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新潟大学工学部電気電子工学科 佐々木 重信 Room A-505 E-mail: kojiro@eng.niigata-u.ac.jp
Niigata University, Graduate School of Science and Technology Master’s Program, Electrical and Information Engineering 「ディジタル無線伝送工学」 無線通信路 新潟大学工学部電気電子工学科 佐々木 重信 Room A-505 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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内 容 無線通信路の特徴 フェージング通信路における誤り率 ダイバーシチ受信 【キーワード】 伝播損失,シャドウイング,フェージング
内 容 無線通信路の特徴 フェージング通信路における誤り率 ダイバーシチ受信 【キーワード】 伝播損失,シャドウイング,フェージング レイリーフェージング 誤り率 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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無線通信路のモデル 無線通信における通信路の性質は,次の3つの特徴により表される。 伝播損失:送信機からの距離に依存
シャドウイング:建物等の遮へい物により,変動する電波の減衰 フェージング:多重波の干渉により短時間で受信信号の振幅,位相が激しく変動する現象。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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無線通信路モデルの利用 通常のシステム設計においては
(距離減衰)と(シャドウイング)は無線通信サービスの置局設計の際にマクロなパラメータとして主に考慮される (フェージング)は速い変動であり、伝送方式の設計の際に考慮することが多い SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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伝播損失(1) 無線システムにおける伝播損失Lは,最も簡単な自由空間の場合,信号の中心周波数fcと送信機からの距離dに対し,次の式で与えられる。 c: 光の速度(=3×108m/s) 例えば, fcをGHz, dをm単位で表すと,LのdB表現は次のようになる。 見通しがなく,建物などの反射・透過がある場合,伝播損失はある距離から極端に大きくなることがある。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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伝播損失(2) 距離による伝播損失のモデルは、自由空間損失の他に、次のようなより複雑なモデルがある。 大地反射2波モデル
直接波と大地反射波の2波を考慮。ある点(ブレークポイント)から減衰が距離の2乗→4乗に増加 奥村ー秦モデル 適用周波数( MHz)、距離(1-20km)、アンテナ高、エリアによって異なる減衰式がある。 以下のように、いくつかのモデルが標準化されている Rec. ITU-R P (Indoor, 無線LAN, 900MHz-100GHz) Rec. ITU-R P (COST231Walfish-池上モデル) Rec. ITU-R P : “Method for point-to-area predictions for terrestrial services in the frequency range 30MHz to 3000 MHz,” 2003 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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シャドウイング 送信機,受信機間に遮蔽物(壁,建物など)が存在する場合,電波が遮蔽される。
実際は送信機または受信機の移動につれ,遮蔽の程度が緩慢に変動する。この現象をシャドウイング(shadowing)という。 シャドウイングが存在する場合の短区間平均受信電力Sの対数d=10log10S(dB)は,次のような対数正規分布に従うことが知られている。 ここで標準偏差sは6~8であり,dmは短区間平均受信電力の中央値である。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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フェージング 無線伝送では,送信アンテナから放射された電波は散乱(反射と回折)により,複数の経路を通った電波が受信アンテナに到達する。
これらは互いに干渉し,受信電力が激しく変動する。この現象はフェージング(fading)とよばれ,ディジタル無線伝送における誤りの要因のひとつである。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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フェージング通信路の表現(1) 多重波伝播によって変化する時変線形フィルタ(time-varying linear filter)とみなすことができる。 次のような送信信号を考えよう。 搬送波周波数fcの被変調正弦波 受信信号が,次のように表されるものとする。 u(t),z(t): 複素包絡線(変調信号の包絡線と位相) t0:平均伝播時間 u(t)とz(t)の間には次の関係が成り立つ。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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フェージング通信路の表現(2) h(t;t):複素包絡線を入力とする等価低域フィルタ(equivalent low-pass filter)のインパルス応答 時刻t-t のインパルス入力の時刻tにおける出力 h(t;t)と伝達関数H(f;t)(h(t;t)のフーリエ変換) 時間tの変化につれてランダムな値をとる 受信信号の複素包絡線z(t)は,u(t)(送信信号の複素包絡線)のフーリエ変換U(f)を用いると次のようになる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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例 送信信号u(t) 受信信号の複素包絡線z(t) 受信信号v(t) フェージングを受けた受信信号 振幅Aの単一正弦波
周波数が搬送波周波数fcからf’ 隔たっている 受信信号の複素包絡線z(t) 受信信号v(t) フェージングを受けた受信信号 送信信号に,包絡線と位相がランダムに変化する伝達関数H(f;t)が乗積的に加わる。 送信信号が単一正弦波でも,受信信号はスペクトルの広がりを持つようになる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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フェージングの分類 一様フェージング(flat fading)又は周波数非選択性フェージング(frequency nonselective fading) 信号の伝送帯域内において,周波数的に一様で変化がないもの(時間的にはランダム) 周波数選択性フェージング(frequency selective fading) 信号の伝送帯域内において,周波数的に変化の様子が異なるもの SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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一様フェージングの性質 伝達関数H(f;t):時間のみの関数 受信信号の複素包絡線z(t)は次のようになる。 H(0;t):複素ガウス課程
実数部と虚数部がそれぞれガウス分布 受信信号の複素包絡線時間的に送信信号の複素包絡線に複素ガウス変数の係数が乗じられたものになる。 さらに時間変化の緩やかなフェージングにおいては,H(0;t)は定数になり,少なくとも各パルスの持続時間において, となる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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フェージングの相関 伝送媒体の周波数変化,時間変化の類似の程度 ⇒H(f;t)とH(f+Df;t+Dt)の相関係数=r(Df,Dt)を用いる
周波数は離れても変動はほぼ一定とみなされる この条件を満たす帯域幅:コヒーレンス帯域幅 Bc r(0,Dt)≒1が成り立つ範囲 時間がDt離れても変動はほぼ完全相関とみなされる この条件を満たす時間幅:コヒーレンス時間幅 Tc SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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多重路広がり(multipath spread)
単一インパルスを送信した時,マルチパス伝播により到達時間が異なる複数のインパルス列が受信される。 到達インパルスの時間幅を多重路広がり(multipath spread)と呼ぶ。 多重路広がりをTMとすると,コヒーレンス帯域幅Bcと次のような関係がある。 符号間干渉を避けるためには,パルスの時間幅TがTMに比べて十分大きくなければならない。 ⇒データ伝送速度(∝1/T)が制限される SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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ドップラー広がり(Doppler spread)
ドップラー効果により,送信信号の周波数が広がる 伝送媒体が時間的に運動する場合 陸上移動無線通信,移動体衛星通信など コヒーレンス時間幅Tcとドップラー広がりBDは次の関係がある 伝送媒体の状態が時間的にTc程度で変化 信号パルスの時間幅TはTcに比べて十分小さい必要がある。 ⇒パルス間で極端な振幅や位相の変動がない (パルスの同期を取り,維持する際に必要な条件) SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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フェージングの変動(1) フェージング通信路を通った受信信号 位相がランダムに変動する多数の波から成る
成分波の位相は統計的に独立なランダム変数 一様分布で近似 N→大:低域直交成分x(t),y(t)はガウス変数(中心極限定理) 受信信号の包絡線や位相の統計的性質を左右するもの 電波の伝播モード 周波数,地形のプロフィルなど SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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フェージングの変動(2) 受信信号の極座標表現 複素正弦波z(t)を用いた表現
代表的な包絡線分布として定式化されているものを次のスライドに示す SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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受信信号の包絡線分布(1) レイリー分布(Rayleigh distribution) マイクロ波回線のマルチパスモデル
市街地における陸上移動無線における短周期の包絡線変動の確率分布 等に広く用いられる。 W: Rの2乗平均 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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受信信号の包絡線分布(2) 仲上-ライス分布(Rice distribution)
I0(x): 0次第1種修正ベッセル関数 Q(a,b): Marcum Q関数 直接波のような1つの強い定常成分にマルチパスが重畳された場合の短周期の包絡線変動の確率分布 移動通信において,基地局が見通せるマイクロセルにおけるマルチパスフェージングのモデルに用いられる。 K=R02/s2 ・・・ ライス係数 (Rician factor) SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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【参考】 修正(変形)ベッセル関数 a次第1種修正(変形)ベッセル関数 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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受信信号の包絡線分布(3) 仲上m分布(Nakagami-m distribution) 幅広い短周期の包絡線変動をカバーする
g(x,y): 第1種不完全ガンマ関数 幅広い短周期の包絡線変動をカバーする m=1:Rayleigh分布 m=∞:AWGN(フェージングなし) 【参考】第1種不完全ガンマ関数 x: 実部が正の複素数, y: 0以上の実数 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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Nakagami-m 分布のPDFとCDF
受信信号の包絡線分布(4) Nakagami-m 分布のPDFとCDF SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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フェージング通信路における平均誤り率 前提条件 フェージング通信路における平均誤り率は より,次の式で求められる
伝送信号パルスの持続時間よりも変動が緩やか 周波数非選択性フェージング ⇒信号パルスが一定の振幅と位相の変化のみを受けると考えることができる。 フェージング通信路における平均誤り率は あるSN比gにおける誤り率:Pe(g) フェージング通信路におけるSN比のPDF:p(g) より,次の式で求められる SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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レイリーフェージングにおける平均符号誤り率(1)
包絡線がレイリー分布の場合の受信信号強度のPDFは次の式で与えられる。 これより受信SN比gのPDFは次の式で与えられる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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レイリーフェージングにおける平均符号誤り率(2)
FSK非同期検波における平均誤り率は次のように計算される。 FSK同期検波における平均誤り率は次のようになる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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レイリーフェージングにおける平均符号誤り率(3)
同様の考え方によりPSKにおける平均誤り率は次のように計算される。 またDPSKにおける平均誤り率は次のようになる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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レイリーフェージングにおける平均符号誤り率(4)
AWGN通信路の場合 (図中点線) 誤り率∝exp(-SN比) フェージング通信路の場合 (図中実線) 誤り率∝1/(SN比) フェージング通信路では,ある誤り率を達成するために必要なSN比がAWGN通信路に比べてきわめて大きくなる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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仲上フェージングにおける平均符号誤り率(1)
包絡線がレイリー分布の場合の受信信号強度のPDFは次の式で与えられる。 これより受信SN比gのPDFは次の式で与えられる。 g0:平均SN比 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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仲上フェージングにおける平均符号誤り率(2)
FSK非同期検波における平均誤り率は次のように計算される。 FSK同期検波における平均誤り率は次のようになる。 2F1:ガウスの超幾何関数(Gauss hypergeometric function) SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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仲上フェージングにおける平均符号誤り率(3)
同様の考え方によりPSKにおける平均誤り率は次のように計算される。 またDPSKにおける平均誤り率は次のようになる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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仲上フェージングにおける平均符号誤り率(4)
仲上パラメータmにより誤り率が変化 m=∞:フェージングなし m=1:レイリーフェージング m>1:直接波の成分を含む (仲上-ライス分布と同様) 図 BPSKの平均誤り率 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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ダイバーシチ受信 フェージングによるレベル低下⇒誤り率の増加 フェージングに対する対策 短周期のフェージング
送信電力の増加:数十dBが必要(不経済) ダイバーシチ受信 フェージング変動の形態が異なる別のアンテナ位置,周波数などの信号を受信(送信する情報は同一) 受信信号から,相対的に高いレベルの信号を選択するか,受信信号を適当な方法で合成して出力信号とする 短周期のフェージング (例)適当な距離を隔てたアンテナの受信電力 変動の形態が異なり,相関が小さくなる ⇒同時に低いレベルを取る確率が低くなる 離れた周波数の搬送波,異なる時間の信号伝送などでも同様の効果が得られる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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ダイバーシチの分類 信号の設計法による分類 合成法による分類 空間ダイバーシチ(space diversity)
周波数ダイバーシチ(frequency diversity) 偏波ダイバーシチ(polarization divesity) 角度ダイバーシチ(angle diversity) 時間ダイバーシチ(time diversity) その他 合成法による分類 選択合成(selection combining) 等利得合成(equal gain combining) 最大比合成(maximal ratio combining) SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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選択合成 受信機の出力信号 高周波,中間周波帯,ベースバンド(検波後)のいずれでも可能 選択した出力信号で包絡線,位相の不連続が生じる
包絡線レベルの最も高いダイバーシチ枝(ブランチ)の信号を選択 高周波,中間周波帯,ベースバンド(検波後)のいずれでも可能 選択した出力信号で包絡線,位相の不連続が生じる SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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等利得合成 受信機の出力信号 主に中間周波帯で用いられる 最大SN比以外の入力もすべて利用
各ダイバーシチ枝(ブランチ)からの信号の位相を合わせ,同じ重みで合成 主に中間周波帯で用いられる 最大SN比以外の入力もすべて利用 極端に低いSN比の信号があったとしても同じ重みで合成 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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最大比合成 受信機の出力信号 主に中間周波帯で用いられる
各ダイバーシチ枝(ブランチ)からの信号の位相を同相になるように調整 各包絡線に応じた重み付けをして合成 SN比の大きい入力ほど合成した出力への寄与が大きくなる 主に中間周波帯で用いられる 各ブランチにおける信号の位相や包絡線の大きさ(またはSN比)を正確に推定する必要がある SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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ダイバーシチ合成における出力SN比 選択合成 等利得合成 最大比合成 gk:k番目のダイバーシチ枝におけるSN比
Rk:k番目のダイバーシチ枝における包絡線 Nk:k番目のダイバーシチ枝における雑音電力 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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例:M=2の場合の出力SN比の確率密度関数
レイリーフェージングを仮定 選択合成 等利得合成 最大比合成 g0:ダイバーシチ枝あたりのSN比 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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ダイバーシチ受信における出力SN比の確率密度関数
レイリーフェージング,ダイバーシチ枝数:M 選択合成 等利得合成(近似式) 最大比合成 g0:ダイバーシチ枝あたりのSN比 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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ダイバーシチ受信における出力SN比の累積分布関数
レイリーフェージング,ダイバーシチ枝数:M 選択合成 等利得合成(近似式) 最大比合成 g0:ダイバーシチ枝あたりのSN比 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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ダイバーシチ受信におけるSN比の確率分布
レイリーフェージング 曲線が左上に移動 ⇒相対SN比が落ち込む確率が高くなる ダイバーシチ枝数Mの増加 ⇒相対SN比が落ち込む確率が低くなる (例)M=1(ダイバーシチなし) P(g/g0<-10dB)=10%程度 M=2の時 P(g/g0<-10dB)=1%程度 (選択合成) P(g/g0<-10dB)=0.5%程度 (最大比合成) SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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ダイバーシチ受信における誤り率 ダイバーシチ受信における平均誤り率は,フェージング通信路における平均誤り率
あるSN比gにおける誤り率:Pe(g) SN比のPDF:p(g) において,SN比のPDFをダイバーシチ受信におけるPDFに置き換えることにより求められる。 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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(例)FSKにおける平均誤り率 前提条件 非同期FSKにおける平均誤り率 同期FSKにおける平均誤り率 周波数非選択性レイリーフェージング
最大比合成ダイバーシチ 非同期FSKにおける平均誤り率 同期FSKにおける平均誤り率 M:ダイバーシチブランチ数 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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FSKにおけるダイバーシチ受信の効果 SS, Niigata U. 「ディジタル無線伝送工学」
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仲上-m分布フェージングにおけるダイバーシチ受信の効果
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