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富士山笠雲の発生時における大気成層の季節的特徴
2004年5月18日 日本気象学会春季大会発表 富士山笠雲の発生時における大気成層の季節的特徴 日本大学大学院 地球情報数理科学専攻 博士前期課程2年 清水 崇博
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目的 富士山に発生する雲と、その後の天気との関係は、古い言い伝えや、過去の統計学的研究から明らかにされている。本研究では、これらの事実を科学的なデータを元にして解析し、実証するとともに、笠雲から得られる情報が天気予測以外に存在するかどうかを探ることを目的とする。
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笠雲の定義 存在位置が山頂に接地している、もしくは真上にある。
レンズ雲である⇒(レンズ雲・・・10種雲形で表すと巻積雲・高積雲・層積雲に分類される、表面が滑らかな凸状の雲) 2002年7月8日4:45に富士宮市から撮影された笠雲と吊し雲 笠雲 吊し雲
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〔過去の研究〕 植野(1950)・・・笠雲発生時の高層気象観測データを調べ,笠雲は高度3~5㎞に不連続線があり、上層に寒気層、下層に暖気層が存在するときに発生することを明らかにした. 湯山(1972)・・・河口湖測候所から見た富士山の笠雲・吊るし雲の20年間の統計データをとり、7月に笠雲が多いことや、笠雲発生後24時間の降水確率が80%であることを示した. 大井・他(1974)・・・笠雲に限らず、吊るし雲や旗雲などの富士山特有の雲が発生しているときは600hPa高度より上層では月平均より湿度が20%以上高く、逆に下層では20%以上低いこと、また、上空に安定層があることを示した.また、前述した富士山に特有の雲は,日本海に低気圧があるときに発生しやすいことも指摘した.
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毎日1分おきの画像を休みなく取得 夜間の観測も可能 〔使用データ〕 日本大学富士山監視プロジェクトによる毎日1分毎の画像、
AMeDAS風向風速データ 日々の天気図(日本気象学会編,2002a)(日本気象学会編,2002b) 気象業務支援センター発行CD-ROM版印刷天気図(地上・700hPa) 〔研究対象期間〕 2002年1月1日から12月31日 毎日1分おきの画像を休みなく取得 夜間の観測も可能 遠藤・他(2002)を改変
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本研究の意義 発生日は捕らえられるが、発生していない日に関してははっきりと捕らえることはできない
過去の研究・・・笠雲の発生は目視観測で捕らえていた 発生日と発生していない日の差を比較して発生メカニズムを解明する 本研究・・・ライブカメラにより、年間通して休まず撮影、過去のものも検索が可能
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今回の着目点
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大気安定度と笠雲の季節性 1月の相当温位は通常状態において、上層ほど高くなっているが、笠雲発生日においては下層でも高くなり、安定度としてはほぼ上下中立である。 4月は通常状態は1月と同じであるが、笠雲発生日の傾向は1月とは逆に、下層で相当温位が低くなることにより、上下中立になっている。 7月は700hPa付近の安定層が存在するという条件下で笠雲が発生。安定度から見た季節性が認められる
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700hPa面における温度移流と笠雲発生の関連性
1月の富士山上空では、寒気移流・暖気移流ともに0~1回の領域に属しており、周辺地域に比べて頻度が少ない. 4月の富士山上空は、暖気移流は少ないものの、寒気移流の頻度が高い。 7月の富士山上空では、寒気移流では良い傾向が現れず,暖気移流においては,日本海西部に高い頻度で暖気移流が存在する
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笠雲発生時の前線解析 3・4・5月を除いては、日本海に前線が存在するときに発生する。しかし、3・4・5月においては、太平洋沿岸地域に前線が存在するときに発生した。
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1・2・12月
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3・4・5月
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6・7・8月
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9・10・11月
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日本海低気圧と温度移流との関連性 笠雲が発生した日本海低気圧と、発生しない日本海低気圧との700hPa面における温度移流場を比較し、発生機構を探る。 サンプル 発生事例・・・13 2002/1/1 9:00,2002/1/7 9:00 2002/1/16 9:00,2002/2/7 9:00 2002/2/8 21:00,2002/7/1 9:00 2002/7/7 9:00,202/7/17 9:00 2002/8/9 9:00,2002/9/28 21:00 2002/11/8 9:00,2002/11/17 21:00 2002/12/18 9:00 無発生事例・・・10 2002/3/21 9:00,2002/4/30 9:00 2002/5/4 9:00,2002/6/11 9:00 2002/7/20 9:00,2002/8/24 9:00 2002/10/3 21:00,2002/10/15 9:00 2002/10/26 9:00,2002/12/16/9:00
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笠雲の発生しない日本海低気圧の前線解析
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笠雲が発生した日本海低気圧の 700hPa面の寒気移流・暖気移流
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笠雲が発生しない日本海低気圧の 700hPa面の寒気移流・暖気移流
両気流を比較すると、暖気移流において、先ほどとの大きな相違があり、日本上空に暖気移流が存在する率が高い
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まとめ 大気成層状態と笠雲発生の間には季節性が認められた。 笠雲発生時,700hPa面では寒気移流・暖気移流ともに存在頻度が低い。
笠雲が発生する時の前線の位置は日本海南部が中心である。しかし,3・4・5月においてのみ,太平洋沿岸地域に前線があるときに発生している。 日本海沿岸に前線を伴う低気圧が存在するにもかかわらず,笠雲が発生しない事例においては,日本海上空の700hPa面で,暖気移流が多く存在していた。
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考察 安定度の季節性 地表面付近が冬は冷たく,夏は暖かい影響により,冬は暖気移流による昇温で,下層の相当温位が上昇した。この効果により,中立層になり,成層状態が笠雲発生に適したと考えられる.夏については今後の課題としたい. 富士山上空に移流がない状態での笠雲の発生が認められる事実は,乱れが少ない比較的単純な空気の流れが,笠雲発生に好条件であることを示唆する。
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今後の課題 700hPa面の温度移流について,今回は日本海低気圧に絞って解析を行った。他の気圧配置系についても同様の解析を行うべきである
移流について,現段階では山頂の高度に一番近い700hPa面を使用した。しかし,これでは三次元的構造が捉えられないので,850hPa面の解析も行う。 夏の成層状態と笠雲の関係について,いまだ未解明部分が多い。もっと視野を広げて,解明していくべきである
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参考文献 日本気象学会編(2002a):日々の天気図.気象,539,17,686-17,687.
日本気象学会編(2002b):日々の天気図.天気,49,(5)406-409,(6)488-489,(7)554-555,(8)670-671,(9)842-843,(10)914-915,(11)774-775,(12)978-979. 日本気象学会編(2003):日々の天気図.天気,50,(1)42-43,(2)104-105. 大井正一・山本三郎・曲田光夫(1974):富士山の雲と大気の成層状態.気象研究ノート,118,39-54. 植野隆壽(1950):富士山雲の研究(其2)山雲の分類と天気.気象庁研究時報,2,1-9. 湯山 生(1972):富士山にかかる笠雲と吊し雲の統計的調査.気象庁研究時報,24,415-420. 遠藤邦彦・坪井哲也・大野希一・小林貴之(2002):富士山監視カメラシステム.月刊地球,24,9, .
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