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口蹄疫: 基礎から国際的枠組みによる 制御までの概要 病態と発生動向調査の基礎 鹿児島県獣医師会公衆衛生部会
口蹄疫: 基礎から国際的枠組みによる 制御までの概要 鹿児島大学 獣医公衆衛生学教授 岡本嘉六 病態と発生動向調査の基礎 感染症の三大要因である感染源、感染経路、感受性個体を制 御することが予防の原則である。感染源となる自然界の病原巣は 判っておらず、ワクチンによる免疫付与も不十分な口蹄疫に対して は、感染経路対策を徹底することが決め手となる。 清浄国に侵入する経路の特定は、物流や人的交流が拡大した 現在において極めて困難であり、初発地帯で封じ込めることが最重 要課題である。それには、早期発見と発生動向調査に基づく関連施 設の特定が基礎となる。
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感染経路 口蹄疫は、感染力が非常に強い疾病であり、農場内、周辺農場お よび新たな地域へきわめて急速な拡大をもたらす様々な伝播様式 がある。主な伝播様式は次の通りである。 ● 感染動物と感受性動物との直接接触 ● 間接的手段による機械的伝播 ● 汚染した食品残渣を含む厨芥の豚への残飯給餌 ● エアロゾルによる拡大 (例外的な疫学的および環境条件下に おける遠距離の風による伝播) 指標動物 ? 維持動物 増幅動物
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反芻動物における主な感染経路 呼吸器感染 呼吸器系は、反芻動物の主要な感染経路であり、ごくわずかなウイルス量で感染を引き起こすことができる。
牛: 101.0ID50 、 (豚は102.6ID50 、すなわち、豚の400分の1で感染する) ID50: 感染動物の半数が発病に要する最少感染量の推計値 汚染エアゾールは、呼気によって最も頻繁に発生するが、ミルクタンカーからの排気、圧力ホースなどの使用によるしぶきなどの結果としても発生する。 経口感染 反芻動物は自然条件では経口的に感染することは滅多にない。 創傷感染 ウイルスは、皮膚や粘膜の創傷を介しても侵入することができる。創傷は、粗飼料給餌における草の種、腐蹄症、搾乳器による外傷、牛の拘束中における蹄の外傷などの障害によってできる。 人工授精 精液にウイルスが含まれる(感染した種牛は回復しても使えない)。 実験的には種々の経路で感染が成立する 村上洋介: 口蹄疫ウイルスと口蹄疫の病性
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豚における主な感染経路 呼吸器感染 豚は、汚染エアゾールの主要な発生源であるが、豚自身は呼吸器感染に関して反芻動物よりはるかに感受性が低い。
経気道感染で102.6ID50 (牛: 101.0ID50 )、経口感染で105.0ID50 経口感染 豚においては経口感染が重要である。汚染された肉片や乳製品を含む生または加熱不完全な残飯を豚に給餌することは、口蹄疫を広げる可能性が高い。新しい地域、国、大陸へ口蹄疫が遠く運ばれる事態が、航空機、船舶または長距離運送車両から出た残飯に起因したことがある。英国における1967~8年および2001年の口蹄疫の悲惨な流行が、汚染した輸入動物製品を含む残飯を豚に給餌したためである。同様に、 O 型( Pan Asian topotype )ウイルスが南アフリカに侵入したのは、アジアから来た船舶の残飯を豚に給餌した結果であった。 創傷感染 ウイルスは、皮膚や粘膜の創傷を介しても侵入することができる。 人工授精 精液にウイルスが含まれる(感染した種牛は回復しても使えない)。
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過去における口蹄疫の初発原因 (1870~1993年) 汚染肉・畜産物・厨芥 風による伝播・渡り鳥 家畜の輸入・移動 汚染資材、器具、人
2001年 アメリカ同時多発テロ事件 汚染肉・畜産物・厨芥 風による伝播・渡り鳥 家畜の輸入・移動 汚染資材、器具、人 ワクチン(不活化不充分) 野生動物 66 22 6 4 3 1 「農業テロ」の脅威 初発原因を把握できないことが予測される 米国はテロ対策のための行政改革を行い、国境警備および運輸保安、緊急事態への準備・対応、情報分析および社会基盤の保護、ならびに、その基礎となる科学技術の開発を任務とする国土安全保障省(DHS)を2002年に設置した。農業分野では、口蹄疫ウイルスが撒かれた場合を想定し、いち早く診断できるよう全土に口蹄疫診断施設を増設した(たとえば、2004年にカリフォルニア大学に設置されたThe FMD Laboratory)。その中核が農務省に設けられた「世界口蹄疫研究同盟(Global Foot-and-Mouth Disease Research Alliance)」であり、北米、南米、欧州、極東の各地と結ばれている。米国の呼びかけで極東の口蹄疫対策を展開しているのが韓国だと私は思っている。すなわち、今回の対応の早さは、事前に対策が練られ、日頃から訓練された成果なのだろう。
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ウイルス血症:血中抗体により除去されるまでの4~5日間持続 口、脚、乳頭の扁平上皮で増殖し、に水疱形成
感染動物におけるウイルスの広がり 咽頭と軟口蓋 侵入部位の皮膚や粘膜の上皮細胞 病変形成前のウイルス排出が危険 咽頭後部、下顎、耳下のリンパ節 所属リンパ節 ウイルス血症:血中抗体により除去されるまでの4~5日間持続 口、脚、乳頭の扁平上皮で増殖し、に水疱形成 少量のウイルス増殖は、心筋、骨格筋、リンパ節、副腎、すい臓、甲状腺、乳腺および罹患部位以外の皮膚を含む全身の様々な部位でも起こる。 ウイルス排出開始から水疱形成までの日数(平均) 若雄牛 咽頭 乳牛 乳汁 豚 咽頭 めん羊 咽頭 2~5 ( 2.7 ) 1~4 ( 2.2 ) 2~10 ( 5.0 ) 0~5 ( 2.5 )
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牛における病気の経過 感染から発症までの潜伏期間にウイルスを排出 平均6.2日 発熱(最高42℃)、重度の沈鬱、食欲不振および泌乳の突然停止
FAO:口蹄疫緊急時対策の準備 感染から発症までの潜伏期間にウイルスを排出 平均6.2日 発熱(最高42℃)、重度の沈鬱、食欲不振および泌乳の突然停止 1日程度 水泡形成: 好発部位は、舌、唇、歯肉、歯間部、鼻孔、蹄間部の皮膚、蹄冠帯、泌乳動物の乳頭部。 時折、鼻孔内部または鼻鏡部、眼瞼、陰門に出現。 1日以内 潰瘍・糜爛: 水泡の破裂。過度の流涎、舌鼓および採食廃絶、それに伴う体重の激減。重症例では、舌背面粘膜の大部分が脱落。急性の跛行(歩行困難)と運動の忌避。 10日程度 口腔病変は治癒に向かう。乳頭病変部は、二次感染による乳房炎を併発することがある。
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推定感染日=病変の経過日数+平均潜伏期(6.2日) (±2) 発症前排出日=病変の経過日数+発症前排出期間(1~5日)
EUFMD: Foot and Mouth Disease Ageing of Lesions 口蹄疫病変の経過 番号 種 部位 日数 1 牛 舌 2 口 1 + 2 3 4 5 6 7 10 8 脚 9 11 12 13 14 15 16 雌牛 乳首 病変の経過日数は、感染日を推定し、疫学調査対象を絞り込むために役立つ。ただし、潜伏期間はウイルス株、暴露量、ならびに、感染経路に依存している。 推定感染日=病変の経過日数+平均潜伏期(6.2日) (±2) 発症前排出日=病変の経過日数+発症前排出期間(1~5日)
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推定感染日=病変の経過日数+平均潜伏期(10.6日) (±2) 発症前排出日=病変の経過日数+発症前排出期間(2~10日)
豚における病気の経過 番号 部位 日数 33 鼻鏡 1 34 鼻鏡、歯茎、唇 35 鼻鏡、唇 2 36 3 37 4 38 舌 39 40 41 8 42 脚 43 44 45 6 46 47 9 48 豚の潜伏期間は永い 平均10.6日 発熱、食欲不振および運動忌避 1日程度 水泡形成: 急性の跛行(歩行困難)、激痛および横臥を引起し、とくに硬い床で飼育されている場合には顕著である。水泡は、蹄冠、指間の皮膚、上爪、蹄球面に出現する。 1週間程度 蹄冠を囲む水泡は、蹄冠部からひづめの角質層の脱落を引起すことがある。そうでない場合、古い爪と新しい爪の分離線が1週間当り約1mmの速さで着実に下方に移動する。 推定感染日=病変の経過日数+平均潜伏期(10.6日) (±2) 発症前排出日=病変の経過日数+発症前排出期間(2~10日)
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ウイルスの排出 ウイルスは全身の皮膚・粘膜で増殖する あらゆる分泌物、排泄物に含まれる
直径21~25nm mm ウイルスは全身の皮膚・粘膜で増殖する あらゆる分泌物、排泄物に含まれる 牛の1日ウイルス排泄量は 105 ID50 (豚は 108 ID50) ID50 は動物が発病に要する最少感染量 表皮の落屑 尿 糞 膣分泌物 涙 唾液 鼻汁 流産胎児 胚 口腔内水泡 呼気 蹄水泡の 破裂 蹄水泡の破裂 乳 精液
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キャリアー状態の最大持続期間 動物種 最大持続期間 牛 羊 山羊 アフリカ・バッファロー 水牛 豚 3年半 9ヶ月 4ヶ月 5年
< 2ヶ月? 持続感染しない 臨床的回復後に、最大 50% の反芻動物は持続感染状態になる。感染は、咽頭および食道上部の組織で持続する。キャリアー状態は、動物の免疫状態の如何にかかわらず起こる。口・咽頭ぬぐい液から回収できるウイルスの量と頻度は、次第に減っていく。 アンテロープおよびラクダ科の動物は、キャリアーにならないか、または、短期間のみウイルスを運ぶことがある。 キャリアー動物の疫学的意義は、完全に解明されていない。
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ウイルスの生存期間 感染動物はウイルス血症を起こすため、皮膚、臓器、筋肉、血液、乳、リンパ節、骨などすべての組織にウイルスが含まれ感染源となる。 死後硬直の際に乳酸が筋肉内に蓄積してpHが低下し、ウイルスは徐々に不活化される。牛の筋肉内pHは、2℃、48時間でpH5.5まで低下する。しかし、豚の一般的なと体処理条件ではpH5.7以下にはならない場合が多い。 大量のウイルスを含むリンパ節、骨髄、筋肉内の大きな血管に残存する血ぺいなどは、と殺後も乳酸によるpHの影響を受けないので、ウイルスは長期間残存する。牛の例では、リンパ節、骨髄、血餅中のウイルスは、4℃では3~7ヶ月間不活化されていない。 口蹄疫発生と同時に、食肉、乳、ならびにそれらの加工製品の国際取引が停止される。貿易摩擦を引き起こさないために、国際獣疫局(OIE)が口蹄疫などの悪性伝染病の病原体が当該地域に循環していないこと(清浄国)を証明する仕組み、検査法、手順などを定めている。
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畜産物中での口蹄疫ウイルスの生存期間 対象物 環境状況 生残期間 牛肉 4℃ 3日 ー20℃ 90日 急速冷凍 240日 豚肉 1~7℃
1日 冷凍 >55日 骨髄 (牛)1~4℃ 30週 (豚)1~7℃ 6週 腸管 250日 リンパ節 120日 70日 舌(牛) 11年 牛乳 72℃, 30秒 生残 パルマハム 冷蔵 170日 塩漬ベーコン 190日 サラミ 常温 7日
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環境中での口蹄疫ウイルスの生存期間 対象物 環境状況 生残期間 空気 湿度60%以上の秋~冬 60分以上 水 夏~秋 15日 冬~春 14週
土壌 夏 3-7日 秋 4週 冬 21週 堆肥(牛) 1週 24週 汚泥 液状、12-22℃ 6週 敷料(ワラ等) 外気温 4週 衣服、靴 9週 飼料(ふすま) (乾草) 外気温 20週 200日以上
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家畜(精液・卵・胚、動物製剤を含む)の輸入
国外からの侵入経路 家畜(精液・卵・胚、動物製剤を含む)の輸入 1946年11月メキシコでの発生は、10月にブラジルから輸入した牛。 3週間後に発病 → 12月になって米国農務省が調査し口蹄疫と判定 → 国境を封鎖、獣医師を派遣(延3700名)、機材提供 → 1947年夏から秋;毎週5万8000頭殺処分 → 11月までに50万頭、ワクチン接種に変更 → 1950年8月末までに約6000万頭分のワクチン → 1952年8月に撲滅終了 日本の国内発生は1902年で終わったが、動物検疫所での摘発は、1920、1921、1922、1924、1933年と続いた。 畜産物(肉、肉製品、乳、乳製品) 2001年の英国の大流行は、輸入された汚染肉が含まれた残飯、または、船舶や飛行機の残飯を非加熱のまま豚に給餌したためと考えられている。 飼料(飼育機材を含む)の輸入 2000年の宮崎・北海道での発生は、中国から輸入された稲わらとされている。以降、指定工場で殺菌処理することを義務化。 野生動物 アフリカの自然公園ではアフリカ・バファローの集団が移動しており、二重柵を設けて家畜との接触を防いでいるが、共通の水飲み場が残されている。 旅行者(テロ) 具体例は知らないが、直近に発生国で農耕接触した場合、保菌の可能性がある。
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国内の地域的拡大要因 直接接触: 家畜の移動・集合 媒介物: 車両・人・物による移動 空気感染 人工繁殖
直接接触: 家畜の移動・集合 1914年の米国最大の口蹄疫流行は、 10月にシカゴの家畜集積場とその他の市場に侵入した後急速に拡大した。1915年9月に終息するまでに、22州とコロンビア特別区における3, 500以上の群が感染した。同時期にシカゴで当局の警告を無視して開催された全国酪農展示会に出展された700頭以上最高級の登録家畜も感染した。 媒介物: 車両・人・物による移動 分泌液と排泄物(唾液、乳、糞便および尿)で汚染された家畜の飼料、敷料、機材、衣類などを含む様々な媒介物の移動。車両等の機材の共用、放牧地や堆肥場の共用、搾乳等の作業協力は、零細経営では一般的なことであり、大規模経営においては系列農場間で行われている。 空気感染 飼育密度が高い地域の大規模養豚場で発生すると、エアゾールが数百メートル風下に広がる可能性がある。 人工繁殖 感染した精液を用いた人工授精によって起きることがある。
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増幅動物 指標動物 維持動物
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RECOVERY OF FMD COUNTRY FREE STATUS
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