時の遷移確率は n に比例する。
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全量子論による物質と電磁場との相互作用 物質が光を放出するか、或いは吸収するかは、統計的な性質で決まる。物質内のある二つの電子準位に着目し、上側準位を b、下側準位を a とする。半導体中の電子などは、フェルミ・ディラックの分布関数に従って分布しており、上側準位での分布を fb、下側準位での分布を fa とする。電子が上側準位から下側準位へ遷移する確率は、上側準位に電子が存在し、下側準位に電子が遷移できる空きの状態が存在する確率に比例するので、fb(1 − fa)(n + 1) に比例する。逆に、下側準位から上側準位へ遷移する確率は、 fa(1 − fb)n に比例する。両式の差は、(fb − fa)n + fb(1 − fa) であり、準位 b から準位 a への正味の遷移確率 Pba は、 と書かれる。{ }内の (fb − fa)n に比例する項は、fb > fa のとき誘導放出を表わし、 fb < fa のときは吸収を表わす。 fb(1 − fa) に比例する項は、光子数 n が 0 でも光を放出し、自然放出と呼ばれる。 fb fb b b n + 1 n fa fa a a 光放出 光吸収
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全量子論による物質と電磁場との相互作用 始状態 ui から終状態 uf への遷移確率は、先に述べたフェルミの黄金律によって与えられるが、そこには遷移を可能にする状態がなければならない。ここで言う状態とは、物質のエネルギー状態(基底状態や励起状態)のみならず、物質と相互作用しようとする光(フォトン)の状態である。 例えば簡単のために、一辺の長さが L の立方体の箱を考え、その中に光と相互作用する物質があり、エネルギー状態間遷移によって光を吸収または放出するとする。 ただし L は、相互作用をする光の波長に比べて十分長いものとする。この立方体は一種の光共振器であり、例えば箱の壁面で電場がゼロとなるような境界条件を満たさなければならないとすると、この箱の中での電磁界分布は、px, py, pz を正の整数として、 L 物質 光共振器 と書かれる。 より、各周波数 ω は、 を満足しなければならない。正の整数値 px, py, pz をモード番号と言う。
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全量子論による物質と電磁場との相互作用 モード番号が作る空間を、図のように書く。個々の座標点が電磁場のモードを示す。
原点を中心とした半径 r の球を描くと、 であり、この球の体積の1/8が角周波数 0 から ω までのモードの総数である。従って、角周波数 ω ~ ω + dω の間に含まれる電磁場モードの数は、(球の表面積)×dr である。なお、電磁場は一つの進行方向に対して直交する 2 つの偏波状態が存在できる。従って、 dω 当たりのモード数は、 px py pz 表面積 4πr2 r となる。上式は、最初に定義した空間の体積 L3 に比例している。従って、単位体積当たりで dω に入れるモード数は、 となり、これが電磁場の状態密度を与える。 実際に遷移が起こる確率は、この状態密度を掛けたものとなる。
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半導体中での電子遷移過程 バンド間遷移による光吸収と発光 バンド内遷移光吸収 光吸収過程 発光過程 非発光遷移課程 伝導帯 光 価電子帯
(重い正孔) 価電子帯 (軽い正孔) スピン分裂 価電子帯 自然放出 誘導放出 価電子帯間吸収 InterValence Band Absorption 非発光遷移課程 2光子吸収 Two-photon Absorption オージェ効果
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半導体pn接合 (a) 熱平衡状態 電子のエネルギー n p EF 価電子帯 伝導帯 n型 p型 電子 正孔 E 電界E 空乏層 Eg
(b) 順バイアス印加時 電子のエネルギー EFc EFv Vb = (EFc - EFv) / e n型 p型 Vb eVb 再結合 I n p
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半導体内の電子分布 バルク半導体において、伝導帯および価電子帯の電子の状態密度関数 ρ(E) は、 ρ(E) E Ec Ev ρc(E)
ρ(E) E Eg Ec Ev ρc(E) ρv(E) 状態密度関数 放物線状 me: 伝導帯における電子の有効質量 mh: 価電子帯における電子(正孔)の有効質量 1 f(E) E EF 1/2 フェルミ-ディラック分布関数 伝導帯の電子および価電子帯の正孔の存在確率はフェルミ-ディラック分布関数で与えられる。 k: ボルツマン定数 T: 媒質の温度 EF: フェルミ・レベル フェルミ・レベル EF は、電子(正孔)の存在確率が1/2となるエネルギーレベル。
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熱平衡状態での電子分布 従って、半導体内において熱平衡状態での伝導帯の電子および価電子帯の正孔密度のエネルギー分布は、各々の状態密度関数にフェルミ-ディラック分布関数をかけたものとなる。 伝導帯電子分布 E E E ρc(E) 価電子帯正孔分布 Ec Ec 価電子帯電子分布 Eg EF Ev Ev ρv(E) ρ(E) f(E) N 1/2 1 状態密度関数 フェルミ-ディラック分布関数 伝導帯および価電子帯の電子分布
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電流注入時の電子分布 半導体pn接合に順バイアスを印加して電流注入を行うと、もはや熱平衡状態ではなくなり、伝導帯電子および価電子帯正孔の存在確率を一つのフェルミ-ディラック分布関数で表わすことはできなくなり、伝導帯電子および価電子帯正孔に対して各々別々の分布関数を定義する必要がある。そこで、伝導帯電子に対するフェルミ・レベルを EFc、価電子帯正孔に対するフェルミ・レベルを EFv とし、これらを擬フェルミ・レベル(quasi-Fermi level)と呼ぶ。 1 f(E) ρ(E) E Eg Ec Ev ρc(E) ρv(E) EFc 1/2 フェルミ-ディラック分布関数 状態密度関数 EFv 伝導帯および価電子帯の電子分布 N 伝導帯電子分布 価電子帯電子分布 伝導帯電子に対する分布関数 価電子帯電子に対する分布関数 価電子帯正孔分布
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pn接合界面における電子密度分布 (a) 熱平衡状態 (b) 反転分布 電子のエネルギー n p EF 1 f(E) ρ(E) J点 E N
f(E) ρ(E) pn接合(J点)での状態密度関数 J点 E 電子の分布関数 電子密度の分布 N 熱平衡状態のバンド図 (a) 熱平衡状態 Eg 正孔 Ec Ev ρc(E) ρv(E) EFc EFv Vb = (EFc − EFv) / e 1 ρ(E) pn接合(J点)での状態密度関数 J点 電子のエネルギー E f(E) 電子の分布関数 電子密度の分布 N (b) 反転分布 伝導帯 価電子帯 順バイアス時のバンド図 n p 反転分布 Eg 正孔 Ec Ev ρc(E) ρv(E)
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半導体における発光遷移 伝導帯電子分布 バンド間遷移による発光スペクトルは、伝導帯電子および価電子帯正孔の分布を反映する E バンドテイル
Ec 自然放出光強度 hν = E2− E1 hν hν Eg Ev E1 価電子帯正孔分布 光子エネルギー(hν) N バンド間遷移による発光 自然放出光スペクトル
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練習問題 問1. 真空中の電子は光と相互作用可能か?
それを考えるには、真空中の電子のエネルギー分散関係と光(フォトン)のエネルギー分散関係を比較してみること。 まず、真空中の電子のエネルギー分散関係( E-k 曲線)を図にしてみよう。 そこに、フォトンのエネルギー分散関係を重ねて比較してみよう。 真空中の電子のエネルギー分散関係 (E – k 関係)は、 m: 真空中の電子の質量(半導体中の場合は、有効質量で考えればよい。) フォトンのエネルギー E = hν, フォトンの運動量 p = hν/c
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半導体材料の光吸収 伝導帯電子分布 E E2 Ec hν hν = E2− E1 Ev E1 価電子帯正孔分布 N バンド間遷移による光吸収
0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 波長: λ (μm) 光吸収係数: α (cm-1) T = 300K 105 104 103 102 Si InP GaAs Ge In0.53Ga0.47As 伝導帯電子分布 E E2 Ec hν hν = E2− E1 Ev E1 価電子帯正孔分布 N バンド間遷移による光吸収 主な半導体材料の光吸収係数
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半導体pn接合への光照射 p型領域 n型領域 電子 正孔 伝導帯 価電子帯 フェルミレベル 光 Vph
+ − p型領域 n型領域 伝導帯 価電子帯 フェルミレベル 光 Vb: 逆バイアス電圧 Iph: 光電流 + Vb − 光照射による光起電力 逆バイアスを印加して光照射 太陽電池(solar cell, photovoltaic cell) 光検出器(photo diode, APD)
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光検出器 PINフォトダイオード(PIN-PD) 逆バイアスされた半導体pin接合の i層に光を照射し、光電流を取り出す p+-InP層
n−-InP層 電子 正孔 伝導帯 価電子帯 フェルミレベル 光 Vb: 逆バイアス電圧 Iph: 光電流 − + Vb i-InGaAs 光吸収層 n電極 n+-InP基板 n+-InP層 i-InGaAs光吸収層 n−-InP ウインドウ層 Zn拡散による p+-InP領域 p電極 光 SiNx 反射防止膜 InGaAs系 PIN-PDの構造 PIN-PDの動作原理
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光検出器 逆バイアスされたpn接合に光が照射されると強度に比例した光電流が取り出せる 光信号 逆バイアス p+ i 出力信号 n+
20 40 60 逆方向印加電圧 (V) 暗電流 Id 光電流 Iph 10-12 10-10 10-8 10-6 10-4 暗電流: Id (A), 光電流: Iph (A) +75℃ -25℃ 0℃ +25℃ +50℃ n+ i p+ 光信号 光電流 電極 逆バイアス 出力信号 出力信号 光電流 逆バイアス 光 受光回路 PIN-PDの電圧-電流特性
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光検出器 アバランシェ フォトダイオード(APD) p+-InP層 n--InP層 電子 正孔 伝導帯 価電子帯 フェルミレベル 光
Vb: 逆バイアス電圧 Iph: 光電流 − + Vb i-InGaAs 光吸収層 InP増倍層 アバランシェ効果により、光電流を増倍するしくみを有している (高感度) n電極 n+-InP基板 n+-InP層 i-InGaAs光吸収層 n-InP キャップ層 p+-InP受光領域 p電極 光 SiNx 反射防止膜 InP増倍領域 InGaAs系 APDの構造 APDの動作原理
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光検出器 アバランシェ フォトダイオード(APD)
アバランシェ降伏(Avalanche breakdown)または雪崩降伏とは、自由電子が電界で加速され衝突電離を引き起こす過程が繰り返し発生することで、大電流が流れる現象 20 40 60 80 逆方向印加電圧 (V) 10-4 10-6 10-8 10-10 10-12 10-2 暗電流 Id 光電流 Iph 暗電流: Id (A), 光電流: Iph (A) M=1 降伏電圧 VB 1 10 100 増倍率 M 5 50 遮断周波数: fc (GHz) 0.1 GB積~40GHz APDの電圧-電流特性 APDの高周波特性
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半導体発光素子 電界印加によって得られる発光をエレクトロルミネセンス(Electroluminescence:EL)と呼び、電流(電子と正孔)を注入して発光させる注入型と、電界によって加速した電子が何らかの発光中心に衝突し、その発光中心が励起されて発光する真性とに区別される。注入型としては発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)がある。 発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED) 無機半導体 波長帯(色) 用途 材料 近赤外 通信 InGaAsP, AlGaAs 赤色 表示 AlGaAs, GaAsP 橙色 表示 GaAsP, AlGaInP, InGaN, GaN , AlGaN 黄色 表示 GaAsP, AlGaInP, InGaN , GaN , AlGaN 緑色 表示 AlGaInP, InGaN , GaN , AlGaN, GaP 青色 表示 InGaN , GaN , AlGaN, ZnSe, ZnO 紫色 表示 InGaN , GaN , AlGaN, ZnSe, ZnO 紫外 特殊 InGaN , GaN , AlGaN, ZnO, ダイヤモンド (C) 白色 照明 青または紫外のLEDと白色蛍光体との組み合わせ 有機半導体 有機ELなどとして、ディスプレイなどに使われ始めている
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発光ダイオード(LED) 発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED) n EFc eVb 発光再結合 EFv p
ホールの拡散長 電子の拡散長 青色LEDの外観 LEDの構造
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出展: www.phlab.ecl.ntt.co.jp/master/04_module/002.html
半導体レーザー 半導体レーザー (Laser Diode: LD) 光共振器を有しており、光の誘導放出を利用して発振動作する 特徴: ・ コンパクト (チップ本体は0.3mm角程度) ・ 取り扱い容易 (乾電池2本程度で動作可能) ・ 直接変調で数Gbpsの高速変調が可能 ・ 高信頼性 (通信用のInGaAsPレーザは100万時間以上の寿命に) ・ 安価 (FTTH用LDはチップコストで数百円、CD用LDは数十円に) へき開面(鏡面) Blu-ray用青紫色LD (三洋) LDチップの構造 出展: 光通信用バタフライモジュール
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二重ヘテロ接合活性層 電子のエネルギー n p EF EFv 屈折率 (b) 熱平衡状態 (c) 順バイアス時 (d) 屈折率分布 EFc
発光再結合 n型 p型 (a) 構造 pn接合ダイオードに順方向に電流注入すると、電子は p型領域に、正孔は n型領域に各々拡散していくが、それらキャリヤの拡散長は数 μmあり、pn接合界面を挟んで数 μm程度の広い領域で発光再結合が起こる。従ってホモ接合では、キャリヤ密度が低いために効果的な発光再結合は得にくい。 一般的なLDの活性層は、二重ヘテロ(Double-hetero)構造によってキャリヤ(電子と正孔)および光を活性層に効果的に閉じ込め、高いキャリヤ密度により高い発光再結合効率を実現している。 光の強度分布
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半導体量子井戸 活性層の厚さを電子のド・ブロイ波長(数nm)程度まで薄くすると、キャリヤが狭い領域に閉じこめられるため、状態密度が離散化される。これを量子サイズ効果と呼ぶ。電子および正孔の波動関数およびエネルギー準位も量子化される。このような構造を半導体量子井戸(Quantum Well: QW)構造と呼ぶ 第一準位 第二準位 第三準位 各量子準位の波動関数 InGaAsP量子井戸 p-InP n-InP InGaAsP量子井戸 ρ(E) 電子 正孔 階段状 p-InP n-InP 量子井戸構造 バンド構造 状態密度
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キャリヤ閉じ込めの次元と状態密度との関係
p-InP n-InP bulk InGaAsP QW バルク活性層 量子井戸活性層 量子細線活性層 量子ドット活性層 QWire QD 状態密度関数 ρ(E) E ρc(E) ρv(E) 放物線状 階段状 線状 鋸歯状
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多重量子井戸(MQW)活性層 p-InP n-InP 活性層 MQW活性層 MQW MQW活性層構造 MQW活性層の断面SEM写真
InGaAs/ InGaAsP MQW E 電子 n-InP p-InP ρ(E) EF 軽い正孔 重い正孔 バンド構造 状態密度
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歪量子井戸とは 通常エピタキシャル成長では、基板の格子定数に成長させる物質の格子定数を合わせて結晶成長を行う。例) (100)InP基板 (格子定数: Λ=5.869Å)にIn0.53Ga0.47Asなど。 エピタキシャル成長層 (In0.53Ga0.47As) In0.53Ga0.47As InP 基板 Λ 歪量子井戸とは、基板とは僅かに異なる格子定数の材料を成長させて、格子歪を導入 エピタキシャル成長層 (In0.6Ga0.4As) InP 基板 Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体の格子定数 Λ
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格子歪による半導体バンド構造の変化 格子歪による In1-xGaxAs バンド構造の変化
S. L. Chuang, Phys. Rev. B 43, 9649 (1991) 格子歪による In1-xGaxAs バンド構造の変化
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歪量子井戸活性層 量子井戸活性層に格子歪を導入することにより、(特に価電子帯の)状態密度関数を望ましい形に設計することが可能。
1. 面内(2軸性)圧縮歪を導入した(x < 0.468)場合 価電子帯では、Γ点での重い正孔と軽い正孔のエネルギー縮退が解けて分裂する。その結果、伝導帯と重い正孔のバンド間での遷移が支配的となる。エネルギー縮退が解けることにより、バンド混合の効果が緩和されて、 Γ点付近での重い正孔の有効質量が小さくなる。その結果、僅かに正孔を注入すれば反転分布が得られるようになる。従って、発振閾値の低いLDを実現するには好都合。 2. 面内(2軸性)引っ張り歪を導入した(x > 0.468)場合 価電子帯では、 Γ点での重い正孔と軽い正孔のエネルギー縮退が解けて分裂する。その結果、伝導帯と軽い正孔のバンド間での遷移が支配的となる。伝導帯と軽い正孔のバンド間での遷移は、活性層に垂直な電場成分を有する(TM-likeモードの)光と相互作用をするため、TM-likeモードの光に対して光学利得を有する。TEとTMの両方の光に対して増幅を行いたい光増幅器などに用いられる。 このように、本来の材料の有する物性(バンド構造)を造り替えて、好ましい状態密度関数の形に自由にデザインする技術をバンドエンジニアリングという。量子井戸、超格子、歪量子井戸などはその典型である。 バンドエンジニアリングは、現代の科学的な錬金術である !!
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半導体レーザの発振条件 利得条件 光共振器を光が往復した時、元の光強度と同じにある条件 つまり、 位相条件(共振条件)
光共振器を光が往復した時、光電場の位相が一致する条件 つまり、 q は自然数, β は半導体内での光の伝搬定数 ϕf , ϕr は端面反射による位相回転 光増幅利得: g cm-1 反射率: Rr 光出力 1−Rf 光出力 反射率: Rf 1−Rr 光吸収係数: α cm-1 共振器長: L
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Fabry-Perot (FP)共振器レーザー
半導体レーザの光共振器構造 へき開面(鏡面) Fabry-Perot (FP)共振器レーザー 2枚の平行に向き合った鏡によるFP型光共振器によって正帰還が得られ発振するレーザー 発振波長間隔 縦多モード発振 Δλ λ0 : 発振波長の中心値 neff : 実効屈折率 L : 素子長 l λ0 発振スペクトル FPレーザーの構造 単一縦モード発振 分布帰還(DFB)型レーザー 出展: 回折格子によるBragg反射により、光の分布帰還が得られ、 Bragg波長近傍の単一波長で発振 l 発振スペクトル DFBレーザーの構造 発振波長 Λ : 回折格子の周期 neff : 実効屈折率 回折格子
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半導体レーザの光共振器構造 半導体レーザの各種光共振器構造 FP型 DFB型 VCSEL型 DBR型 へき開面 活性層 光出力 反射防止膜
回折格子 λ/4位相シフト 活性層 光出力 FP型 DFB型 活性領域 DBR反射鏡 光出力 反射防止膜 回折格子 活性層 光出力 VCSEL型 DBR型
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半導体レーザの発振特性 1.3μm InGaAsP MQW FPレーザの電流-光出力(L-I)特性 注入電流 (mA) 50 100 150
100 150 5 10 15 光出力 (mW) 120℃ 100℃ 80 60 40 20 1.3μm InGaAsP MQW FPレーザの電流-光出力(L-I)特性
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半導体レーザの発振特性 1.3μm InGaAsP MQWレーザの発振スペクトル FPレーザ DFBレーザ 1322 1312 1302
波長 (nm) 光強度 (10dB/div) 発振状態 1318 1308 1298 波長 (nm) 光強度 (10dB/div) 発振状態 (SMSR= 50dB) FPレーザ DFBレーザ
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半導体レーザの発振特性 光出射特性 基板平行方向光強度分布 レーザビーム 基板垂直方向 基板平行方向 基板垂直方向光強度分布 (a) FFP
y x z 基板平行方向光強度分布 レーザビーム x y -θ +θ -θ +θ 基板垂直方向 基板平行方向 基板垂直方向光強度分布 (a) FFP (b) NFP
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光変調特性 半導体レーザの駆動電流に変調信号を重畳し、直接光出力を変調する方式を直接変調と呼ぶ。 光信号
Ib=1.04 Ith 1.10 Ith 1.23 Ith 1.37 Ith 1.64 Ith 2 4 6 8 10 変調周波数: f (GHz) 規格化変調光強度 (3dB/div) 光信号 Ith Ib 変調信号(電気) 小信号変調応答周波数特性 半導体レーザの電流-光出力(I-L)特性
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光変調特性 大信号変調特性 I Ib + Ip 注入電流 Ith Ib t (a) 活性層内キャリヤ密度 n
キャリヤ寿命時間 τs での減衰 nth nb t (b) S 振動周期はほぼ 1/fr 光子密度 Sop t (c)
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通信用途以外での半導体レーザ 世界初、発振波長530nm帯で100mW以上の光出力を有する純緑色半導体レーザーを開発
~ 従来の窒化ガリウム系緑色レーザーに比べて、約2倍の高輝度を実現 ~ 住友電気工業株式会社 ソニー株式会社 2012年6月21日プレスリリース
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光増幅器 半導体光増幅器(Semiconductor optical amplifier: SOA)
半導体レーザーチップ 無反射加工 半導体レーザーの両端面に無反射膜を形成するなどして、光共振器をなくしたもの (光の正帰還がかからなくなるのでレーザー発振はしない) 特徴 ・ 小型で高効率 ・ 電流注入により光増幅 ・ 光増幅利得 ~ 20dB ・ 増幅波長帯域 30 ~ 40nm ・ 自然放出光雑音大 ・ 偏光依存性有り 通信用SOAモジュール
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光増幅器 光ファイバー増幅器(Optical fiber amplifier) Er添加光ファイバー増幅器
波長980 nmや1480 nmなどの光で励起すると波長1.54 μm付近に光増幅利得発生 Er3+の準位 光ファイバー増幅器の構成 特徴 ・ 光増幅利得 ~ 30dB ・ 増幅波長帯域 ~ 30nm ・ 自然放出光雑音小 ・ 偏光依存性無 ・ 光励起 ・ 低効率 市販の光ファイバー増幅器
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光増幅器 ラマン増幅器(Raman Amplifier)
光ファイバーに非常に強い励起光を入射すると、石英ガラスの分子振動エネルギーに対応して、誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering: SRS)が生じ、励起光波長より100 nm程度長い波長域に光学利得が得られる。 特徴 中間状態 (仮想準位) ・ 励起光波長を選べば、任意の波長で増幅が可能 ・ 偏光依存性無 ・ 光励起、低効率 信号光 増幅 反転分布 励起光 励起状態 物質固有の振動エネルギー 基底状態 SRSによる光増幅原理 光ファイバーラマン増幅器の構成
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波長可変レーザ 波長多重伝送やフォトニックネットワークでは、発振波長を自由に変えられる波長可変レーザが望まれる。波長可変レーザは、光増幅器と波長選択素子とで構成できる。 半導体光増幅器 回折格子 コリメート レンズ 回折格子による機械式波長可変レーザの構成 リング共振器による熱光学式波長可変レーザ
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光変調器 光通信において、半導体レーザーなどは直接変調が可能であるが、直接変調を行えない光源(ガスレーザーや固体レーザーなど)には、外部で光変調を行う光変調器がある。 光変調には、 光の強度を変調する光強度変調器 1 アナログ変調 デジタル (バイナリ)変調 光の位相を変調する光位相変調器 1 アナログ変調 デジタル (バイナリ)変調
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光変調器 電界吸収(EA)型光強度変調器 化合物半導体などのpn接合に逆バイアスを印加すると、印加電界によって光吸収特性が変化(フランツ・ケルディッシュ効果、量子閉じ込めシュタルク効果)し、これを利用して光の強度変調を行うもの。 40GbpsEA変調器(沖電気) Franz–Keldysh effectの説明 quantum-confined Stark effect(QCSE)の説明
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光変調器 ニオブ酸リチウム(lithium niobate: LN) によるMZI型光強度変調器
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)は、電圧を印加すると屈折率が変化する電気光学(E-O)効果(Pockels effect)を有している。従って、 LNによる光導波路では、伝搬光の位相変調が可能。LNによる光導波路によってMach-Zehnder(MZ)型の光干渉計を構成し、光の位相変化を強度変化に変換し光強度変調も行える。 M-Z干渉計 LN光導波路 入射光 強度変調された出射光 電極 光の位相を変調 LN光変調器の原理 LiNbO3(LN)光変調器 (住友大阪セメント)
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光変調器 LN光変調器の構造 住友大阪セメント(株)の資料より
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光分岐(光スプリッター) Y分岐 1次偶モードのみ 0次モード 選択的に励振される 出射光 入射光 断熱的モード変換部 出射光
MMI(multi-mode interference)カプラー型分岐 多モード干渉導波路 入射光 出射光
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光分岐(光スプリッター) 光方向性結合器 入射光 出射光 方向性結合器 0次モード 1次偶モードのみ 選択的に励振される
上に比べてπ/2だけ位相が遅れて出射 結合導波路長: L P= P× 完全結合長 偶モード 奇モード 方向性結合器の動作 結合導波路長: L P= P× 完全結合長 分岐比が50:50になる
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光合分波器 波長多重光伝送においては、異なる波長の光搬送波を1本の光ファイバーを用いて伝送する。従って、異なる波長の光を束ねる(合波器)と、光を波長によって分ける (分光器あるいは分波器)が不可欠。 コア クラッド Si 基板 0.5 mm Arrayed Waveguide Grating この一本一本がこのような光導波路からなる l1 l2 lN 石英光導波路 スラブ導波路 50 mm Arrayed Waveguide Grating (AWG) AWGの動作原理 導波路の波長分散を利用
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光合分波器 波長によって導波路を伝搬する光の速度が異なる λ2 λ1 光分波特性 NTTエレクトロニクス社製品
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光スイッチ 電気制御-光スイッチ (光の経路を切り換えるが、ON-OFFの制御は電気で行う) スイッチング機構 特 徴 メカニカル
特 徴 出力ファイバー メカニカル (MEMS) Port1 mSオーダーの遅い切換え速度 安価 Port2 入力ファイバー 入力1 出力1 mS~mSオーダーの切換え速度比較的安価 熱光学(T-O)効果 ヒーター 入力2 出力2 + nSオーダーの高速切換え高価 - 電気光学(E-O)効果 電界印加 その他に、磁気光学(M-O)型、音響光学(A-O)型などもある 光制御-光スイッチ (光-光スイッチ or All光スイッチ) ON-OFF制御も光でやる 現在研究開発中 将来のフォトニックネットワークや全光信号処理システムに 使われるかも?
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偏光子 無偏光 (ランダム偏光) 偏光した光 偏光子 偏光子または偏光フィルター この方向の偏光成分を吸収
偏光子(偏光フィルター)は、光のある特定方向の偏光成分のみを吸収または反射させることにより、それと直交する方向の偏光成分を透過させるもの
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光アイソレーター 通信用デバイスでは、戻り光が様々な悪影響を及ぼすことがある。従って、それを除去する光アイソレーターが必要。磁気光学素子と偏光子により、光を一方向にのみ通過させる素子を光相反素子または光アイソレーターと呼ぶ。 光アイソレーターの原理 各種光アイソレーター 住友金属鉱山(株)HPより
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分散補償素子 光ファイバーや通信用光デバイスの中では、波長によって光の伝搬速度が異なるために、光信号波形が乱されることがある。波長によって光の伝搬速度がことなる現象を chromatic dispersion と呼ぶ。これを補償する素子が分散補償 素子である。 分散補償素子 光ファイバーを用いたもの 分散補償光ファイバー(dispersion compensation fiber: DCF) 通常の光ファイバーとは逆の分散特性を有する光ファイバー AWGとSLM(空間位相変調器)を用いたもの SLMとしては液晶による光位相変調器LCOSを使用 LCOS: Liquid Crystal on Silicon 大庭他、NTT技術ジャーナル2010.2
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レポート課題 私の講義(全5回分)の内容に基づいて、通信用光デバイスに関して学んだ事を、各自でテーマを決めて、A4レポート用紙10頁以内(図なども含む)で述べよ。 レポートには、選んだ課題のテーマ名を必ず明記すること。 例) 半導体レーザーのモード競合雑音について、、、、など。 評価のポイントは、選んだテーマとは関係無く、起承転結のある論旨の明確なレポートを高く評価します。自分なりの考えや主張、結論が無い論文やレポートはダメです。講義に関するご意見や感想も歓迎。 提出〆切: 8月10日(金)17:00 提出先: 私の研究室(青葉山 電気系2号館2階202号室)
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