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新しい要件事実論の必要性 司法研修所編『新問題研究 要件事実』 (2011)の徹底的な批判

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1 新しい要件事実論の必要性 司法研修所編『新問題研究 要件事実』 (2011)の徹底的な批判
2016/7/22 新しい要件事実論の必要性 司法研修所編『新問題研究 要件事実』 (2011)の徹底的な批判 2016年7月22日 明治学院大学法科大学院教授 加賀山茂 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

2 目次 第1部 法科大学院の学修目標 第3部 司法研修所の要件事実論に対する批判 第2部 司法研修所の要件事実論は,何を目標としているのか?
第1部 法科大学院の学修目標 法科大学院の教育理念 司法試験による能力判定基準 法科大学院で育成すべき能力とは何か? 法的分析能力とは何か? 法的議論の能力とは何か 法科大学院における学修到達目標としてのIRAC 第2部 司法研修所の要件事実論は,何を目標としているのか? 要件事実論・要件事実教育のねらい 要件事実論の意味と多義性 実体法と訴訟法の架橋の鍵-攻撃防御方法 攻撃防御方法の体系 司法研修所が提唱する民事実体法の立体的理解とは? 民事実体法の平面的理解からの批判 『兼子一・実体法と訴訟法』53頁の立体的理解 要件事実論の立体化の意味-実体法との比較 否認と抗弁と再抗弁の区別は何に由来するのか? 第3部 司法研修所の要件事実論に対する批判 司法研修所の要件事実論は訴訟物理論と矛盾している 司法研修所の要件事実論は,当事者の言い分を無視している 司法研修所の要件事実論の改正案 司法研修所の要件事実論と条文との乖離 時効中断事由は再抗弁か? 新方式による判決書の構成と再抗弁等の不要性 立法意思の無視の例 民法93条 民法の立体的理解と平面的理解との比較 結論 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

3 法科大学院で 身につけなければならない能力とは何か?
第1部 法科大学院の学修目標 法科大学院で 身につけなければならない能力とは何か? 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

4 法科大学院の教育理念 司法制度改革審議会『意見書-21世紀の日本を支える司法制度』(2001年6月12日)
専門的な法知識を確実に習得させるとともに,それを批判的に検討し,また発展させていく創造的な思考力,あるいは 事実に即して具体的な法的問題を解決していくために必要な法的分析能力や法的議論の能力等を育成する。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

5 司法試験による能力判定基準 第1条(司法試験の目的等) 第3条(司法試験の試験科目等)
①司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。 第3条(司法試験の試験科目等) ①短答式による筆記試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的とする。 ②論文式による筆記試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な学識並びに法的な分析、構成及び論述の能力を有するかどうかを判定することを目的とする。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

6 IRAC(アイラック)で考え,論証できるか?
法科大学院で育成すべき能力 とは何か? IRAC(アイラック)で考え,論証できるか? 法的分析能力 Issue 論点・事実の発見 Rules ルールの発見 A Application ルールの適用 法的議論の能力 Argument 原告・被告による議論 Conclusion 具体的な結論 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

7 法的分析能力とは何か? ルールに基づく事実の発見と事実に基づくルールの再発見 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

8 法的議論の能力とは何か(1/2) 法的三段論法からトゥールミン図式へ
三段論法(反論を許さない硬直性が問題) 大前提: 全ての人間は死ぬ。 小前提: ソクラテスは人間である。 結 論:ソクラテスは死ぬ。 トゥールミン図式(あらゆる議論に通用する構造を提供している) ソクラテスは人間である。 誤り おそらく ソクラテスは死ぬ。 データ 蓋然性 蓋然性 主張 論拠 反論 全ての人間は死ぬ。 ソクラテスは哲学の神様である。 裏づけ 万物は流転するが, 真理は生き続ける。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

9 法的議論の能力とは何か(2/2) 民法93条を例として
表意者は,真意でないことを知りながら,冗談で,意思表示をしている。 意思表示は有効である。 誤り おそらく データ 蓋然性 蓋然性 主張 表意者は,意思表示に責任を持つべきである。 論拠 反論 相手方は,意思表示が真意でないことを知っていたか,真意でないとわかるはず。 裏づけ 表意者が真意とは異なる,誤った外観を作出した場合の意思表示の効果: 1. 相手方が表意者の真意を知っているか,知るべきであったときは,無効となる(原則)。 2. 相手方が表意者の真意を知らず,知ることもできなかったときは,有効となる(例外)。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

10 法科大学院における学修到達目標 としてのIRAC(確認テスト)
法曹の思考方法 法的分析能力 I: 争点は何か? R: ルールの発見 A: ルールの適用 C: 仮の結論 (原告・被告で別々に) 法的議論の能力 A: トゥールミン図式に  従って議論 C: 妥当な結論 IRACで法務博士 IRACで試験突破 法曹とは,議論を通じて問題解決を行う人々のことである。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

11 第2部 司法研修所の要件事実論は,何を目標としているのか?
第2部 司法研修所の要件事実論は,何を目標としているのか? 法律要件を攻撃防御方法へと分解 実体法の立体的理解をめざす ただし,立体的理解には問題点がある 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

12 要件事実論・要件事実教育 のねらい 要件事実論の必要性:司法改革審・意見書 要件事実論の目標:民事実体法の立体化
法科大学院では,法理論教育を中心としつつ,実務教育の導入部分(例えば,要件事実や事実認定に関する基礎的部分)をも併せて実施することとし,実務との架橋を強く意識した教育を行うべきである。 要件事実論の目標:民事実体法の立体化 加藤(新),細野・要件事実の考え方(2002)2-5頁 これまでの法教育においては,実体法を平面的にしか理解できなかったが,要件事実教育においては,民事実体法の理解を立体化し,民事訴訟の攻撃防御の構造[請求原因,抗弁,再抗弁,再々抗弁…]に組み立てなおすことになる。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

13 要件事実論の意味と多義性 当事者が主張している事実の中から重要な事実とそうでない事実とをより分けることの重要性を強調するのが要件事実論
←この考え方は,「法律要件」が何かを明らかにすることであって,従来の実体法的な考え方である(この限度で正しい)。 当事者が主張している事実のうち,重要な部分を取り出した上で,重要な部分を立証責任の配分に従って請求原因,抗弁,再抗弁,再々抗弁,…という類型に分類して整理する考え方 ←これが,司法研修所が提唱する要件事実論である。 ←この考え方が,要件事実論を混迷へと導くことになる。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

14 実体法と訴訟法の架橋の鍵 としての攻撃防御方法
2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

15 攻撃防御方法の体系 (確認テスト) 訴訟上 の主張 攻撃方法 請求原因 防御方法 否認 契約の不成立など 抗弁 延期的抗弁 同時履行の抗弁権
催告の抗弁権 検索の抗弁権 永久的抗弁 無効の抗弁 消滅の抗弁 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

16 司法研修所が提唱する 民事実体法の立体的理解とは?
建物収去土地明渡請求事件 請求原因(原告) ①本件土地は,Aが所有していた。 ②原告は,本件土地をAから買いうけた。 ③被告は,本件土地に本件建物を所有し,本件土地を占有している。 よって,被告は,原告に対し,本件建物を撤去して本件土地を明け渡せ。 否認(被告) ①,③は認める。②は,否認する。 抗弁(被告) 被告は,本件土地をAから期限を定めずに賃借し,引渡しを受けた。 再抗弁(原告) Aは,被告に対して,賃貸借契約に対して解約申し入れをした。 再々抗弁(被告) 本件賃貸借契約は,建物所有の賃貸借であり,借地借家法が適用される。 再々々抗弁(原告) 本件賃貸借は,一時使用のための賃貸借である。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

17 民事実体法の平面的理解 からの批判 物権的請求権(議論のための議論で無意味?) 債権的請求権 原告と被告の主張のまとめ
物権的請求権は条文の根拠が曖昧。 物権的請求権は,契約がない場合に限定されるのではないか? 所有権に基づく建物収去土地明け渡しが訴訟物なのか? 契約終了に基づく債権的請求権が訴訟物なのか? 債権的請求権 賃貸借の終了における原状回復請求 賃貸借契約の成立・有効 期限の定めのない賃貸借契約の終了 解約申し入れ 借地借家法における解約申し入れの制限 一時使用の場合における借地借家法の不適用 原告と被告の主張のまとめ 適用されるべき条文 借地借家法の不適用による民法の適用(原告)⇔借地借家法の適用(被告) 原状回復という効果を導くための要件 賃貸借契約は解約申し入れ(民法617条)により終了しているかどうか。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

18 民法の立体的理解とは? 兼子一・実体法と訴訟法 53頁
→民法93条の分析 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

19 要件事実論における「立体化」の意味 兼子説(1/3)
要件事実論における「立体化」の意味 兼子説(1/3) 法規が要件事実を定めるのに、常に一方的に表現するに止め、決して裏表双方から駄目をつめないことも、裁判規範として、必ず一義的に紛争解決の結果を導き出せるようにし、訴訟上の引分け無勝負が絶対に生じないようにする立法者の賢明な配慮としてのみ理解できるものである。 それは、決して立法者の粗雑や不精の故ではない。即ち条文は、「善意ならば権利を取得する」と定めるか、「悪意ならば権利を取得しない」と定めるか何れかの表現を用いるので、決して正確を期して両者を同時に用いることはしない。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

20 要件事実論における「立体化」の意味 兼子説(2/3)
要件事実論における「立体化」の意味 兼子説(2/3) 平面的な論理としては、両者は裏表を成す択一的命題であり、行動規範としてならば、同時に用いて差支えないのみならず、却って行届いた親切を示すものといえよう。 例えば、「青信号が出ている場合は通ってもよい。それ以外の場合は通ってはならない」というように。 ところが、裁判規範としては前例の場合に、もし裏表から規定しているとすれば、訴訟上善意とも悪意とも確定できない場合は、権利を取得したかどうかは何れにも決められないことになり、紛争の解決を与えられなくなってしまう。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

21 要件事実論における「立体化」の意味 兼子説(3/3)
要件事実論における「立体化」の意味 兼子説(3/3) これが一方的な命題ならば、これによって挙証責任の分配の定めが引出せるのであって、その要件が積極的に認定されない限り、その定める権利の取得(又は不取得)を否定すればよいから、要件事実の不明のために法律的解決が不可能に陥ることはないのである。 この意味で行動規範としてはどっちでもよいはずの法規の要件の定め方や本文と但書の構造が、裁判規範としては非常に重要な意義をもつものである。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

22 要件事実論の立体化の意味 -実体法との比較
実体法の考え方 (平面的?) 要件事実論の考え方 (立体的?) 全体的か 一方的か 全体を考慮して,裏表双方から駄目をつめる。 一方的に表現するに止める。 論理的に 正確か 論理の正確さを期する。 真偽不明の場合にどう判断するかを考えて,一方的な命題とする。 親切か 行き届いた親切さを示す。 親切さを犠牲にして,真偽不明の場合の解決を優先する。 立証責任の分配 引き出せない。 引き出せる。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

23 否認と抗弁と再抗弁の区別は 何に由来するのか?
抗弁とは,民事訴訟において,原告の請求を排斥するため,被告が原告の権利主張・事実主張を単に否定・否認するのではなく,自らが証明責任を負う事実による別個の事項を主張すること。 ←理論的欠陥 単に否定するが証明責任を負うという場合(例えば,契約の有効要件である「内心の効果意思と表示とが一致していることの否定に過ぎない「意思と表示が食い違っていること(意思の不存在)に関する概念が用意されていない。このため,錯誤は単に有効要件の否定なのに,有効要件の否定とは異なる錯誤(権利発生障害要件)というものが存在すると考えるに至っている。 再抗弁 民事訴訟上,被告の提出する実体上の抗弁に対して,原告がそれによる法律効果の発生を妨げあるいはその消滅をもたらす事実を主張すること。再抗弁事実の証明責任は原告にある。例えば,消滅時効の抗弁に対する時効中断事由の主張は再抗弁である。 時効の中断事由は,民法167条の要件である「権利を行使しないこと」の否定に過ぎない(否認的)。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

24 訴訟物論と矛盾している 当事者の言い分を反映できない 条文の趣旨・理由に忠実でない
第3部 司法研修所の要件事実論に対する批判 訴訟物論と矛盾している 当事者の言い分を反映できない 条文の趣旨・理由に忠実でない 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

25 司法研修所の要件事実論は 訴訟物理論と矛盾している
訴訟物の理解については,いわゆる新訴訟物理論と旧訴訟物理論との対立がありますが,実務は旧訴訟物理論によっています(新問題研究3頁)。 請求の趣旨 本問の場合,Xは売買代金元本2000万円の支払を請求していますが,請求の趣旨は,「被告は,原告に対し,2000万円を支払え。」と記載し,「被告は,原告に対し,売買代金2000万円を支払え。」とはしません(2頁)。 《批判》 「2000万円支払え。」では,売買代金請求なのか,貸金返還請求なのか,不法行為に基づく損害賠償請求なのか,全く不明であり,旧訴訟物理論と矛盾する。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

26 司法研修所の要件事実論は,当事者の言い分を無視している ←改正案
司法研修所の要件事実論は,当事者の言い分を無視している ←改正案 Xの言い分 私は,平成18年3月3日に,先祖代々受け継いで私が所有していた甲土地を,是非欲しいと言ってきたYに売り,その日に甲土地を引き渡しました。代金は2000万円,支払日は同年4月3日との約束でした。ところが,Yはいろいろと文句を言ってその代金を支払ってくれません。そこで,代金2000万円の支払を求めます。   Yの言い分 甲土地を売買することについては,両者とも異論がなかったのですが,結局,代金の折り合いがつきませんでした。また,甲土地については,Ⅹが相続で取得したのではなく,叔父Aから贈与されたものと聞いています。 事実記載例(司法研修所の要件事実論の問題点) 1 請求原因 (1)原告は,被告に対し,平成18年3月3日,甲土地を代金2000万円で売った。 (2)よって,原告は,被告に対し,上記売買契約に基づき,代金2000万円の支払を求める。 2 請求原因に対する認否 請求原因(1)は否認する。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

27 司法研修所の要件事実論の 改正案 ←言い分 新しい要件事実論 1 請求原因(権利の存在・行使原因) 2 請求原因に対する認否 1 請求原因
司法研修所の要件事実論の 改正案          ←言い分 司法研修所の要件事実論 新しい要件事実論 1 請求原因 (1)原告は,被告に対し,平成18年3月3日,甲土地を代金2000万円で売った。  (2)よって,原告は,被告に対し,上記売買契約に基づき,代金2000万円の支払を求める。 2 請求原因に対する認否 請求原因(1)は否認する。 1 請求原因(権利の存在・行使原因)  (1)平成8年3月3日,甲土地を原告が被告に代金2000万円で売るという売買契約を締結した。  (2)原告は,平成8年3月3日,被告に甲土地を引き渡した。  (3)被告は,現在も,代金2000万円を支払わない。  (4)よって,原告は,被告に対し,上記売買契約に基づき,代金2000万円の支払を求める。 2 請求原因に対する認否  請求原因(1)は否認する。  請求原因(2)は認める。  請求原因(3)は認める。ただし,契約が締結されていないので,支払う義務はない。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

28 司法研修所の要件事実論と 条文との乖離 時効中断事由は再抗弁か?(1/5)
第167条(債権等の消滅時効) ①債権は,10年間行使しないときは,消滅する。 ②債権又は所有権以外の財産権は,20年間行使しないときは,消滅する。 第147条(時効の中断事由) 時効は,次に掲げる事由によって中断する。  一 請求  二 差押え,仮差押え又は仮処分  三 承認 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

29 時効中断事由は再抗弁か?(2/5) 要件事実論 ←条文 →論理 →批判
時効中断事由は再抗弁か?(2/5) 要件事実論 ←条文 →論理 →批判 司法研修所・要件事実〔第1巻〕8-9頁 債権の時効消滅について,民法167条1項は,「十年間之ヲ行ハサルニ因リテ」と規定するが,この文言及び条文の形式からみれば,当該債権の10年間の不行使も右消滅の効果の発生要件事実となるべきもののように読める。 ところが,民法147条以下の法条によれば,右10年間に当該債権に基づく請求をするなどの債権の行使は,消滅時効の中断事由とされるから,当該債権の不行使が時効消滅の要件事実ではなく,反対事実すなわち右債権の行使が時効消滅の効果の発生障害の要件事実である。 消滅時効については,民法147条以下に規定するような債権の行使が消滅時効の効果の発生障害の要件事実(時効の中断事由)であり,時効期間中の債権の不行使は時効消滅の要件事実とはならない…。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

30 時効中断事由は再抗弁か?(3/5) 実体法の考え方 ←条文
時効中断事由は再抗弁か?(3/5) 実体法の考え方 ←条文 (1) 10年間(a)∧債権の不行使(b)→債権の消滅(R) (2) 10年間(a)∧時効中断事由(債権の行使(¬b))→債権の不消滅(¬R) 結論 債権の消滅時効の法律要件は,a∧b 中断事由は,bの論理的否定に過ぎない。 単なる否定(否認的)だが,立証責任は主張する側にある(抗弁的)→主張責任と立証責任とが分離することを立法者が示した例である。 民訴理論は,否認と抗弁との間の概念ギャップに気づいていないため,これに対応できていない。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

31 時効中断事由は再抗弁か?(4/5) 要件事実論の帰結
債権の消滅時効(司法研修所の考え方) 債権は10年間で消滅する。 ただし,その間に権利を以下の方法で行使したときは消滅しない(時効が中断する)。 一 請求 二 差押え,仮差押え又は仮処分 三 相手方の承認(権利行使とみなされる) 《批判》 実体法的には,債権は10年間で消滅するのではなく,あくまで,10年間権利行使をしない場合に限って消滅すると考えるべきであろう。 権利行使をすれば,時効が中断し,そこから進行し直すのは,権利の「10年間の不行使」が重要であることを物語っている。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

32 時効中断事由は再抗弁か?(5/5) 要件事実論の破綻の決定的原因
主張責任と立証責任とを同じ分配法則とする→無理の発生 「主張立証責任」という書き方の危険性 少なくとも,「主張・立証責任」と書くべき 立法者の実体法的な考え方の無視 条文に忠実にといいながら,都合が悪いところは,すべて,立法者の意思を無視。 民法162条(取得時効),186条(占有の態様の推定) 民法167条(消滅時効) 民法188条(権利適法の推定)など 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

33 新方式による判決書の構成と再抗弁等の不要性
旧方式による判決書の構成 一 主文 二 事実 三 理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨 請求の趣旨に対する答弁 第2 当事者の主張 1 請求原因 2 請求原因に対する認否 3 抗弁 4 抗弁に対する認否 5 再抗弁 6 再抗弁に対する認否 7 再々抗弁 8 再々抗弁に対する認否 新方式による判決書の構成 1990年に東京地裁・高裁と大阪地裁・高裁が共同提案し,今では,この方式によるのが通常となっている。 一 主文 二 事実及び理由(旧様式と同じ) 第1 請求(旧様式と同じ) 第2 事案の概要(旧様式と違う) 1 争いのない事実等 2 争点 3 争点に対する当事者の主張 第3 争点に対する判断 第4 結論 司法研修所の要件事実論には従っていない! 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

34 立法者意思の無視の例 民法93条(1/4)条文 第93条(心裡留保)
立法者意思の無視の例  民法93条(1/4)条文 第93条(心裡留保) 意思表示は,表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても,そのためにその効力を妨げられない。 ただし,相手方が表意者の真意を知り,又は知ることができたときは,その意思表示は,無効とする。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

35 立法者意思の無視の例 民法93条(2/4)立法意思
立法者意思の無視の例  民法93条(2/4)立法意思 民法修正案(前三編)の理由書 本條は意思を表示する者が、其相手方に對して眞實の意思を隱秘したる場合の規定なり。 若し、此塲合に於て、右の原則を適用せば、其意思表示はあるも意思なきが爲めに、當然無效ならざるべからず。既成法典は佛伊民法に倣ひ特別の規定を設けざるを以て一般の原則(意思主義)に依り之を無效とせるものと解釋せざることを得ず。 是れ、相手方が表意者の眞意を知りたる場合に於ては然らざることを得ざる所なりと雖も、相手方が表意者に欺かれたる塲合に於ては、若し之を有效とせざれば、取引の安全鞏固は終に得て望むべからざるに至らん。是れ本條上段の規定を必要としたる所以なり。 但書は、特に相手方を保護するの必要なき場合なるを以て本則に復ヘるべきものとし、以て本文の適用の範囲を明にしたるものなり。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

36 立法者意思の無視の例 民法93条(3/4)原則と例外
原則(明文になし) 意思の不存在の場合,意思表示は原則として無効となる。 例外(取引の安全の考慮:権利外観法理) (本文) 意思表示は,表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても,そのためにその効力を妨げられない。 原則への復帰 (ただし書き) ただし,相手方が表意者の真意を知り,又は知ることができたときは,その意思表示は,無効とする。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

37 立法者意思の無視の例 民法93条(2/4)実体法思考
立法者意思の無視の例  民法93条(2/4)実体法思考 民法93条(心裡留保)の実体法的・平面的理解 表意者が真意でないことを知りつつ意思表示(心裡留保)をした場合,意思表示の効力は,次の各号にしたがって,その効果を定める。  一 相手方が表意者の真意を知らず,かつ,知ることができないとき(善意・無過失) 意思表示はその効力を妨げられない ←権利概観法理の適用(例外)  二 相手方が表意者の真意を知っていた場合,又は,過失によって知らないとき(悪意又は有過失) 意思表示は無効とする ←意思の不存在の原則(原則) 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

38 民法の立体的理解と 平面的理解との比較(まとめ)
(表裏を詰めない) 平面的理解(表裏を平面展開) 第93条(心裡留保) 意思表示は,表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても,そのためにその効力を妨げられない。 ただし,相手方が表意者の真意を知り,又は知ることができたときは,その意思表示は,無効とする。 民法93条(心裡留保)改正私案 表意者が真意でないことを知りつつ意思表示(心裡留保)をした場合,意思表示の効力は,次の各号にしたがって,その効果を定める。  一 相手方が表意者の真意を知らず,かつ,知ることができないとき(善意・無過失) 意思表示はその効力を妨げられない ←権利概観法理の適用(例外)  二 相手方が表意者の真意を知っていた場合,又は,過失によって知らないとき(悪意又は有過失) 意思表示は無効とする ←意思の不存在の原則(原則) 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

39 結論 要件事実論は,以下の点で破綻している。 要件事実論に基づく要件事実教育は,法科大学院では,そのままの形で行うべきではない。
主張責任と立証責任の分配法則とを混同している。 法律上の推定がある場合には,常に,主張責任と立証責任とは分離する。 例えば,民法167条の場合債権者が「10年間権利行使をしていないこと」が時効の要件事実であると,素直に考えた場合には, 「債権発生から10年間が経過している」ならば,債権者は,その間,「権利を行使していない」ということが法律上推定されるということになる。 権利発生事由と権利発生障害事由を実体法の条文構造等から,前もって判断できると考えているが,立証責任が決まった後でなければ,発生事由と障害事由とを区別することはできない。 否認と抗弁の概念間のギャップを抗弁,再抗弁,再々抗弁で埋めようとしているが,これによって無用の混乱が生じている。再抗弁,再々抗弁…の概念は不要である。 要件事実論に基づく要件事実教育は,法科大学院では,そのままの形で行うべきではない。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判

40 新しい要件事実論の必要性 司法研修所編『新問題研究 要件事実』(2011)の徹底的な批判
新しい要件事実論の必要性 司法研修所編『新問題研究 要件事実』(2011)の徹底的な批判 ご静聴ありがとうございました。 2016/7/22 新問題研究要件事実の徹底的批判


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