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大気再解析データを用いた 帯状平均場の解析
塚原大輔 北海道大学 大学院理学研究科 地球惑星科学専攻 地球惑星流体科学講座 地球流体力学研究室 このようなタイトルで発表させていただきます. 地球流体力学研究室 修士二年 塚原大輔です. どうぞよろしくお願いいたします. <<2004 年度 DM2 セミナー>> 2005 年 2 月 23 日
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大目次 (1)データの蒐集と整備, 教科書的図表の作成 (2) Ruby による気象解析 (3)ハドレー循環の年々変動
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データの蒐集と整備, 教科書的図表の作成
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再解析とは 数値予報/データ同化手法を用いて過去の観測データから,大気循環場と境界条件(地表面フラックス, 放射フラックスなど)のデータセットを作成すること 1990 年代初めから欧米の気象機関が先行して作成開始 NCEP/NCAR(NRA=NCEP/NCAR Re-Analysis, NRA1) ECMWF(ERA=ECMWF Re-Analysis, ERA-15/40) 気象庁/電中研(Japanese Re-Analysis 25 years, JRA-25) 長期間の均質なデータを提供することが目標 現在, 品質の検査とデータの利用(科学研究)が再帰的に行われている ERA-40がもっとも先行, NRA1→NRA2ヘ, JRAは初期段階 NRA1 : 1991 年開始(Kalnay, et al. 1996) ERA40 : 2000 開始( JRA : 2001 年開始( 近年, 欧米や日本の気象機関にて再解析データと呼ばれるデータセットが作成, 配布されはじめました. 再解析とは過去の観測データを元に, 気象機関で現業的に用いられている数値予報やデータ同化手法を用いて 品質の一様な大気大循環場と境界条件のデータセットを作成することです.
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現実に(もっとも)近い数値モデル出力結果
再解析データは「現実」データか? 同化に用いる数値モデルの「癖」に大きく依存 物理的/統計的につじつまが合うよう調節されてはいる 再解析データによって取り込まれている観測データが異なる よって再解析データは観測データというよりも 現実に(もっとも)近い数値モデル出力結果
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「現実」を見極めるには? 再解析の製法を調べる 再解析の材料となる観測データを押さえる 異なる再解析データ, 観測データの絵を描いて相互比較
数値モデル(スキーム等) 再解析の材料となる観測データを押さえる 異なる再解析データ, 観測データの絵を描いて相互比較
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以上を踏まえて… 惑星大気の標準データの蒐集 教科書的な標準図表を作成 上記プロダクトをWeb 上で公開 再解析データの相互比較のために
異なる気象機関の再解析データを統一フォーマットに 教科書的な標準図表を作成 再解析データの相互比較のために 上記プロダクトをWeb 上で公開 想定する利用者 数値モデルを用いて大気大循環の研究を行う人 基本的には林研の人々(特に森川さん?) 詳しくは上記 URL をお見せして説明します
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Ruby によるデータ整備, 可視化・解析
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気象業界の可視化・解析事情 標準的なツール/ライブラリ 現状に対する不満 コンパイル型言語はうっとおしい
Fortran/DCL, GrADS, GMT, etc… 解析 (Fortran|C)/数値計算ライブラリ, GrADS 現状に対する不満 コンパイル型言語はうっとおしい GrADS, GMT は可視化・解析専門 データハンドリング, 文字処理, CGI など一つの言語で実現したい なんか無機質な感じがする 理想 強力な汎用スクリプト言語 製作したライブラリ/スクリプトの整理, 管理がたやすい 多くの人が「開発者」になれる敷居の低い言語
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オブジェクト志向スクリプト言語 Ruby Ruby 長所 型なしスクリプト言語 言語仕様レベルでオブジェクト指向サポート 強力な言語機能
開発効率, 保守性良好. 強力な言語機能 文字処理, イテレータ, ソケットプログラミングetc 可視化/数値解析関連の外部ライブラリも登場 FORTRAN や C のライブラリを呼び出し可能 コーディングしてて楽しい! 設計思想が「プログラム作成を楽しくする言語」 Ruby 短所 言語自体が発展途上中 拡張ライブラリの数はまだ Perl や Java, Python にかなわない それ以外は思いつかない…(誰か教えてください)
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気象解析に利用するライブラリ NArray Ruby/NumRu 多次元データ解析/数値計算用モジュール群, ユーティリティ群
多次元 数値 配列クラス Ruby でも大量の数値を扱う計算が、簡単かつ高速にできる Ruby/NumRu 多次元データ解析/数値計算用モジュール群, ユーティリティ群 京都大学生存圏研 堀之内武 氏を中心とするコミュニティで開発中 電脳 Ruby プロジェクト ( (自己主張)塚原も参加 一部資源紹介 Ruby/DCL(Dennou Club Library): 日本の気象業界で使われているグラフィック機能中心のライブラリの Ruby ラッパー Ruby/NetCDF: NetCDF IO の Ruby ラッパー GPhys: 格子状に離散化された物理量を扱うクラス
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可視化/解析プログラム netCDF 形式のデータ 算出した物理量
電脳 Ruby プロジェクト公開のライブラリを利用して可視化・解析プログラムを作成 netCDF 形式のデータ クイックビューワ, 属性書き換え, 2 項演算, 次元平均 算出した物理量 質量流線関数, EP フラックス(京大堀之内氏と共同), 南北エネルギー輸送量, etc…
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ハドレー循環の年々変動
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目次 過去の研究 目的 データ ハドレー循環強度 El Nino との関連 熱帯降水活動との関連 東西風ジェットとの関連
中緯度擾乱活動度との関連 まとめ
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目的 再解析データを用いて長期間の帯状平均場の様子を描画する (上記の一環として)ハドレー循環強度の変動と関連する物理量の変動の関連を調べる
熱帯降水活動 ハドレー循環を駆動する積雲対流活動の指標 中緯度東西風ジェット 循環強度が強ければ角運動量保存的にジェットは強くなるはず 中緯度の擾乱の活動度 擾乱による角運動量輸送 => 擾乱によってハドレー循環が駆動
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過去の研究 特にハドレー循環に着目して, 再解析データが明らかにする大気大循環の描像を得ることが目標 (今回は NRA1)
ハドレー循環にまつわる最近の研究 Oort and Yienger(1996) ハドレー循環強度とENSO , 諸量の変動の関連を相関係数を用いて示した(ゾンデデータ). ハドレー循環強度以外の時系列は示していない Wang(2002) ローカルハドレーの循環強度が強いと中緯度ジェットも強くなると議論(NRA1). 帯状平均東西風ジェットについては触れていない. Dima and Wallace(2003) ハドレー循環を赤道対象・非対称成分に分けた. ただし地表面気圧より高い気圧面上の格子点の値も用いている( NRA1) きちんと現実の大気に対応する格子点のみによってみてみるとどうであろうか?
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データ NCEP/NCAR Reanalysis 1(NRA1) 期間:1978年 12 月 – 2003 年12月
より取得 期間:1978年 12 月 – 2003 年12月 FGGE 実施以降を選択(信頼度の高い均質なデータを選択) 地表面気圧より高い気圧面上の値は使わない 現実大気と対応する格子点値のみ使用
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ハドレー循環強度の平均年変動からの偏差の時系列
北半球は正, 南半球は負 それぞれ絶対値が大きいほど循環は強い ハドレー循環強度の時系列 ハドレー循環強度の平均年変動からの偏差の時系列 El Nino の発生期間を左図に描く(この際手書きでもいい) 黒線: 北半球ハドレー循環強度 赤線: 南半球ハドレー循環強度 黒線: 北半球ハドレー循環強度 赤線: 南半球ハドレー循環強度 (右)ハドレー循環強度の時系列 (右)ハドレー循環強度の平均年変動からの偏差の時系列
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El Nino 発生時期(気象庁のサイトより転載)
ハドレー循環強度の強い時期は概ね El Nino と一致する Oort and Yienger(1996) とは 1982/83 年を除いて整合的 NRA1 では 82/83 年の El Nino 時にも強度が強くなる El Nino 1982(MAM) (JJA) 1986(SON) (DJF) 1991(MAM) (JJA) 1993(MAM) (JJA) 1997(MAM) (JJA) 2002(MAM) (DJF) El Nino 発生時期(気象庁のサイトより転載)
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熱帯降水活動との関連 北(南)半球の循環強度が強い時 南(北)半球ITCZ 付近の降水量が増加 低緯度全体の平均降水量はあまり変動していない
=> 熱帯大気に対する潜熱加熱はさほど年々変動していない 南北の加熱差による強制によってハドレー循環は駆動される? 帯状平均降水量の平均年変動からの偏差 帯状平均降水量の緯度時間変動 黒線: N5-N15 平均値, 赤線: S5-S15 平均値 緑線: N30-S30 平均値
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中緯度東西風ジェットとの関連 時系列を見る限り, 循環強度との対応はよく見えない
Oort and Yienger(1996) の算出した循環強度とジェットの相関係数は北半球で 0.39, 南半球で –0.34. 200 hPa 面東西風の平均年変動からの偏差 黒線: N20-N40 平均値 赤線: S20-S40 平均値
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EP フラックス鉛直成分の平均年変動からの偏差の時系列 フェレル循環強度の平均年変動からの偏差の時系列
擾乱の活動度との関連 時系列を見る限り, 循環強度との対応はよく見えない Oort and Yienger(1997)はフェレル循環強度が弱まると主張 しかし佐藤(1998)は,理想的な境界条件下ではハドレー循環強度とフェレル循環は比例すると結論 EP フラックス鉛直成分の平均年変動からの偏差の時系列 フェレル循環強度の平均年変動からの偏差の時系列 黒線: N30-N60 平均値 赤線: S30-S60 平均値 黒線: 北半球フェレル循環強度 赤線: 南半球フェレル循環強度
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まとめ ハドレー循環が強いときの諸量との関連は? 今後の課題 Ruby を用いた可視化・解析 El Nino の時期は循環強度は強い
降水は時系列で比べても関係がわかる 降水の集中化による強制加熱 東西風ジェット, 擾乱の活動度とは時系列で見ても対応付けは見られない 今後の課題 相関解析や統計的有意性の検定を行い, 変動の有意性を吟味 複数のデータソースを解析, 比較 NRA1 に加えERA40 や ERBE などのデータと比較. データ自体のチェックを行う 循環強度の強い年の子午面構造を解析 Ruby を用いた可視化・解析 (感想として)非常に有益. まとめに際して注意点.
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参考文献 CDC Data Management Group, The NCEP/NCAR Reanalysis Project at the NOAA-CIRES Climate Diagnostics Center. Dima, I. M., Wallace, J. M., 2003: NOTES AND CORRESPONDENCE On the Seasonality of the Hadley Cell. J. Atmos. Sci.,60, European Centre for Medium-Range Weather Forecasts, 2001:ERA-40 Project Plan. 気象庁, 2005: エルニーニョ/ラニーニャ現象の情報. table.html 気象庁・電力中央研究所, 2001: JRA-25 長期再解析プロジェクト. 増田耕一, 1989: 大気データの4 次元同化による気候系の解明. 日本の科学と技術, 30, Oort, A.H., Yienger, J. J., 1996: Observed Interannual Variability in the HadleyCirculations and Its Connection to ENSO. J. Climate, 9, 佐藤正樹, 1998: 地球大気の子午面循環と角運動量輸送. 日本惑星科学会誌「遊星 人, 7, 塚原大輔, 石渡正樹, 小高正嗣, 高橋芳幸, 山田由貴子, 森川靖大, 林祥介, 地球流体電脳倶楽部DCCHART プロジェクト, 2003: 大気大循環. global/, 地球流体電脳倶楽部. Wang, C., 2002: Atlantic Climate Variability and Its Associated Atmospheric Ciculation Cells. J. Climate, 15,
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以下メモ
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6. 25 年平均値帯状平均場 北半球: 6.0e10 , 南半球:-7.0e10 kg/s
Dima and Wallace(2003): NRA1 , 地表面以下の格子は抜いてない 北半球: 6.0e10 +few , 南半球:-7.4e10 kg/s + few ゾンデの見積もり(Oort and Yienger, 1996) は 北半球: 9.2e10 , 南半球:-7.4e10 kg/s
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(脱線)なぜ Ruby は楽しいのか?
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熱帯域ラジオゾンデステーション分布の一例
(Oort and Yienger, 1996 より転載)
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