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授業の内容 天文学は天体からの光を研究する学問です。 そこでこの授業では、「光」をどう扱うかの基礎を学びます。 授業計画は、
A.水素原子 B.エネルギー準位 C.熱平衡 D.線吸収 E.連続吸収 F.光のインテンシティ G.黒体輻射 H.等級 I.色等級図 J.光の伝達式 I K.光の伝達式 II L.星のスペクトル という順で進めます。 最後まで行くと、星のスペクトルがどんな仕組みで決まっているかが判る、 というのが目標です。 AからEまでは光の吸収に関係する物理の話です。Fでは光の強さをきちん と定義します。GからIは光の強さを天文学でどう使うかを示します。JからLは 光がガス中を伝わる様子を式に表わし、その式を解いて星のスペクトルを導き ます。それでは、始めましょう。 A: 原子のエネルギー準位
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F インテンシティ 今回の内容 (F.1) 色の3原色 光のスペクトルと色の関係を調べます。
F インテンシティ 今回の内容 (F.1) 色の3原色 光のスペクトルと色の関係を調べます。 (F.2) 輻射強度(Intensity)の定義 光の強さをきちんと定義する量が輻射強度です。 理解しにくい量なので 丁寧に説明します。 (F.3) 表面輝度 表面の眩しさが実は輻射強度と同じであることを説明します。 (F.4) 輻射強度不変の法則。 光源から離れると光は弱くなると感じますが、光の強さを表わす輻射強度 は光源から離れても一定です。何故でしょう? (F.5) フラックス フラックスとインテンシティはよく混同される量です。その違いを学びます。 (F.6) 体積放射率 光を放出する割合は簡単に理解できそうです。しかし、それがインテンシティ とどうつながるかは簡単には判らないでしょう。 (F.7) 簡単な例 インテンシティ、フラックス、放射率が実際のにどう扱われるかを学びます。 (F.8) 輻射強度と位相空間密度 輻射強度が物理量として何に当たるかを調べます。 C: 線吸収係数
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F.1.色の三原色 色の意味 光の色とは何でしょうか? 我々の目には今教室の景色が映っています。
それは、眼に光が入ってくるからです。下の図にはある点を通過する光が方向により色々な色を持っていることを示しています。では、光の色とは何を意味してるのでしょうか? A F: 輻射強度
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N S 電気が動くと磁石ができ、磁石が動くと電気が起こるのです。 電磁波 1.電気と磁気は互いに作りあうことができます。 (A)電磁石
図のようにコイル電線に電気を流すと磁石ができます。 (B)発電機 磁石を動かすと間を通る電線に電流が流れます。 電気が動くと磁石ができ、磁石が動くと電気が起こるのです。 N S 磁石 電線
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電磁波の原理 (1)まずこの電気が次の右向き磁石を作る。 (3)下向き電気が左向き磁石を作る。 このようにして、電気と磁石のサイクルが真空中を伝わっていきます。 それを電磁波と呼びます。 (2)するとこの磁石が次の下向き電気を作る。 (4)最後に左向き磁石が上向き電気を作る。これで1サイクル 1サイクル(同じ矢印がくるまで)の長さを電磁波の波長と呼びます。
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電磁波には繰り返しが速く、短い波長のものも、繰り返しがゆっくりして長い波長のものもあります。
短い波長 長い波長の電磁波
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(1) 電磁波が波である。 (2) 波の波長は短いものも長いものもある。 ことが分かりました。 電磁波の中で波長が0.3ー0.7 μmのものが光と呼ばれています。 μmはマイクロメートルの略号で、マイクロは百万分の一のことですから、1μmは百万分の一メートルです。 下の図のように波長の短い電磁波は青い光、波長が長い電磁波は赤い光です。
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一本の光の中には波長が数mの電波から、1μm程度の我々の目で感じられる光、数億分の1mのX線に至る様々な波長の電磁波が含まれています。
人間の目が感じる電磁波=光 一本の光の中には波長が数mの電波から、1μm程度の我々の目で感じられる光、数億分の1mのX線に至る様々な波長の電磁波が含まれています。 目には3種類の視神経(錐体)があり、下の図のようにそれぞれ青、緑、赤い色の電磁波に感度を持っています。 S錐体から脳に信号が行くと青色と認識し、L錐体からの信号は赤色と感じられるわけです。 人間の目は異なる波長の電磁波をどう感知するのでしょうか? L錐体 感度 M錐体 S錐体 0.7μm 0.4μm 0.5μm 0.6μm 波長
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L錐体 赤い光 M錐体 赤! 緑の光 脳 緑! S錐体 青! 青い光
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黄! 2つの黄色 今までは、3種類の錐体のうち1種類だけが感じた場合でした。 では、赤と緑の中間にある黄色波長の光が来たらどうなるでしょう?
もう一度下の図を見て下さい。 黄色の光が来ると、L錐体とM錐体の2つが感じます。 脳 脳はL錐体とM錐体の2つから同じくらいの強さの信号を受けると黄色と感じるのです。 黄! L錐体 感度 M錐体 S錐体 0.7μm 0.4μm 0.5μm 0.6μm 波長
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黄! 脳 感度 すると面白いことができます。 (1)黄色の光(波長0.6μm)の代わりに、
(2)緑(波長0.55μm)と赤(波長0.65μm)の波を重ねた光を 目にあててやるのです。 どちらの場合にもM錐体とL錐体が刺激されます。 すると、脳には同じシグナルが届きますから、 脳は電磁波としては異なる(1)と(2)の 光を区別できません。同じ黄色の光 と感じてしまうのです。 脳 黄! L錐体 L錐体 感度 M錐体 M錐体 S錐体 0.7μm 0.4μm 0.5μm 0.6μm
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波長0.6μm(黄)の光 L錐体 黄! 脳 M錐体 波長0.55μ(緑)と0.65μ(赤)を足した赤緑光 黄! 脳
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下の図のように、普通の光には赤、緑、青の光が様々な割合で含まれています。
するとそれぞれが目のL,M,S錐体を刺激するので、脳には3つのシグナルが色々な強度で伝わってきます。 するとその組み合わせに応じた「色」を脳が感じるのです。 緑の光 赤い光 赤緑の光 青い光 赤緑青の光
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カラーモニターでは細長いピクセルにRGBの一つを分担させています。例えばRピクセルでは
3色合成 脳の3錐体に送る信号のそれぞれを 赤=R 緑=G 青=B と名付け、その強度を R=0から255、 G= 0から255、 B= 0から255 と分割します。 すると、脳に送られるシグナルは(R,G,B)の組み合わせで決まります。組み合わせの数は2563=約1600万です。 カラーモニターでは細長いピクセルにRGBの一つを分担させています。例えばRピクセルでは R=0 R=60 R=120 R=180 R=240 R=255
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ルーペでカラーモニターを見ると細長いピクセル一つづつが
RGBのそれぞれをを分担しているのが観察できます。 ですから、カラーモニターでは3つのピクセルが1組になって、 RピクセルはL錐体、GピクセルはM錐体、BピクセルはS錐体 を刺激する役を受け持っているわけです。 実際に(R,G,B)がいくつの時にどんな色になるか、 0から255まで変えていたのでは大変ですから、 0,60,120,180,240と変えたときの色を次に示します。 これだと5×5×5=125種類です。 (R,G,B)で黄色がどう表現されるかを見て下さい。
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R G B R=0 R=60 R=120 R=180 R=240 G=0 G=60 G=120 G=180 G=240 B=0 B=60
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F.2.輻射強度(Intensity)の定義
光の強さって何でしょう? 右の図は舞台にスポットライトが当たっているところです。 A点での光は強い。B点の光は弱い。と皆さんは判断すると思います。 大雑把にはそれでよいのです。しかし、もう少し丁寧に見て下さい。 A B A点でも舞台の奥の暗い方向から来る光は弱いし、B点から舞台の上のライトが当たっている方向を見ると明るい光がやってきます。 ですから、ある点での光の強さを考える時は、ある方向からの光の強さがいくつかを考えなければなりません。 では、ある方向からの光の強さをどう測ればよいでしょう? F: 輻射強度
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ある点で、ある方向からの光の強さをどう表現するか、またはどう測るか、 皆さんの考えを書いてみて下さい。
ああ F: 輻射強度
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光の強さは各方向毎に違います。方向をΩであらわすと、光の強さ I は Ω の関数 I(Ω) として表わされるはずです。
光の強さは各方向毎に違います。方向をΩであらわすと、光の強さ I は Ω の関数 I(Ω) として表わされるはずです。 ですから、ある方向から来る光の強さをどう測るかを決めるのがキーです。 そのために、光電池と筒を用意しました。光電池はその表面に当たる光のエネルギーを計測できます。筒は求める方向以外の光を遮断するためです。筒の内側の壁は真っ黒でそこに当たった光は完全に吸収するとします。 下のように筒と光電池を並べ、光電池に当たる光の量を考えます。 光 光電池から筒の中を覗いた図が右下です。光電池から筒先を覗いた時の立体角(右図の青い部分)をωとします。光電池の面積をSとします。すると、光電池が時間Tに受ける光エネルギーEはω・S・Tに比例します。比例定数を I とおくと、 E = I・ω・S・T です。 筒 光電池 F: 輻射強度
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こうやって、筒をあちこちに向けて光電池の出力を測れば、方向の関数として光の強度 I(Ω) を決めることができます。
I(Ω) を輻射強度(Intensity)と言います。 光の振動数、位置を指定してこの手続きを繰り返せば、I(Ω) を I(Ω, x, ν)に拡張するのは容易です。 ある振動数の光に対する強度 I(Ω, ν)を測るにはどうしたらよいですか? F: 輻射強度
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輻射強度の定義 Ω 場所Xにある円盤dSを通り、立体角dΩ方向に向かう光線を考えましょう。円盤は立体角の方向Ωと直交しているとします。 dΩ 光線全てを描くわけにはいきませんが、右と下の絵を見て下さい。これらの光線のうち、振動数がνとν+dνの間、時間が Tと T + dT の間にある光が運ぶエネルギー dE がいくつになるかを考えます。 dEは dS、dΩ、dν、dt のそれぞれに比例しますから、 dΩ がどれか下の図に書き込んで下さい。 Ω dE =I(Ω、ν、X、T)dΩ dνdS dT 上の式に出てくる比例定数 I(Ω、ν、X、T)が輻射強度(Intensity) です。 dS X F: 輻射強度
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F.3. 表面輝度(輻射強度の別名) 前ページの輻射強度の定義の図を光線がやってくる方向へ描きのばします。 A Ω
F.3. 表面輝度(輻射強度の別名) 前ページの輻射強度の定義の図を光線がやってくる方向へ描きのばします。 A Ω もし、左側に赤い壁があり、A点でΩ方向の輻射強度を測ると、それは壁表面の明るさを表わします。 それで、輻射強度(Intensity)のことを表面輝度(Surface Brightness)とも呼びます。 F: 輻射強度
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左の黄色の壁を色々な距離に置いた筒を通して覗いてみます。
A B A点から見た壁 B点から見た壁 手元の紙で筒を作り、壁を覗いて下さい。歩いて壁に近づいた時に壁の明るさがどう変わりますか? F: 輻射強度
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壁に近づくと、壁の明るさはどう変化するでしょう?明るくなりますか?暗くなりますか?変わりませんか? その理由は何だと思いますか?
F: 輻射強度
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一様に光る円盤dSから放射される光を考えましょう。
F.4. 輻射強度不変の法則 一様に光る円盤dSから放射される光を考えましょう。 dSから輻射強度Ⅰ、立体角dΩで放射した光が全てR離れた dS´を輻射強度Ⅰ´、立体角dΩ´で通過します。 dE =Ⅰ´dS´dΩ´=ⅠdSdΩ dS=R2dΩ´ dS´=R2dΩ Ⅰ´R2dΩdΩ´=ⅠR2dΩ´dΩ よって、Ⅰ=Ⅰ´ dΩ´ R Ⅰ´ dS´ Ⅰ dS dΩ 吸収や散乱の無い時、輻射強度Ⅰは距離によって変化しません。 ここは大事なところです。できたら図を自分で描いてみて下さい。 F: 輻射強度
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輻射強度が距離に依存しない、というさっきの証明は判りにくかったかもしれません。では、下のように考えてはどうでしょう。
SA dΩ A SB dΩ B A点から見た壁 B点から見た壁 A点とB点に筒をおいて壁を覗いてみます。筒にはdΩの範囲の光が入ってきます。このdΩを壁の上まで伸ばすと、図に示すように、A筒ではSA、B筒ではSBになります。例えばB点がA点の3倍離れていると、SB=9SA です。 所がSAの各点から筒先を見る立体角ωA、つまりAの一点当たりの光の量はBの場合より大きくてωA=9 ωBです。この結果SAωA=SBωBとなり、どちらの筒にも同じ光量が入ってくるのです。 F: 輻射強度
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しかし、「遠くの灯りは暗くみえます」。 これは 「輻射強度が変わらない」 ことと矛盾するのではないでしょうか?
しかし、「遠くの灯りは暗くみえます」。 これは 「輻射強度が変わらない」 ことと矛盾するのではないでしょうか? F: 輻射強度
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F. 5.フラックス(Flux) 地面に一枚の板を置きます。この板の所の輻射強度を正午と夕方で示したのが下の図です。 夕方 正午
空の明るさを同じとします。輻射強度は太陽に相当する「つの」の角度が違うだけです。しかし、板に当たる、または板を通過する光エネルギーは大分変化します。これが夕方になると涼しくなる原因です。 板を通過する光エネルギーを少し丁寧に考えてみましょう。 F: 輻射強度
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輻射強度を考えた時には dS の法線方向は光線の方向Ωは一致させていました。今度は二つの方向が違う場合を考えましょう。
輻射強度を考えた時には dS の法線方向は光線の方向Ωは一致させていました。今度は二つの方向が違う場合を考えましょう。 最初に定義を少し。(見にくいけれど太字はベクトル) k = 微小面積dSの法線 方向単位ベクトル k´= 光線方向単位ベクトル θ k k′ dS k´方向の輻射強度を I(k´)とします. k´方向立体角dΩの光のエネルギーがdS を単位時間に通過する割合はいくつですか? F: 輻射強度
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k k′ θ 単位時間にdSを通る光子のエネルギーEを計算してみましょう。
dSを通る光(k´方向)は法線k(Ω方向)に対し角度(θ)を持ちます。 k´方向の光がdSを通過するときは、dSを斜めに見るので、その有効面積dS´は dS´ = dS・cosθ = (k・k´) dS dS・k=dS というベクトルで微小面積を表わすと便利です。すると dS´ = (k・dS) θ k k´ cosθdS dS dSを通り、dk´方向に流れるエネルギーdE´は、 dE´=I´(Ω´)(dS・k´)dΩ´ = I´(Ω´)(dS・dΩ´) したがって、全方向からの寄与は E=∫dE´=∫I´(Ω´)(dS・dΩ´) =dS・∫I´(Ω´)dΩ´ =dS・F k S=kS k′ θ dΩ´=k´dΩ ´ F: 輻射強度
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θ dS=kdS このように、ある方向を向いた面積 S を通過する光エネルギーを求めるには、
このように、ある方向を向いた面積 S を通過する光エネルギーを求めるには、 F=∫I(Ω)dΩ=輻射流束ベクトル=フラックスベクトル を計算しておき、 dS との内積を取ればよいのです。 I(k´) θ F=(k・F) もフラックスというので注意。 F(k)=(k・F) =k・ ∫I(Ω´)dΩ´ =∫I(Ω´)(k・dΩ´) =∫I(Ω´)(k・k´)dΩ´ =∫I(Ω´)cosθdΩ´ dΩ´=k´dΩ´ dS=kdS F(k)=k方向の面を通るフラックス =(k・F) =フラックス(輻射流束)ベクトルFのk方向成分 F: 輻射強度
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周波数表示 W/m2/Hz W/m2/Hz/Str. 波長表示 W/m2/mμ W/m2/mμ/Str.
フラックスとインテンシティ フラックス F インテンシティ I 周波数表示 W/m2/Hz W/m2/Hz/Str. 波長表示 W/m2/mμ W/m2/mμ/Str. 全エネルギー表示 W/m2 W/m2/Str. と、フラックスとインテンシティは単位としては立体角(Str)当たりかどうかが違いですが、立体角は無次元なので、実際にはフラックスとインテンシティは同じ単位で表されます。 天文では、ジャンスキー(Jansky)=Jy=10-26W/m2/Hzという単位が多用されます。 星などの点光源に用いられるときはフラックスの意味です。しかし、空の背景輻射など広がった天体の話で Jansky が現れたら、インテンシティの意味で使われているから注意が必要です。 F: 輻射強度
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F.6. 体積放射率ε 何もない真空の空間を通る時は、前にやったように、輻射強度 I は不変です。しかし、どこかで光は生まれたはずです。考えてみると、下の二つのような状況が可能です。以下では、2)の場合を考えましょう。1)は2)が圧縮された特殊な場合と看做せます。 1) 壁 I2=I1 I1 I2 2) 途中からの輻射の集積 I2 =∫dI F: 輻射強度
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A点でのインテンシティ I への、途中B点での微小区間dXからの寄与をもう少し丁寧に考えてみましょう。
長さ=dX,断面積=dsの微小体積dV=dsdXを考えます。dV内で生み出される 光エネルギー率を、4πεdV とします。4πは後での記述の整理のために入れ た定数です。 ε=体積放射係数と呼びます。4πεdVのエネルギーはB点から四方八 方に放出されます。その内、A点でのインテンシティに寄与する割合を考えます。 B点 dω dΩ A点 ds=X2dω dS=X2dΩ X dω dX A点に微小面積dSを立てます。A点からB点のdsを見る立体角=dω=ds/X2 逆に、B点からdSを見込む立体角dΩ=dS/X2 F: 輻射強度
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dV内で発生する輻射(4πεdV)のうち、(dΩ/4π)がA点でdSを通り、dΩの方向に流れていきます。
ds=X2dω dS dΩ dX X したがって、dVからdSを通ってdωに放出されるエネルギー率は、 (4πεdV)(dΩ/4π)=(4πεX2dωdX)(dS/ 4πX2)=εdXdSdω この式を見ると、dX部分からの I への寄与dIは dI=εdX です。 したがって、2)の場合は I=∫dI=∫εdx 注意: テキストによっては、dV内でのエネルギー放出率をεdVとしています。 この場合には dI=(ε/ 4π)dx I=∫dI=∫(ε/ 4π)dx となります。 F: 輻射強度
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F.7. 簡単な例 (a) 壁表面でのフラックス F
F.7. 簡単な例 (a) 壁表面でのフラックス F 熱輻射は光の一種ですから、壁からの熱放射量がいくつかを考える問題は、壁の上で 輻射強度 I (θ、φ) が与えられた時、壁面を通るフラックスは幾つかという問題と同じです。 (1)は最も一般的な表式、(2)は軸対称性がある場合、(3)は等方な場合です。 (1) F =∫ I cosθ dΩ=∫∫ I(θ, φ)cosθ sinθ dθ dφ (2) I(θ、φ)が壁の法線に関して軸対称 (φによらない) と、 F=2π∫0π/2 I (θ)cosθsinθdθ=2π∫01I (μ)μdμ (μ=cosθ) (3) I(θ、φ)が一定 (等方) I= Io な場合、 F = 2π Io ∫0π/2 cosθ sinθ dθ = 2π Io ∫01 μ dμ = π I0 Fを求める際の立体角Ωは壁前面なので2πに渡ります。しかし、Fの計算にはI に cosθ の重みがかかる (F = ∫ I cosθ dΩ)ので、<cosθ>=0.5 のため F= 2π Io でなく、 F= π Io になるのです。 F: 輻射強度
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(b) 望遠鏡のF比 星雲を焦点距離 f、口径Dの望遠鏡で撮影するときに焦点にできる像の明るさを考えてみましょう。 カメラなどで良く聞く 「F 比」 は F = f/D のことです。 星雲上の点Aの像は焦点位置Bにできます。Bでの画像の明るさはつまり、Bでのフラックス強度のことです。 B IB IA 2η (tanη=D/2f) A D f A点から輻射強度=IAで出た光は、Dを通り、輻射強度=IBでB点に集まります。 輻射強度不変の法則により、IA = IB です。B点でのフラックス F は収束光の立体角を ω とすると、 ω = π η2 = π (D/2f) 2 なので、 F = ∫ IB cosθ dΩ ≒ IB ω ≒ π IB η2≒ π IA(D/2f)2 = (4/π) (1/F) 2 IA です。 光学系の F 比は良く理解しておくと役立つ概念です。以下に少し丁寧に検討を加えます。 F: 輻射強度
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画像の長さ L=f・θ 焦点距離 = f f θ L 像が大きい 像が小さい F比 = F tan η=D/2f=1/(2F) D η f
焦点距離 = f f θ L 像が大きい 像が小さい F比 = F tan η=D/2f=1/(2F) D η f 像が明るい 像が暗い F: 輻射強度
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望遠鏡の画像の大きさは焦点距離 f で決まり、 画像の明るさはF比で決まります。 F比 大 F比 小
焦点距離 f 大 焦点距離 f 小 したがってカメラを暗い室内を使うなら、 F 比を下げるのです。カメラの場合は絞りを広げてレンズの端の方まで使う(Dを増加)ので、ピントはぼけます。 淡い星雲の撮影に口径の大きい望遠鏡を使うことは、もしその F が大きかったら無意味です。大きなFの大口径望遠鏡で映らない星雲でも、小さなFの小口径望遠鏡は写す事が可能なのは面白いことです。 F: 輻射強度
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すばる望遠鏡 口径=8m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=15m F=15/8=1.9
いくつかの例 すばる望遠鏡 口径=8m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=15m F=15/8=1.9 岡山天体物理 口径=1.88m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=9.15m 観測所 F=9.15/1.88=4.9 1.88m望遠鏡 木曽観測所 口径=1.05m 主焦点(主鏡の焦点)の焦点距離=3.3m シュミット望遠鏡 F=3.3/1.05=3.1 ニコン 口径=36mm 焦点距離=50mm カメラ標準レンズ F=50/36=1.4 F: 輻射強度
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(c) マゼラン雲内の恒星コラム数密度 光度(エネルギー総放出率)Lの星が数密度nで分布しているとします。 体積dV内の星の総数=ndVですから、 4πεdV=LndV ε=Ln/4π マゼラン雲の面輝度Bを測ったところ、B=10-5W/m2でした。 マゼラン雲内の星の光度(エネルギー放出率)を太陽の光度の100倍 Lo=3.85・1028W とし、途中の光吸収をゼロと仮定すると、 B = ∫(Lo・n/4π) dx=(Lo/4π)(n・X) = 10-5W/m2 ですから、 N=(n・X)=(4π・10-5/3.85・1028)/m2 =3.26・10-33/m2 =3.26・10-33・(3.08・1016)2/pc2 =3/pc2 次ページに示すのは マゼラン雲バーの中心7.8分角のJHK3色画像です。 マゼラン雲までの距離を50kpcとすると、113pc四方となります。 この画像に写っている星は大部分が赤色巨星で100Loよりは明るく、星の数は1万程度なので、上の見積もりと大体合います。 F: 輻射強度
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大マゼラン雲(LMC) F: 輻射強度
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F: 輻射強度
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(d) オルバースのパラドックス オルバース(1758-1840)は、星が地球(太陽)の周りにどこまでも存在する宇宙を考えました。
(d) オルバースのパラドックス オルバース(1758-1840)は、星が地球(太陽)の周りにどこまでも存在する宇宙を考えました。 星の半径=Ro、明るさ=Lo、星の数密度=n とします。 dR dN=4πR2dR・n=球殻中の星の数 S=πRo2=一つの星の断面積 ω=S/R2=π(Ro/R)2 =一つの星の立体角 dΩ=ω・dN =π(Ro/R)2・4πR2dR・n =4π2Ro2・n・dR =球殻内の星が空を覆う立体角 Ω(R)=∫0RdΩ=4π2Ro2・n・R =地球から距離R以内の星全体 が空を覆う立体角 R 半径=R、厚み=dRの球殻 オルバースは、「宇宙が一様で無限であるならΩ(R)が4πとなり全天が太陽表面と同じ明るさで輝くはずなのに、なぜ夜空は暗いのか」という問題を提唱しました。 F: 輻射強度
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この問題を輻射強度Iの言葉で表現してみましょう。 例(c)で見たように、恒星数密度nの時ε=Lo・n/4π
だから、地球から距離R以内の恒星による輻射強度は、 I(R) = ∫0R ε dR = Lo ・ n ・ R / 4π I(R) は R に比例するので、R が無限大になると I(R) も発散します。 前頁のΩを数値で当ってみると、簡単のためRo=6.96・108m、n=1/pc3 として、 Ω(R)=4π2Ro2・n・R=4π2(6.96・108/3.08・1016)2R(pc) =4π2・5.11・10-16R(pc) Ω(R)=4πとなるのは、R=6.23・1014pc=2.03・1015光年 R=100億光年=1010光年とすると、 Ω=4π(1010/2.031015)=π・1.97・10-5=π・(4.43・10-3)2 1′=π/180=2.91・10-4なので、4.43・10-3=15.2′ 太陽の視半径=16′なので、太陽近傍の恒星密度で宇宙が100億光年まで一様 であったら、夜空は昼間と同じくらいにまでは明るかったでしょう。 F: 輻射強度
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F.8. 輻射強度と位相空間密度(少し難しい話)
F.8. 輻射強度と位相空間密度(少し難しい話) 光強度はスカラーなのか、何なのか、に戻ると、光強度はスカラーでもベクトルでもありません。分布密度というものです。皆さんはそちらの方になじみがあるでしょう。両者を対比しながら説明します。 光子(振動数、位置、方向)の分布の2つの表現法 (1) 光子の分布関数(位置、運動量) (2) 輻射強度(インテンシティー) f(x, p) I (x, ν, Ω) 物理 天文 F: 輻射強度
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(1) f(x, p) (2) I (x, ν, Ω) dN=dN´dx dE=I (x, ν, Ω)dνdΩdSdt
(1) f(x, p) dN=dN´dx =f(x,p)dxdp =位置dx、運動量dpの箱内 の光子の数 (2) I (x, ν, Ω) dE=I (x, ν, Ω)dνdΩdSdt =位置x、法線方向Ωの微小面 dSを通り、Ω方向立体角dΩ に時間dt内に流れる振動数 dνの光子エネルギー 下に位相空間の6軸中X、Px、Py の3軸だけ描いた図を示します。 x f(x, p)=位相空間密度 dE dΩ dx dpx dN dpy I (x, ν, Ω) =輻射強度 (Intensity) py px dN=f(x,p)d3xd3p dS dE=I (x, ν, Ω)dνdΩdSdt F: 輻射強度
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f と I をどうつなぐか? (1) 分布関数 f を運動量に関し絶対値・角度表示します。
(1) 分布関数 f を運動量に関し絶対値・角度表示します。 dN´=f(x,p)dp=f(x,|p|,Ω)・p2dpdΩ x Py (2) dΩ方向に垂直な微小面をdSとすると、 dn=dt 内に dΩ 方向へdSを通る光子数 =dN´・c・dS・dt dN dΩ dx dp (3) dE=hν・dn I (x, ν, Ω)dν・dΩ・dS・dt=hν・dN´・c・dS・dt =hν・f(x,|p|,Ω)・p2dp・c・dΩ・dS・dt Px ((4) 光子に対して、hν=c・p だから、dp=(h/c)dν I (x, ν, Ω)=(h4ν3/c2)・f(x,p) 輻射強度(Intensity)は基本的には 光子の位相密度関数 f を立体角表示したものです。 F: 輻射強度
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注1: 光子に対しては、ε=hν=c・p からdp=(h/c)dνなので f(x, p)d3p=f(x,p)・p2dp・dΩ
=(h3ν2/c3)・f(x,p)・dν・dΩ したがって、 g (x, ν, Ω)=(h3ν2/c3)・f(x,hν/c) とおくと、 dN´=g (x, ν, Ω)・dν・dΩ I (x, ν, Ω)=ε・c・g (x, ν, Ω) 注2: したがって、輻射強度の変化は光子に対するボルツマン方程式で記述されます。 これが輻射輸達方程式です。光子の吸収、放出はボルツマン方程式の衝突項にあたり、吸収、散乱のない輻射は無衝突ボルツマン方程式に相当します。 その場合に成立する「位相密度 f(x、p、t)は軌道に沿って不変である」という Liouvilleの定理は次に述べる輻射強度不変の法則に対応するわけです。 F: 輻射強度
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この光線の広がりを、光子の位相密度関数の立場で考えてみましょう。
Ω Ωo So S X 左から右に進む光子の運動を考えます。 位置空間を位置Xとそれに垂直な面 S で表します。運動量空間としては、運動量 Pと運動方向の広がり立体角Ωをとります。 面Soを立体角Ωoで出たN= no・So・Ωo 個の光子の集団が位置Xに達する時、 光子の空間的な広がりSはS=Ωo・X2で与えられ、方向の広がりは Ω=S/X2 となります。 上図で右へ行くと、矢印の束が細くなるのがそれを表わします。 、 F: 輻射強度
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S1 S S0 X X1 Ω0 Ω1 Ω 実空間(S)で広がる。 ⇔ 運動量空間(Ω)で絞られる。(SΩ=一定)
実空間(S)で広がる。 ⇔ 運動量空間(Ω)で絞られる。(SΩ=一定) 光子の総数N=n・S・Ωは変わらず、SΩ一定であるから位相密度 n は 不変です。これが光子の運動の最も単純な場合に対するLiouvilleの定理 の一例です。 位相密度nは輻射強度Iに比例しますから n=一定 は I=一定 を意味します。 つまり、光束が広がると角度が絞られ、光束が縮むと角度が広がる結果、 輻射強度 I は一定に保たれるのです。 S1 S S0 X X1 Ω0 Ω1 Ω 位相密度 f(x,p) は経路に沿って不変(Liouvilleの定理) F: 輻射強度
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