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ハルリンドウにおける 繁殖ファクターの個体間変異の解析 野口 智 未
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背景・目的 評価種の復活 湿地環境の改善? 本調査地において, ハルリンドウの存在はずっと確認されていなかった
本調査地において, ハルリンドウの存在はずっと確認されていなかった 最近になって突如個体群が出現し始めた 「ハルリンドウ」 … 里山・里地の生態系評価種と言われている 評価種の復活 湿地環境の改善? 湿地について? 愛知県では指定されていない 名古屋市の環境を大きく樹林地、草地、水辺、都市部の4 つに区分し、それぞれに生息・生育している動・植物の中からその環境を 代表し、環境変化を反映しやすい種で、似たものが少なくて容易に識別でき、しかも比較的多く見られるもの、または個体数は少なくてもよく目立ち観察しやすいものを中心に100 種を選定し、身近な自然環境の状態を指標する「環境指標種」として、写真とともに紹介しました。 「湿地」は,生物多様性が非常に高く,多様な生態系サービスを提供している環境である.しかしながら,湿地には淡水性の絶滅危惧種も数多く生育している.なぜなら,開発・乱獲などの人為的要因や汚染・富栄養化・地球温暖化などの環境問題が原因となって,湿地が消失もしくは劣化し,生物の生育地が急速に減少しているからである(WORLD WETLANDS DAY 2010). そこで,本研究では湿地でよく見られるハルリンドウ(学名:Gentiana thunbergii)を調査対象として,個体サイズと種子生産における関係性を調査・研究した.ただし,本調査地において,これまで数年にわたりハルリンドウの存在は確認されていなかったが,最近になって突如個体群が出現し始めたことがわかっており,また,その原因は明らかでない. ハルリンドウは里山・里地の生態系評価種とも言われており,中部大学と清水建設株式会社でも遺伝的多様性についての共同研究が行われ,環境要因評価に役立てられている(味岡 et al. 2010).研究結果から,今後の湿地性植物の移植・繁殖,湿地保全・回復の手法を検討し,役立てることを目的とした.
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調査対象 ハルリンドウ (Gentiana thunbergii ) 日当たりのよい湿地に生える,雄性先熟の虫媒花 種子は微細で発芽率が悪い
愛知県では水辺の環境指標種に選定されている 一部の都道府県によっては絶滅している 種子寿命に関する文献情報がないので,埋土種子に発芽能力があるかは現在のところ不明である
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方法 場所:愛知県立芸術大学内の湿地 時期:4月下旬~6月上旬(花),6月上旬~7月上旬(種子) 方法:①1個体ずつマーキングをする.
②個体データをそれぞれ電子ノギスで測定する. ③種子ができ,果実が開いたら茎ごと採取する. ④採集した種子を低温で乾燥させ,成熟種子・ 未熟種子に分けて種子数をカウントする. +α 発芽実験
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個体データの測定位置 花冠の直径 裂片の太さ がくの長さ 花茎の太さ 花茎の高さ 雄性期か雌性期か? ① ② ⑥ ③ ⑤ ④
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結果1) 花サイズのばらつき 花冠の直径を以下のように分類・比較したヒストグラム
結果1) 花サイズのばらつき 花冠の直径を以下のように分類・比較したヒストグラム 直径が12.5mm以上の個体では,ほぼ結実して種子が採取できた. 10.40 ± 4.453 13.31 ± 4.969 13.76 ± 4.932
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結果2) 花サイズと種子数の関係 花冠の直径と合計種子数には正の相関がみられた(r = 0.6791).
結果2) 花サイズと種子数の関係 花冠の直径と合計種子数には正の相関がみられた(r = ). 花冠の直径・裂片の太さ・花茎の高さ・結実率と成熟種子数のそれぞれの関係でも正の相関がみられた.
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結果3) 開花時期調査 開花時期が早いと,比較的 直径が大きい …ことが示された 種子数が多い 結実率が高い 4月 5月 4月 5月
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4月 5月 6月 7月 直線は1頭花が開花していた期間を表わしている. 直線の並びは個体番号順ではなく,開花・採取が早い順である.
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結果4) 発芽率 発芽率は全体で約2%に止まった(種子882個中,18個が発芽) 発芽に要した日数はどの個体も10日以上であった.
結果4) 発芽率 発芽率は全体で約2%に止まった(種子882個中,18個が発芽) 発芽に要した日数はどの個体も10日以上であった. 発芽した個体数が極端に少ないが,比較的花サイズが大きいほど発芽 しやすい傾向がみられた.
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考察1) 花弁サイズと種子数について 「花粉持ち去り量」・「媒介者訪問数」 「種子数」 「花サイズ」と「種子数」
考察1) 花弁サイズと種子数について 植物の花弁サイズの影響について, との間には,多くの論文で正の相関関係が観察されている. (Steven G et al. 1995 : 菊澤 1995 : 牧野 2009) ところが, との間については正比例した例も確認されているが, 明確な関係は認められていない. 「花粉持ち去り量」・「媒介者訪問数」 「種子数」 ハルリンドウには 「花サイズ」と「種子数」 の間に相関関係が認められた 今回の調査の結果
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今回の調査で,全体的に種子数は少なかった
考察2) 花サイズのばらつき 花冠の直径の ばらつき発生 遺伝的多様性 大 近交弱勢 大 (遺伝的多様性 低) 種子数 多 種子数 少 今回の調査で,全体的に種子数は少なかった
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消失 将来的に 遺伝的多様性が・・・ 低い 高い 今日もわんパグ しかしながら, 一度失われた遺伝的多様性は復元することができない
一度失われた遺伝的多様性は復元することができない 個体サイズの大きいものが増加し効率的に種子生産ができるようになったとしても, それは集団全体としての遺伝的多様性を低下させることにつながる
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おわりに 調査地において, ハルリンドウの定着 個体数を100以上確認 種子の持ち込みや移植により 単純に「見かけの植生」
個体数を100以上確認 ハルリンドウの定着 種子の持ち込みや移植により 単純に「見かけの植生」 環境指標種の復活 中身は伴っていなかった というわけではなかった 湿地環境の改善
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ご清聴ありがとうございました.
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考察3) 個体サイズのばらつき 近交弱勢の影響があると… 環境条件によって個体サイズにばらつきが発生
考察3) 個体サイズのばらつき 近交弱勢の影響があると… 環境条件によって個体サイズにばらつきが発生 花粉の持ち去り量や訪花昆虫の挙動に影響が生じる 結果 比較的大きな個体が優先的に受粉・種子生産できた 将来的に,調査地内の個体群には受粉の段階で選択圧がかかり, 遺伝的に個体サイズの大きいものだけが存続する しかしながら, 一度失われた遺伝的多様性は復元することができない 個体サイズの大きいものが増加し効率的に種子生産ができるようになっても,それは集団全体としての遺伝的多様性を低下させることにつながる
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