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「介護事業所職員に対する講習会」 ①認知症 (一社)島根県薬剤師会
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認知症の人の将来推計について 長期の縦断的な認知症の有病率調査を行っている久山町研究のデータから、 新たに推計した認知症の有病率(2025年)。 各年齢層の認知症有病率が、2012年以降一定と仮定した場合:19%。 各年齢層の認知症有病率が、2012年以降も糖尿病有病率の増加により上昇すると 仮定した場合:20.6%。 ※ 久山町研究からモデルを作成すると、年齢、性別、生活習慣病(糖尿病)の有病率が認知症の有病率に 影響することがわかった。本推計では2060年までに糖尿病有病率が20%増加すると仮定した。 本推計の結果を、平成25年筑波大学発表の研究報告による2012年における 認知症の有病者数462万人にあてはめた場合、2025年の認知症の有病者数 は約700万人となる。 【久山町(ひさやまちょう)研究】 脳卒中や心血管疾患などの疫学調査のこと。久山町住民は全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を持っており、偏りのほとんどない平均的な日本人集団である。追跡調査の精度が高く、また剖検率が高いため正確な死亡診断がされている。また、久山町研究では40歳以上の住民を5年ごとに集団に新しく加えているため、生活習慣の移り変わりの影響や、危険因子の変遷をもうかがい知ることができる。 国で認知症を患う人の数が2025年には700万人を超えるとの推計値を発表しました。65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症に罹患する計算となります。 認知症高齢者の数は2015年の時点で全国に約525万人と推計されており、約10年で1.5倍にも増える見通しです。 では認知症とはどういうものなのか見て行きましょう。 「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」 (平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値 年 平成24年(2012) 平成27年 (2015) 平成32年 (2020) 平成37年 (2025) 平成42年 (2030) 平成52年 (2040) 平成62年 (2050) 平成72年(2060) 各年齢の認知症有病率が 一定の場合の将来推計 人数/(率) 462万人 15.0% 517万人 15.7% 602万人 17.2% 675万人 19.0% 744万人 20.8% 802万人 21.4% 797万人 21.8% 850万人 25.3% 上昇する場合の将来推計 525万人 16.0% 631万人 18.0% 730万人 20.6% 830万人 23.2% 953万人 25.4% 1016万人 27.8% 1154万人 34.3% P-ART-PM orangePlan#2
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認知症は何かの病気によって起こる症状や状態の総称です。 老化によるもの忘れと認知症はちがいます。
誰でも年齢とともに、もの覚えがわるくなったり、人の名前が思い出せなくなったりします。こうした「もの忘れ」は脳の老化によるものです。しかし、認知症は「老化によるもの忘れ」とは違います。認知症は、何かの病気によって脳の 神経細胞が壊れるために起こる症状や状態をいいます。そして認知症が進行すると、だんだんと理解する力や判断する力がなくなって、社会生活や日常生活に支障が出てくるようになります。 老化によるもの忘れと認知症のちがい 老化によるもの忘れ 認知症 原因 脳の生理的な老化 脳の神経細胞の変性や脱落 もの忘れ 体験したことの一部分を忘れる (ヒントがあれば思い出す) 体験したことをまるごと忘れる (ヒントがあっても思い出せない) 症状の進行 あまり進行しない だんだん進行する 判断力 低下しない 低下する 自覚 忘れっぽいことを自覚している 忘れたことの自覚がない 日常生活 支障はない 支障をきたす 認知症は病気です。当たり前のことのようですが、このことが十分に理解されていないと感じることがよくあります。その大きな理由は、「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の区別がつきにくいからだと思います。 「朝食に何を食べたか思い出せない」のは、体験の一部を忘れているので加齢による物忘れです。認知症になると、食べたこと自体を忘れて「朝から何も食べていない」「食べさせてくれない」と訴えます。 また、高齢にともなう物忘れは病気ではないので進行しません。3年経過して物忘れの程度や頻度に変化がなければ認知症ではないでしょう。 一方、認知症に よる物忘れは進行します。昨日や今朝のことだけでなく、1~2分前のことも忘れて何度も同じ話をするようになります。 認知症は記憶力がどんどん低下していく病気ですが、それだけでは認知症ではありません。記憶ができなくなるだけでは、徘徊(目的もなく歩き回る)や異食(食べられないものを口に入れる)などの症状は説明できません。 P-ART1554AKA#3 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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http://www.watanabe-cli.net 参照
認知症の中心となる症状は中核症状とよばれ、記憶障害、実行機能障害、失語・失認・失行などがあります。 認知症が進行して、こじれると抑うつ、せん妄、幻覚、妄想、行動異常などの問題行動が起こり、これを認知症の周辺症状(BTSD)といいます。
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出典:レビー小体型認知症家族を支える会ホームページ
認知症のほとんどを占める、三大認知症 その他 15% 認知症のうち、およそ半数はアルツハイマー型認知症です。次に多いのがレビー小体型認知症、そして血管性認知症と続きます。これらは「三大認知症」といわれ、全体の約85%を占めています。残りの15%の認知症の中には、下で説明している治るタイプの認知症などがあります。 血管性 15% アルツハイマー型 50% レビー小体型 20% 認知症で、一番多いのはアルツハイマー型認知症です。次に多いのはレビー小体型認知症、脳血管性認知症と続きます。これらは「三大認知症」と言われます。 認知症は治らない病気なのかというと、治るタイプもあります。 脳脊髄液が脳室に過剰に溜まり、脳を圧迫することで起こる『正常圧水頭症』や、頭をぶつけたりして頭蓋骨と脳の間に血の固まりができ、それが脳を圧迫して起こる『慢性硬膜下血腫』などがあります。 また、脳腫瘍や甲状腺機能低下症、栄養障害や薬物・アルコール中毒などでも起こることがあります。 慢性アルコ-ル中毒: 長期のアルコ-ル依存で、脳が萎縮してしまうことと慢性的ビタミンB群不足、低栄養などが複合して起こります。なかでもビタミンB1欠乏で起きる認知症をウエルニッケ脳症と呼んでいます。 甲状腺機能低下症: 甲状腺ホルモンが慢性的に不足し、精神活動が不活発になって起きる認知症症です。この他にも「葉酸欠乏」「慢性肺機能低下」「貧血」「肝硬変による血液中アンモニアの上昇」「腎不全による尿素や老廃物の蓄積」など脳の働きを落とす全身疾患は認知症につながっていきます。 では、一番多いアルツハイマー型認知症について見て行きます。 出典:レビー小体型認知症家族を支える会ホームページ 認知症の症状があっても、もとの病気を治療すると治ることもあります。こうした病気を早く見つけて早く 治療を始めるためにも、認知症かな?と思ったら、早めに専門医を受診することが大切です。 認知症は治らない? いいえ、治るタイプもあります。 ◎治るタイプの認知症 せいじょうあつすいとうしょう 正常圧水頭症 のう せき ずい えき ・・・・・脳脊髄液が脳室に過剰にたまり、脳を圧迫します。 まん せい こう まく か けっ しゅ 慢性硬膜下血腫 ・・・頭をぶつけたりしたときに頭蓋骨と脳の間に血の固まりができ、それが脳を圧迫します。 その他、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、栄養障害、薬物やアルコールに関連するものなど P-ART1554AKA#5 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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海馬のあたりを中心に、脳全体の萎縮がみられる。
アルツハイマー型認知症 アルツハイマー型認知症とは もの忘れから気付くことが多く、今まで日常生活でできたことが少しずつできなくなっていきます。 新しいことが記憶できない、思い出せない、時間や場所がわからなくなるなどが特徴的です。また、 物盗られ妄想や徘徊などの症状が出ることがあります。 原因 ベータたんぱくやタウたんぱくという異常なたんぱく質が脳にたまって神経細胞が死んでしまい、 脳が萎縮して(縮んで)しまいます。記憶を担っている海馬という部分から萎縮が始まり、だんだんと脳全体に広がります。 い しゅく かい ば 脳の様子 アルツハイマー型認知症は認知症の疾患タイプの中で最も多く、65歳以上の高齢者で3~7%、80歳以上では20%以上といわれています。遺伝によるアルツハイマー型認知症は全体の1%に過ぎず、99%は遺伝とは無関係です。加齢が一番の原因であり、65~85歳の間で年齢が5歳上がるごとに有病率は2倍に上昇するという報告もあります。男女比では、2対3~4の割合で女性に多いのが特徴です。 アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が壊れて死んでしまい減っていく為に、神経を伝える事が出来なくなると考えられています。また神経細胞が死んでしまう事で、脳も委縮していき身体の機能も徐々に失われていきます。脳の委縮は記憶を担っている海馬から始まり、だんだん脳全体に広がって行きます。 健康な人 アルツハイマー型認知症の人 海馬 海馬のあたりを中心に、脳全体の萎縮がみられる。 P-ART1554AKA#6 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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加齢による“もの忘れ”、アルツハイマー型認知症の“もの忘れ”
体験の一部分を忘れる ヒントを与えられると 思い出せる 時間や場所などは 正しく認識 日常生活に支障はない アルツハイマー型 認知症の“もの忘れ” 体験全体を忘れる 新しい出来事を 記憶できない ヒントを与えられても 思い出せない 日常生活に支障がある 時間や場所などの 認識が混乱 加齢にともない、もの忘れが目立ってくるというのは多くの高齢者が感じることです。では加齢によるもの忘れとアルツハイマー型認知症によるもの忘れとはどう違うのでしょうか。 加齢によるもの忘れは、「お昼ごはんに何を食べたか思い出せない」など出来事の一部を忘れます。しかしアルツハイマー型認知症の場合には「お昼ごはんを食べたこと自体」、つまり出来事の全体を忘れてしまいます。 P-ART1186EKA#3
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加齢による“もの忘れ”、アルツハイマー型認知症の“もの忘れ”
記憶の流れは、毎日のさまざまな出来事で構成されています 加齢による“もの忘れ”と 出来事の流れ 記憶の流れ 加齢によるもの忘れ (出来事の一部) アルツハイマー型認知症の“もの忘れ”と 出来事の流れ 記憶の流れ 出来事全体が 抜け落ちます アルツハイマー型認知症の もの忘れ P-ART1186EKA#4
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アルツハイマー型認知症の経過 アルツハイマー型認知症は、症状が徐々にすすんでいくのが特徴です。 軽 度 中等度 高 度
加齢によるもの忘れ 症状の重症度 アルツハイマー型認知症 軽 度 アルツハイマー型認知症はいつの間にか発症し、年単位の時間をかけて徐々に記憶力、理解力、判断力が低下し日常生活に支障をきたしてきます。 病気の進行とともに時間や場所、人物などの認識に混乱が加わり、人によっては妄想や徘徊などの周辺症状がみられます。症状はゆっくり進行し、3~4年から10数年と経過には個人差があります。 経過を3段階に分けると特徴がわかりやすいと思います。 (1)前期(軽度) ゆっくりと物忘れが進行し、日時がわからない、 次第に外出しなくなるなどの変化が見られます。昨日や今日のこと、とくに自分が関係したエピソードをすっかり忘れるのが特徴です。たとえば、昨日テレビを買って家に届いたときには自分が買った事実を忘れ、「こんなもの頼んでいない」と言い出すなどが典型的です。しかし、この段階で受診されるケースはまだ少ないです。 (2)中期(中等度) 次第に場所がわからなくなったり、見えているものが認識できなくなる症状が現れます。徘徊やものを盗まれたという妄想などの行動・心理症状が出やすい時期で、介護が一番大変な時期です。周囲の人にどう見られているのかということを気にして本人がとりつくろうことがおきやすく、「通っている施設や他人には良い対応なのに、自宅で家族には暴言をふるう」など の症状がみられます。 (3)後期(高度) 歩行障害や、ひとりで食事ができなくなるなど身体機能が低下し、身体ケアが必要となってきます。 料理や買い物が できないこと があります。 中等度 年月日がわからなくなることがありますが、日常の会話は困りません。 家の中でトイレなどの場所がわからなくなることがあります。 季節に合った服を自分で選べないことがあります。 高 度 時間の流れ P-ART1186EKA#6
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はっきりとした脳の萎縮はみられないことが多い。
レビー小体型認知症 レビー小体型認知症とは 実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が目立ちます。また、手足が震える、小刻みに歩くなどパーキンソン症状がみられることも あります。頭がはっきりしたり、ボーとしたり、日によって変動することも特徴的です。 原因 脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質の塊がみられます。このレビー小体が大脳に広くに現れると、その結果、認知症になります。 かたまり 脳の様子 次に、レビー小体型認知症について見て行きましょう。 認知症というと、物忘れが激しいというイメージを持っている人が多いですが、レビー小体型認知症では、初期の段階で物忘れよりも、本格的な幻視が見られる場合が多くなります。パーキンソン病と間違われることもあるほど、似た症状が出てきます。手が震える、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、身体のバランスを取る事が難しくなるなどの症状が出ます。手の震えは何もしていない時の方が出やすく、物を持つなど何かをしようとすると震えが少なくなります。頭がはっきりしたり、ぼーっとしたり、日によって変動することも特徴的です。 レビー小体とは、神経細胞に出来る特殊なたんぱく質です。レビー小体型認知症では、レビー小体が脳の大脳皮質(人がものを考える時の中枢的な役割を持っている場所)や、脳幹(呼吸や血液の循環に携わる人が生きる上で重要な場所)にたくさん集まってしまいます。レビー小体がたくさん集まっている場所では、神経細胞が壊れて減少している為、神経を上手く伝えられなくなり、認知症の症状が起こります。 はっきりとした脳の萎縮はみられないことが多い。 P-ART1554AKA#10 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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レビー小体型認知症とは? 三大認知症の1つといわれています。 脳の中に「レビー小体」という物質が現れ、 その結果、認知症になります。 15%
アルツハイマー型 50% レビー小体型 20% 脳血管性 15% その他 レビー小体型認知症は、英語で「dementia with Lewy bodies」といい、略してDLBと呼ばれます。アルツハイマー型認知症に次いで2番目に多いという報告があります。アルツハイマー型認知症、脳血管性 認知症とともに「三大認知症」といわれています。原因ははっきりと わかっていませんが、誰にでも起こる病気です。 出典:レビー小体型認知症家族を 支える会ホームページ (2014年8月8日現在) 最近、レビー小体はαシヌクレインというタンパク質でできていることがわかり、病気の解明に向けて研究が進んでいます。 脳の中に「レビー小体」という物質が現れ、 その結果、認知症になります。 大脳の神経細胞の中に現れたレビー小体 レビー小体型認知症では、脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる物質がたくさん見られます。このレビー小体が大脳に 広く現れると、その結果、認知症になります。最近、レビー小体はαシヌクレインというタンパク質でできていることがわかり、 病気の解明に向けて研究が進んでいます。 レビー小体 監修:小阪憲司 横浜市立大学 名誉教授 池田 学 熊本大学大学院生命科学研究部 神経精神医学分野 教授 P-ART1548AKA#11
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レビー小体型認知症とは レビー小体型認知症の症状の進み方 老化によるもの忘れ 調子がよい時と悪い時を 繰り返しながら進行
認知機能(注意や集中) 老化によるもの忘れ アルツハイマー型は徐々に症状が進行しますが、レビー小体型では、頭がはっきりした調子の良い時と、ぼーっとしている時を繰り返しながら進行します。 調子がよい時と悪い時を 繰り返しながら進行 時間の流れ 時間帯や日によって認知機能に変動があります。しかし、次第に認知機能は低下します。 P-ART1554AKA#12 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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主な症状 認知機能障害 認知機能の変動 BPSD(行動・心理症状) 幻視 睡眠時の異常言動
レビー小体型認知症 実際には見えないものが本人にはありありと見える症状です。見えるものの 多くは小動物や人で「ねずみが壁を這い回っている」「知らない人が部屋に 座っている」などと、具体的です。また、人形を女の子と見間違ったり、丸めてある洋服を動物と見間違うなどの「錯視」もよくみられます。 さく し 眠っている間に大声で叫んだり、怒鳴ったり、奇声をあげたり、暴れたりすることがあります。レム睡眠中に起こしやすいことから、レム睡眠行動障害といいます。 ※ レム睡眠は、身体は寝ているが脳は活動している状態なので、夢を見ていることが多くあります。 主な症状 注意力がなくなる、ものがゆがんで見えるなどの症状が現れます。 レビー小体型認知症では、最初は記憶障害が目立たない場合もあります。 認知機能障害 時間帯や日によって、頭がはっきりしていて物事をよく理解したり判断したりできる状態と、ボーとして極端に理解する力や判断する力が低下している状態が入れ替わり起こります。 認知機能の変動 BPSD(行動・心理症状) げん し 幻視 睡眠時の異常言動 レビー小体型認知症のもっとも特徴的な症状は、幻視や妄想の症状です。「ご飯の上に虫がいる」「よその家の子どもが部屋の中を走りまわる」など、小動物や子どもが見えると訴えることが多いようです。「今もそこにいるよ、ほらあいさつした」などという、ありありとした幻視の訴えが特徴的です。 また、一日の中で症状の変動が大きいのも特徴です。日中は意識がはっきりして比較的症状が出ないのに、夜間の睡眠中に突然に大声や奇声を出したり、手足をバタバタさせるなどの症状(浅い眠り=レム睡眠時の行動障害)が現れます。 P-ART1554AKA#13 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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主な症状 BPSD(行動・心理症状) 抑うつ症状 身体面の症状 パーキンソン症状 自律神経症状
レビー小体型認知症 主な症状 BPSD(行動・心理症状) 気分が沈み、悲しくなり、意欲が低下する症状です。抑うつ症状は、レビー小体型認知症の人の約5割にみられるともいわれます。 抑うつ症状 身体面の症状 動作が遅くなったり、無表情、筋肉のこわばり、前かがみで小刻みで歩く、倒れやすいなどの症状が現れます。 パーキンソン症状 血圧や体温、内臓の働きを調整する自律神経がうまく働かず、 身体的にさまざまな不調をきたします。立ちくらみ、便秘、異常な発汗・寝汗、頻尿、だるさなどがあります。場合によっては、めまいを起こして倒れたり、気を失う危険もあります。 自律神経症状 また、初期の段階では4~7割の方に抑うつ症状が出るとされ、うつ病と診断される場合があります。幻視や幻聴に対する治療として抗精神病薬を服用すると震えや筋肉のこわばりなどのパーキンソン症状が悪化する場合があり、注意が必要です 動作がゆっくりとなり、手足が震える、表情が少なくなる、筋肉のこわばりが強くなる、転びやすくなるなどのパーキンソン症状を併発しやすいのも特徴です。ただし、パーキンソン症状がまったく出ない症例もあります。 起き上がったときに急激に血圧低下をきたす起立性低血圧、便秘や多汗などの自律神経症状も よくある症状です。 P-ART1554AKA#14 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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レビー小体型認知症 わかりにくい「レビー小体型認知症」 レビー小体型認知症は、患者さんによって症状の現れ方が異なります。また、時間帯や日によって症状が変動するので、正しく診断しにくい病気です。 そのため、初めにパーキンソン症状が現れて「パーキンソン病」と診断 された後に、記憶障害が出てきてレビー小体型認知症とわかったり、逆に もの忘れでアルツハイマー型認知症だと思われた後にパーキンソン症状が現れてレビー小体型認知症と診断されるケースもあります。その他にも 高齢者の場合には、うつ病と診断された後、徐々にレビー小体型認知症の症状が現れることがあります。 P-ART1554AKA#15 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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ご家族の対応のポイント ◎転倒に注意しましょう ◎食べ物が飲み込みにくくなります
レビー小体型認知症 ご家族の対応のポイント ◎転倒に注意しましょう パーキンソン症状で筋肉や関節がこわばり、歩行が小刻みになるため、つまずいたり、転びやすくなります。また、立ち上がった際にふらつきや、めまいを起こして倒れたり、気を失ったりすることがあります。 ポイント イスからの立ち上がりや階段では手すりを使う。 つまずきやすいものは片付け、家の中を整える。 ◎食べ物が飲み込みにくくなります 症状が進行すると飲み込む機能が衰えて、唾液や食べ物が気管に入ってしまうことがあります(誤嚥)。むせて吐き出せるとよいのですが、吐き出せないと肺炎を起こしやすくなります。 ご えん ポイント 食事の時は前かがみの姿勢をとり、家族が見守る。 細かく刻む、トロミをつけるなど、調理を工夫。 P-ART1554AKA#16 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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血管性認知症 血管性認知症とは 脳梗塞や脳出血などによって発症する認知症です。脳の場所や障害の程度によって、症状が異なります。そのため、できることとできないことが比較的はっきりとわかれていることが多いです。手足の麻痺などの神経症状が起きることもあります。 原因 脳の血管が詰まる「脳梗塞」や血管が破れる「脳出血」など脳血管に障害が起きると、その周りの 神経細胞がダメージを受けます。脳の画像を見ると、障害の跡がわかります。 脳の様子 次に、脳血管性認知症について見て行きます。 血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの、脳の血管の病気によって、脳の血管が詰まったり出血したりし、脳の細胞に酸素が送られなくなるため、神経細胞が死んでしまい認知症が起こります。 また、男性の方が女性よりも多く発症している認知症です。アルツハイマー型が徐々に進行するのに対して、良くなったり悪くなったりを繰り返し進行します。多発性脳梗塞などで、小さな脳梗塞が何度も起きている場合、脳梗塞が起きる度に症状が悪化していきます。また障害を起こした脳の場所によって、起きる症状が変わってきます。 脳梗塞や脳出血がみられる。 P-ART1554AKA#17 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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血管性認知症とは 血管性認知症の症状の進み方 老化によるもの忘れ 階段状の進行 認知症の症状 時間の流れ
多発性脳梗塞などで、小さな脳梗塞が何度も起きている場合、脳梗塞が起きる度に症状が悪化していきます。 階段状の進行 時間の流れ 脳出血や脳梗塞の後、急激に発症し、その後も脳出血や脳梗塞にともない症状が階段状に進行 していきます。 P-ART1554AKA#18 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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主な症状 ご家族の対応のポイント 認知機能障害 BPSD(行動・心理症状) 身体面の症状 ◎規則正しい生活習慣を
血管性認知症 主な症状 認知機能障害 障害される能力と残っている能力があります(まだら認知症)。判断力や記憶は 比較的保たれています。「せん妄」が起きて突然認知機能が悪化することがあります。 BPSD(行動・心理症状) 意欲や自発性がなくなったり落ち込んだりすることがあります。感情の起伏が激しくなり、些細なきっかけで泣いたり興奮することがあります。 身体面の症状 脳血管障害によって、手足に麻痺や感覚の障害など神経症状が現れることがあります。ダメージを受けた場所によっては言語障害などが出る場合もあります。 正常に働いている細胞がある場所はしっかりしていますが、脳梗塞や出血などが起こって細胞が壊れてしまった場所では、機能が低下してしまいます。このため、アルツハイマー型と同じ様に、物忘れや計算が出来なくても、判断力の低下は見られないなど、まだら認知と言われる状態が起こります。 行動・心理症状は(1)意欲の低下、(2)自発性の低下、(3)抑うつ気分、(4)感情失禁(わずかな刺激で 泣いたり笑ったり、怒ったりする)、(5)焦燥、(6)夜間せん妄などです。突然怒り出したりすぐに泣いてしまうなど、感情のコントロールが難しくなることが多いようです。 一方、歩行障害、排尿障害、麻痺、嚥下障害(飲食物がうまく飲みこめない)・構音障害(発音が正しくできない)など、脳血管性障害にともなう多くの神経症状があり、それらをいかに予防していくかが治療・ケアのポイントです。また、自発性や意欲の低下には、精神的活動性をあげるためのデイケアやデイサービ スの活用が必須です。夜間せん妄の症状には、規則正しい昼夜の生活リズムをつけることが重要です。 ご家族の対応のポイント ◎規則正しい生活習慣を 意欲がなくなって、日中の活動が少なくなると、不眠や昼夜逆転の原因になります。今までの規則正しい生活習慣をできるだけ崩さないように、日課表などを作って 無理のないものから徐々に活動を増やしていきましょう。 本人が無理しなくても楽しめることから始める。 いろいろな誘い方をしたり、誘う人を替えてみる。 介護保険のデイケアサービスなどを利用する。 リハビリテーションが大切。 ポイント P-ART1554AKA#19 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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早わかり三大認知症 三大認知症のそれぞれの特徴
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症それぞれの特徴を一覧表で比較しました。「認知症かしら?」と思った時の参考にしてください。 三大認知症のそれぞれの特徴 アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症 血管性認知症 脳の変化 老人斑や神経原線維変化が、 海馬を中心に脳の広範に出現する。脳の神経細胞が死滅していく レビー小体という特殊なものが できることで、神経細胞が死滅 してしまう 脳梗塞、脳出血などが原因で、 脳の血液循環が悪くなり、 脳の一部が壊死してしまう 画像でわかる 海馬を中心に脳の萎縮が みられる はっきりした脳の萎縮は みられないことが多い 脳が壊死したところが 確認できる 男女比 女性に多い 男性がやや多い 男性に多い 初期の症状 もの忘れ 幻視、妄想、うつ状態、 パーキンソン症状 特徴的な 症状 認知機能障害 (もの忘れ等) もの盗られ妄想 徘徊 とりつくろい など 認知機能障害(注意力・視覚等) 認知の変動、幻視・妄想 うつ状態、パーキンソン症状 睡眠時の異常言動 自律神経症状 など (まだら認知症) 手足のしびれ・麻痺 感情のコントロールが うまくいかない など 経過 記憶障害からはじまり 広範な障害へ徐々に進行する 調子の良い時と悪い時を くりかえしながら進行する。 ときに急速に進行することもある 原因となる疾患によって異なるが、比較的急に発症し、段階的に 進行していくことが多い P-ART1554AKA#20 監修: 横浜市立大学 名誉教授 小阪憲司 , 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上勝義
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認知症の治療では、ご本人の日常の様子を医師に相談することが非常に大切です。
ご家庭での様子で下記項目に当てはまることがあれば、チェックをつけたものを印刷して医療機関に持参しましょう。すでにアルツハイマー型認知症と診断されている方やその治療を受けている方も、気になる症状があれば、医師に相談してみましょう。診察室ではわからない、ご家庭でのご本人の変化や気付いたことを伝えることで、症状に合ったより良い治療につながります。
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アルツハイマー病の 薬物療法 P-ART7050IKE#22
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認知症の症状と薬物療法 症 状 薬物療法 知的機能低下 中核症状 過活動性症状 低活動性症状 周辺症状 記銘力、記憶力の著明な障害/
症 状 薬物療法 知的機能低下 記銘力、記憶力の著明な障害/ 見当識障害/計算力障害など アセチルコリン エステラーゼ阻害剤 NMDA受容体拮抗剤 中核症状 アルツハイマー型認知症により失われた記憶や機能を回復させ、病気を完全に治すお薬はまだありません。症状の進行を遅らせるお薬、不安、妄想、不眠などの症状を抑えるためのお薬による治療が中心となります。 過活動性症状 夜間せん妄/幻覚・妄想/ 不安・焦燥/徘徊・多動 低活動性症状 意欲低下/自発性低下/ 抑うつ 抑制的薬剤 調整的薬剤 賦活的薬剤 調整的薬剤 周辺症状 P-ART7050IKE#23 紺野衆ほか : 脳循環代謝改善薬,医薬ジャーナル, 33(11), , 1997より一部改変
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中核症状の進行を遅らせる治療薬は日本では主に4つの薬が存在します。
認知症臨床研究・治験ネットワークより
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商品名:アリセプト、レミニール、リバスタッチ
・コリン仮説 アルツハイマー型認知症は脳内での神経伝達物質が減少していると言われてます。この神経伝達物質の一つとしてアセチルコリン(ACh)があり、アルツハイマー型認知症はアセチルコリンが著しく減少しているという仮説に基づいて治療薬が開発されました。つまり、脳内のアセチルコリン量を増やすことができる薬です。 アセチルコリンを分解する酵素としてコリンエステラーゼ(ChE)があります。コリンエステラーゼにはアセチルコリンエステラーゼ(AChE)とブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)の二つがあり、これらのコリンエステラーゼを阻害し、その結果としてアセチルコリン量を増やすという薬が3種類あります。 ドネペジル(商品名:アリセプト)はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を阻害する作用のある薬で、日本人が開発した、世界で最初のアルツハイマー型認知症治療薬です。 また、リバスチグミン(商品名:イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ)はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)とブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)の二つを阻害します。リバスタッチは小分子なので、貼り薬として利用されています。 商品名:アリセプト、レミニール、リバスタッチ
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レミニール(ガランタミン)はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害作用以外にも、APL作用を持っています。APL作用とは簡単に言うと、アセチルコリン受容体の感受性を増強する作用のことで、他のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬にはないレミニール(ガランタミン)に特有の作用です。 ガランタミンはアセチルコリンと競合的にAChEに結合するだけなので、AChE阻害薬としての作用は弱い。シナプス間隙のアセチルコリンが不足してくるとガランタミンはAChEに結合してアセチルコリンの分解を妨げる。そのため過剰な賦活が起こらない。また、ドネペジルよりも耐性が生じにくいので、長期間にわたる臨床効果が期待できる。 その他に、ニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor;nAChR)は、さまざまな伝達物質作動性ニューロンに存在する。ガランタミンはそのAPL作用で、アセチルコリンのみならず、ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリン、GABA、グルタミン酸の放出を促進し、周辺症状の改善または、進行を遅らせていると言われています。 MEDICINAL 2012/5 Vol.2 No.5
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・グルタミン酸仮説 次に開発されたのが、脳内における興奮性のシグナル伝達物質であるグルタミン酸に着目した薬です。このグルタミン酸の受容体にはいくつか種類がありますが、その一つとしてNMDA受容体があります。NMDA受容体は海馬などに分布しており、記憶や学習に関わっており、そして、アルツハイマー型認知症患者ではこのNMDA受容体が減少していると言われています。 ただし、NMDA受容体が減少しているからといって「NMDA受容体を活性化させれば、アルツハイマー病治療薬になる」という訳ではありません。 アルツハイマー病が進行することによってNMDA受容体の数自体は減少しますが、異常蛋白によって受容体は常に刺激された状態となっています。これにより、アルツハイマー型認知症患者ではシナプス間隙のグルタミン酸濃度が常に高くなってしまうのです。 グルタミン酸濃度が高くなることによって、細胞内にCa2+(カルシウムイオン)が過剰に流入し、これによって、神経細胞の障害が起こります。 また、NMDA受容体が常に活性化されているため、記憶に関わる正常なシグナルが覆い隠されてしまい、これによってシグナルのノイズが起こり、記憶や学習機能が障害されてしまいます。 そこで、グルタミン酸仮説によるアルツハイマー治療薬としては、NMDA受容体の拮抗薬としてメマンチン(商品名:メマリー)があります。 メマリーはNMDA受容体を遮断することで、グルタミン酸の異常な入流を防ぐ。この結果、グルタミン酸濃度が常に高い状態がなくなり、「Ca2+過剰流入による神経障害」や「シグナルノイズによる記憶・学習機能の障害」が改善されます。 なお、メマリーはNMDA受容体に対して弱い阻害作用を示し、これにより、NMDA受容体の異常な活性化のみを防ぎ、正常なシグナルのみを伝えることができます。 メマリーは異常な受容体の活性化に対してはCa2+の流入を抑えることに対し、正常なシグナル伝達のような強い脱分極条件下では、メマリーは素早く受容体から解離します。NMDA受容体を強く阻害すると正常なシグナル伝達まで阻害してしまうが、弱いNMDA受容体阻害作用を示すメマリーでは正常なシグナルまで影響を与えない点が特徴です。 商品名:メマリー
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アルツハイマー型認知治療薬のアルゴリズム
アルツハイマー型認知症に対する薬物治療は、できる限り早期に開始することにより薬剤の効果が発揮されやすいですあt。また、副作用などの問題がない限り、薬物治療を継続することが原則です。 薬物治療の開始時点が軽度であればChEl(コリンエステラーゼ)のいずれか一剤を選択します。効果がないか、不十分と思われる場合には他のChElへの変更を考慮し、中等度に進行した時点でメマンチン(メマリー)へ変更しますが、基本的には副作用などの問題がない限り両剤を併用します。高度ではドネペジル(アリセプト)とメマンチンを選択し、ドネペジルの用量を5mg/日の場合は10mg/日への増量やメマンチンの追加をします。
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アルツハイマー型認知症の副作用症状とその対応について紹介します。
アリセプトやレミニール、リバスタッチでは副作用症状として、嘔気、嘔吐、食欲減退などの消化器症状が主にあります。 これは、コリンエステラーゼ阻害作用により、アセチルコリンの2種類の受容体のうち末梢のムスカリン受容体へのアセチルコリン作用が増強したために発現すると考えられます。 消化器症状は、多くが投与初期に発現します。消化器症状は漸増投与によりある程度抑えられるので、アリセプトだと3mg/日を1~2週間投与後、5mg/日へ増量するよう設定されています。そして高度のアルツハイマー型認知症患者様の場合には、5mg/日を4週間以上投与後、10mg/日へ増量します。レミニールだと1日8mg(1回4mgを1日2回)から開始し、副作用の有無を観察した上で、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量し継続します。その後は症状に応じ1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量することが可能ですが、その前に、増量する前の量を4週間以上継続して内服してから行う必要があります。リバスタッチでは1日1回4.5mgから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量し、維持量として1日1回18mgを貼付します。 対処法は患者様によって異なりますが、消化器症状がごく軽微な場合には、経過観察のみで症状が軽減し、継続投与が可能なことがあります。また、腸疾患治療薬との併用が有用な場合もあります。あまりにも症状が重篤な場合には、治療薬の一時的な減量や休薬をご検討ください。 メマリーの副作用症状はめまいや眠気の発現率が高く、特徴的な副作用です。 浮動性めまいについては投与開始初期(投与開始から1ヵ月以内)に発現しました。 投与開始初期の副作用の発現を抑える目的として、1日1回5mgから開始し、1週間毎に増量し4週間後に目標とする維持量(最大で1日20mg)まで漸増投与していきます。 浮動性めまいに対し投与中止により消失又は軽快しました。また休薬・減量・治療薬投与等の処置が必要な症例は認められましたが、いずれも投与継続が可能で、浮動性めまいは消失又は軽快しました。多くの場合、無処置でも2~3カ月で症状は消失または軽減しますが対策としては、朝に服用していたのを夜に変える方法があります。この時、もし睡眠導入剤や抗精神病薬を併用している場合はそれらの減量や中止も考慮した方が良いかもしれません。 認知症になると危険認識力が低下し、普段歩き慣れた場所であってもめまいが起きることで不意の転倒など思わぬ事故が起こり、それが原因で骨折し廃用症候群による体の動きの低下を招くという事もあり特に注意が必要です。
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抗精神病薬などとの使い分け アルツハイマー病の症状 11. アルツハイマー病の薬物療法 薬物療法 アルツハイマー 病治療薬 抗精神病薬
抗うつ薬 アルツハイマー病の症状 アセチルコリン エステラーゼ 阻害剤 (ドネペジル、 ガランタミン、 リバスチグミン) NMDA受容体 拮抗剤 (メマチン) ブチロフェノン系 (ハロペリドール) フェノチアジン系 (クロルプロマジン) SDA (リスペリドン、 クエチアピン) ベンザミド系 (スルピリド) SSRI (セルトラリン、 パロキセチン、 フルボキサミン) SNRI (ミルナシプラン) *1 *2 *3 中核症状 知的機能低下 夜間せん妄 幻覚 ・ 妄想 不安 ・ 焦燥 徘徊 ・ 多動 意欲低下 自発性低下 抑うつ 認知症の人には中核症状に加え、抑うつ、幻覚、妄想、徘徊といった行動 ・ 心理症状 ( BPSD ) を伴うことがあります。 不穏、妄想、興奮にリスペリドン ( 商品名リスパダール ) やクエチアピン ( 商品名セロクエル )、オランザピン ( 商品名ジプレキサ ) といった非定型抗精神病薬を使用することがあります。 ただし、保険適応外です。 バルプロ酸 ( 商品名デパケン )、カルバマゼピン ( 商品名テグレトール ) といった抗てんかん薬や、漢方薬 ( 抑肝散 ) を使用することもあります。 脳血管性認知症の治療では、脳循環改善薬が意欲低下に有用な場合があります。 また脳血管性認知症の行動 ・ 心理症状 ( BPSD )には塩酸チアプリド ( 商品名グラマリール ) を使用することがあります。 なによりも脳血管障害の再発を予防することが重要であり、血栓が作られることを予防するために抗凝固薬 ( ワーファリン ) や抗血小板薬 ( 商品名バイアスピリン、プラビックスなど ) を用いたり、高血圧や糖尿病のコントロールを行います。 レビー小体型認知症においても、アルツハイマー病治療薬である、アセチルコリン分解酵素阻害薬が有効といわれています。 レビー小体型認知症では、パーキンソン症状を有することがあることに加えて、抗精神病薬に過敏反応を示すことがあるため、行動 ・ 心理症状 ( BPSD )の治療としては非定型抗精神病薬が使いにくく、抗てんかん薬や抑肝散を代替的に使用します。 非薬物療法も行われており、回想法、リアリティオリエンテーション、音楽療法といった治療法が試みられています。 個々の例では有用性があるようですがまだデータが乏しく、方法が確定していないとも言われています。 このようにさまざまな薬を単独、あるいは組み合わせて使用し、認知症の人の活動性を低下させないように注意しながらコントロールしていきます。 しかし、一般に高齢者では副作用が現れやすく、薬の種類や量が合わないとかえって症状を悪化させてしまうことがあるので注意が必要です。 また軽度の認知症の人でも、薬を自分で管理して飲むということが難しくなるため、認知症と診断された時は介護者の人に全面的に薬の管理をしていただくことが望まれます。 過活動性症状 周辺症状 低活動性症状 *1 SDA :非定型抗精神病薬(セロトニン・ドーパミン括抗薬) *2 SSRl :選択的セロトニン再取り込み阻害薬 *3 SNRl :セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 注1)成人常用量よりも少量で開始し、経過を観察する 注2)ドネペジル以外の薬剤は、レセプト上、症状に合わせた病名 追加が必要となる P-ART7050IKE#30 監修 : 順天堂大学医学部精神医学講座 教授 新井平伊
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以上で終了です! ご清聴、ありがとうございました。
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