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第3章 交換とルーチング 3.1 交換方式 3.2 専用線と交換網 3.3 信号方式 3.4 IPネットワーク交換技術

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1 第3章 交換とルーチング 3.1 交換方式 3.2 専用線と交換網 3.3 信号方式 3.4 IPネットワーク交換技術
第3章 交換とルーチング 3.1 交換方式 3.2 専用線と交換網 3.3 信号方式 3.4 IPネットワーク交換技術 3.5 高速スイッチング 3.6 トラヒック

2 3.1 交換方式(switching system) 3.1.1 交換機の機能 (1)基本機能
[基本機能]発呼者の要求に従って,伝送路のつなぎ替えを行う。 [付加機能]ネットワーク制御,課金機能,各種サービス機能 通話要求検出 要求内容分析 伝送路のつなぎ替え 伝送路の開放 発呼検出 選択信号受信 翻訳 出線選択 呼出信号検出 応答検出 通話路形成 終話検出 通話路切断

3 (2)基本機能と交換動作 交換動作では,本質的に同じ機能であったり, 密接な関係の機能が繰り返されている。 通話路形成・切断 信号の送受信
・通話路形成 ・通話路切断・復旧 ・発呼検出 ・発信音検出 ・選択信号受信 ・呼出信号送出 ・話中音送出 ・応答検出 ・終話検出 情報識別と動作指示 ・発呼者識別 ・被呼者識別 ・翻訳 ・話中判定 ・出線選択

4 ( 3 ) 交換機の基本構成 全体的な構成 ・発呼検出機能 ・終話検出機能 ・通話路形成機能 ・通話路切断・復旧機能 ・応答検出機能
回線(他交換機へ) 加入者回路 トランク回路 加入者線 (注) 通話路 スイッチ網 トランク回路 加入者回路 トランク回路 信号装置 制御装置 信号装置 交換用 ソフトウェア ・発信音送出機能 ・選択信号受信機能 ・呼出信号送出機能 ・呼出音送出機能 ・話中音送出機能 ・発呼者の識別機能 ・被呼者の識別機能 ・番号翻訳機能 ・話中判定機能 ・出線選択機能 ・選択信号受信機能 ・選択信号送信機能 ・話中音送出機能 (注)ダイヤルパルスのアナログ回線    のみトランク回路がある。

5 (4)ディジタル交換機の構成 (a)ディジタル交換機とは
完全コンピュータ制御方式の電話交換機である。 日本で1990年代半ばからすべてこの形式の交換機に移行している。 ① ディジタル交換機では,音声信号はディジタル変換され, スイッチ動作はソフトウェア的に行われる。 ② ディジタル交換機では,アナログ用の交換機と異なり, 回線ごとの応答や終話信号等を検出するトランク回路はなく, 回線の監視は信号装置で行われる。

6 (b)ディジタル交換機の構成 ディジタル交換機は,次のような装置から構成される。 ① 通話路スイッチ網 ② 制御装置 ③ 加入者回路
  ② 制御装置   ③ 加入者回路 ④ 信号装置 回線(他交換機へ) 加入者回路 通話路 スイッチ網 加入者回路 交換機 信号装置 制御装置 交換用ソフトウェア

7 制御装置 監視信号や選択信号を分析し,被呼者の識別,出線選択, 必要な選択信号等の送出,通話路形成の動作指示等を行う。 回線(他交換機へ)
加入者回路 通話路 スイッチ網 加入者回路 交換機 信号装置 制御装置 交換用ソフトウェア

8 加入者回路 発呼信号や終話信号による加入者線の状態を監視する。 回線(他交換機へ) 加入者回路 通話路 スイッチ網 加入者回路 交換機
信号装置 制御装置 交換用ソフトウェア

9 信号装置 端末機器や多交換機との発信音,選択信号等の送受信を行う。 回線(他交換機へ) 加入者回路 通話路 スイッチ網 加入者回路 交換機
制御装置 交換用ソフトウェア

10 BORSCT(ボルシュト) ディジタル交換機では,スイッチが電子部品で構成されているので,
通話路スイッチ網内に呼出し信号のような大電力信号を 流すことができない。 そこで,次のような7機能を持たせている。 B: Battery feed(通話電流供給機能) -48V O: Over-voltage protection(過電圧保護機能) R: Ringing(呼出し信号送出機能) S: Supervision(On/Offの監視機能) C: Codec/Decodec(アナログ/ディジタル信号変換機能) H: Hybrid(2線4線変換機能) T: Test(試験引込み機能) これらの機能は略してBORSCHT(ボルシュト)と呼ばれる。

11 (5)ディジタル交換機の機能と動作 (a)基本機能
① 通話要求検出 利用者の加入者線を常時監視しており,発呼者が端末機の受話器を上げると 加入者線に電流が流れるので,この電流を検出して(発呼検出), 通話要求発呼者を識別する(発呼者識別)。 ② 要求内容分析 発呼者がダイヤルした相手先番号(選択信号)を受信して, 通話を希望する相手を識別して被呼者の回線を選択する。 ③ 伝送路つなぎ替え 通話路形成の準備を行い,伝送路をつなぎ替える。 ④ 伝送路開放 伝送路を切断し復旧する。

12 要求内容分析 要求内容分析機能は,以下のようなサブ機能に分かれる。 ① 選択信号受信機能
被呼者の電話を促すための発信音(ダイヤルトーン)を送出し, 発呼者から送られてきた選択信号を受信して記憶する。 ② 翻訳機能 選択信号を接続に適した情報に変換し,被呼者が接続されている 加入者線の収容位置を識別する。 他交換機に接続されている場合,その交換機への回線を選択して, 被呼者の電話番号を相手の交換機に送出する。 ③ 出線選択機能 選択信号により,他交換機に接続された回線のルートを識別(ルート識別)し, そのルートにつながる回線群から空いている1回線を選択する(出線選択)。

13 伝送路つなぎ替え 伝送路つなぎ替え機能は,以下のようなサブ機能に分かれる。 ① 呼出信号送出機能
被呼者に呼出し信号(リンギングと呼ぶ)を送出して着信を通知し, 発呼者には,呼び出し中であることを示す呼出し音(リングバックトーン)を 送出し,話中の場合は話中音(ビジートーンと呼ぶ)を送出する。 ② 応答検出機能 被呼者に呼出し信号を出している間,被呼者の加入者線状態を監視し, 被呼者が受話器を上げると,これを応答信号として検出する。 ③ 通話路形成機能 応答検出により交換機の通話路を形成して通話を可能にする。

14 伝送路開放 伝送路開放機能は,以下のようなサブ機能に分かれる。 ① 終話検出機能 加入者線に電流が流れなくなることで通話の終了を検出する。
② 通話路切断機能 通話路を切断して復旧する。

15 (b)基本機能と動作 基本機能と交換動作の関係 発呼側 被呼側 交換機の機能 [発呼監視] [発呼信号]→ 発呼検出 (発呼者の識別)
発信音 ←[発信音] 発信音送出 [選択信号 (相手先番号)]→ 選択信号受信 翻訳 (被呼者の識別) 呼出し信号 出線選択 呼出し音 ←[呼出し音] [呼出し信号]→ 呼出し信号送出 (呼出し音送出) [応答監視] ←[応答信号] 応答検出 通話路形成 [終路監視] [終話信号]→ ←[終話信号] 通話路形成 通話路切断 (復旧)

16 ① 通話要求検出 基本機能と交換動作の関係 発呼側 被呼側 発呼者が端末機の受話器を上げると 加入者線に電流が流れる。
交換機の機能 [発呼監視] 発呼者が端末機の受話器を上げると 加入者線に電流が流れる。 この電流を検出して(発呼検出), 通話要求発呼者を識別する(発呼者識別) [発呼信号]→ 発呼検出 (発呼者の識別) 発信音 ←[発信音] 発信音送出 [選択信号 (相手先番号)]→ 選択信号受信 翻訳 (被呼者の識別) 呼出し信号 出線選択 呼出し音 ←[呼出し音] [呼出し信号]→ 呼出し信号送出 (呼出し音送出) [応答監視] ←[応答信号] 応答検出 通話路形成 [終路監視] [終話信号]→ ←[終話信号] 通話路形成 通話路切断 (復旧)

17 ② 要求内容分析 基本機能と交換動作の関係 発呼側 被呼側 発呼者がダイヤルした 相手先番号を受信し, 通話を希望する相手を識別して
交換機の機能 発呼者がダイヤルした 相手先番号を受信し, 通話を希望する相手を識別して 被呼者の回線を選択する。 呼出音,呼出信号を両者に送出する。 [発呼監視] [発呼信号]→ 発呼検出 (発呼者の識別) 発信音 ←[発信音] 発信音送出 [選択信号 (相手先番号)]→ 選択信号受信 翻訳 (被呼者の識別) 呼出し信号 出線選択 呼出し音 ←[呼出し音] [呼出し信号]→ 呼出し信号送出 (呼出し音送出) [応答監視] ←[応答信号] 応答検出 通話路形成 [終路監視] [終話信号]→ ←[終話信号] 通話路形成 通話路切断 (復旧)

18 ③ 伝送路つなぎ替え 基本機能と交換動作の関係 発呼側 被呼側 被呼者が受話器を取ったら, 通話路を形成して通話を可能にする。 交換機の機能
[発呼監視] [発呼信号]→ 発呼検出 (発呼者の識別) 発信音 ←[発信音] 発信音送出 [選択信号 (相手先番号)]→ 選択信号受信 翻訳 (被呼者の識別) 呼出し信号 出線選択 呼出し音 ←[呼出し音] [呼出し信号]→ 呼出し信号送出 (呼出し音送出) [応答監視] ←[応答信号] 応答検出 通話路形成 [終路監視] [終話信号]→ ←[終話信号] 通話路形成 通話路切断 (復旧)

19 ④ 終話の検出と切断 基本機能と交換動作の関係 発呼側 被呼側 いずれかが受話器を置いたら, 通話路切断・復旧を行う。 交換機の機能
[発呼監視] [発呼信号]→ 発呼検出 (発呼者の識別) 発信音 ←[発信音] 発信音送出 [選択信号 (相手先番号)]→ 選択信号受信 翻訳 (被呼者の識別) 呼出し信号 出線選択 呼出し音 ←[呼出し音] [呼出し信号]→ 呼出し信号送出 (呼出し音送出) [応答監視] ←[応答信号] 応答検出 通話路形成 [終路監視] [終話信号]→ ←[終話信号] 通話路形成 通話路切断 (復旧)

20 (c) 付加機能 ①迂回制御機能 発信交換機と着信交換機の間に複数のルートを設定することで,
伝送路が切断されても通信可能になるようにしている。 したがって,複数のルートから1つのルートを選定する機能が必要となる。 たとえば,ルートAのトラヒックが多い場合,ルートBを選択する等の 迂回制御機能が必要である。 被呼者 発呼者 中継交換機 着信交換機 発信交換機 ルートA 中継交換機 ルートB

21 ②ふくそう制御機能 災害やイベントの電話リクエストなどで大量の呼が集中的に発生したり,
中継用伝送路の切断等により,特定の交換機にとって処理能力を超える トラヒックが発生することがある。これをふくそう状態と呼ぶ。 ひとつの交換機がふくそう状態になると, 迂回制御機能により,周辺の交換機にも影響を及ぼし, ネットワーク自体がまひ状態になってしまう危険性がある。 予想以上のトラヒックが発生したら, ネットワーク全体への影響をおさえるための処置を行う。 これをふくそう制御と呼ぶ。

22 ふくそう制御の種類 ① 発信規制 交換機の処理能力を超えるような膨大な呼の発生を防ぐため, 通話確保が必要な緊急回線を除き,
発信呼を受け付けないよう規制する。 ② 入呼規制 入呼の待合せの増加を防ぐため, 他交換機からの入呼を受け付けないよう規制する。 ③ 出接続規制 特定地域や利用者へのトラフィック集中により, 他の地域や利用者への呼に影響を及ぼさないよう, 特定地域または利用者への呼を規制する。

23 ③課金機能 交換機は,発信されるすべての呼に対して, 発信箇所と着信箇所の特定,またその時間を知ることができるので,
料金データを収集・蓄積する課金機能は交換機の機能となる。 この課金機能によって得られた通話距離・時間に応じた通話度数を元に, 1度数当たりの単位料金を乗じて通話料金を算出する。

24 ④各種サービス機能 交換機のつなぎ替えの処理に,さまざまな機能を追加することで 各種のサービス機能が提供されている。
NTTの交換機におけるサービスには,以下の例がある。 ① 発信サービス (可変短縮ダイヤル,国際自即) ② 着信サービス (自動通知案内,でんわばん,自動着信転送) ③ 通話サービス (キャッチホン)

25 (SPC : Stored Program Control)
3.1.2 交換方式の種類 制御方式や通話路方式による分類 通話路の制御単位 による分類 個別制御方式 共通制御方式 制御方式 制御論理の実現 方法による分類 布線論理制御方式 (Wired Logic) 蓄積プログラム制御方式 (SPC : Stored Program Control) 通話路 方式 通話スイッチの表現 方法による分類 空間分割形通話路方式 (アナログ信号) 時分割形通話路方式 (ディジタル信号) ステップバイ ステップ 交換機 交換機の例 クロスバ 交換機 電子 交換機 ディジタル交換機 現在,ほとんどがディジタル交換機であり,共通制御方式である。

26 3.1.3 制御方式 (1)制御方式の種類 ① 共通制御方式 通話スイッチ網を構成する複数スイッチに対して共通の制御装置を設ける。
3.1.3 制御方式 (1)制御方式の種類 ① 共通制御方式 通話スイッチ網を構成する複数スイッチに対して共通の制御装置を設ける。 現在では,コンピュータとほぼ同様の蓄積論理回路で制御する 蓄積プログラム制御方式(stored program control)方式による ディジタル交換機が採用されている。 ② 個別制御方式 スイッチごとに制御回路を付ける   (個別制御方式は制御面で融通性がないため,最近はほとんど使用されない)

27 (2) 制御装置の方式 共通制御方式と個別個別制御方式 端末機器 加入者回路 通話路スイッチ網 スイッチ スイッチ スイッチ 信号装置
制  御  装  置 (a)共通制御方式 端末機器 加入者回路 通話路スイッチ網 スイッチ スイッチ スイッチ 制御回路 制御回路 ・・・ 制御回路 (b)個別制御方式

28 3.1.4 通話路方式 (1)通話路スイッチ 通話路スイッチの基本単位(1本の入選に対する基本スイッチ)
3.1.4 通話路方式 (1)通話路スイッチ 通話路スイッチの基本単位(1本の入選に対する基本スイッチ) 入線1 交差点閉成 A E 交差点開放 B C D 出線 入線が複数の場合,入線に対して,出線を共用させ,マトリックス状に構成する。 任意の入線から任意の出線を選択・接続することができるようにする。 各交差点の開閉スイッチは, ・ リレー接点 ・ LSIによる電子ゲート 等による。 2 3 N 1 2 3 N 出線

29 交差点の使い方によるスイッチ方式 ① 空間分割(SD:Space Division)方式 ひとつの交差点を1つの呼で使用する場合,
各交差点を空間的に配置することで呼を識別する。 ② 時分割(TD:Time Division)方式 ひとつの交差点を複数の呼で共用する場合,PCM多重伝送により 各交差点を時分割的に多重使用する。

30 多接点封止形スイッチ(SMM:Sealed Multi-Contact Matrix)
(a) 空間分割形スイッチ SMMスイッチ 多接点封止形スイッチ(SMM:Sealed Multi-Contact Matrix) ディジタル交換機の場合,LSI等電子回路によるゲート素子が使われるが, 考え方が単純な多接点封止形スイッチ(SMM)を示す (a) 1接点組の構成 (b) 接点バネ #1 #8 X1 X8 X駆動線 A1 通話線A B1 #1 SMM 通話線B Y1 Y1 (電磁石) Y駆動線 スイッチ素子 (2×8接点を金属筐体に封入) 通話線b 通話線a A8 X駆動線 B8 #8 SMM Y8 Y8 通話線 X駆動線 b1 a1 X1 b8 a8 X8

31 空間分割形スイッチ [例]空間分割形スイッチ接続例 接続状態 A―E B-F C-D 交差点閉成 交差点開放 C A E D F A E B

32 (b) 時分割形スイッチ 各入線,出線ごとに 個々の時間位置(タイムスロット)を割り付け, 入線のタイムスロットを出線のタイムスロットに
入れ替えることで交換動作を行う。 符号化 多重化 時間順序入替え 分離 D A A1A0 C1C0 # 2 # 1 # 0 # 2 # 1 # 0 B E B1B0 C B A F E D 時分割形 スイッチ A1A0 接続状態 A―E B-F C-D C F B1B0 C1C0

33 (2)通話路スイッチ網 ひとつの格子スイッチで 大規模通話路スイッチを構成するのは 一般に,個々の利用者の
コスト面や実現性の面で効率的ではない。 一般に,個々の利用者の 電話の使用頻度が低い。 トラヒックを集めて(集束),群に振り分け(分配), どの利用者も利用できるように展開する。 スイッチの数を節約することができる。

34 収束・分配・展開 通話スイッチの収束・分配・展開の階梯(ハイアラーキ) 呼の方向 群 集束階梯 展開階梯 分配階梯 1 8 2 7 3 6
4 加入者線 (着信端子) 加入者線 (発信端子) 5 5 4 6 3 7 2 8 1

35 通話スイッチの収束・分配・展開のハイアラーキ
[基本的な構成] 他交換機へ 他交換機から 展開 階梯 集束 階梯 分配階梯 分配階梯 分配階梯の 入線と出線の数はほぼ同じ であり, 集束階梯と展開階梯の 呼の流れは逆であることから, 実際には,集束階梯と展開階梯を以下のように共用する。 実際のスイッチ網の構成 他交換機へ 集束・ 展開 階梯 分配階梯 他交換機から

36 (a) 空間分割形スイッチ網の構成(その1)
① ひとつの格子スイッチで構成する場合,100×100=10,000個 接点数=10,000個 100 100 99 99 98 98 入線数=100個 3 3 出線数=100個 2 2 1 1

37 空間分割形スイッチ網の構成(その2) ②多段(3段)接続の場合(接点数=3段×10個×(10×10)=3,000個) 1次スイッチ
2次スイッチ 3次スイッチ 100 100 10 10 10 10 10 10 91 91 入線 100 出線 100 (10個) (10個) (10個) 10 10 10 10 10 10 10 10 1 1

38 (b) 時分割形スイッチ網の構成 ハイウェイ(HW:High way) 時分割多重された音声信号の伝送路は,ハイウェイと呼ばれる。
 時分割多重された音声信号の伝送路は,ハイウェイと呼ばれる。 ① 時間スイッチだけで大容量通話路スイッチ網を作るのは,コスト的に困難である。 ② 空間スイッチだけでは,時分割多重されたタイムスロットの入替えができない。 との理由から,時分割形通話路スイッチ網は,次のスイッチを組み合わせて 構成される。 [時分割型スイッチ網を構成するスイッチ] ① 時間スイッチ(TSW:Time Switch,ハイウェイ上の時間位置を入れ替える) ② 空間スイッチ(SSW:Space Switch,音声信号をハイウェイ間で入れ替える)

39 書込み制御メモリ(内容は通話メモリの番地)
A. 時間スイッチ ハイウェイ(HW:High way)  ハイウェイ上のタイムスロットを入れ替えるスイッチ ① 通話メモリ,書込み制御メモリ,順番読出しカウンタから構成されている。 ② 書込み制御メモリを書き換えることで,自由にタイムスロットを変更することが できる。ディジタル交換機ではこれをソフトウェアで制御している。 書込み制御メモリ(内容は通話メモリの番地) 通話メモリ 1番地へ n 0番地:C 順番読出し カウンタ 1 2番地へ 1番地:A 2 0番地へ 0番地から 順番に読み込む 2番地:B 番地はタイムスロット (TS)番号に対応 TS n 2 1 TS n 2 1 ・・・ C B A ・・・ C B A 入ハイウェイ 出ハイウェイ

40 ランダム書込み・シーケンシャル読込み [用語] 書込み制御メモリで通話メモリに書込み, 順番読み出しカウンタでメモリから読み出しているので,
ランダム書込み・シーケンシャル読出し方式 あるいは ランダムライト・シーケンシャルリード方式 と呼ばれる。 逆に入ハイウェイでは, シーケンシャルカウンタで通話メモリに書込み, 読出し制御メモリでランダムに出ハイウェイに乗せる方法もあり,これを シーケンシャルライト・ランダムリード方式 と呼ぶ。

41 時間スイッチの場合の音声信号多重チャネル数
一般に,n 多重の時間スイッチは,n × n の格子スイッチに相当する。 音声1チャネルが 8 ビットで符号化される場合, ・ 音声信号の標本化周期 T, ・ スイッチアクセス回数 A ・ 同時に時間スイッチに書き込むことができるビット数 P ・ 通話メモリの動作周期 t c とするとき多重チャネル数は次の式で与えることができる。

42 B.空間スイッチ ハイウェイ相互間で情報の入替えを行うスイッチ。 ハイウェイスイッチとも呼ばれる。 TS はTS = 0 の状態 n 2 1
入ハイウェイ 入ハイウェイ #0 ・・・ C B A TS n 2 1 #1 ・・・ R Q P 制御メモリより 出ハイウェイ TS n 2 1 TS #k ・・・ Z Y X n 2 1 ・・・ Z B P #0 TS 出ハイウェイ n 2 1 ・・・ R Y A #1 番地は タイムスロット (TS)番号に対応 TS n 2 1 ・・・ C Q X #k k 1 n n n 1 1 1 k 1 制御メモリの内容は, 入ハイウェイ番号に対応 2 2 1 2 k 制御メモリ番号は, 出ハイウェイ番号に対応 制御メモリ #k 制御メモリ #1 制御メモリ #0

43 C.時間スイッチと空間スイッチの組合せ 時間スイッチと空間スイッチの組合せパターンは,ピラミッド型で表現できる
すなわち,T を時間スイッチ,S を空間スイッチとすれば , TST 系列と STS 系列に分けることができる。 T TST (TT) STS STTS SSTSS TSST TSSST TST系列 STS系列 内部ふくそう率が低く,通話路制御が簡単 大容量の通話路 S:空間スイッチ T:時間スイッチ ① 多段接続の最も簡単な組合せパターンは,TSTとSTS系列である。 ② TSTは,多重化チャネルが増えるにつれて,入線と出線の組合せで選択可能な 経路数が増えるので,通話チャネルの使用効率が高まる。 ③ STSでは,ハイウェイの数の分だけが接続可能経路数となるので経路数が限定される。

44 D. TST構成の交換動作 ① 利用者 A の音声信号は,時間スイッチT11によって,
送信用タイムスロット #0 から接続用タイムスロット#3 に入替える。 ② 空間スイッチ(S)により,ハイウェイ #1 から利用者Bの接続ハイウェイ #2 に移す。 ③ 時間スイッチ T22 によって,利用者Bのタイムスロット #5 に入替える 以下,HW:ハイウェイ が上記の交換動作の流れ (送話側) 利用者A (受話側) 時間 スイッチ (T) 空間 スイッチ (S) 時間 スイッチ (T) TS#0 TS#3 TS#2 TS#0 T11 T12 入HW #1 入HW #1 出HW #1 出HW #1 TS#5 TS#2 TS#3 TS#5 T21 T22 入HW #2 入HW #2 出HW #2 出HW #2 (送話側) 利用者B (受話側)

45 (C) 時分割集線方式 格子スイッチに入る入線数より出線数を少なくすることで,
通話路スイッチ網の規模を小さくし,スイッチ網のコストを低減することができる。 一般に,加入者線が一度にすべて使用されることはほとんどないので, 接続されている加入者回路より少ない通話メモリを用意し, 発呼した加入者線に順次メモリを割り当てる。 すべてに割り当てたら,それ以上の呼には接続しないようにすることで, 出線数を減らしている。 加入者回路 BORSCHT BORSCHT 時分割 集線段 時分割分配段 入線数より少ない通話メモリにし, 発呼加入者線に順次通話メモリを割り当てる。 用意した容量以上の呼は接続しない。 BORSCHT

46 3.1.5 蓄積交換方式 蓄積交換方式(store and forward switching system)とは
メモリに一時的に蓄積し,トラフィック状況に応じて適切な経路を選択する方式 a3 a2 a1 a3 c2 a2 c1 a1 c2 c1 端末A 端末D b2 b1 a3 a2 a1 端末B 端末E c2 c1 端末C b2 b1 メモリ メモリ 他交換機へ

47 ブロック化と情報細分化の方法 ①メッセージ交換 ②パケット交換 ③フレームリレー交換 ④ATM交換 (以下,それぞれについて説明)

48 (1)メッセージ交換 ①ユーザの伝送情報(メッセージ)を交換機で蓄積 ②ヘッダを付加してメッセージのままブロック化 ③リンクごとに転送
■電信やテレックスに使われる。 ■処理が簡単であるが,伝送効率は良くない。

49 (2)パケット交換 ①パケットと呼ばれるブロックに区切って,ヘッダを付加して伝送
②データグラム(datagram)方式とバーチャルコール(virtual call)方式がある ③プロトコルはX.25に規定される。

50 データグラム方式 ■送受信間の経路を確定しないので,コネクションレス(CL:connectionless)とも呼ばれる。
■パケットの到達順序は保障されないので,受信側で元通りに並べなおす順序制御が必要。

51 バーチャルコール方式 ■情報通信に先立って送受信間の経路を確立するので,コネクション指向(CO:connection oriented)形と呼ばれる。 ■呼の設定や開放を行うので交換制御の負担が増す。 ■大量のメッセージを送る場合は転送効率が良い。 ■送信側が高速で受信側が低速の場合,受信バッファがオーバフローする可能性があるため,受信可能なパケット量の通知を行うフロー制御(flow control)が必要となる。

52 パケット交換の特徴 ①蓄積交換方式なので誤り制御が可能となる(信頼性が高くなる)。 ②蓄積交換方式なので原理的に伝送遅延が発生する。
③複数端末が1つの通信回線に多重化させて転送するパケット多重(packet multiplexing)が可能となる。 ④空きチャネルを探索してパケットを転送するので回線利用効率が高い。

53 (3)フレームリレー交換 ①X.25を基本としてプロトコルを簡略化したもの。したがってX.25より高速伝送。
③フレームを多重化させて転送するフレーム多重(frame multiplexing)が可能。 ④ネットワークがふくそう状態になってもユーザが申告した最低限のスループットが保障される伝送速度(情報認定速度,CIR:Committed Information Rate)が定められており,ユーザgは,ふくそう状態のときCIRまで伝送速度を落とす必要がある。

54 フレームリレー交換の特徴 ①1.5~2Mbpsの高速伝送が可能。
②バースト的なデータ伝送(平均的に伝送されないようなデータ伝送)に向いている。 ③プロトコルが簡素なため伝送遅延が少ない。 ④CIRで最低スループットが保障される。 ⑤フレーム多重が可能。

55 (4)ATM交換 ①広帯域ISDN(B-ISDN:broadband ISDN)の基盤技術。 ②マルチメディア通信が可能。
④ヘッダ内のラベルと呼ばれる制御情報を用いてセルを転送する。 ⑤低速の場合は少なく,高速の場合は多くセルを発生するなど,情報速度に応じてセルを発生させる。 ⑥セルの転送形態には以下の種類がある。   ・CBR(Constant Bit Rate:音声等の通信用)   ・VBR(Variable Bit Rate:可変速度で転送する    動画像等の転送)   ・ABR(Available Bit Rate:品質が保証されない )

56 ATM交換の特徴 ①ハードウェア処理により156Mbps~622Mbpsの高速伝送が可能で,マルチメディア通信に適している。
②通信回線内の論理的な空きチャネルを利用するので,高いスループットが期待できる。これを統計的多重化(statistical multiplexing)という。

57 3.1.6 ATM交換技術 (1)同期転送モードと非同期転送モード
3.1.6 ATM交換技術 (1)同期転送モードと非同期転送モード (a) 同期転送モード(STM:Synchronous Transfer Mode) 帯域幅を時間単位で分割する。すなわち,STMで多重化されたすべてのコネクションには,1つの固定したタイムスロットが与えられる。 一度タイムスロットが割り当てられると,タイムスロットの帯域幅は,コネクションが休止しても,他のコネクションをサポートしない。 (b) 非同期転送モード( ATM:Asynchronous Transfer Mode ) 情報ブロックを蓄積し,宛先や制御用情報などを含むヘッダが付けられ,ヘッダで出側回線を選択し,出力向けヘッダを更新して送出する。 パケット交換では,出側回線が全部使用中なら空きを待つが, ATMセルでは,直ちに接続するか,廃棄するかのいずれかであり, 待ち合わせをしない.

58 (2)ATM交換に関わるパラメータ (a) セル構造
ユーザ・網インタフェース(UNI)用のセルと, ネットワーク・ネットワークインタフェース(NNI)用のセルがある 5オクテット 48オクテット [UNI用] セル ヘッダ ペイロード(ユーザデータ) 仮想パス識別子(VPI) Virtual Path Identifier 汎用フロー制御(GFC) Generic Flow Control 仮想チャネル識別子(VCI) Virtual Channel Identifier ペイロードタイプ(PT) Paylord Type セル損失優先度(表示) (CLP) Cell Loss Priority セルヘッダチェックサム(ヘッダ誤り制御) (HEC) Header Error Control 汎用 フロー 制御 仮想 チャネル 識別子 セル 損失 優先 セルヘッダ チェック サム 仮想パス 識別子 ペイロード 予約 4ビット 8ビット 16ビット 2ビット 1ビット 1ビット 8ビット [NNI用] 5オクテット 48オクテット セル ヘッダ ペイロード(ユーザデータ) 仮想 チャネル 識別子 セル 損失 優先 セルヘッダ チェック サム 仮想パス 識別子 ペイロード 予約 12ビット 16ビット 2ビット 1ビット 1ビット 8ビット

59 (b)汎用フロー制御(GFC:Generic Flow Control)
ユーザ側端末と局間のフロー制御に使用される。 ユーザ側からB-ISDNへの接続では, ユーザ側でLANに接続された多数端末であるので, このための制御として4ビットを要している.

60 (c)仮想パス指示子(VPI)と仮想チャネル指示子(VCI)
送信元と宛先ATM局の対局間のパスを識別する。 仮想チャネル指示子(VCI)はその仮想パス内のコネクションを定義する。 UNIではVPI+VCIで24ビット,NNIでは28ビットである。 (NNIのほうが4ビット長い) バーチャルチャネル(VPI+VCIで識別) バーチャルパス(VPIで識別) 伝送路(ポート番号で識別) 伝送ペイロード

61 伝送路としての階層化 ATMネットワーク階層は,VPレイヤとVCレイヤから構成される。
上位のVCレイヤは,1つ下のVPレイヤをサーバとして利用する。 サービス制御 システム オペレーション システム VCH VCH VCレイヤ網 ユーザ ユーザ VPH VPレイヤ網 VPH LT LT 伝送媒体レイヤ網 ATMネットワーク VCH:VCハンドラ,VPH:VPハンドラ

62 (d)ペイロードタイプ(PT) 当初,セル内の情報がユーザ情報であるか, ネットワーク管理用情報であるかを識別するために
定義されたが,その後,機能が拡大された。 バーチャルチャネル上でのOAM用のセル識別や 網内のふくそうを着側に通知する機能など, 様々なオプションが設定されている.

63 (e)セル損失(破棄)優先(CLP:Cell Loss Priority)
交換機スイッチでセルを伝送路に送出するとき, バッファオーバフロー時のセル廃棄に優先度を設定するために 使用される。 CLPビットは, 申告値を超えて入力されるセルに対する違反表示として 用いることも可能であり,違反した優先セル(CLP=0)は, 非優先セル(CLP=1)に変わる

64 (f)ヘッダ誤り制御(HEC) ヘッダ誤り制御(HEC)は,CRCチェックで行う。
誤り検出・訂正を行うとともに,ATMセルの自己同期を行う. これをセル同期と呼ぶ.

65 (3)B-ISDNの階層構造 ネットワークが提供する機能は,OSI階層のレイヤ1とレイヤ2である。
セル転送機能だけが中継交換機(ATMノード)の機能であり, フロー制御や誤り制御等はエンドシステム(ATM端末)にまかせられる。 (AALは ATM 端末に実装される) 上位レイヤ 上位レイヤ 主 要 機 能 セル分解・組立, セル転送のゆらぎ吸収, フロー制御/誤り制御 AAL AAL セル転送 (VC/VPのルーチング,多重) ATMレイヤ ATMレイヤ ATMレイヤ セル伝送をマッピング 物理レイヤ 物理レイヤ 物理レイヤ

66 (4)ATM物理層 物理層は,以下の副層に分けられる。 ① PMD副層:Physical Medium Dependent
ケーブル接続信号におけるビットを取り扱い, 各媒体により異なる。 ② TC副層:Transmission Convergence TC副層では,ビットからセルを組み立て, 逆にセルをビットに分解する.

67 CLAD(Cell Assembly/Disassembly)
(5)CLAD CLAD(Cell Assembly/Disassembly) 53オクテット(注)のATMセル単位で情報を区切って送受信し, 到着したセルの中からヘッダ部分を取り除いて元の情報に戻す装置 ATMの端末では,CLAD機能が内蔵されているが, 既存のコンピュータ,PBX,あるいはLAN等では, CLADを外付けまたはネットワーク側で用意する必要がある. (注) 「オクテット」とは「八個一組のもの」という意味で,8ビットを指す。 現時点では,1バイト8ビットがほとんどなので,「バイト」と同じになるが, 通信分野では,現在でも単位としてこの「オクテット」を使うことが多い。

68 (2)ATM交換機の構成 (a)交換機のモデル
ATM交換機では,出側伝送路のVPI/VCIを対応付け, その対応付けに従ってVPI/VCIを付け替えて転送する。 伝送路 入側のVPI/VCI VP/VC 出側のVPI/VCI ATM交換機 一般には,1つの伝送路に複数のVP/VCが多重化されている。 ATM交換機の基本的役割 (1)入側と出側の伝送路およびVP/VCの対応付け (2)それに従ったセル転送(VPI/VCIの付替え)

69 (b)ATM交換機の一般的構成 ATMでは,シグナル処理だけがソフトウェアで処理され, その他は,すべてハードウェアで処理される。
[基本的な動作] ① セルを入力ポートから受信 ② 入力ポートでの帯域制御 ③ VPI/VCIの値によって出力ポートを決定 ④ セルを出力ポートに出力  [基本的な構成要素]      QoS(要求サービス品質:Quality of Service) シ グ ナ リ ン グ 処 理 部 ヘッダ 処理部 QoS 処理部 (入力) セル スイッチ QoS 処理部 (出力) 出力 ポート 入力 ポート

70 使用量パラメータ制御(UPC:Usage Parameter Control)
ATM交換機の機能ブロック 使用量パラメータ制御(UPC:Usage Parameter Control) 実際の交換機では,トラヒック制御や使用量パラメータ制御を行う 必要があるので,次のような機能ブロックから構成される. 優先制御機能 トラヒック監視機能 使用量パラメータ制御機能 端末 ポリシング 出力バッファ ATM スイッチ 呼設定情報 使用帯域 要求品質 トラヒック データ セルレベル制御 目標 品質 帯域割り当て コネクション受付制御 呼レベル制御 網レベル制御 網内トラヒック制御

71 (c)セルスイッチの種類と構造 ①ブロッキングとノンブロッキング
セルスイッチは次のように分けることができる。 ① ブロッキングスイッチ(Blocking Switch) 複数の入力があったとき,いくつかの入力を入力側で待たす。 ② ノンブロッキングスイッチ(Non Blocking Switch) 全ての入力を同時に処理する。 ATMスイッチのほとんどは,ノンブロッキングスイッチである。

72 ② 代表的なセルスイッチ ① TDM(Time Division Multiplexing)スイッチ
セルマルチプレクサが,複数の入力ポートを一定時間間隔で走査し, セルバスに入力セルを,制御バスにポートマスクを出力する方式。 出力ポートは,制御バス上のポートマスクで自分宛であることを確認して, セルバスのセルを取り込む。 ② ノックアウト(Knockout)スイッチ 入回線,出回線とも同じ本数のバスに接続する方式。 クロスバースイッチとも呼ばれるが,アナログ式の電話交換機における クロスバースイッチと誤解されるので,ここではこの用語を用いる。 ③ バッチャバニヤン(Butcher Banyan)スイッチ バニヤンスイッチは,ATM以前から使用されているスイッチであり, 2入力2出力のスイッチエレメントである。これを多段に接続して使用する。 [用語]バニヤンスイッチという言葉は,スイッチの接続の様子が,枝から縦方向に気根が 垂れ下がるように生えるバニヤンの木に似ていることによる。

73 TDM(Time Division Multiplexing)
③ TDMスイッチ TDM(Time Division Multiplexing) セルマルチプレクサが,複数の入力ポートを一定時間間隔で走査し, セルバスに入力セルを,制御バスにポートマスクを出力する。 ノンブロッキングスイッチとして動作する条件は,以下のとおりである。      入力ポート帯域×入力ポート数 ≦ バス帯域 セルバス 制御バス 入力 ポート 出 力 ポート セル・ マルチプレクサ ・・・ ・・・

74 TDM(Time Division Multiplexing)
TDMスイッチの特徴 TDM(Time Division Multiplexing) ① 構造が簡単で実装が容易であり,マルチキャストのとき, ユニキャストと同じ性能で処理することができる。 ② バス帯域を入力ポート帯域×入力ポート数以上にする必要があるため, 接続ポート数に限界がある。 現在のバスクロックの上限は,約 133 MHz であるため, データ幅 64 ビットバスでは, 133 MHz × 64 ビット = 8.5 Gbps が対応できる帯域上限となる。

75 ④ ノックアウトスイッチ ノックアウト(Knockout)スイッチ 仮想チャネル(VC) 入回線,出回線とも同じ本数のバスに接続する方式。
入力バス上のセルが1サイクルごとに出右側に転送され,セルのヘッダで 仮想チャネルを識別して,接続する点(クロスポイント:接続点)を見つける。 セルは,クロスポイントを通って,出力側に移る.  入力 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 入力バス 7 フィルタ フィルタ フィルタ ・・・ ・・・ ・・・ N:L トーナメント形 集線スイッチ N:L トーナメント形 集線スイッチ N:L トーナメント形 集線スイッチ L入力1出力 FIFO L入力1出力 FIFO L入力1出力 FIFO 1 ・・・ 7

76 ノックアウト(Knockout)スイッチ
⑤ノックアウトスイッチの特徴 ① 各入力がクロスポイントによって,常に全出力ポートに接続されているので,入力側ではブロッキングは発生しない。 ② ブロッキングが発生するのは,フイルタおよび集線スイッチ回路の 処理能力を上回るセルが転送され,FIFOあふれが生じた場合である。 ③ ノックアウトスイッチは,構造が単純で設計が容易であり, マルチキャストの場合も効率よく処理できるが, ポート数の2乗に比例したクロスポイントが必要となり, ポート数が大きくなると回路が大規模になってしまう.

77 バッチャバニヤン(Butcher Banyan)スイッチ
⑤ バッチャバニヤンスイッチ バッチャバニヤン(Butcher Banyan)スイッチ 2入力2出力のバニヤンスイッチを多段に接続して使用する。 以下は,3段,12個のバニヤンスイッチを使用したスイッチである。 入力ポート 出力ポート 転送すべき 情 報 ルーチング 情 報 1 1 1 1 2 1 1 1 3 4 1 1 1 5 6:110 1 1 1 7 1ビット目 の判定 2ビット目 の判定 3ビット目 の判定

78 バニヤンスイッチにおける衝突 バニヤンスイッチでも衝突は発生する。
① 1段目では,(5,7),(0,3),(6,4),(2,1)で衝突が起き,5,0,4,1が選択。 ② 2段目では(0,1),(5,4)が衝突し,1,5が残り,これがそのまま出力。 5 1 6 2 7 3 5 4 1

79 衝突のないスイッチ 以下の例では,ルーチング情報の並びは異なるが, 同じ出力ポートであるにもかかわらず,衝突が起きていない。
すなわち,入力側の組合せによっては衝突が起きないのである。 1 1 2 2 3 3 4 4 5 5 6 6 7 7

80 入力回線の並び順の変更 バニヤンスイッチの前にもう1つのスイッチ群を用意し,
入力回線の並び順を変更して,バニヤンスイッチで衝突が起きないようにする。 これをバッチャー網あるいはソーティング網と呼ぶ。 出力ポート 入力ポート ソーティング網(Butcher網) 空間スイッチ網(Banyan網) 3 1 1 1 3 1 2 3 3

81 バッチャバニヤンスイッチの特徴 必要なバニヤンスイッチの数は, ポート数nに対してn/2×log n個 である。
 必要なバニヤンスイッチの数は, ポート数nに対してn/2×log n個 である。 ① ノックアウトスイッチの n2 よりスイッチは少なくなる。 ② ポート数が増加すると,スイッチ要素間の接続が複雑になり, 同一出力ポート宛のセルが複数入力されるとブロッキングが発生する。 ③ マルチキャストのとき余分なコストがかかる。 ④ 現在のポート数や帯域の範囲内では,前述した他の方法の方が, 安価で性能が良いため,商用のATMスイッチで, バッチャバニヤンスイッチを使用しているものは少ない.

82 (3)ATM交換機の動作 (a)VCCの確立
VP(Virtual Path) VC(Virtual Channel) VCC(Virtual Channel Connection) ATMは,コネクション指向のセルネットワークであるため, 通信に先立って2つの端末間にVCCを確立する。 [VCCの識別方法] ① ATM端末は,送信したい情報をセルに分割し, VPとVCと呼ばれる仮想的な通信路を介してATM交換機に届ける。 ③ VP/VCは,通常,1つの伝送路に多重化され,ATM交換機は,各セルのヘッダのVPI/VCIで転送先を決定する。 ④ VPは複数のVCを束ねたものである.伝送路上での階層を構成し,各VCを束にすることによって,交換機のスイッチング等を簡単化している。

83 (b)コネクションの方法 VP/VCによって,端末間に設定された通信を VP/VCコネクションあるいはATMコネクションと呼ぶ.
VP(Virtual Path) VC(Virtual Channel) VCC(Virtual Channel Connection) VP/VCによって,端末間に設定された通信を VP/VCコネクションあるいはATMコネクションと呼ぶ. 次のシート以降に示す例は,既に6.4.2(3)で示した例であるが, 再掲する。 なお,簡単化のため,VPIの値は,すべて1にしている。 ① VCC1を利用したいH1は,VPI/VCIの組として1/100のセルをS1に送出. ② ATM交換機S1は,入力セルのVPI/VCIと入力ポート番号をキーにして,S1のVPI/VCI変換表を検索.この結果,出力VPI/VCIとして1/300,出力ポート番号3を得る. ③ S1は,セル中のVPI/VCIの値を1/300に書き換え,ポート3にセルを送出. ④ S2もS1と同じ動作を行う.同様にして,S2のポート1で入力したセルヘッダ内のVPI/VCI,すなわち1/300を1/200に書き換え,セルをポート2に送出. ⑤ S2からセルを受信したH3は,セルをAAL PDUに変換して上位層に渡す.

84 バーチャルコネクションの簡単な例(1) VP / VC の簡単なバーチャルコネクション S1 S2 H1 1 VCC1 2 H3 3 1
 バーチャルコネクションの簡単な例(1) 仮想チャネル結合(VCC:Virtual Channel Connection) 仮想パス識別子(VPI:Virtual Path Identifier) 仮想チャネル識別子(VCI:Virtual Channel Identifier) VP / VC の簡単なバーチャルコネクション S1 S2 H1 1 VCC1 2 H3 3 1 H2 2 3 H4 VCC2 A:VCC1(ホストH1~H3) 1/100(H1-S1/1)→1/300(S1/3-S2/1)→ 1/200(S2/2-H3) B:VCC2(ホストH2~H4) 1/100(H2-S1/2)→1/200(S1/3-S2/1)→ 1/400(S2/3-H4) S1 の VPI / VCI 変換表 S2 の VPI / VCI 変換表 ボート VPI / VCI ポート 入力 入力 出力 出力  1 1/100 1/    2 1/100 1/  3 1/300 1/  3 1/300 1/ ボート VPI / VCI ポート 入力 入力 出力 出力  1 1/200 1/    1 1/300 1/  2 1/200 1/  3 1/400 1/

85 バーチャルコネクションの簡単な例(2) VP / VC の簡単なバーチャルコネクション S1 S2 H1 1 VCC1 2 H3 3 1
 バーチャルコネクションの簡単な例(2) 仮想チャネル結合(VCC:Virtual Channel Connection) 仮想パス識別子(VPI:Virtual Path Identifier) 仮想チャネル識別子(VCI:Virtual Channel Identifier) VP / VC の簡単なバーチャルコネクション S1 S2 H1 1 VCC1 2 H3 3 1 H2 2 3 H4 VCC2 A:VCC1(ホストH1~H3) 1/100(H1-S1/1)→1/300(S1/3-S2/1)→ 1/200(S2/2-H3) B:VCC2(ホストH2~H4) 1/100(H2-S1/2)→1/200(S1/3-S2/1)→ 1/400(S2/3-H4) S1 の VPI / VCI 変換表 S2 の VPI / VCI 変換表 ボート VPI / VCI ポート 入力 入力 出力 出力  1 1/100 1/    2 1/100 1/  3 1/300 1/  3 1/300 1/ ボート VPI / VCI ポート 入力 入力 出力 出力  1 1/200 1/    1 1/300 1/  2 1/200 1/  3 1/400 1/

86 クロスコネクト VPIは仮想的な束であり,交換機内のVPI/VCI変換表で接続替えを行う。
すべてのチャネルで一意ではなく,チャネルごとに変化する。 したがって,物理的に固定されたルートではない. ① セルは,同一方向に向かうVPに乗り,途中でVPIがつけ替えられ, 組み合せ変換点のノードで,出側の同一方面に向かうVPに乗せられる。 このVP組合せ変更機能をクロスコネクト(cross connect)と呼ぶ。 ② SDHの同期端局装置として,方路向けに多重回線を振り分ける機能, パス単位の分離と多重化機能を有するクロスコネクトを行う機器が 提供されている.

87 (c) SDHとの同期 ① SDHフレームとATMセルのマッピング
空きセルの挿入,空きセルの削除が行われる。 ③ 空きセルのヘッダのビットパターンは, セル同期にかかわる部分を除いて標準化されており, セルを伝送ペイロードに合わせる端局多重装置で識別が可能である.

88 ② セル同期 セルストリームのセル境界を受信側で識別する機能 ① ヘッダ誤り制御では,HEC領域を除くヘッダ全域に誤り検出,
1ビット誤り修正を行うCRC符号を用いる。 送信側で,このHECシーケンスを計算し,ヘッダに書き込む。 ② 平常時は,受信側で各受信セルを区別できる同期状態であるので, 各受信セルに対してHECを検証し,ヘッダ誤りの検出/訂正を行う。 ③ 受信側で同期が外れた場合,受信セルの境界が区別できないので, 想定したヘッダ誤り保護領域32ビットに対して,HECを計算し, これをヘッダに書き込まれた値と比較する。 これが何回か連続して合致すれば同期確立とみなし, 受信セルの区分を確定する。 ④ 合致しないときは,1ビットずつ移動して,演算と比較照合を繰り返す.


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