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見立て
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見立て(『方法としての面接』) 土居は,「診断・予後・治療について専門家がのベる意見を引っくるめて呼ぶ日常語」と言う。ある意味で力動的フォーミュレーションをして、それをフィードバックするときの、言葉の運用のために「見立て」という言葉を用いた。出てくる事例は自分自身の歯痛であり、それを医者がどのように見立てたかというものであった。治療的、力動的アセスメントという意味である。ワイナーの本ではformulationの訳が「見立て」になっているが、これは誤訳だろう。治療的アセスメントが近いが、それよりも広い行為が求められている。見立て=治療的力動的フォーミュレーションとでも呼べるような治療を構成するための手続きのことを呼ぶ。
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患者に(あるいは子どもに)語る言葉 土居やウィニコットが繰り返し語ったように、患者へのフィードバックは、その患者の使う日常語であるべきだし、専門的なことを普通の言葉で換言することが必要になる(日常語と精神医学など)。 その場合、患者のキーワードを治療者の理論語と橋渡ししていく作業が見立てを伝えるときに、コンタクト(治療関係)、同盟関係、そして治療選択で必要になる。 いろいろな技法、そして相対的に自分の訓練や理論を、普通の言葉で理解しなおしていることは前提だろう。
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日本になかった「精神分析」 日本には毎日分析を基本とする精神分析を実践している治療者は80年代後半まではいなかった。そのため、精神分析がリアリティを持つのは、2000年ころになってからのことである。 それまでの週一回の治療を維持するために、精神分析的視点を枠と内容に分けて考えるために治療構造論は生まれた。
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日本精神分析学会と協会が二つあるという話から:精神分析的精神療法
頻度:週4回以上、場面:カウチ使用、方法:自由連想法 精神分析的精神療法 精神分析から、低頻度・対面設定の力動的精神療法を含む広いスペクトラム 児童分析家は日本にはいない。 世界には500以上の心理療法がある。
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治療構造論 日本で開発されたもっとも強力な力動学派の初期の業績のひとつ
治療構造論 日本で開発されたもっとも強力な力動学派の初期の業績のひとつ 甘え、阿闍世、見るなの禁止などの概念装置は、内面の心理状態を記述するための道具 治療構造論は技法的な道具であり、しかも精神分析に固有の道具ではなく、その拡張をもくろむもの(日本特有の文脈)
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治療構造的機能 定点観察 参与しながらの観察にとっての準拠枠 病理の彫塑 枠組み=基準=社会的合意事項
例えば⇒心理テストと面接状況の共通性を考える。枠と状況、そしてそこでのやりとりと反応という読み方。
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構造的な認識 自分は、どうしてこういう文脈で、仕事をするようになったのか
構造的な認識 自分は、どうしてこういう文脈で、仕事をするようになったのか 自分がどのような臨床場面にいるのか、そしてそれはどんな構造をしているのか 自分でその構造は、どの程度、設定として変化させられるのか、それとも変化させられないのか
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子どもの治療の場合 どのような状況で、どんな形で、本人はどんなことを考えて、治療に連れてこられるのだろうか⇒治療的アセスメントの難しさ
子どもの治療の場合 どのような状況で、どんな形で、本人はどんなことを考えて、治療に連れてこられるのだろうか⇒治療的アセスメントの難しさ どのように手続き化するかという方法は複数があるが、おそらく「見立て」を組み立てる作業が最低限の臨床的な活動で、それが治療的に組み立てられるには、患者の協力が必要。⇒心理療法家の思惑が第一ではない。 さらに子どもは家族とともにある(後述)
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見立てとコンタクト 何のために来ているかということを伝える=子どもは連れてこられることが多く、主観的に問題が隠蔽されたままであることが多い。「困っていることがあるの」→「わからない」。ウィニコットの指摘では、分かるように伝えるだけで治療的。主観的対象と出会って安定する。 コンタクトが取れる場所で、見立てを伝えてあげる。交流ができる場、媒介が何であっても良いので、スクウィッグルや相互参加する場面での伝達⇒プレイから見る
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動機付け-治療同盟-作業同盟 主訴の特定から文脈の特定
動機付け-治療同盟-作業同盟 主訴の特定から文脈の特定 最近子供が不登校になり、困った母親が連れてくる。 「ここに来たの、何か心の問題なの?」 11まず事例ですが、これは良くある不登校で、これはほとんどよくある一般化した事例で、教育相談所にいたころにはよく出会ったものです。なんとなくぶらぶらしていて、お母さんが心配して連れてくる、で本人はあまり病気だとは思っていない、いつかおなかが痛くなくなればって思っている。そこで子供面接にはいって、なんとなく乗る気なさどうで、抵抗が強そう、で「ここに来たの、何か心の問題なの?」って最初に聞いたら、これでほとんどアウトですね。っていうのは、なぜとかどうしてとか聞くのもそうですが、本人がくさるほど聞いているせりふを治療者が重ねていることにもなるし、本人の問題として非難していると聞こえてしまう。 不登校の子 治療者 「ここには自分で来たの?NO とするとお母さんは何を心配しているの?」
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問題となっている不登校がなければ、母親は連れてこないか?
ラポールと治療同盟⇒作業同盟 母親が連れてくる。 原因は何か? 治療者 12(pp4)もちろんこれだけで、カウンセリングははじめられます。どうしたら「連れてこられないようにするか、考えてみよう」。実際に家族システムの問題だけなら、これでいい事例も結構あって、そうやってカウンセリングをしていく、つまり本人の精神力動をいじらないケース、SCをしていたときなんかは結構ありました。「担任がむかつく」「そうかじゃあ担任とどうつきあうかね」みたいな。でも力動的にはじめたいなら、こういう問い、いまではreflectiveというあるいはMentalizationなんて立派な言葉があるのですが、そういう方向性にもっていくには、不登校という問題がなければ、母親はこんなことしないのかなってそういう質問をするのです。 不登校の子 問題となっている不登校がなければ、母親は連れてこないか? 不登校
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主訴や問題を記述する ①問題を記述する:主訴であることが多いが、主訴は誰が作ったかわからないことも多い。
主訴や問題を記述する ①問題を記述する:主訴であることが多いが、主訴は誰が作ったかわからないことも多い。 患者から見た問題:何に、あるいは誰に患者が反応しているのか 患者の「核となる痛み」は何か:彼が最も恐れている、そしてあるいは避けようとしているものは何か? の二点から、主訴を見直してみる。そうすると経過のなかに、誰が誰にということが見えてくることが多い。
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子どもの訴えに到達する 子どもの症状は、主に言葉としてメッセージ性が高い=その症状の訴えが何を語っているのか、を聴く⇒家族とのマネージメントにそれを使う。 主訴や問題の場所を共有していくこと=問題を文脈化する=文脈を問題視する⇒子どもがどうして治療に来ているかを周囲と摺合せして、コンタクトを作る。
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発達障害の語用論 落ち着きのなさには、複数の原因がある。ADHDや自閉スペクトラムという概念は神経発達障害という発想で、発達の全体像が描かれきれてはいないが、柔軟性や可塑性が期待できないという意味になっている。だから心理療法がどのような領域に働き、発達全体がそれをカバーしてくれるかは未知数であることが多い。そのためどこまでやっても変化しない子どももいれば、プレイセラピーで良くなる子どももいる⇒自我診断と対象関係の描画は不可欠。
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不登校になるさまざまな背景や理由を考えてみれば、自分としてはどうしてだと思うかな?
作業同盟から分析可能性への道 不登校になるさまざまな背景や理由を考えてみれば、自分としてはどうしてだと思うかな? 治療者 16それでもし、彼がそうだなあ、なぜ不登校になったか分からないし、考えたこともないけど、こういう面倒なことになるなら、考えてみるかぐらいの方向性ができれば、今度はその不登校の問題を「どういうわけか学校に行けなくなる人がいる。そこには何か心の問題があるといわれているけど、思いつく限り、そこらへんのことを教えてくれる、私も原因があなたの話から分かっているわけではないけどね」って言うのですね。 不登校の子 不登校
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自我の観察⇒内省⇒探索 F.ブッシュが指摘しているように、心理療法で自我の発展は自我観察⇒内省⇒探索という形で起きる。自我発達に限れば、精神分析的な心を育てる作業は、これを長期的にやっていく作業になる。 治療同盟、転移解釈、転移を集めること、そして自我発達のラインで停止しているところを再生させること。
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問題や主訴を記述する2 専門家たちが子どもを収容するときにどのような経緯をもっているか⇒年齢と発達ライン、そして対象関係が重要になるので、それを前提にして、個人の問題(主にアタッチメントから性心理組織化=自我発達)なのか、それとも集団行動の問題(主に行為と共同行為)なのかが査定できる必要がある。心理職員は前者を、福祉担当職員は後者を発見しやすい。 ①専門家たちの感じている問題 ②心理療法家の感じている問題 ③子供たちの感じている問題をすり合わせる。
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発達ラインで考える 自我発達の指標 3か月 8か月 15か月 三か月微笑 人見知り Noと言えること
発達ラインで考える 自我発達の指標 3か月 8か月 15か月 三か月微笑 人見知り Noと言えること アタッチメント反応 分離不安 分離個体化 舌圧子から移行対象の発達 対象関係の発達 皮膚自我 PSポジションからDポジション(個人) 無慈悲から思いやり(メンタライゼーション) 自己像と自己対象の自己愛の長い発達プロセス 自他のイマーゴ発達 鏡像段階の疎外理解
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主観的にどうしてこういうことが起きるのかをちょっとだけ考えていこうという方向性ができる。
主観的にどうしてこういうことが起きるのかをちょっとだけ考えていこうという方向性ができる。 パースペクティブ 治療者 20そうして彼が自分の人生を振り返り始めたら、これで力動的な治療はパースペクティブの法に動き始めたなって、私は思います。 異化された主観的問題
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困っている、痛みは何処にあるのか 本人が困っている場合には、痛みは本人の心の中にある。だが子どもの場合はそうではないし、パーソナリティ障害の場合や重症の障害の場合そうではないことが多い。 痛みを中心に臨床を組み立てること⇒主観的対象であること(Winnicott)。動機を高めて、治療同盟を作る契機になる。
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コンタクトの領域を作る 見立てを自分を含めた転移のなかで理解できる治療者(自分ができる範囲と子供や家族のできる範囲)
コンタクトの領域を作る 見立てを自分を含めた転移のなかで理解できる治療者(自分ができる範囲と子供や家族のできる範囲) 治療環境の中で自分のキャパシティを発揮できる治療者(治療環境の許容範囲と治療者の挙動範囲) 家族とそれを抱える環境をアセスメントする 接点(コンタクト)のマネージメントをする
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Psychodynamic Diagnostic Manual
PDMの基本的視座 三つの軸: Mental Functioning Personality Pattern and Disorder Symptom Pattern 多軸診断の基本的発想を受け継ぎながら力動的な発想を活用する。
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問題に名前を付けていく作業 ②問題の心理的なコストを記述する 患者の機能の中でのどのような限界、あるいは他者や自己の知覚の中の歪みがその問題から生じているのだろうか?つまり主訴は誰をどのように困らせているのか、だからその問題はどんな名前がふさわしいのかと、言い換えてみる。診断名はあくまで精神医学的名前でDSMのおかげで共通語になった部分もあるが、それでも患者の主観からは遠いことが多い。
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力動的フォーミュレーション ③問題を文脈化する:関連している前提になっている要素は、心理療法に乗るかどうかという問題をはらんでいるので、それらの要素を文脈化してみる。 環境要因:トラウマの歴史、トラウマに影響を及ぼしている発達要因、家族の布置、他の関連したライフ・イベント 生物学的な所与:身体、気質、身体的な問題:それらのなかで現在の問題に関連したものを考えるなかで、文脈を考える
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問題を文脈化する 対象関係 治療選択 経緯 現病歴 心理療法の選択 生育歴 症状
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文脈を問題にする 苦しい状況、症状化するなかで、患者は自助努力をしている(来談前)。でもそれが耐えきれずに来談する
文脈を問題にする 苦しい状況、症状化するなかで、患者は自助努力をしている(来談前)。でもそれが耐えきれずに来談する 来談の出会いは主観的で、それが主観的対象になるかどうかは、依存と自立の関係で分かる⇒転移を決定する 援助のなかで、転機が訪れた時、それに対応する形で心理療法が導入される⇒逆転移が決定する
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導入で転移が理解されること 治療関係はそれまでのコンテクストによって、コンタクトの領域が決まる。だから心理テストはすでにかなり客観的なものとして理解できないし、症状とそのテスト結果は治療者へのメッセージとなることが多い。 間主観的関係性の中で、治療者が誰でどのような人かを、患者がどう考えているか、どう思っているかを理解する=転移の理解
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④患者のもっとも主たる、繰り返されている対象関係を記述する
患者は他者との関係で自分自身をどう体験しているだろうか。その問いが治療のなかで、転移を考える上でもっとも重要な問いなので、対象関係がだいたいわかると、なぜ今ここに彼が訪れたのかがだいたいおおまかにわかる。そのために次のようなことを考える 患者の内的な世界を支配している対象関係は何か 誰が誰にどんなふうに、そして関連した情動を発見する これらの内在化した対象関係は現在の患者の人生でどんな不運現れているだろうか? 自己や他者の表象は、どんなふうに影響を及ぼしているのか、現在の関係によって影響を受けているのだろうか これらの対象関係がどんなふうにあなたとの間で現れているだろうか?
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⑤治療関係と防衛を発見する 患者がもっているさまざまな症状を生み出した防衛は、変化の可能な結果は何かとの関連で、心理療法の対象になるだろう。その場合、 患者が心的な痛みを対処している習慣的な方法 神経症的なあるいは原初的な防衛を用いているなら、それを記述する ⑥治療の目標を発見する (治療者のニードに対して)患者は何を求めている、何をニードしているのか
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スクリーン・モデル=共同的経験主義 Th Cl(y) (x) 31北山先生の言う、共視論ですね。あの着想はいいです。
先ほどの事例で言えば、イメージはこです。 Th Cl(y) (x)
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関係:調節 認識:学習 発達と治療:力動的な視点
発達遅滞 関係:調節 情緒障害を伴う発達遅滞 自閉症 アスペルガー 認識:学習 発達と治療:力動的な視点
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コンタクト:認識と関係性に含まれる問題 もっている症状を前提に、主観的に現実をどのように体験しているかという理解のために力動をフォーミュレーションをする →この子供は神経発達障害かどうか? でもコンテクストは不登校⇒アスペルガー 対人関係の表象の能力を上げる 対人関係の能力を上げる (推論による他者理解:および間主観性)
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自分の症状:不登校、集団行動を強要されなければ、主観的に学校に行くのは嫌ではないらしい。→どのように認識しているか、そしてそれがどのように関係性に影響しているかを担任に伝える
性格傾向:引きこもりがちで、大人しいために、対人関係では損をしやすいだろう。 →自分の世界を守るということの重要性とそれでも損をしているということを母親から伝えて、外に出て行けるなら、人と付き合う努力を続けてもらう。 精神機能:対人関係に想像力が働きにくい。その意味では対人関係の調整のような相談にはしばらく乗ることにする。数回面接して、もし困ったことがあれば相談できるような関係を作って、親にも本人にも相談に来れるようにしておく。
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治療相談therapeutic consultation
精神療法面接とは異なる技法 二三回あえば治る症例に対するもので 転移と抵抗を扱うよりも 間の体験のなかでクライアントのニードに合わせた体験を提供する。 スクィグル技法(プレイの場) オンディマンド法 在宅などの環境の活用 これらはセットとして、分析的枠組みとして考慮されるべきものである。
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オンディマンド法 子どもの治療の家庭への影響を考える= 妥協案としての週一回についての疑問
オンディマンド法 子どもの治療の家庭への影響を考える= 妥協案としての週一回についての疑問 「オン・デマンド」法には週五回の毎日セッションよりも利点がある。妥協として週一回の治療はほとんど妥協案として受け容れられているが、これに価値があるかは疑わしい。週一回の治療は、週五回の治療とオン・デマンド法の間で虻蜂取らずに終わり、本当の深い作業が成し遂げられることを妨げている。
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在宅での環境の利用1 「子どもの治療が始まると両親は、子どもに症状が出現すると、子どもが治療に戻ることが必要だと感じるようになる。ひとたび子どもの治療が始まると、それぞれの家庭で適切に育てられている全ての子ども達も豊かな症状を示すことを親たちは見失ってしまう。実際に子どもの治療は、家庭の能力といった大変価値ある能力を阻害する可能性がある。その家庭の能力とは、情緒的な緊張や、情緒発達の一時的な停止を示す子どもの臨床的な状態、あるいは発達そのものの事実さえも持ちこたえて対処する力」がある。
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コンサルテーションの活用 主観的対象としての治療者 移行対象としての媒介物:舌圧子と同様に媒介物なので、治療者は観察能力を維持できる。
コンサルテーションの活用 主観的対象としての治療者 移行対象としての媒介物:舌圧子と同様に媒介物なので、治療者は観察能力を維持できる。 相互に交流する領域で、治療者の解釈を子どもに与えて、それに対する反応を(象徴的)対象としてみる。 解釈は認識の限界を遊ぶものである。「伝えないことにした」 ズレの体験とそれを補う対象としておもちゃが使われている。そして描画は子供が使う創造として機能する。 夢(本当の自己)への入り口として活用される
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治療同盟から契約への経緯 来談前と来談後 面倒なこと=いつも誰もが治療に乗ってくれるわけではないという理解 どこに問題があるかの理解=主訴
誰が何に問題があるかの理解=査定 何をどう解決させるか=解決 誰と何を解決するのかという同盟関係の確立 契約=社会的、公的関係という構造
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短期=戦略性 洞察志向 症状解決志向 長期=関係性
体系的治療選択 短期=戦略性 短期力動心理療法 認知行動療法 洞察志向 症状解決志向 精神分析 デイケア(心理教育) 長期=関係性
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さまざまな心理面接=ニード 米国では1930年代後半から精神分析は精神科医のみのフィールドになり、それが米国精神分析協会のルールになった。子供の治療以外は医学的な意味での心理療法は、医師の仕事であった(英国≠米国)shrink=psychiatrist 米国の心理学者はカウンセリングと心理療法を自前で開発する。 医者の精神分析離れが起きた=副産物として新しい発想と技法が500以上も開発される。
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誰が誰に、どのような治療を 主訴を持って訪れる人が、主訴を内面化しているとは限らない状態で、解決をイメージすることはできないので、誰が誰に何を求めてきているのかは、合理的な、あるいは全体的な視点から治療選択をする上での基本に置くべき主題である。 ⇒事例において重要なのは、その経緯(文脈である)に対して、こちらが複数の選択肢をもっていることである=治療選択
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治療開始の文脈における主訴 1.治療を構成する文脈の中で出会うこと 主訴以前の問題:治療構造論 2.クライエントの主訴と解決
治療開始の文脈における主訴 1.治療を構成する文脈の中で出会うこと 主訴以前の問題:治療構造論 2.クライエントの主訴と解決 クライエントの訴える問題は何か クライエントの問題の発生の経緯 治療動機、経緯を確認する 心理療法についての理解を確認する
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治療同盟、あるいは作業同盟 観察自我【1934から】 Zetel(1956) Greenson(1967) 精神分析の関係:転移、作業同盟
治療同盟、あるいは作業同盟 観察自我【1934から】 Zetel(1956) Greenson(1967) 精神分析の関係:転移、作業同盟 現実的関係の三つがある。 :自分の悩みを克服するために分析家と協同したいという合理的な患者の願望と分析家の指示と洞察とに従う彼の能力によって促進される。→同一化
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査定のなかで同盟を結ぶ素材 3.クライエントの問題の質、問題の重篤さおよびクライエントの意識水準、人格水準から来る報告能力
査定のなかで同盟を結ぶ素材 3.クライエントの問題の質、問題の重篤さおよびクライエントの意識水準、人格水準から来る報告能力 例えば、精神病や子どもの場合 病識の不在、意識水準の問題など 4.分析可能性、あるいは同盟可能性 クライエントのもっている現実的な関係 (自我心理学の発想) ex.無意識の動機づけ:不安の解消(Klein)
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分析可能性-治療同盟-作業同盟 主訴の特定から文脈の特定
分析可能性-治療同盟-作業同盟 主訴の特定から文脈の特定 パニック=痛みをもたらすものがどこにあるのか 「ここに来たの、何か心の問題なの?」 46まず事例ですが、これは良くある不登校で、これはほとんどよくある一般化した事例で、教育相談所にいたころにはよく出会ったものです。なんとなくぶらぶらしていて、お母さんが心配して連れてくる、で本人はあまり病気だとは思っていない、いつかおなかが痛くなくなればって思っている。そこで子供面接にはいって、なんとなく乗る気なさどうで、抵抗が強そう、で「ここに来たの、何か心の問題なの?」って最初に聞いたら、これでほとんどアウトですね。っていうのは、なぜとかどうしてとか聞くのもそうですが、本人がくさるほど聞いているせりふを治療者が重ねていることにもなるし、本人の問題として非難していると聞こえてしまう。 カウンセリングが必要な 治療者 「ここには自分で来たの?主治医の意見を聞く
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見立てのための作業1 パニック障害についてどの程度理解しているか、そしてその理解は文脈化しているか
見立てのための作業1 パニック障害についてどの程度理解しているか、そしてその理解は文脈化しているか 主観的に症状を取ることを優先しているか、それとも症状の周辺を考える(観察自我)ことを志向しているか=カウンセリングの必要性 これまでの文脈を問題だと感じているか(主訴⇒解決の一貫性)。
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「薬は対処療法でしかないので、環境調整とカウンセリングだよ」
ラポールと治療同盟⇒作業同盟 「薬は対処療法でしかないので、環境調整とカウンセリングだよ」 治療者 48(pp3)だから「連れてこられるのが嫌なのかな」って抵抗を取り扱いますね。そして当たり前ジャン、なんで俺が来なきゃって、SCではありがちなシチュエーションでしたね、これ、担任に言われてきたとかね。でもここからが力動学派の腕の見せ所で、なら、「来られないようにするには?」っていうスタンスで、最近子供が不登校になり、困った母親が連れてくる」この文脈に戻って、『何を思ってお母さん連れてきたのかなあ』っていうわけです で連れてこられるようなことがおきないようにするにはどうしたらいいかなって考え始めてくれるようにする。 カウンセリングが必要な 何が解決したいのか
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トラウマ治療のエビデンス トラウマ治療のエヴィデンスが高いのは、PEとEMDR>短期力動心理療法、トラウマワーク>トラウマ焦点化、感情焦点化などのトラウマに特化した治療技法 トラウマは記憶のメカニズムなので、それを理解したうえで、それを克服するという同盟的な関係がある程度ないと、トラウマを放置するような治療をすることは逆効果が生み出されやすい。 ⇒トラウマ治療におけるデブリーフィング問題
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臨床的にトラウマを取り扱う問題 =デブリーフィングの問題点 1. それは取り扱うことで悪くなる:取り扱いが脱感作であるなら良くなる。
=デブリーフィングの問題点 1. それは取り扱うことで悪くなる:取り扱いが脱感作であるなら良くなる。 2. 取り扱うこと自体が外傷的な反復の可能性=精神病理学との関連 3. 外傷の意味づけは外傷を固定する 4. 外傷にこだわることは累積的な体験 5. 早期の外傷はパーソナリティ境界例現象と近縁である
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累積的外傷モデル 外傷体験 Kahnがまとめた伝統的な精神分析の外傷モデルの更新。 発症
基本的な庇護やcontainingが治療になるモデル
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トラウマ(外傷体験) フロイトはジャネを意識して、自分のモデルを作ったので、トラウマに関して、それを排除しようとしすぎた。さらに乖離や解離をメカニズムから外そうとしすぎたと考えられている。 外傷体験 発症 忘却
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EMDR(精神分析の視点から) 1. 無意味な知覚運動を深い意味のある外傷との間で用いる利点
1. 無意味な知覚運動を深い意味のある外傷との間で用いる利点 2. 再処理された外傷、あるいは再処理されない外傷から、より古い外傷の処理をする利点 3. 累積的な外傷については無力である 4. コンプレックス、あるいは境界例現象においては、問題を処理できない。
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さまざまな背景や理由を考えてみれば、自分としてはどうしてだと思うかな?
作業同盟から分析可能性への道 さまざまな背景や理由を考えてみれば、自分としてはどうしてだと思うかな? 治療者 54それでもし、彼がそうだなあ、なぜ不登校になったか分からないし、考えたこともないけど、こういう面倒なことになるなら、考えてみるかぐらいの方向性ができれば、今度はその不登校の問題を「どういうわけか学校に行けなくなる人がいる。そこには何か心の問題があるといわれているけど、思いつく限り、そこらへんのことを教えてくれる、私も原因があなたの話から分かっているわけではないけどね」って言うのですね。 対象との問題 対象関係
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分析可能性:距離として 風景としての精神分析 パースペクティブ 治療者 異化された主観的問題
分析可能性:距離として 風景としての精神分析 パースペクティブ 治療者 55そうして彼が自分の人生を振り返り始めたら、これで力動的な治療はパースペクティブの法に動き始めたなって、私は思います。 異化された主観的問題
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治療同盟と治療選択 本人が何を解決したいと主観的に思っているかによって、それによりそうことで治療同盟ができるので、関係性が前提になって、治療を選択できるようにしていくことで、「合理的」で「関係上正しい」選択をすることになる。 治療選択はエヴィデンスによることよりも、内的な真実に基づいている必要がある。
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治療者:構成の仕事としての精神分析 長期療法として訓練を受ける意義
治療者:構成の仕事としての精神分析 長期療法として訓練を受ける意義 治療者も自己探求の一部として心理療法の仕事を考えている=精神分析が構成の仕事であるというFreudの理解 パースペクティブというGillの理解 歴史的真実と物語的真実というSpenceの理解 社会構成主義的な空間として、過去、現在、未来、を構成する精神分析というHoffmanの理解 58分析可能性、治療同盟、作業同盟の連続性について ・作業同盟についてGreensonらの議論は、転移との区別を中心に議論されているので、しばしば片手落ちであるが、治療を構成する文脈、あるいは治療構造の視点から見ると、分析可能性と治療同盟の概念を密接に関連していることが分かる。 来談経路から主訴の特定のなかに、動き出すさまざまな力動的要素がある。 (pp6から7) ちなみに精神分析的心理療法は、ブリーフや家族との違いは、そこにはっきりとした無意識の対象関係の反映を見るって言うことです。ブリーフも同じように、主訴の特定はしますが、そこでこの家族のシステムや関係性を短期的に変える方向に行く。でも精神分析は無意識、つまり対象関係の布置の表れって、思い、そこに長い間の累積した歴史を読み込もうとするのです。で、そうやって構成されていく、歴史のなかに埋もれていた、防衛を受けて忘れられていたり、今ここでの関係の中に組み込まれている無意識の対象関係を発見する。例を挙げましょう。 強迫神経症の事例で、病院臨床をしていた、最初の分析的なヴァイズの事例ですけど、このケースは中学校ぐらいからひどい手洗いなどの強迫がはじまって、引きこもって入院治療しないといけない状態になった事例です。お父さんが自営業者で、一代で工場を経営するようになった人で、たたき上げの人でした。長男の彼は小さいときから、強くなれ、自分のようになれと、つまり自分はダメなやつというレッテルを張られながら育ったわけです。治療が始まった経緯として、父親からのメッセージで主治医、この人は初老の男性で、ちょっと弱くて院長の前で何もできない副院長という感じの人でしたが、父親に言われて、仕方なく、カウンセリングへまわしてきたのです。まあうるさい人を回すみたいなことですね。アセスメントのときにも父親が一度尋ねてきましたが、ちょっとあきらめ口調で、だめなカウンセラーにあたちゃったなあっていう感じでしたね。アセスメントのときわかったとても大切なことは、小さいときに火事があって、彼がいたずらをしていて、火がひどくなり、お母さんがやけどをおったと、彼はこのことをとても気に病んでいたのです。で、治療が週三回から四回の入院治療でしたが、始まってからもやはりお父さんがたずねてきましたが、非常に横柄で、強い、で一緒にあっていた彼が萎縮してしまって、お父さんのことをすごいと、なんかかわいそうになりましたが、そこで火事のことを聞いてみたのです。でも小さいときのことで、やけどっていたって、目立たないし、ぼや程度でしたよって、お父さんは言うのです。治療者のほうは、「火のないところに煙は立たない」って連想していましたが、面接をしているとどうしても彼は母親のやけどや迷惑を気になるのです。お母さんや周りの人が苦労して、自分が迷惑をかけているって。で私にも迷惑だと思っているのかなって、解釈していくわけですが、どうしてそんな風に思うのかなって、それを取り上げていく。でわかってきたのが、お父さんの工場がほとんど倒産の危機にある状態で、それが長く続いていたっていうことと、それを母親はじっとがまんしているわけです。まあ火の車っていうことです。ここで何か、彼が私との間でどういうわけか迷惑をかけてしまうって思う、それで、何かお父さんが強くって、お母さんの家事が火の車だってことがわかる。これって不思議と家事と火事、火の車の工場とやけどを負っている家のなか、っていう図式、面白いけどつながるわけですよね。これは不思議なことで、これを治療者が取り扱うと、彼は今までそんなこと考えてそんなことを考えたことはないので、へって感じです。
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患者の言葉である主訴や問題を治療者の言葉で記述する
①日常語で問題を記述する:主訴であることが多いが、主訴は誰が作ったかわからないことも多い。 患者から見た問題:何に、あるいは誰に患者が反応しているのか 患者の「核となる痛み」は何か:彼が最も恐れている、そしてあるいは避けようとしているものは何か? の二点から、主訴を見直してみる。そうすると経過のなかに、誰が誰にということが見えてくることが多い。
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治療同盟、あるいは作業同盟 観察自我【1934から】 Zetel(1956) Greenson(1967) 精神分析の関係:転移、作業同盟
治療同盟、あるいは作業同盟 観察自我【1934から】 Zetel(1956) Greenson(1967) 精神分析の関係:転移、作業同盟 現実的関係の三つがある。 :自分の悩みを克服するために分析家と協同したいという合理的な患者の願望と分析家の指示と洞察とに従う彼の能力によって促進される。→同一化
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ウィニコットの指摘 患者が「要求している」ときが、治療者がもっとも主観的対象になれるとき=主訴の意味を患者の言葉で理解していくこと
ウィニコットの指摘 患者が「要求している」ときが、治療者がもっとも主観的対象になれるとき=主訴の意味を患者の言葉で理解していくこと 患者、特に子供の場合は、自分と環境との間で連れてこられるが、その文脈そのものが患者との関係を規定している(治療構造論)ため、そのなかで転移を理解していくだけでなく、マネージメントが必要がある。
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