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ラオス中南部のメコン川流域の農村 地域における漁労活動とタイ肝吸虫症
Eco-Health project in Lao PDR ラオス中南部のメコン川流域の農村 地域における漁労活動とタイ肝吸虫症 生態史研究会 地球研 2008年10月10日 友川幸(広島大学 学術振興会特別研究員)
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背景 ラオス中南部のメコン川流域では,淡水魚の捕獲が主要な生業となっており,同時にその摂取が日々の食生活において貴重な蛋白源となっている.
近年,メコン川の支流で捕獲されるコイ科の魚を生で摂取することで感染するタイ肝吸虫症が,深刻な公衆衛生上の問題となりつつある. ラオスの食文化を保持しつつ, タイ肝吸虫感染を予防する方法は・・・?
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報告の内容 肝吸虫(タイ肝吸虫)とは? これまでのタイ肝吸虫症研究のレビュー これまでに門司プロで実施した調査
- 流行地の住民の魚の摂取状況 - 児童のタイ肝吸虫感染に関わる要因の同定 今後の調査・研究の課題
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肝吸虫は,ヒト,イヌ,ネコなどの哺乳類を終宿主と
肝吸虫(Liver fluke)とは? 肝吸虫は,ヒト,イヌ,ネコなどの哺乳類を終宿主と して胆管に寄生する寄生虫の一種. ◆ 肝吸虫の種類 ・シナ肝吸虫(Clonorchis sinesis) 日本,中国,台湾,韓国,ベトナム ・ネコ肝吸虫(Opisthorchis felineus) ロシアと東ヨーロッパ ・タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini:Ov) タイ東北部,ラオスの中部および南部のメコン川流域 テーマとなっております,タイ肝吸虫は肝吸虫の一種ですので,まず肝吸虫について簡単に説明いたします. 肝吸虫は,ヒト,イヌ,ネコなどの哺乳類を終宿主として胆管に寄生する寄生虫の一種です.肝吸虫には,シナ肝吸虫,ネコ肝吸虫,タイ肝吸虫の3つの種類があります.本研究でとりあげましたタイ肝吸虫は,タイ東北部,ラオスの中部および南部のメコン川流域を流行地とし,全世界で約900万人の感染者がいると言われています. 肝吸虫の流行地の分布
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タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini: Ov)とは?
【感染原因】 メタセルカリアが寄生して いるコイ科の魚の生摂取 終宿主(ヒト) ※水や貝の摂取による感染の危険性はない 第2宿主 Ov 感染者から虫卵排出 メタセルカリア 続いて,タイ肝吸虫のライフサイクルについて説明します. Opisthorchis viverrini,O.Vは,O.v感染者の糞便から排出されたOv虫卵が,淡水に生息する 貝と魚の2つの中間宿主を経て,メタセルカリアと変態し, メタセルカリアが寄生したコイ科の魚をヒトが生で摂取することで感染します. 第1宿主 ミラシジウム セルカリア (WHOラオス事務所作成のポスターを筆者が改変)
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これまでのOv研究のレビュー 感染状況の把握 Ov感染の臨床症状と健康被害 ・臨床症状:初期には自覚症状なし
・感染者数:ラオスでは推定約200万人(1992年)・・・人口約500万人 ・流行地:タイ東北部,ラオス中部・南部のメコン川流域 ・感染率:流行地の成人の80%以上が感染(小学校児童:60%) ・感染の特徴:感染の開始時期⇒幼少期(小学校就学前) 感染強度⇒加齢とともに上昇, 50代以降で女性<男性 再感染率⇒投薬治療後3ヶ月間で約20% Ov感染の臨床症状と健康被害 ・臨床症状:初期には自覚症状なし ・健康被害:感染強度の増加とともに重篤な肝障害,肝硬変, 胆管癌,肝臓癌の発生リスクが上昇 ※肝臓がんは,タイのガンの中で一番多い これまでにラオスで行われたO.vに関する研究では, 全国的な感染状況の把握が行われ,1992年の全国調査では,500万人の人口のうち,200万人,約5人に2人がタイ肝吸虫に感染していると 推定されています.また,中部,南部の流行地では,成人の80%以上が感染している地域があることも報告されており,その感染は, 小学校の就学前から始まり,小学校児童でもその感染率が60%を超える地域があることが報告されています.
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これまでのOv研究のレビュー 感染に関わる要因の同定(人間にフォーカス) 魚の生摂取,トイレの不保持(サラワン県の13村を対象)
魚の生摂取,トイレの不保持(サラワン県の13村を対象) 魚の生摂取習慣の有無とOV感染が関連 メタセルカリアの寄生状況の把握(魚にフォーカス) メタセルカリアが寄生しているコイ科の魚の特定(約50種類) 寄生状況の季節差,魚種による差 保存・調理によるメタセルカリアの死滅状況の把握 加熱,塩漬け,酢漬け等の加工でメタセルカリアは死滅 Ov感染による経済的損失の推定
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Ov感染の対策活動の歴史と課題(タイ) ◆第1段階(1951-68年) 投薬による駆虫活動→Ovの感染率の低下には至らず
◆第1段階( 年) 投薬による駆虫活動→Ovの感染率の低下には至らず ◆第2段階( 年) 投薬による駆虫活動と,加熱調理法の実演,鍋の配布を行う予防教育を統合. →Ovの感染率を大幅に下げることに成功. ◆第3段階(1988年-現在) Ov感染の対策活動が国家の公衆衛生活動計画( 年)に導入. 【目的】Ov感染に対する住民の認識の向上 【方法】300万人を超える住民に対する徹底した定期的な駆虫,住民の栄養状態 の改善,トイレの設置 →行政と住民の協働で,感染率が34.6%(1988年)→24.1%(1991年)に減少 ◆対策活動の課題 対象地域住民の便検査の提出状況が芳しくないこと 予防教育教材の不足および方法論の未確立の問題 駆虫後の再感染率が高いこと 伝統的な行事における魚を生で摂取する習慣の変容は容易ではないこと
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Ov感染対策活動の歴史と課題(ラオス) ◆1989年(南部のコーン地域) 保健省とWHOが協力.児童対象の住血吸虫感染対策活動の一環
学校や地域の住民代表の協力により,大規模な駆虫活動と, 予防教育を実施→Ov感染率が低下 ◆1990年代後半(中部のカムワン県) Ov感染の対策活動を実施 投薬による駆虫後の再感染率が極めて高いことが判明 →感染の危険性の高い魚種の特定 感染の危険性の高い魚の調理法による魚の摂取の回避 ◆1990年代(小学校の保健衛生教育の中に導入) ◆現在 母子保健,マラリア・腸管寄生虫対策が公衆衛生活動の中心 →Ovi感染に対する対策活動は十分に進められていない
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ラオスにおけるOv研究の課題 研究課題:人間×魚,調理法×メタセルカリア寄生している魚 どんな魚を?どんな調理法で?どのくらい?誰が?
研究課題:人間×魚,調理法×メタセルカリア寄生している魚 どんな魚を?どんな調理法で?どのくらい?誰が? ◆生摂取とはどのような摂取法なのか? ◆生摂取されている魚がOv感染の危険性のある魚なのか? ◆幼少期からの感染が 認められているが・・・子どもの感染×要因 ・魚の摂取習慣とO.v感染との関係 ・Ov感染の危険性がある魚の摂取習慣とO.v感染との関係 ・O.v感染に影響を及ぼす社会・経済的要因 ・魚の生摂取に影響を及ぼす社会・経済的要因 O.v感染の予防教育では,単に生魚の摂取を禁止するのではなく,疫学的根拠に基づく情報の提示と,社会・経済的,および人類学的見地からの検討をもとに,専門家によって十分に調査,実験された効果的な魚の調理法や,魚の保存技術が提案されるべきである(WHO1995).
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・流行地の児童のタイ肝吸虫感染状況の把握 ◆2005年-2007年 健康教育のための情報収集 ・児童のタイ肝吸虫感染に関わる要因の検討
これまでに門司プロで実施した調査 ◆ 年 感染状況の把握 ・流行地の児童のタイ肝吸虫感染状況の把握 ◆2005年-2007年 健康教育のための情報収集 ・児童のタイ肝吸虫感染に関わる要因の検討 ◆2007年-2008年 健康教育のための情報収集 ・児童・教師のタイ肝吸虫感染に関するKAP ・児童の生魚の摂取に関するKAP
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流行地の児童の年齢別のO.v感染状況 2003-2004年:流行地の児童のタイ肝吸虫感染状況の把握 (n=729) (金田,2006)
(%) (n=729) ラオス中南部の農村地域において,小学校の児童を対象に行った調査では,小学校入学時にすでにO.vに感染している児童がおり,感染率が加齢とともに上昇し,卒業時には約60%の児童がO.vに感染していることが報告されています.また,他の流行地で行われた調査では,成人の80%以上が感染している地域があることが報告されています. (金田,2006)
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児童のタイ肝吸虫感染に関わる要因の検討 ◆予備調査(半構造的な面接調査,魚の調理法の観察):
Ov感染の危険性が高い魚の調理法とリスクフィッシュの選出 ◆本調査(ケースコントロールスタディ:構造的な面接調査): 1)社会・経済的状況 2)魚の入手状況 3)児童と親の魚の摂取習慣 4)親が与える影響(O.vに関する知識,意識など) 5)児童のリスクフィッシュの摂取習慣 1)-4)に関する項目と 児童のOv感染との関係 研究の構成について説明します. 本研究では,予備調査を行い, 対象地域において,O.v感染の危険性が高い魚の調理法とリスクフィッシュを選出しました. その後,本調査として,O.vに感染している児童としていない児童を対象に, ケースコントロールスタディを行い, 1)社会・経済的状況 2)魚の入手状況 3)児童と親の魚の摂取習慣 4)親が与える影響(魚の摂取習慣,O.vに関する知識,意識など)に関する項目と児童のO.v感染との関係, 5)児童のリスクフィッシュの摂取習慣と児童のO.v感染の関係を検討し, さらに,児童の魚の生摂取習慣に影響を及ぼす要因を明らかにしました. そして,得られた結果をもとに,児童のO.v感染に対する効果的な対策活動を提案しました. ラオス中南部の児童のOv感染に対する対策活動の提案
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対象地域における魚の調理法に関する調査(2006年2月)
予備調査 対象地域における魚の調理法に関する調査(2006年2月) 方法:魚の調理法に関する半構造的な面接調査と調理の観察 WHO(1995)の報告( 50℃で5時間,70℃で30分間,80℃以上で5分間 ) に基づき,加熱の温度と時間により分類 ◆Ov 感染の危険性のある魚の調理法 調理法 加熱の方法 温度 加熱時間 感染の危険性 生 加熱なし ‐ 極めて高い 半生 湯通し 50‐70℃ 30秒間 低い 加熱 フライパンや鍋 80℃以上 5分間 極めて低い 続きまして,予備調査の概要と結果を報告します. 200年2月に,対象地域においてO.v 感染の危険性のある魚の調理法を選出するために, 魚の調理法に関する半構造的な面接調査と調理の観察を行いました. WHOは,O.v虫卵を加熱により死滅させるためには, 50℃で5時間,70℃で30分間,80℃以上で5分間 の 加熱が必要であると報告しておりますので, O.v 感染の危険性のある魚の調理法の選出に当たっては, WHOの基準をもとに加熱の温度と時間により分類しました. その結果,O.V感染の危険性が考えられる調理法としては,左下の表にありますように 加熱をしない生調理法,50-70度のお湯で30秒間湯通しを行う半生調理, フライパンや鍋を用いて80度以上で5分間加熱する加熱調理法の3つの調理法が選出されました. また,ラオスにおける生調理とは,日本の刺身のようなものではなく, 写真にありますように,魚肉を薄切りにしたり, 魚肉をペースト状にする調理法で あることが分かりました. Koi-pa dip(魚肉を薄切り) 生調理 Laap- pa dip(魚肉をペースト状)
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対象地域におけるリスクフィッシュの選出 (2006年3月)
予備調査 対象地域におけるリスクフィッシュの選出 (2006年3月) 方法:⇒文献検討(メタセルカリアが寄生している魚:46種を選出) ⇒精選(写真があり,学名とラオス語名が一致する魚:23種を選出) ⇒半構造的な面接調査(頻繁に生で摂取されている魚:9種を選出) 続きまして,2006年3月に対象地域におけるリスクフィッシュを選出することを目的として実施した予備調査の概要と結果を報告します. 方法としては,まず文献検討を行い,メタセルカリアの寄生が報告されている魚(46種)を選出した後,魚の図鑑に写真があり,ラオス語名と学名を一致させることできた23種に関して,面接調査を行い,頻繁に摂取されており,生摂取が可能なリスクフィッシュ9種を対象地域におけるリスクフィッシュとして選出しました.リスクフィッシュに共通する特徴としては,鱗がある. 生臭い匂いがない. 年中捕獲・摂取できる魚であることが分かりました.
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対象地域の住民が頻繁に生で摂取している魚の上位10種 学名 科名 鱗 大きさ (cm) 生臭い匂い (%) 1 コイ ○ 35 × 51.7
対象地域の住民が頻繁に生で摂取している魚の上位10種 順位 学名 科名 鱗 大きさ (cm) 生臭い匂い (%) 1 Morulius chrysophekadion コイ ○ 35 × 51.7 2 Puntius brevis 12 45.8 3 Puntioplites falcifer 30.5 4 Esomus metallicus 7.5 24.6 5 Barbodes goninotus 33 19.5 Cirrhinus julleine 20 7 Labiobarbus leptocheilus 30 13.6 8 Notopterus notopterus ナギナタナマズ 40 8.5 9 Cyprinus carpio linneaus 120 6.8 10 Oreochromis niloticus カワスズメ 46 5.9 リスクフィッシュ リスクのない魚 表中の○はあり,×はなし (n=118 頻繁に生で摂取していると回答した人の割合)
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ケースコントロールスタディ(2006年9月から12月)
本調査:方法 ケースコントロールスタディ(2006年9月から12月) ◆対象者の選出 1.対象地域の全小学生730名を対象に便検査を2回実施 感染群:便検査①で便20mg中に20個 以上の虫卵を保有していた児童 非感染群:便検査①と②で2回とも虫卵を保有していなかった児童 2.感染群と非感染群を年齢,性別,居住地域 でマッチング 3.59ペア(男子30,女子29ペア),計118名の児童(5-16歳)を選出 ◆方法 対象児童の養育者(親)に対する構造的な面接調査 回答者の内訳:児童の母親:110名, 父親:1名, 祖母: 7名 平均年齢:感染群41.1±7.9歳,非感染群40.6±8.4歳(有意差なし) 次に, 2006年9月から12月の間に,本調査として実施したケースコントロールスタディの概要と結果を報告します. ケースとコントロールの選出に当たりましては,対象地域の全小学生730名を対象に便検査を2回行いました. その後,1回目の便検査で,便20mg中20個 以上のO.v虫卵を保有していた児童を感染群, 1回目,2回目ともにO.v虫卵を保有していなかった児童を非感染群とし, 感染群と非感染群を,年齢,性別,居住地域でマッチングさせ, 男子30ペア,女子29ペア,計59ペア,5歳から16歳の児童計118名を選出しました. また,ケースコントロールスタディでは,対象児童の養育者(以下,親)に対する構造的な面接調査 を行いました.回答者の内訳はスライドある通りです.
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1)社会・経済的状況と児童のOv感染の関係 家族の人数・性別,家畜・電気製品・衛生施設の保有数など 2)魚の入手状況と児童のOv感染の関係
本調査:方法 構造的面接調査の項目 1)社会・経済的状況と児童のOv感染の関係 家族の人数・性別,家畜・電気製品・衛生施設の保有数など 2)魚の入手状況と児童のOv感染の関係 釣りの頻度,場所,養殖池の有無と養殖魚の保有数など 3)児童と親に関する魚の摂取習慣と児童のOv感染の関係 魚の摂取頻度・摂取の好み,調理法別の摂取経験・頻度 4)児童のOv感染に親が与える影響 親のOvに関する知識,児童の魚の生摂取に関する親の意識など 5)児童のリスクフィッシュの摂取習慣と児童のOv感染の関係 リスクフィッシュ(9種)の調理法別の摂取経験と摂取頻度,好みなど 構造的面接調査の項目としては, 1)社会・経済状況と児童のO.v感染の関係を明らかにするために, 家族の人数・電気製品・衛生施設の保有数など 2)魚の入手状況と児童のO.v感染の関係を明らかにするために 釣りの頻度や場所など 3)児童と親に関する魚の摂取習慣と児童のO.v感染の関係を明らかにするために 児童の魚の摂取頻度や摂取の好み,調理法別の摂取経験・頻度など 4)児童のO.v感染に親が与える影響を明らかにするために 親のO.vに関する知識,児童の魚の生摂取に関する意識など について回答を得ました. 5)また,児童のリスクフィッシュの摂取習慣と児童のO.v感染の関係を明らかにするために, リスクフィッシュ(9種)の調理法別の摂取経験と摂取頻度,好みなどについて回答をえました. さらに,6)児童の魚の生摂取習慣(頻度)に影響を及ぼす要因 スライドの1)~3) の各項目について回答を得ました.
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社会・経済的状況,魚の入手状況と児童のO.v感染の関係
本調査:結果 社会・経済的状況,魚の入手状況と児童のO.v感染の関係 感染群(n=59) 非感染群(n=59) P値 Mean SD 親の就学年数(年) 家族の合計人数(人) 3.0 8.2 3.1 4.9 7.3 4.0 3.2 0.003 0.042 家族の中での男性の人数(人) 4.1 2.3 3.4 1.9 バイクの所有(台数) 0.5 0.6 0.7 0.009 携帯電話の所有(台数) 0.3 0.013 CD/VCD再生機の所有(台数) 0.4 0.041 冷蔵庫の所有(台数) 0.2 0.8 0.012 家族の中で釣りに行く者の数(人) 2.4 0.9 1.0 0.006 兄弟が釣りに行く児童の数(人) 家族の釣りの頻度(延べ回数/月) 33.9 20.3 24.9 18.6 結果です.社会・経済的・魚の入手状況と児童のO.v感染の関係について,スライドにありますように, 親の就学年数は,非感染群の方が,感染群に比べて多い結果となりました. また,対象地域において現金収入の多寡を示す一つの指標となるバイクの所有(台数),携帯電話の所有(台数),CD/VCD再生機の所有(台数),冷蔵庫の所有(台数)などは,非感染群に比べて感染群の方が,有意に少ない結果となりました. また,対象地域では近隣の川や池に釣りに行くことが,魚の主な入手方法となっておりますが, 家族の中で釣りに行く者の数や家族の釣りの頻度などは,感染群の方が,非感染群に比べて多い結果となりました. Wilcoxonの符号付順位検定
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本調査:結果 感染の有無別の魚の摂取頻度
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児童に関する魚の調理法別の摂取経験 生 半生 加熱 調理法 OR 95%CI P値 42 (71.2%) 14 (23.7%) 6.60
本調査:結果 児童に関する魚の調理法別の摂取経験 調理法 感染群 (n=59) 非感染群(n=59) OR 95%CI P値 生 42 (71.2%) 14 (23.7%) 6.60 <0.001 半生 51 (86.4%) 43 (72.9%) 2.60 0.096 加熱 59 (100.0%) - 次に,児童の魚の調理法別の摂取経験については, 生調理での摂取に関してのみ,感染群の方が,非感染群と比べて 摂取経験のある児童が有意に多く,学童期からすでに多くの児童が魚を生で摂取していました. 生摂取経験がある児童のO.v感染の危険性のオッズ比が6.60でした. (摂取経験があると回答した児童の人数 ) Mc Nemar の検定 学童期からすでに多くの児童が魚を生で摂取している 生調理での摂取経験のある児童のOv感染の危険性は6.60倍
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児童と親の魚の調理法別の摂取頻度 児童 生 半生 加熱 親 調理法 P値 5.1±7.1 1.2±2.7 <0.001 4.0±5.4
本調査:結果 児童と親の魚の調理法別の摂取頻度 調理法 感染群(n=59) Mean±SD 非感染群(n=59) Mean±SD P値 児童 生 5.1±7.1 1.2±2.7 <0.001 半生 4.0±5.4 3.9±5.4 0.498 加熱 19.2±7.2 17.4±7.0 0.237 親 6.9±7.4 3.1±3.6 4.2±5.4 4.7±5.3 0.868 19.4±6.8 17.4±6.9 0.229 次に,児童と親の魚の調理法別の魚の摂取頻度についてですが,児童,親子ともに生調理での摂取頻度に関してのみ 感染群の方が非感染群に比べて有意に摂取頻度が多い結果となりました. (1ヶ月あたりの摂取日数 ) Wilcoxonの符号付順位検定 親子ともに生調理での摂取頻度に関してのみ両群間に有意差あり
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感染の有無別の魚の生摂取の好み P<0.001 P<0.001
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本調査:結果 親のO.v感染に関する知識と危機意識 O.v に 関する質問項目 感染群(n=59)(%) 非感染群 (n=59)(%) P値 聞いたことがあるか 88.1 94.9 0.344 感染源 35.6 33.9 1.000 症状 25.4 18.6 0.481 治療法 16.9 15.3 予防法 30.5 0.648 家族や親戚の感染経験 42.4 50.8 0.170 自分が感染している 23.7 子どもが感染している 親のO.v感染に関する知識と危機意識に関しては,全項目で有意差が認められませんでした. また. O.v を聞いたことがある親は多いが,症状や治療法を知っている親は少なく, 子どもや親自身がO.vに感染していると思っている親も少なく,O.v感染に対する危機意識が低いことが明らかになりました. (ある,知っている,思うと回答した人数の割合) Mc Nemar の検定 全項目で有意差なし
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説明変数 β OR 95%CI P値 児童の魚の生摂取経験 バイクの所有台数 親の魚の生摂取頻度 1.910 6.75 2.49 -
本調査:結果 児童のO.v感染に影響を及ぼす要因 説明変数 β OR 95%CI P値 児童の魚の生摂取経験 1.910 6.75 2.49 - 18.35 <0.001 バイクの所有台数 -1.277 0.28 0.12 0.63 0.002 親の魚の生摂取頻度 0.119 1.13 1.02 1.25 0.020 兄弟が釣りに行く児童の数 1.067 2.91 1.01 8.37 0.048 児童のO.v感染の有無を目的変数,社会,経済的状況,児童と親の魚の摂取習慣,O.vに関する知識,意識など35項目を 説明変数として行った多重ロジスティック回帰分析の結果では,児童のO.v感染に最も強い影響を及ぼす要因は,児童の魚の生摂取経験であることが明らかになりました. また,バイクの所有台数,親の魚の生摂取頻度,兄弟が釣りに行く児童の数などが児童のO.v感染に有意な影響を及ぼす ことが分かりました. (多重ロジスティック回帰分析:尤度比による変数増加法)
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* * * * * * * * リスクフィッシュに関する児童の調理法別の摂取経験 有意差あり:6種 有意差あり:1種 生調理 加熱調理
本調査:結果 リスクフィッシュに関する児童の調理法別の摂取経験 有意差あり:6種 有意差あり:1種 生調理 加熱調理 * * * * リスクフィッシュに関する児童の調理法別の摂取経験について報告します.スライドのAからIは対象地域におけるリスクフィッシュとして選出した9種の魚を示しています.赤色は感染群,緑色が非感染群の児童のうちそれぞれの調理法での摂取経験があると回答した児童の数を示しています.生調理に関しては,9種中6種の魚に関して感染群の方が非感染群に比べて有意に摂取した経験のある児童が多い結果となりました.一方,加熱調理に関しては,1種に関してのみ感染群の方が非感染群に比べて有意に摂取した経験のある児童が多い結果となりました * * * (摂取経験があると回答した児童の数) P<0.05 ■ 感染群(n=59) ■ 非感染群(n=59) *
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メタセルカリアの寄生の有無別の魚の生摂取状況とOv感染
Lao name Scientific name Cases(n=59) Raw eating rate (raw /eating fish) Controls(n=59) Raw e rate (raw /e fish) P-value Mean(SD) Pa-xiew ao Esomus metallicus 1.3(2.9) 43% 0.09(0.3) 5% 0.049 Pa-chork Cyclocheilichthys enoplos 0.9(2.7) 41% 0.2(1.0) 13% 0.001 Pa-sakang Puntioplites falcifer 3.0(6.0) 40% 0.9(3.0) <0.001 Pa-park Barbodes goninotus 2.1(3.9) 33% 0.3(0.9) 6% Pa-sout Hampala dispar 1.0(2.3) 27% 0.1(0.1) 2% Pa-eh thai Osteochilus hasselti 0.7(1.4) 16% 0.1(0.4) Pa-xiew Oreichthy parvus 0.1(0.7) 0.08(0.07) 8% Pa-langnam Mystacoleucus atridorsalis 0.4(1.0) 9% 0.20.5() Pa-khao Puntius brevis 0.3(1.3) 7% 0.05(0.3) 1% 0.481 Pa-phiya Morulius chrysophekadion 2.4(5.8) 55% 0.6(2.6) 14% Pa-ning Oreochromis niloticus 0.6(1.5) 29% 0.04(0.3) スイスチームのデータとの比較
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どんな魚が危ないか? ロジスティック回帰分析の結果 Lao name Scientific name B OR 95%CI P-value
Pa xiew ao Esomus metallicus 0.905 2.47 1.05 5.82 0.038 Pa park Barbodes goninotus 0.334 1.40 0.98 1.99 0.063 Pa-xiew ao(Raw eating rate 43%) Pa-xiew ao(Raw eating rate 33%)
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児童が魚を 生で摂取した経験がある 生で頻繁に摂取する
本調査:考察 考察 【文化的背景】 男性が漁労活動を行う 【経済的状況】 バイクや冷蔵庫の 所有数が少ない (現金収入が少ない) 【魚の入手状況】 頻繁に 漁労活動を行う 【社会的状況】 家族の人数や 男性の人数が多い 【魚の生摂取習慣】 頻繁に魚を摂取する 児童が魚を 生で摂取する ことを好む 【親の影響】 親が頻繁に魚を生で 摂取する 親が魚を生で摂取 することを好む 児童が魚を 生で摂取した経験がある 生で頻繁に摂取する 本調査で得られた結果の考察です 児童のO.v感染に最も強い影響を及ぼす要因は,児童の魚の生摂取経験であることが明らかになりましたが, 児童の食物の摂取習慣には,児童自身の摂取の好みや親の摂取の好み,また親の摂取習慣や考えが影響を及ぼすことが言われており, 本研究においても,児童の魚の摂取経験や頻度には,児童が魚を生で摂取することを好むことと,親の摂取頻度と好みが影響していると考えられます.また,子どもが魚を生摂取しても病気にならないと思っている親ほど,頻繁に子どもに魚の生摂取をさせていたことから,子どもの魚の生摂取に対する親の考えが,子どもの魚の摂取にも影響を及ぼしていると考えられました. また,本研究では,これまで十分な検討がなされてこなかった児童のリスクフィッシュの摂取習慣と児童のO.v感染との関係を検討し,リスクフィッシュを生で摂取することが児童のO.v 感染に関連していることが明らかになったことから,単にリスクフィッシュを摂取することが直接的にO.v感染につながるわけではなくリスクフィッシュを生で摂取することが児童のO.v感染に関連していること示唆されました. また,家族が頻繁に漁労活動を行うことが児童のO.v感染に関連していましたが,その理由としては,対象地域では,魚の入手法としては,川や池などから自分で魚を捕獲してくることが一般的な方法となっており,また,魚を生で摂取するためには,新鮮な魚を入手する必要があります.そのため,家族が頻繁に漁労活動を行うことで,新鮮な魚を頻繁に魚を摂取することが可能になり,生で摂取する機会も増えるため,リスクフィッシュを生で摂取する機会も増え,結果的にO.v感染に繋がっていることが示唆されました.また,家族の人数や男性の人数と児童のO.v感染や魚の生摂取頻度の間に有意な関連が認められましたが,その理由としては,対象地域では,漁労活動は男性の仕事となっており,家族の中に男性が多ければ,より多くの人が漁労活動を行うことができ,さらに家族の人数が多ければ家事や育児などを分担できるため,より多くの人員が漁労活動に参加できるようになるためであると考えられます. また,バイクや冷蔵庫所有台数が,児童のO.v感染や魚の生摂取頻度と関連が認められましたが,その理由としては,対象地域では, バイクや冷蔵庫などの家財は,世帯の現金収入の多寡を反映しており,それらの所有数が少ないということは,現金収入が少ない世帯であり,現金収入が少ないということは,肉や野菜などの他の食物を現金で購入することができないため,頻繁に漁労活動を行い,魚を捕獲し,自給自足を行っている世帯であると考えられます.また,現金収入が多い世帯は,世帯内の若者が出稼ぎに行ったり,機織などを行う世帯が多いので,漁労活動自体をあまり行っていない世帯である可能性も考えられました 単にリスクフィッシュを 摂取することではなく 生で摂取することが 児童のOv感染に関連する リスクフィッシュを 生で摂取する 児童のOv感染
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ラオスの食文化を保持しつつ,Ov 感染の回避を目指す
本調査:結果のまとめ 結果のまとめ 1)現金収入の少なさ,頻繁な漁労活動がOv感染に影響 ⇒漁労活動を頻繁に行う住民への予防教育 2)学童期からの頻繁な魚の生摂取がOv感染に影響 ⇒魚の生摂取習慣が定着する前の乳幼児を持つ親への予防教育 3)児童の魚の生摂取に親が与える影響が大きい ⇒児童とその親の双方を対象にした予防教育 4)児童のリスクフィッシュの生摂取がOv感染に関連 ⇒感染の危険性の高い魚種や調理法の通知,加熱調理の推奨 Ov感染の危険性を知る,リスクフィッシュを知る,見分ける,生摂取する魚を選ぶなど 5)頻繁な漁労活動,リスクフィッシュの生摂取がOv感染に関連 ⇒予防教育育教材の開発に住民の知識(魚の特徴や調理法)を活用 ラオスの食文化を保持しつつ,Ov 感染の回避を目指す 小括です.本調査の結果から, 1)現金収入の少なさ,頻繁な漁労活動がO.v感染に影響することが分かりましたので, ⇒感染の危険性が高い,漁労活動を頻繁に行う住民への予防教育の実施が効果的であると考えました. また,2)学童期からの頻繁な魚の生摂取がO.v感染に影響することが分かりましたので, ⇒魚の生摂取習慣が定着する前の乳幼児を持つ親を対象とした予防教育が効果的であると考えました. さらに,3)児童の魚の生摂取には,親の与える影響が大きいことが分かりましたので, ⇒学童期からの児童とその親の双方を対象とした予防教育の開始が効果的であると考えました. 食物の摂取習慣は,幼少期に形成.その後の食物摂取に大きな影響 食物の習慣は,幼少期に形成され,形成された習慣は,その後の食物摂取に大きな影響を与えるといわれています,また,一度身にについた摂取習慣を変容させることは困難であるため, 適切な魚の食習慣を早期に形成させる必要があると考えます. 従って,OV感染の対策を効果的に実施するためには,効果的なプログラムを開発し, 学校や地域において児童とその親の双方を対象に学童期からO.v感染の対策に取り組むことが必要であると考えられます. また.4)リスクフィッシュの生摂取がO.v感染に関連することが分かりましたので, 特に,生摂取することがO.v感染につながる危険性の高い魚種を通知し,それらの魚については加熱調理による摂取を推奨することが 効果的であると考えました.また,O.v感染の危険性を知ること,リスクフィッシュを知ること,見分けること,生摂取する魚を選ぶなどが効果的であると考えました. また,5)頻繁な漁労活動,リスクフィッシュの生摂取がO.v感染に関連することが分かりましたが. 感染の危険性の高い集団となっていた頻繁な漁労活動を行う世帯は,頻繁に魚を捕獲し,摂取している世帯であるため,魚の特徴や調理法について豊富な知識と経験を持っています.そのため,予防教育教材の開発に魚の特徴や調理法住民の知識を活用し,例えば,感染の危険性の高い魚の写真や感染の危険性を避けるための加熱摂取の調理の手順や加熱時間の目安などを掲載したポスターの作成など,視聴覚教材の開発を行うことが考えられました.
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今後の調査・研究の課題 魚の生摂取 メタセルカリアが 寄生した魚 予防知識・技術の普及 トイレの普及 / 治療システムの確立
メタセルカリアが 寄生した魚 魚の生摂取 ◆どのような調理をすれば メタセルカリアを死滅させる ことができるか? ◆どんな人がよく魚を生で 摂取しているのか? ◆どんな魚をいつ,どこから,ど のように捕獲しているのか? ◆どの魚にメタセルカリアが 寄生しているか? (魚の大きさ,季節, 捕獲場所による違い等) 予防知識・技術の普及 ◆誰に,何を,どこで,いつ,誰が,どのように? トイレの普及 / 治療システムの確立
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児童・生徒の生魚の摂取開始時期
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ありがとうございました.
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