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河野孝太郎 ・ 天文学教育研究センター ・ ビッグバン宇宙国際研究センター kkohno@ioa.s.u-tokyo.ac.jp
平成24年度 集中講義特論 IB 京都産業大学 理学研究科 アルマ時代の ミリ波サブミリ波天文学 河野孝太郎 ・ 天文学教育研究センター ・ ビッグバン宇宙国際研究センター
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第7講 プロポーザルを書く そのための基礎知識 (特に、「分野外」の方のために)
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本講の内容 基本的な観測パラメーターとそれを決めるもの 観測量の表現 データからどこまで言えるか:注意すべき点 空間分解能
強度スケール →電波望遠鏡(アンテナ)について 感度 →受信機について 観測量の表現 スペクトルから得られる情報 電波領域におけるluminosityの「方言」 データからどこまで言えるか:注意すべき点 干渉計による観測データ 単一鏡による観測データ
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本講の参考文献 Antenna theory Quasioptics Receivers
“Radio Telescopes”, W. N. Christiansen 著、Cambridge Univ. Press (1985) “Tools of Radio Astronomy”, 5th edition, R. Rohlfs & T. L. Wilson著、Springer(2009) “Radio Astronomy”, 2nd edition, J. D. Kraus著、Cygnus-Quasar Books (1986) 「宇宙電波天文学」赤羽賢司・海部宣男・田原博人 著、共立出版(1988) 復刻版 「電波天文学特論」 笹尾哲夫 (198?)講義ノート シリーズ現代の天文学 第16巻 宇宙の観測(2) 電波天文学 (2009) Quasioptics “Quasioptical systems; Gaussian beam, quasioptical propagation and applications”, Paul. F. Goldsmith 著、IEEE press (1998) Receivers
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1.基本的な観測パラメーターとそれを決めるもの
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観測を決める/記述する重要な要素 空間分解能 集光力 (電波観測特有の)強度スケール 感度をきめるもの
Ta*, Tmb, Tr, etc. flux densityの関係は? 電波望遠鏡(アンテナ)について 感度をきめるもの 大気 観測装置自身からの雑音 これらをどう除去するか?
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空間分解能 望遠鏡の空間分解能 θ= α(λ/D) D:望遠鏡の直径(単一鏡の場合)・最大基線長(干渉計の場合) α~1だが、通常α≠1.0
「Aperture illumination」との関係で決まる 鏡面のどのくらいの割合を実際に使っているか? 干渉計の場合、本来実現できるはずの空間分解能が、大気の揺らぎによって実現できていない場合もある。 これ以外にも重要な要素:画像のサンプリング ビームサイズに対してどのくらいの間隔でサンプリングしているか? Nyquistのサンプリング定理
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ビームサイズvsサンプリングの効果 NGC 253 CO(1-0) 上:SEST 15m 下:NRO 45m 分解能を生かし
Houghton et al. 1997, A&A, 325, 923 NGC 253 CO(1-0) 上:SEST 15m 45” beam 16” grid 下:NRO 45m 16” beam 分解能を生かし きるには、ナイキ スト・レート以上で しっかりサンプル。 Sorai et al. 2000, PASJ, 52, 785
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Intensity scale 単一鏡での観測結果 干渉計での観測結果 「温度」での表現
Ta* [K] : antenna temperature Tmb [K] : main-beam temperature Tr* [K] : radiation temperature Flux densityでの表現: S [Jy] or [Jy/beam] 干渉計での観測結果 フラックスと輝度温度:
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実用的な式と具体例[保存版] Tb [K] = 15.4 x (波長/[mm])2×(S/[Jy]) ×(立体角/[平方秒])-1
×(bmaj/[秒角])-1×(bmin/[秒角])-1 例1: 波長3mm、bmaj=bmin=4”のビーム(FWHP)で、ある天体(点源)を観測したらその強度は1Jyであった。その輝度温度は何Kか? 7.7K 例2: 波長0.87mm、bmaj=bmin=22”のビームで、ある天体(点源)を観測したら輝度温度は1Kであった。そのflux密度は何Jy/(22”beam)か? 47 Jy 例3:波長7mm、bmaj=bmin=0.001”のビームで1Jyの天体(点源)を観測したら何Kに見えるか? 6.7x108 K (!) 16” FWHP 290平方秒
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Intensity scale:単一鏡での観測結果
「温度」での表現 Ta* [K] : antenna temperature 測定された「生」の値。(直接の観測量ではあるが、 論文にこれを載せるのは普通は好ましくない) Tmb [K] : main-beam temperature = Ta*/ηmb ←主ビームと同程度のサイズの天体に対して、天体の輝度温度を表す。 ηmb: main beam efficiency Tr* [K] : radiation temperature = Ta*/ηfss ← 主ビームより大きく広がった天体に対して、天体の輝度温度を表す。 ηfss: forward spillover & scattering efficiency
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アンテナとは? モード変換器 インピーダンス変換 発振器からの電磁振動 →導波管を伝播する電磁波 →自由空間を伝播する電磁波
自由空間のインピーダンス Z0 発振回路のインピーダンス Z たとえば導波管内のインピーダンスダは数10Ω(自由空間中のインピーダンスより低い)
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アンテナの役割と重要性 集光 観測点/観測視野 空間分解能 位相安定性 ビーム特性
物理的開口面積 Aphys × 開口能率 ηeff → 有効開口面積(集光力) いかに「集光力」が高いか→いかに微弱な天体まで検出できるか 巨大化すれば物理的開口面積アップ、一方で自重変形により開口能率が低下 両者の積(開口面積 Aphys × 開口能率 ηeff)として向上させなければならない 観測点/観測視野 指向精度:目的とする観測方向へ正確に向けることができるか → sourceの位置精度やflux精度を左右する 空間分解能 回折限界~λ/D で決まる → Dの巨大化により、波長の長い電波領域でも高い角分解能を達成したい(が、巨大化には限界 → 干渉計という技術) 位相安定性 光学的(電波的)な経路長の安定性 → 特に干渉計では、位相安定性(=干渉計では位置の精度に直結する重要なパラメーター)に影響 ビーム特性 いわゆるpoint spread function(PSF)を決める重要な要因の一つ。 開口照度分布・副鏡や副鏡支持構造によるblocking・偏波特性などを反映 真の天体の構造や強度を知る上で大変重要。でも正確に知る事は容易でない
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観測波長とアンテナの形状 交流波源 Parks 64m (m~cm波) ASTE 10m(mm~submm) 長波長側(低周波側)λ>1m
dipole antenna 八木宇多アンテナ ヘリカルアンテナ およびこれらを並べてアレイ化したもの 短波長側(高周波側) λ<1m Parabola antennaの一部を使うもの(Cylindrical Palaboloyds) Parabola antenna 鏡面を構成する材料 「網」@λ~m-cm CFRPパネル(~10μm rms) 野辺山ミリ波干渉計、野辺山45m鏡の外側 アルミパネル(<数μm rms) ASTE10mサブミリ波望遠鏡、45m鏡の内側 交流波源 八木宇多アンテナ ヘリカルアンテナ Parks 64m (m~cm波) ASTE 10m(mm~submm)
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Prime focus vs Cassegrain
電波望遠鏡の基本:カセグレン光学系 Q:何故、電波望遠鏡で、すばるSprimeCamのような「主焦点」がないか? まったく無いわけではないが、非常に少ない。 波長の長い電波領域では、単純な「幾何光学」で物事が記述できない。 → Gaussian光学
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Prime focus vs Cassegrain
受信機のスピルオーバーが「終端」される相手は?
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Quasi-optical propagation
z方向に進む電波を考える。波動方程式 を満たす解、 は次式を満たす: 平面波に近い波動の場合、これは である(準光学の基礎方程式)。 この解は、一般に、 Hermitte多項式(円柱座標系をとった場合はLaguerre多項式) ×Gauss関数で表される振幅 ×位相項 という形にかける。最低次の(最も簡単な)解は ただし、 このw(z)をbeam radius, w0をbeam waist radius, R(z)をcurvature, z*をconfocal distanceと呼ぶ。この、最低次の解を基本モードまたはGaussモードの解 といい、しばしばGauss beamと称する。 w(z), w0, R(z), z*は、Gauss beamを記述する基本パラメーター。
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Gauss beamの記述 電場強度 |u|は半径rに対して 軸対称なGaussianになっている Beam radius w(z):
|u|が1/eに落ちる半径 Beam waist w(z)が最小となる位置 Beam waist位置での beam radius w0 !幾何光学と異なり焦点位置が有限のサイズ(~ミラーなどの光学素子のサイズ)を持つ! Curvature R(z) 各zでの曲率半径
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Truncated Gauss beamの影響(spill over)
→打ち切る範囲に応じて、ある割合の電力を失うことになる(spill over loss) zを固定して考えたとき、電場分布は このような分布のもとで、半径r=aより内側に含まれる電力を計算してみると 一方、r=∞まで積分した場合(truncateしない場合)、P(∞)=πw^2/2なので、 Spill over損失 L(spill over) = P(a)/P(∞)は
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Spill overの例 a=w(beam radius)でtruncateした場合:
beam中心に比べて、電力が0.135に落ちている半径でbeamを切ったことになる(edge levelという) → 1-exp(-2(a/w)) = (13.5%のエネルギーが失われた) 通常は、beam radiusの3倍~5倍の半径まで拾うことができるように、反射鏡などの光学素子を大きめに設計する。
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dB(デシベル)表現 比を表す単位。特に電波では電力比を表す際に用いる。 X [dB] = 10 log10 (P1/P2)
10 dB → 10倍、20 dB→100倍、30 dB→1000倍、。。。。 -3 dB → 1/1.995倍(約0.5倍) -10 dB → 0.1倍、-20 dB→0.01倍、-30dB→0.001倍、。。。。 P2 = 1 mWの場合は、特に[dBm]という。 Edge levelやspill over lossも、これを用いて表すのが一般的。 a=wでtruncateした場合;edge levelは10 log10(0.135) = [dB]という。 Spill over lossは、10 log10 ( ) = 0.55 [dB]などと表現する。 問: spill over lossを0.01 [dB]まで低減したい。必要なedge levelは何dBになるか。 問: 5等級差は何dBか?
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再び、主鏡の開口能率の話 主鏡の開口能率は常に1より小さい その理由の一つとして、「鏡面の全てを使っていない」
正確には、外側の鏡面ほど、電場分布が小さくなっていく 疑問:何故そんなもったいないことをするのか?? (集光力を稼ぐためには、鏡面をなるべく有効に使うべきであるのに!!) 100倍20dB。すなわち1等級差は4dB
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集光力を特徴付けるパラメーター 開口径 D 物理的(幾何学的)開口面積 Aphys = π(D/2)^2
有効開口面積 Aeff = 2 (W/S) {or W = ½ Aeff S} flux density S [W m-2 Hz-1]の電波を受信した時、受信電力がW [W Hz-1] = ½ Aeff S になった → このときのAeff[m2]を有効開口面積とよび、アンテナの実効的な集光力を表す。 開口能率 ηeff = Aeff / Aphys <1 すなわち、口径45 mといっても、その鏡面が実効的に全て使われているわけではない。 たとえば野辺山ミリ波干渉計10m鏡では、100GHz帯での開口能率は60%程度、230GHz帯では30~40%程度。 ηeff = Aeff / Aphys <1になる理由 副鏡および副鏡支持構造による鏡面への影(ブロッキング) 鏡面での熱損失(オーム損失) 鏡面が理想的なパラボラからの誤差を持つことで光路長差が生じる損失 もともと鏡面すべてで受信するように設計しない(under illumination) 回折による損失 など。
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Spill over損失を小さくするためには
Edge levelを上げればよい(外側まで強い電場分布になるように) →そういう主鏡面を使うと何が起こるか? 「主鏡の放射パターン」は「主鏡面上の電場分布」で決まる(Fourier変換である)
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開口電場(照度)分布から電力放射(beam)パターンまで
アンテナ開口面上の電場 と、そこからの2次放射の電場(遠方解;r>>2D^2/λ, Fraunhofer条件)の関係は一般に 開口面上で、電場が一方向のみに成分を持つ(直線偏波)場合、開口面上の電場 を、 と書くことができる。 →このg(r )を開口照度分布(aperture illumination)と呼ぶ。 この時、遠方解は と書ける。k=2π/λ, 開口面以外ではg(r )=0であることから、 すなわち、開口面field pattern f(n)と、開口照度分布g(r )とは、2次元Fourier変換対の関係にある。 Field patternからPoynting vectorの時間平均を計算すれば、電力放射パターン(power pattern)が得られる。
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具体例:一様照度の方形開口アンテナ g(x,y)=1 for |x|<Lx/2, |y|<Ly/2, & g(x,y)=0 for else この時、power patternは、(n=0のときに最大値がLx/λ・Ly/λになることから)
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一様照度方形開口アンテナの放射パターン 照度分布 電力放射パターン 電場放射パターン 放射パターンがSinc functionになり、目的とする観測方向以外にも無視できない放射パターンを持っている!!!
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いろいろなillumination patternと放射パターン
望まない方向からの放射を受信しないためには、鏡面の端での照射レベルを下げる(edge levelを落とす、とか、taperをかける、と言う)必要がある。
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アンテナのBeam patternを特徴づけるパラメーター
Beam pattern, normalized beam pattern Beam立体角 主beam立体角 ビームの半値幅(Full width half power beam width) FWHPとかHPBWなどと略す α(λ/D), α~1.2—1.4(illuminationによる) 主ビーム能率 利得(directivity, gain)
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アンテナ放射パターン(ビームパターン)の表現
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有効開口面積とビーム立体角との間の関係 有効開口面積とビーム立体角の関係
→ ビーム幅が太くなってしまうと(under illuminateすると)、有効開口面積は減少する。
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いろいろな電波望遠鏡の利得曲線 Gain⇔beam size 点線の先は・・?→次ページ
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鏡面誤差による開口能率への影響 理想的なパラボラ鏡面からの誤差δの分散 (rms値)を鏡面誤差と呼ぶ。(逆に鏡面が持つ誤差のことを鏡面精度ということも)。 光路長の不揃いに起因する位相誤差→集光力の低下、放射パターンの乱れ 鏡面誤差εがあるとき、光路長の不揃いに起因する集光力の低下(開口能率ηeffの低下)は で表される。この時、directivity (gain)も、 のように低下する。特に、ε~λになると、gainは急激に低下し、観測には使えなくなる。理想的には、ε/λ>1/20であるべき。すなわち、波長1mmでの観測を行うためには、ε~50μm程度を達成しているとよい。 ランダムな(微小な空間スケールの)鏡面誤差は、主ビームに対して大きく広がったside lobeをもたらす(広角放射パターン)。=点源を観測しても、偽の「diffuse(拡散)成分」を作ってしまう恐れあり。 大局的な鏡面の変形は、主ビームの顕著な変形をもたらす。
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鏡面精度と開口能率
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実際のビームパターン 主ビームと「エラービーム」の相対的な強度比に注目 波長が短くなるほどエラービームがどんどん大きくなっている。
IRAM 30m鏡での実測データ Greve A., Kramer, C., Wild, W., 1998, A&A Supp 133, 271
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ここまでのまとめ 電波望遠鏡の「ビームパターン」=鏡面の「照度分布」で決まる(フーリエ変換の関係)。
鏡面の大局的なゆがみ→主ビーム(小さい角度スケール内に絞られた放射パターン)の歪み 鏡面の細々したゆがみ・粗さ→広角ビーム(非常に大きい角度スケールに広がった放射パターン) 広角パターンが有意に出ている周波数での観測データ:広がった構造の信頼性が低下! どのくらいのパワーが主ビーム内に集まっているか:主ビーム能率(これが高いほど、空間構造について、信頼性の高い観測ができる)
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観測システムの「感度」
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観測の雑音レベル 基本式 例: Tsys=200K、帯域幅 1 MHzで10秒間の積分をかけると、雑音レベルは何Kか?
そこは観測できる周波数か? OTでも微妙な周波数差で・・・
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水蒸気量 ミリ波 サブミリ波 野辺山(標高1350m) 冬季のベスト ミリ波はまずまずの透過率 しかし依然としてサブミリ波は× 野辺山(標高1350m) 夏季(晴天時) サブミリ波は全く観測できない ミリ波もかなり減衰している 透過率 [%] 観測周波数 [GHz]
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水蒸気量 ミリ波 サブミリ波 チリ・アタカマ高地(標高5000m) 冬季のよい空 ミリ波は良好な透過率 サブミリ波も充分可能に! マウナケア(標高4300m) 冬季のよい空 ミリ波は良好な透過率 サブミリ波も可能だが苦しい 透過率 [%] 観測周波数 [GHz]
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水蒸気量 ミリ波 サブミリ波 チリ・アタカマ高地(標高5000m) 冬季のベスト ミリ波もサブミリ波も良好な 透過率(テラヘルツ波も可能に) 透過率 [%] 観測周波数 [GHz]
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2.観測量の表現
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「3次元キューブ」 位置2次元、速度(あるいは周波数)1次元、合計3次元の画像データ。 干渉計の場合、各速度チャンネルごとに画像ができる。
単一鏡によるマッピング観測の場合、まずスペクトルが各点で得られる。それを、各速度チャンネルごとの画像にきりなおす。 δ α v
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Moment maps 0th order moment: 積分強度 1st order moment: 強度重みつき平均速度
関数f(x)についての、平均値<x>≡μのまわりのn次のモーメント 0th order moment: 積分強度 1st order moment: 強度重みつき平均速度 2nd order moment: 強度加重つき速度分散
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Moment maps 速度場 (視線速度の空間分布) 強度分布 可視画像 Kohno et al. 2003, PASJ, 55, 103
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2次のmoment =速度分散 ただし、線幅≠速度分散 見かけ上の線幅を大きくする場合あり 回転円盤:短軸方向に速度成分が「詰まる」
→みかけ上、線幅が広くなる。(≠速度分散が大きくなったわけではない) Kohno et al. 2003, PASJ, 55, 103
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Luminosityの表現について L [Lo], [erg/sec], [W] L [W/Hz] : radio continuumなど
L(FIR), L(Hα)など L [W/Hz] : radio continuumなど 電波のライン観測では、やや独特?の「方言」 L’(CO)=Tb・dV・Ωs・(DA)2 [K km/s pc2] 問:luminosityの次元になっていることを確かめよ。 これは(Lと違って)brightness temperatureに比例する量になっている。 輝線強度比の議論をする際、L’比で議論したほうが、直感的に扱いやすいケースがある。 そのconversioni: 1 Lo = 3.83x10^33 erg/s 1 erg/s = 10^-7 W
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具体的な例:L’⇔L の変換?(検算してみよ)
Walter et al. 2011, ApJ, 730, 18
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実用的な式 Line luminosity L [Lo] Line luminosity L’ [K km/s pc2]
※こちらは、brightness temperatureに比例する量 velocity integrated line flux: Slinedv [Jy・km/s] Rest frequency, observing frequency: νrest, νobs [GHz] luminosity distance: DL [Mpc] Solomon, P., & Vanden Bout, P. 2005, ARA&A, 43, 677 Solomon, P. M., Downes, D., & Radford, S. J. E. 1992, ApJ, 398, L29
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Line flux [Jy km/s] vs [W/m2] 前者はmm/submmで、後者は赤外の業界でよく出てくる?
1 Jy = W/m2/Hz 1 MHz ⇔ 3 3 Jy km/s =
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実用的な練習問題 z=6.6に、L[CII] = 6x10^8 Loの輝線がある。これをALMAで検出するために必要な観測時間を検討せよ。
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期待されるpeak fluxの計算 z=6.6でのDL = 65816 Mpc = 2.03x10^27 m
1 Lo = 3.83x10^33 erg/s 1 erg/s = 10^-7 W 1 Jy = 10^-26 W/m^2/Hz 期待されるpeak fluxの計算 z=6.6でのDL = Mpc = 2.03x10^27 m L[CII] = 6x10^8 Lo = 2.3x10^42 erg/s = 2.3x10^35 W S = L/(4π(DL) 2) = 4.45×10^-21 W/m2 [CII] rest freq. = GHz obs. freq = GHz or obs. λ = mm 線幅は検討・妥当な値を仮定する必要あり。 自分が観測したい天体種族での観測例などをもとに、検討する。 ここでは、仮にdv=200 km/sとする。 観測波長を考慮すると、df = MHz Peak flux = integrated flux/frequency width = S/df = (4.45x10^-21 W/m2) /(166.8x10^6 Hz) = 2.7x10^-27 W/m2/Hz = 2.7 mJy
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必要な感度の計算 2.7 mJyのpeak、線幅200 km/sを検出する。
(ほぼ5時間) 2.7 mJyのpeak、線幅200 km/sを検出する。 どういう情報がほしいか?Line shapeをどのくらい細かく、正確に知る必要があるか?(detectionできればいいのか、線幅や形状が大まかにわかればいいのか、deblendなどのmodelingをするために、非常に高いS/Nでline shapeを知る必要があるのか) ここでは、線幅・形状が大まかにわかればよいとする。たとえば、dv=10km/sで、peakのS/N=5でよいとする。 1σ=0.534 mJyのnoise levelをdv=10km/sで。 必要な積分時間は?
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ALMA sensitivity calculator
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少し発展 z=6.6にある、SFR=103.5 Mo/yrの天体からの[CII]輝線のALMAによる観測可能性を検討せよ。
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検討する。 SFR⇔L(IR)変換 103.5 Mo/yrは6x10^11 Lo
SFR [Mo/yr] = L_FIR/(5.8x10^9 [Lo]) by Kennicutt 1998, ARAA SFR⇔L(IR)変換 103.5 Mo/yrは6x10^11 Lo L[CII]/L(IR)比を、自分が観測したい天体の性質などを考慮して、推定・主張する。(レフェリーが納得するように!) ここでは、仮に10^-3とする(講義資料参照) L[CII] = 6 x 10^8 Lo (以下、さっきの問題に戻る)
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Point source vs extended source
単一鏡により、total fluxはわかっている天体を、ALMAで、詳しく解像したい。 Kohno et al., 2008, PASJ, 60, 457
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Tb flux Peak 0.6 K @345 GHz, 25” beam 36 Jy/ (25”)beam
25” beam内にあるfluxを、何画素に解像したいか?何”スケールで描画したいか? 「最悪」のケース:beam内に、べったり一様に分布 = 707平方秒内に、36Jyが均一に分布 たとえば1平方秒なら51mJy/beam 0.94”x0.94”(FWHM)のbeam = 1平方秒のbeamで、1σ=10 mJy/beamの感度なら、「最悪」の場合でもS/N=5で検出。 あとは、レフェリーが納得するような仮定で期待されるfluxを予想・主張する。
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3.データからどこまで言えるか 注意すべきこと
3.データからどこまで言えるか 注意すべきこと
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単一鏡による観測データの特徴と注意点 全ての空間周波数成分を取得できる。 side band分離の方法→強度較正の精度は?
⇔ 干渉計による観測 side band分離の方法→強度較正の精度は? ビーム形状は本当に○か? サイドローブの広がり;広がった淡い構造をどこまで信用するか? 主ビーム能率の低い望遠鏡→サイドローブによる偽の構造 SKYの差し引き ライン観測:off点にemission? 連続波観測:sky choppingの振り角→得られる画像の空間スケールに制約 単純なS/N比だけで決まらない「信頼性」 単一鏡観測による微弱で線幅の広い輝線の観測 「自己相関」 外来雑音に弱い検出器
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Baseline removalの信頼性 より線幅の広い輝線の場合、信頼性が著しく(みかけのS/N以上に)低下する可能性あり。
GBT(単一鏡)による観測 Vanden Bout et al. 2004, ApJ, 614, L97 より線幅の広い輝線の場合、信頼性が著しく(みかけのS/N以上に)低下する可能性あり。
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干渉計データ missing flux 画像のdynamic range:素子数の少ない観測、天の赤道に近い天体の観測
「視野」といっても 視野の中で感度分布(雑音レベル)は異なる 視野の端に注意:smearingによる形状の歪み特に低周波帯&(超)長基線干渉計観測 視野が「素子アンテナのビームサイズ」よりさらに小さくなる(別の要因が視野を決める)。
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電波干渉計
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reference 「光学の原理」 “Interferometry and Synthesis in Radio Astronomy”
Born & Worf著、日本語版 from 東海大学出版 “Interferometry and Synthesis in Radio Astronomy” 2nd edition, Thompson et al. 著、John Wiley & Sons Inc.(2001) “Synthesis Imaging in Radio Astronomy” ASP Conference Ser. Vol.6, Eds. R.A. Perly, F.R. Schwab, & A.H. Bridle (1994) 新しい版もwebに 過去の「干渉計サマースクール」テキスト
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巨大アンテナ を作る干渉計 アンテナの一部を 一台のアンテナに 受信信号は、干渉させ その後、結合させる
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電波望遠鏡
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鏡面のパネル R.D. Ekers
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パネル⇒ アンテナに 置き換え 自由空間 ( Vi )2 Guided R.D. Ekers
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鏡として集光するかわりに 信号を集めてくる Guided 自由空間 ( Vi )2 R.D. Ekers
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一旦ケーブル長を決めて繋いでしまえば アンテナを 動かしても 同じこと 自由空間 Delay Guided Phased array
( Vi )2 R.D. Ekers
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「干渉計」 自由空間 角分解能 = /D D Delay Guided Phased array ( Vi )2 R.D. Ekers
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ミリ波・サブミリ波干渉計 IRAM(PdBI) NMA OVRO SMA
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2素子干渉計 2素子のアンテナの出力 Vi, Vj その相関出力:<ViVj> (積をとって時間平均) ←積算型干渉計
天体の方向ベクトルをs, 2素子のアンテナ間隔のベクトル (baseline vector)をb、とする この干渉計に平面波が 到来するときの到達時間差 (geometrical delay)は
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2素子干渉計 素子 i, jの出力電圧 Vi, Vjはτgを使って この時間平均をとると
よって立体角dΩ、周波数幅dν、電波源強度I、アンテナ有効開口面積をAとするとき、相関値 drはτgの関数 ← vivj∝天体からの電力
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2素子干渉計 dr(τg)を空間方向に積分すると たとえば1次元では すなわち、 相関関数 r(t) は、
天体の強度分布I(θ)をFourier変換したときの、(空間)周波数成分 b/λ (波長でnormalizeしたbaseline長)のFourier成分(cos成分)!!!
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Visibility 定義 A(s)はnormalized antenna power pattern
振幅と位相を持つ複素量。
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座標系 観測方向をwとして、uvwという直交座標を取る。Visibilityは ただし ここで l~m=0, n~1から
すなわち、Visibility function V(u,v)は、天球面上の Intensity distribution I(l,m)の2次元Fourier変換である。
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干渉計観測の特徴 干渉計とは 「天球面上の輝度分布のFourier成分を 測定する装置」 振幅=天体の強度 位相=天体の位置
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ミリ波干渉計で「見た」天王星 波長 3.4 mm Visibility振幅 基線名 基線長(波長*1000単位)
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NMAによる木星のimaging 3 mm continuum ~ 45“ H. Hasegawa et al. 2001
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観測された visibility amplitude →短いところに大きいフラックス
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電波干渉計の性能を決めるパラメーター 空間分解能:基線長
速度分解能:A/D変換器のサンプリング速度(デジタル分光システム)←またいつか別の機会に。 視野:素子アンテナの主ビーム (結合型干渉計の場合;VLBIは別の制約で、主ビームよりも更に狭い視野になる) 感度:素子アンテナの(有効)面積、受信機性能、大気透過度 口径の大きい素子アンテナを使う(⇔視野が狭くなる) 口径の小さい素子アンテナをたくさん使う(⇔1基線あたりの感度↓) 画像の「質」(“忠実度”):Fourier成分のサンプル密度(~素子アンテナの数、および最小ベースライン長) ベースライン数が少ないと、PSFが「汚く」なり、deconvolutionの精度・信頼性が低下する。 短いベースラインがないと、広がった構造が失われて、元画像と合成された画像の違いが増大(=忠実度;fidelityが低下する)。
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Missing flux ある割合のfluxが観測にかからない。 短い基線のデータが取得できていないため。 Kamazaki et al.
In prep.
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Synthesized beam 上のuv coverageでpoint sourceを観測すると、このように見える(Point Spread Function)。 Declination = 37 deg 3配列(AB, C, D) Peakに対して±10%程度の強度を 持つSidelobeが出ている。
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Example of Synthesized beam (PSM) in Interferometers
あるuv coverageでpoint sourceを観測すると、このように見える(Point Spread Function)。 Declination = 4 deg 3配列(AB, C, D) Peakに対して±70%近い強度の激しいSidelobeが出ている(円は視野を表す)
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アルマ計画の特長 宇宙をさぐる新しい「窓」:サブミリ波の開拓 標高5000m、世界でもっとも乾燥した土地の一つ
⇒300ミクロン(遠赤外線に近い領域)まで観測可
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まとめ(1) 電波望遠鏡の「ビームパターン」=鏡面の「照度分布」で決まる(フーリエ変換の関係)。 感度を決める要素
鏡面の大局的なゆがみ→主ビーム(小さい角度スケール内に絞られた放射パターン)の歪み 鏡面の細々したゆがみ・粗さ→広角ビーム(非常に大きい角度スケールに広がった放射パターン) 広角パターンが有意に出ている周波数での観測データ:広がった構造の信頼性が低下! どのくらいのパワーが主ビーム内に集まっているか:主ビーム能率 画像の角分解能を決めるもの:サンプリングも重要 ガウス光学 感度を決める要素 大気+受信機が負荷する雑音 受信機システムについて その除去:チョッパーホイール法+ポジションスイッチ
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まとめ(2) 電波特有の方言?について データの信頼性を決めるもの 干渉計とは 強度スケール 速度の定義 3次元キューブ、 ビームパターン
モーメントマップ、位置速度図、チャンネルマップ データの信頼性を決めるもの ビームパターン Missing flux etc. 干渉計とは 信頼性・感度を飛躍的に向上させるALMA
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