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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 会社の業務執行機関総説 取締役 取締役会 代表取締役 取締役と会社の関係
機関(2)その他の機関 「業務執行機関」 会社の業務執行機関総説 取締役 取締役会 代表取締役 取締役と会社の関係 テキスト参照ページ:167~213p (委員会設置会社に関する部分を除く)
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Ⅰ 会社の業務執行機関総説 (1)株式会社の業務執行機関 ・取締役会不設置会社の場合(348・349)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 Ⅰ 会社の業務執行機関総説 (1)株式会社の業務執行機関 ・取締役会不設置会社の場合(348・349) ①株主総会で選任された1名以上の「取締役」 :株主総会以外の唯一の必要的機関 ②原則として各自が会社の対外的・対内的業務執行(対外的業務執行を代表という):必要常置の機関 ③複数選任することもできる⇒原則として取締役の過半数で意思決定を行う(348Ⅱ):一定の事項(Ⅲ)については、各取締役に委任不可
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Ⅰ 会社の業務執行機関総説 (1)株式会社の業務執行機関 ・取締役会設置会社の場合(委員会設置会社を除く)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 Ⅰ 会社の業務執行機関総説 (1)株式会社の業務執行機関 ・取締役会設置会社の場合(委員会設置会社を除く) ①3名以上の取締役全員で構成する「取締役会」(会議体)⇒業務執行の意思決定 ②取締役会により選定される「代表取締役」 (1名以上:363Ⅰ①) ⇒会社の対外的・対内的業務執行:常置機関 ・取締役個人は会社の機関ではないが、各種の経営監督権限が認められている ③「業務執行取締役」:363Ⅰ②、2⑮
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Ⅰ 会社の業務執行機関総説 (1)株式会社の業務執行機関 ・委員会設置会社の場合
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 Ⅰ 会社の業務執行機関総説 (1)株式会社の業務執行機関 ・委員会設置会社の場合 ①3名以上の取締役全員で構成する「取締役会」(会議体)⇒重要な業務執行の意思決定・執行役等の監督 ②取締役会により選任される「執行役・代表執行役」(1名以上、取締役に限らない:402Ⅰ) ⇒会社の対外的・対内的業務執行:常置機関 ③社外取締役を中心とする各種委員会が設置される:監査委員会、指名委員会、報酬委員会
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取締役会と代表取締役との関係 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 「派生機関説」→取締役会は業務執行に関して全権を有する機関であるが、昭和25年の改正により取締役会の業務執行権限を取締役会から派生した代表取締役に委譲したものと考える。 「並立機関説」→取締役会と代表取締役を別個の機関として位置づけ、取締役会を業務執行に関する意思決定機関とし、代表取締役を執行・代表機関と考える(通説といわれる)。
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(2)業務執行に関するその他の組織 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ①業務担当取締役:代表取締役以外の取締役で、取締役会決議により取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定された者(363Ⅰ②)⇒担当する範囲で会社の業務を執行する取締役 ②常務会:代表取締役、業務担当取締役など上級役員から構成される会議体(経営委員会など会社によって呼称はさまざま) ⇒重要な経営方針や業務執行の大綱が決定されることが多い→取締役の数が多い大規模企業では常務会で実質的な決定がなされ、取締役会では形式的に承認されるに過ぎないことが多い(取締役会の形骸化)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ③社外取締役 ・株式会社の取締役のうち、現に当該株式会社または子会社の業務執行取締役、執行役または支配人その他の使用人でない者で、かつ、過去に当該株式会社または子会社の業務執行取締役、執行役または支配人その他の使用人となったことがない者(2⑮) →委員会設置会社または特別取締役による議決の定めを設ける会社では一定数の社外取締役の選任が義務付けられる
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ④執行役員制度 肥大化し形骸化した取締役会のスリム化による取締役の受け皿として企業が自主的に設置するようになった職名(商法上の役員ではなく、法的には使用人=従業員) →意思決定と業務執行の分離による経営の迅速化・効率化を図る(上場企業の半数以上が導入しまたは導入を検討している) 執行役とは呼び名は似ているが法的には別のものなので混同しないよう注意が必要
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Ⅱ 取締役 (1)員数、資格:株式会社は取締役を1名以上選任しなければならない(326Ⅰ) ⇒取締役会設置会社では3名以上必要(331Ⅳ)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 Ⅱ 取締役 (1)員数、資格:株式会社は取締役を1名以上選任しなければならない(326Ⅰ) ⇒取締役会設置会社では3名以上必要(331Ⅳ) 欠格事由(331Ⅰ):旧商法254ノ2参照 331Ⅱ:定款をもってしても取締役が株主であることを要件とすることはできない→所有と経営の分離を徹底し、広く経営の専門的能力を有する人材を求める ⇒公開会社でない会社を除く 取締役の資格要件(積極的資格)を定めておらず、株式会社は定款で取締役の資格を定めることができる。
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 取締役の資格 取締役の欠格事由(331Ⅰ) ・破産手続開始の決定を受け復権していない者→欠格事由から外す ・商法特例法は削除、証取法・各種倒産法制に定める罪を加える 333Ⅲ①、335Ⅱ:兼任の禁止 →当該会社の監査役・会計参与を兼任できない →親会社における監査の適正を確保するため、取締役は親会社の監査役を兼任することはできない 331Ⅲ:委員会設置会社の取締役は使用人を兼務できない
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (2)取締役の選任 ①選任手続:設立時を除き(38Ⅰ・88)、原則として株主総会の普通決議によって選任される(329Ⅰ) →取締役選出の重要性に鑑み、取締役選任決議の定足数は総株主の議決権の3分の1未満に下すことができない(341) ※会社設立時には発起設立の場合は発起人が選出し、募集設立の場合は創立総会において選出される ※決議要件は定款で加重することもできる
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ②累積投票制度(342) 総会で2名以上の取締役を選任する場合に、その取締役全員の選任を一括し、各株主に1株(1単元)につき選任される取締役と同数の議決権を認め、株主はその議決権を全部候補者の一人に集中的に投票することも、分散して数人に投票することもでき、これにより最多投票数を獲得した候補者から順次当選者とする制度 →少数派株主にも自己の代表者を取締役会に送る機会を与える(一種の比例代表制度) 株主の請求(総会の日の5日前までにする)により、認められるが、定款で排除することもできる
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③種類株主総会における選任(347Ⅰ) 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 委員会設置会社でない非公開会社に限る(役員選任権付種類株式:108Ⅰ⑨Ⅱ⑨) ・この場合、定款に定められた数の取締役を、その種類の株主の総会において選任する (例)取締役の選任について議決権のない種類の株式と議決権を有する種類の株式が発行されている場合や、取締役の定員を8名とし、それぞれ4名ずつの取締役を選任できる種類のA種株式とB種株式が発行されているような場合
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ④取締役と会社の関係 株主総会の取締役選任決議に基づいて、会社と被選任者とが任用契約を締結する ⇒民法の委任契約ないし準委任契約 (330、民643以下)→善管注意義務 実務上は総会前に取締役候補者より就任の承諾を得ており、選任決議成立時ないしはその総会終結時に選任の効力が発生する。
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(3)終任 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ①終任:取締役は、辞任・解任(339)・死亡・会社もしくは取締役の破産手続開始の決定によって終任となる(330、民651・653) その他:任期満了(更新可)、欠格事由の発生、定款所定の資格の喪失、会社の解散によってその地位を喪失する。 ※累積投票によって選任された取締役の解任決議は株主総会の特別決議による(342Ⅵ・309Ⅱ⑦)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ②取締役の任期 原則として、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時またはそれよりも短い期間でなければならない(332Ⅰ)→株主の信任を問う機会を多く確保するため(委員会設置会社では1年以内:332Ⅲ後述) 委員会設置会社でない非公開会社については、定款で最長選任後10年以内に伸長できる(332Ⅱ) 委員会設置会社でない非公開会社が譲渡制限の定款の定めを廃止する定款変更を行う場合、当該定款変更の効力発生時に任期満了とみなす
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 委員会設置会社の取締役 選任後1年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結まで(332Ⅲ)⇒定款で剰余金配当を取締役会限りで確定できる旨を定めることができること(459Ⅰ)との関係上、毎年の定時株主総会で取締役の信任を問う機会を保障するため 旧商特「就任後」→会社法「選任後」 委員会設置会社となる旨の定款変更をした場合または当該定款を廃止する場合 ⇒取締役の任期は、当該定款変更の効力発生時に満了したものとみなす(332Ⅳ①②)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ③解任(339) 原則として、株主総会の普通決議によりいつでも解任できる(339Ⅰ、309Ⅱ⑦、なお341) ・ただし、累積投票により選任された取締役の場合は特別決議が必要。また、正当な理由がなく任期満了前に解任された取締役は、会社に対して損害賠償を請求できる(339Ⅱ) 株式会社の役員の解任の訴え:職務執行に関し、不正な行為や法令・定款違反等の重大な事実があったにもかかわらず、解任決議が否決された場合(拒否権により効力を生じない時を含む)は、6ヶ月前より引き続き総株主の議決権の3%以上を有する株主等は、30日以内にその解任を裁判所に請求できる(854)
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④種類株主総会選出の取締役の解任(347) 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 役員選任権付種類株式の種類株主総会で選出された取締役は、全体株主総会ではなく、当該取締役を選出した種類の株主総会の決議によりいつでも解任できる(手続は通常の株主総会手続に準じる) :定款で通常の解任手続により解任できる旨を定めることもできる(347Ⅰ・Ⅱ中括弧書) ⇒任期満了前に種類株式が取得条項に基づいて取得される等により種類株主が議決権を失った場合は、全体株主総会で解任できる(同)
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(4)欠員の場合の措置(346) 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 法律または定款に定めた員数が欠ける場合 ①新たに役員が就任するまで、任期満了または辞任により退任した役員は、暫定的に役員としての権利義務を有する(同Ⅰ) ②①によることが不適当な場合は、利害関係人の請求により裁判所は一時的な仮の役員を選任することができる(同Ⅱ)→登記事項 代表取締役の欠員についても同様(351) 会計監査人の欠員につき346Ⅳ~Ⅶ参照
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(5)取締役の職務執行停止・職務代行者(民保23Ⅱ、352参照)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 民保23Ⅱ:取締役の職務執行を停止し職務代行者を選任する仮処分→登記事項(917①、民保56) 仮処分命令に特に定めがない場合、会社の「常務」に属する行為のみなすことができる 特に裁判所の許可を得ればその他の業務執行行為をなすこともできる 職務代行者が常務の範囲を超えて行為した場合(法的には無効)、会社は善意の第三者に対抗できない(352Ⅱ)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 常務とは? 会社の日常の業務 →会社のルーチンワークとしての業務執行行為 (新株発行、社債の募集などの資金調達、営業譲渡や合併などの会社の基礎的変更は含まない)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 Ⅲ 取締役会 (1)権限: 「業務執行に関する意思決定を行い、代表取締役および他の取締役の職務執行を監督する」(362Ⅱ):委員会設置会社を除く ①業務執行に関する意思決定権限:法令または定款で株主総会の権限とされるものを除く業務執行一般 ・取締役会は会議体であり、常時活動状態にあるわけではないので、効率的な経営のため必要に応じて業務執行の意思決定について代表取締役や業務担当取締役、あるいはそれら上級取締役らによる会議体(常務会・経営委員会などの名称で取締役の人数の多い大規模な会社によくみられる)に委譲することができる。会社の常務に関しては、黙示的・包括的に代表取締役に意思決定権限を委譲していると解される。
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※取締役会の専決事項 ・下記の事項の他重要な業務執行の意思決定は、代表取締役等に委譲することはできない(362Ⅳ)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ※取締役会の専決事項 ・下記の事項の他重要な業務執行の意思決定は、代表取締役等に委譲することはできない(362Ⅳ) 1)重要な財産の処分・譲受 2)多額の借財 3)支配人その他の重要な使用人の選任・解任 4)支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止 5)募集社債に関する事項 6)内部統制システムの構築の基本方針の決定と開示(事業報告で開示義務) 7)定款に基づく役員等の責任の一部免除
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 内部統制システム 会社法制定前より、一定規模以上の株式会社の取締役会は、いわゆる内部統制システムを整備しなければならないと解されてきた(大阪地判平成12・9・20日判時1721・3(大和銀行事件)) 会社法において内部統制システムとは、「取締役の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」と定義され、大会社では、取締役会設置会社であるかどうかにかかわらず、内部統制システムを整備することが義務づけられる(348Ⅳ・362Ⅴ) 委員会設置会社では(大会社でなくても)、内部統制システムとともに、内部統制部門を通じて監査を行う監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項も、取締役会が定めなければならない(416Ⅰ①ロ、ホ)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ※特別取締役による決議 取締役の数が6人以上であり、かつ社外取締役が1名以上いる取締役会設置会社では、上述の取締役会の専決事項のうち1)、2)の決定を取締役会があらかじめ選定しておいた3人以上の取締役(特別取締役)のうち、議決に加わることができる者の過半数が出席し、その過半数をもって行うことができる旨を取締役会決議で定めることができる(373Ⅰ) 当該定めを設けたことおよび特別取締役の氏名は登記される(911〔21〕) →特別取締役は社外取締役である必要はない
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ②監督権限 業務執行の意思決定権限と表裏一体のものとして、業務執行が法令定款に違反していないか(適法性)、会社の利益増進の見地から妥当なものか(妥当性)をチェックする 業務状況の報告義務:取締役会による業務監督を効果的に機能させるため、「代表取締役および業務担当取締役は、少なくとも3ヶ月に1回以上、会社の業務執行の状況を取締役会に報告しなければならない(363Ⅱ)」 →取締役会は少なくとも年4回は開かなければならない(372ⅠとⅡに注意)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 各取締役の監視義務 各取締役は監督権限を有する取締役会の構成員として、代表取締役等の職務執行が適法かつ妥当に行われているかどうかを相互に監視・監督する義務があると解されている 監視義務は取締役会に上程されない事項に及ぶ(各取締役は自ら取締役会を招集する権限を有するから) 監視義務違反は任務懈怠責任(過失責任)であって、個々の取締役の地位や担当業務により過失の有無ないし損害との因果関係が個別に判断される傾向がある
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(2)招集:株主総会ほど厳格な招集手続は必要ない
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (2)招集:株主総会ほど厳格な招集手続は必要ない ①招集権者:定款または取締役会で特に招集権者を定めた場合のほかは、各取締役が招集できる(366Ⅰ)→実務では代表取締役(社長)を招集権者とすることを定款等で定めることが多い ②招集権者を定めた場合でも、他の取締役は招集権者に対して会議の目的とすべき事項を示して取締役会の招集を求めることができる→招集権者が5日以内に「請求の日から2週間以内の日」を会日とする招集通知を発しない場合は自ら招集できる:招集請求権・招集権(同Ⅱ~Ⅲ)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ③監査役・株主による招集 取締役の法令・定款違反行為等の報告(382)のため特に必要があるときは、②に準じて監査役も招集の請求をなし、また自ら招集できる(383Ⅱ・Ⅲ):ただし、特別取締役による取締役会(373Ⅱ)を招集することはできない(383Ⅳ) 監査役設置会社および委員会設置会社を除く取締役会設置会社(F類型中監査役を置かないか、会計監査に限る定款の定めを置く会社)において、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし、またはこれらの行為をするおそれがあると認めるときは、株主も、取締役会の招集請求をし、また自ら招集できる。当該株主はそのように招集された取締役会に出席して意見を述べることができる(367)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ④招集手続(368) 会日より1週間前まで(定款で短縮可能)に各取締役および各監査役(監査役設置会社)に対して通知する(Ⅰ:通知は口頭でも良い) 取締役(監査役)全員の同意があれば招集手続を省略できる(Ⅱ) →定例会議などあらかじめ毎回の日時と場所が定められていれば、個別の招集手続は必要ない 会議の目的事項を明記しない招集通知は適法か? 会議の目的を定めて開催された取締役会で、それ以外の事項について決議することはできるか?
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (3)決議(369) ①定足数・決議要件:議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数をもって行う(頭数多数決:369Ⅰ)→定款で要件を加重することはできるが、軽減することはできない。 ※取締役会の省略(書面決議)⇒決議の目的事項に関する提案について、各取締役が書面または電磁的方法で同意の意思表示をした場合、当該提案を可決する決議あったとみなす旨を定款に定めることができる。ただし、監査役設置会社においては、監査役が当該提案について異議を述べたときは認められない(370)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ②特別利害関係人(369Ⅱ) 「決議について特別な利害関係(取締役としての任務と矛盾する個人的利害対立関係)を有する者は、当該議決に加わることができない」(定足数算定における取締役の総数からも除外される) 例)競業取引や利益相反取引の承認決議における対象取引を行おうとする取締役など 代表取締役の解職決議における当該代表取締役が特別利害関係人に当たるか否かについては議論がある⇒判例は特別利害関係人にあたるとする(百選40) cf.株主総会の特別利害関係人は議決権の行使は可能
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ③監査役の出席・意見陳述義務 監査役は、取締役会において議決権を有しないが、取締役会に出席し、必要があれば意見を述べる義務を負う(383Ⅰ本文) 従来から出席権、意見陳述権は認められていたが、監査役の権限強化のためH13改正で義務とされた 特別取締役による取締役会にも出席しなければならないが、監査役が二人以上いる場合は、互選によって出席する監査役をさだめることができる(同但書)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ④取締役会決議の瑕疵 会社法に取締役会決議の瑕疵に関する特別な規定はなく、招集手続、決議方法の法令定款違反、決議内容の法令定款違反があった場合、決議は一般原則にしたがい当然無効と解される(いつでも、誰からでも、どんな方法でも主張できる) →訴えによって確定させる必要はなく、抗弁として決議の無効を主張することができる
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無効な取締役会決議に基づく行為の効力 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 決議が無効とされる場合であっても、当該無効の決議に基づいてなされた対外的な取引の私法上の効果については、取引の安全に対する配慮が必要である 同様に会社法上取締役会の決議が必要とされる取引を決議なしに代表取締役が独断で行った場合(代表権の濫用)の効力についても取引の安全との関係でさまざまな見解が主張されている 判例は一貫して心裡留保説 (後述)
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(4)議事録等(371) 取締役会の議事録等の作成・署名と備え置き
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (4)議事録等(371) 取締役会の議事録等の作成・署名と備え置き 議事の経過の要領および結果を議事録に記載または記録し、出席取締役(監査役)が署名(または記名押印・電子署名)(369Ⅲ・Ⅳ) 決議に参加した取締役で議事録に異議をとどめない者は、決議に賛成したものと推定される(369Ⅴ) 取締役会の書面決議(みなし取締役会決議ともいう:後述)に関する定款の定めのある会社(370)における「同意の意思表示」を記載・記録した書面・電磁的記録を含めて「議事録等」とよぶ 議事録等は取締役会の日から10年間、本店に備え置かれる(371Ⅰ)
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※株主の閲覧・謄写請求権 株主は権利行使のために必要があるときは、取締役会議事録の閲覧・謄写の請求ができる(371Ⅱ)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ※株主の閲覧・謄写請求権 株主は権利行使のために必要があるときは、取締役会議事録の閲覧・謄写の請求ができる(371Ⅱ) 監査役設置会社・委員会設置会社では裁判所の許可を要する(371Ⅲ) 監査役を設置しているが、監査役の監査権限を会計に関するものに限る旨の定款の定めのある取締役会設置会社の場合、閲覧・謄写請求の要件は何か?
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ※債権者・親会社社員の閲覧・謄写請求権 債権者が役員・執行役の責任を追及するため必要なとき、または親会社の社員が権利行使に必要なときは、裁判所の許可を得て閲覧・謄写請求をすることができる(371Ⅳ・Ⅴ) 但し、閲覧・謄写によって当該会社またはその親会社・子会社に著しい損害を生じるおそれがあるときは、裁判所は許可を与えてはならない(371Ⅵ)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 Ⅳ 代表取締役 (1)意義 「対外的に会社を代表する取締役であるとともに、対内的な業務執行を担当する株式会社の機関 :取締役会設置会社では必要常置の機関」
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (2)代表取締役の選定・解職 取締役会不設置会社:定款、定款の定めに基づく取締役の互選または株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる(349Ⅲ) 取締役会設置会社:取締役会が、取締役の中から代表取締役を選定する(362Ⅲ) 員数:定めがないので、1人以上であればよい 定款で定員を定めることはできる(351Ⅰ参照) 取締役会設置会社では、代表取締役の解職も取締役会で行う(362Ⅱ③)
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(3)代表取締役の権限 ①代表権限:会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及ぶ
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (3)代表取締役の権限 ①代表権限:会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及ぶ ・代表権に対する内部的制限(定款や取締役会決議等による制限)は、善意の第三者に対抗することができない(349Ⅳ・Ⅴ)⇒「包括的かつ不可制限的代表権」 ※取締役対会社間の訴訟については、訴訟追行の公正性確保のため他の代表者が会社を代表する(353、364、386Ⅰ:委員会設置会社について408Ⅰ参照) ・監査役設置会社:監査役 ・それ以外:株主総会の定める者(取締役会設置会社で株主総会が代表者を定めない時は取締役会の定める者)
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論点 代表取締役の専断的行為・権限濫用行為の効力
論点 代表取締役の専断的行為・権限濫用行為の効力 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 会社法により取締役会決議が要求されている取引行為(362Ⅳ柱書①②参照)を、代表取締役が必要な決議なしに行った場合(専断的行為)、右取引の効力について様々な見解が主張されている。 代表取締役が客観的にその代表権の範囲に属する行為を、会社を代表して、しかし自己または第三者の利益のために行った場合、そのような権限濫用行為の効力についても、専断的行為の効力と同じような見解の対立が見られる。 参考文献:争点Ⅰ70、会社法百選71事件参照
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 心裡留保説(判例) 必要な取締役会決議を経ていないことは会社の内部的意思決定を欠くにとどまるから、取引行為は原則として有効だが、取引の相手が決議を経ていないことを知りまたは知りうべかりし場合は、民法93条但書を類推して無効となる、と解する。 最判昭40・9・22民集19・6・1656、大阪高判平6・9.28判時1515・158など 但し、東京地判平18・4・26(判時1930・147)は、悪意・過失ある相手方には無効の主張ができるという一般論に立ちつつ、「相手方法人の社内手続を確認すべき注意義務を課すことは相当ではない」とし、相手方の悪意・過失の立証責任を無効主張をする側に負わせたと読める判示をしている。
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 その他の学説 内部的制限説:取締役会決議を要することを代表権に加えた内部的制限と捉え(349Ⅴ)、相手方が悪意の場合には会社は取引の無効を主張できる 一般悪意の抗弁説:取締役会決議を欠いても取引は有効であり、ただ相手方が必要な決議を経ていないことにつき悪意の場合は、相手方の権利主張は信義則違反または権利濫用にあたり、会社は一般悪意の抗弁によりこれを拒むことができる(近時の有力説)
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代表取締役に関する登記 代表取締役の就任・退任は登記事項とされる(911Ⅲ⑭・909)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 代表取締役に関する登記 代表取締役の就任・退任は登記事項とされる(911Ⅲ⑭・909) ※代表取締役退任登記後に、当該元代表取締役が会社を代表して行った行為については、908Ⅰにより善意の第三者にも対抗することができ、民112条の類推適用の余地はないとするのが判例(最判昭49・3・22) 他方で、取締役が、退任後も会社を代表すべき名称を付与されていれば、後述の表見代表取締役となり(421)、退任登記があっても会社は善意の第三者に対して責任を負う。従来の通説は421を908Ⅰの例外規定と解する。これに対して、近時「異次元説」と呼ばれる見解が有力
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ②業務執行権 代表取締役は、取締役の過半数により決すべき事項(法定協議事項)または取締役会の法定決議事項(348Ⅲ・362Ⅳ参照)を除き、日常的業務(常務)および取締役の過半数(取締役会設置会社では取締役会)から特に決定を委任された業務執行事項について、みずから意思決定し、執行する。
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(4)表見代表取締役(354) 取引の安全の要請に基づく規定
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (4)表見代表取締役(354) 取引の安全の要請に基づく規定 意義「会社が代表取締役でない取締役に代表権限があると一般的に認められる名称を付した場合、その者(表見代表取締役)が行った行為について、会社は善意の第三者に対して責任を負う」 代表権限があると一般的に認められる名称とは? ⇒社長・副社長(例示列挙)その他、専務取締役・常務取締役(取締役会不設置会社)、代表取締役代行者、取締役会長等 黙示の名称付与:代表権のない取締役が表見代表的名称を僭称していることを知りながら会社としてこれを放置している場合は、名称付与を行ったものと同視される。
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 Ⅴ 取締役と会社の関係 (1)一般的義務:会社と取締役の関係 =委任または準委任(330) →取締役は会社に対して善管注意義務を負う(民644) ・さらに355は、「取締役は法令定款および株主総会決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を遂行する義務」を負うと規定する →「忠実義務」 ※両義務の関係 →通説・判例(同質説)は、忠実義務は善管注意義務を取締役の職務遂行に適合するよう具体的かつ注意的に規定したものと解する
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(2)取締役の報酬等① 民法上、委任契約は無償(無報酬)が原則(民648Ⅰ):報酬に関する特約があれば有償
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (2)取締役の報酬等① 民法上、委任契約は無償(無報酬)が原則(民648Ⅰ):報酬に関する特約があれば有償 実務上、取締役に任用する際に報酬を支払うべきことが明示的または黙示的に合意される →報酬額の決定は、任用契約の内容であり、取締役と任用契約を締結することは会社の業務執行である。したがって、報酬額を定めるのは(代表)取締役あるいは取締役会の権限となりそうである ⇒しかしながら、取締役自身がみずからの報酬を決定できることにすると、不当に高額の報酬を定めて株主の利益を害する危険がある(いわゆるお手盛り)。そのため、取締役の報酬等については、定款で定めるか、株主総会において定めなければならない(361Ⅰ)
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (2)取締役の報酬② ①確定額の報酬等:定款または株主総会決議で取締役全員の報酬等の額を一括し、その最高限度額を定め、その具体的配分については取締役会に一任することが認められている(361Ⅰ①) ②取締役退任後に支給される退職慰労金が同条の「報酬等」にあたるか? →取締役の在職中の職務遂行行為の対価として報酬の後払い的性質を有するが、その額の決定に慰労金を受ける者は参加しないため、直接的には「お手盛り」の弊害はない。しかし、残存取締役との関係にかんがみるとお手盛りに準じた弊害が生じうる⇒同条の規制を受ける(通説・判例)
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(2)取締役の報酬③ ③不確定金額の報酬:具体的算定方法を決議 ④金銭以外の報酬:社宅の提供等具体的内容を決議
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (2)取締役の報酬③ ③不確定金額の報酬:具体的算定方法を決議 ④金銭以外の報酬:社宅の提供等具体的内容を決議 ⑤ストック・オプション(業績連動型報酬):取締役に自社の新株予約権を無償で交付しておき、取締役が経営で業績をあげ、自社の株価が値上がりしたときに権利行使し、あらかじめ定めた価格で新株を購入し、市場で売却することで差額(キャピタルゲイン)を得ることができる ⇒新株予約権の無償発行の規定に従う(238Ⅰ②Ⅱ・Ⅲ①・239Ⅰ②Ⅱ①・240Ⅰ)
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(2)取締役の報酬③ ⑤ストック・オプションに関する立法担当者の見解(国際会計基準の動向に応じた規制の変更)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 (2)取締役の報酬③ ⑤ストック・オプションに関する立法担当者の見解(国際会計基準の動向に応じた規制の変更) ・ストック・オプションは「報酬等」(361Ⅰ①・③)に該当する ・株主総会で「その具体的な価額及びその内容」を決議(普通決議)しなければならない ・ストック・オプションの付与には、取締役の報酬決定手続と新株予約権の交付手続の双方を備えることが必要:ただし、常に「有利発行」となるとは限らない(238Ⅲ①②)
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(3)利益相反行為の制限 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 会社の経営に携わり会社の利益のために職務を遂行すべき立場にある取締役が、会社外で会社の利益と相反する行為を行おうとするとき、会社における地位や会社の情報等を利用して私利をはかりそれによって会社の利益が害されるおそれがある。 そこで、会社法は、取締役・会社間の利益が相反する典型的な場合を類型化して、取締役の行為を規制する。 なお、明文で禁止されない行為であっても取締役が会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図れば、善管注意義務ないし忠実義務の違反になる可能性がある
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①競業避止義務(356Ⅰ①、365Ⅰ) 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 取締役は、自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引をするには、株主総会(取締役会)においてその取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならない。 取締役会設置会社の取締役は、取引後、遅滞なく重要な事実を取締役会に報告しなければならない(365Ⅱ) 違反した場合⇒損害賠償(過失責任)、損害額の推定(423Ⅰ・Ⅱ) 「事業の部類に属する取引(競業取引)」 :会社が実際に行う事業と市場が競合し、会社と取締役との間に利益衝突の可能性がある取引
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次の各行為が、甲会社において、競業取引についての承認を要する場合に当たるか?
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 次の各行為が、甲会社において、競業取引についての承認を要する場合に当たるか? 甲会社の取締役が同種の事業を行う乙会社(取締役会設置会社)の取締役に就任すること 甲会社の取締役が同種の事業を行う乙会社の代表取締役あるいは乙会社A支店の支配人に就任すること
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※介入権の廃止 必要な承認なく行われた競業取引も法的には有効である。
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 ※介入権の廃止 必要な承認なく行われた競業取引も法的には有効である。 旧商法は、会社が「取締役が自己のためになした競業取引」を、取締役会決議をもって会社のためになしたものとみなすことができる、という「介入権」を認めていた。 介入権の効果は債権的効果(会社が取締役に対して権利の移転を要求できる)に過ぎず、第三者に対して物権的効力を生じないとするのが通説・判例であり、損害賠償・損害額の推定と実質的には変わりないため、廃止された。
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②利益相反取引規制(356Ⅰ②③) 企業法Ⅰ講義資料No.05-1 直接取引:取締役が会社の製品その他の財産を譲り受け、また会社に対して自己の製品その他の財産を譲渡し、会社より金銭の貸付を受け、その他自己または第三者のために会社を相手に取引すること(356Ⅰ②) 間接取引:取締役の債務について会社が取締役の債権者に対して保証や債務引受をする場合など会社と第三者の取引ではあるが、実質的に取締役と会社の利益が相反する場合(同③) ⇒直接取引・間接取引いずれの場合も「株主総会(取締役会)の承認」が必要
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企業法Ⅰ講義資料No.05-1 利益相反取引についての承認を要するか? 一人会社の株主である取締役が、当該会社(取締役会設置会社)に対して、利息付で経営資金を貸し付ける行為。 株主全員の同意があるケースについて百選63事件参照
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違法な利益相反取引の効力 ※承認なしに行われた利益相反取引 :相対的無効(通説・判例)
企業法Ⅰ講義資料No.05-1 違法な利益相反取引の効力 ※承認なしに行われた利益相反取引 :相対的無効(通説・判例) ・当事者間(会社と取締役、執行役)では無効であるが、善意の第三者には取引の無効を対抗できない(百選64事件) ⇒会社は第三者の悪意を立証しなければ無効を主張できない。 ※会社に損害が生じた場合、任務懈怠が推定される(423Ⅲ)
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