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第6回 10/29 個人と組織の意思決定 『組織マネジメント入門』の第3章1節
第6回 10/29 個人と組織の意思決定 『組織マネジメント入門』の第3章1節 2015年秋学期 経営学3 様々な行動科学の分析対象 小さい単位 個人(最小) 家族 組織 制度 成層(種族関係、社会成層) 公衆(マスコミ・) 社会 文化(最大) 大きい単位 個人 集約 影響 影響 集団 集約 影響 文化
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3-1-1 組織内の人間像(p.49) 人間行動 人間の 行動 を予測できる範囲や精度には限界がある。
人間の 行動 を予測できる範囲や精度には限界がある。 過去の出来事や人々の 行動パターン を参考にすることに よって、個人の行動や社会の動向をある程度までなら予測する ことができるであろう。 しかし、同じような状況下にある人々は必ずしも同じように行動 するわけではない。人間の行動には、置かれている 状況 も 影響するが、 個人差 も重要な働きをする 人間には常に何らかの 欲求 があり、それを満たすために、 なんらかの行動を行う。人間の行動の根源にある欲求は、個人 の 気質 や置かれている状況によって、大きく異なる。
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組織内の人間像 右図は マズロー の「欲求段階説」を 図示したものである。
右図は マズロー の「欲求段階説」を 図示したものである。 人間の欲求を、生命維持に不可欠な 「 生理的 欲求」、危険回避に関する 「 安全 ・ 安定 への欲求」、就職や 結婚など社会的な「 所属 ・ 連帯 へ の欲求」、集団の中で尊重されたいという 「 自我 ・ 自尊 の欲求」、自分の潜 在能力を発揮したいという「 自己実現 欲求 」の5つに区分した。 それらが 階層 をなしているとしている。 低次の欲求が満たされると、より 高次 の欲求が現れ、満たされた欲求は支配的 ではなくなるとされている
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補足① 経済学と経営学の違い 経営学 ミクロ経済学 マクロ経済学 希少資源の最適配分を実現 マネジメント の現実を明確化 経済学 前提
補足① 経済学と経営学の違い 経済学 経営学 ミクロ経済学 マクロ経済学 前提 完全雇用、完全競争、市場均衡(理想的世界;経済人) 市場原理(自由な経済活動)には限界が存在 各企業の資源は異なり、経営戦略や企業行動は多様 目的 希少資源の最適配分を実現 適切な経済政策を提言 マネジメント の現実を明確化 分析 対象 家計や企業の財・サービスの取引行動 集計された経済活動(国民所得、投資、消費、輸出入) 経営戦略、製品開発、人的資源、会計、物流、CSR(企業の社会的責任)など多岐 主体 家計(個人)、企業 家計(国・地域)、企業、政府 所有者(株主)、従業員、顧客、取引相手、債権者、地域住民等 ¥
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伝統的な経済学で想定している世界:完全競争
製品の 均一性 :市場で販売されている同じ種類の製品は全て同質 である。全ての企業が生産・販売している製品に差はない。 完全 情報 :企業も消費者も価格や品質などについて完全な知識を 持っている。市場で販売されている製品は同じなので、消費者は最低 価格で購入しようとする。 原子性 :市場に多数の企業が存在しているので、全ての企業が価 格に影響を与えられない( プライス テイカー)。 平等 アクセス:同じ製品を製造・販売するすべての企業の生産技術 と生産に関する費用は同じ;すべての企業が技術情報や資源を平等 に利用できる。 市場への 参入・退出 が自由 :上記の完全情報や平等アクセスに 基づいて供給不足ならば新規参入企業が現れ、供給過剰ならば企業 が退出し、需要と需要が均衡する。
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経営学における人間像 合理性に限界があるのが人間(経営人)
サイモン(Herbert A. Simon)は、実際の人間が経済人のように完 全に合理的に意思決定することについて疑問を呈し、著書『経営行 動』(1967)の中でより現実的な人間像として「 経営人 」を提唱。 実際の人間は、限られた情報や知識の範囲の中で合理的に行動 し、最適基準ではなく、「 満足基準 」によって意思決定を行って いる. 経済学の世界(完全競争状態下)では、人間は 完全情報 を 有し、最適化行動を行う存在(経済人)。 しかし、実際には人間は 情報不足 (選択肢は不十分)で、そ して各選択肢の比較評価方法あるいは 数値化 にも限界があ る。したがって、最適化行動は現実的ではない。 現実的には、複数の選択肢の中から、 恣意的 な基準を作成 し、それらを満足するものを採用することが多い(満足基準)。
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組織行動学(行動科学の一分野) Robbins(2005)によれば、個人の心的側面を扱う 心理 学、集団について扱う 社会 学や社会心理学、さらに集団や組織と関連する 人類 学や 政治科 学などを基礎として、組織行動学の研究が進められてきた。当然、研究分野によって、研究目的は大きく異なる。 心理学なら、個人の 心的過程 (内面)を解明すること、社会学なら社会的な現象となる 行動の背景 (認識と概念)を明確化すること、経営学なら組織の 業績向上 に向け有効な手法を確立することが主たる研究目的となる。 個人及び集団の意思決定を科学的に研究し、行動に関する法則性を解明しようとする学問が行動科学である。経営学の分野では、 コミュニケーション や 意思決定 メカニズムを踏まえて、優れたリーダーシップやチームワークを引き出す仕組みづくりに焦点が当てられている。
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3-1-2 人間関係の影響(p.52) 個人の意思決定に影響を与える要素
個人が行う意思決定には、親子、兄弟、友達、隣人、同僚など 身近な人間に加えて、 社会 や 文化 などの影響も強く受 ける。 身近な人間および社会や文化が、個人の意思決定の内容に 直接影響を及ぼすこともあれば、個人の 属性 に影響を与 えるなど意思決定決に 間接 的に影響を及ぼすこともある。 逆に、個人の意思決定が、家族や組織などの 集団 あるい は社会や 文化 に影響を及ぼすこともありうる。
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対人関係の構成要素 多様な人間関係が個人の属性や意思決定に影響を及ぼしている。
相手との対人関係を 組織 間の関係(勢力関係)あるいは個人 同士の関係(情愛的関係)として捉えるかで最初に区分している。 個人同士の関係においては、相手への態度は、認知的成分、行 動的成分、感情的成分などによって決まるとされている。始めは 感情 で態度が決まったとしても、 行動 を通して、対人認知や 対人関係認知が深まった場合、 認知的 成分の影響を強く受 けるようになる。 対人認知 (表情、印象、個性等) 勢力関係 認知的成分 (学習・形成) 対人関係 対人関係認知 (良好な関係、正確な理解の度合い) 感情的成分 (好き嫌いや愛憎等) 情愛的関係 (対人態度) 行動的成分(感情によって生じる行動 例.接近↔反発 )
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対人関係の整理の一手法 態度、やる気(モラール)、行動に影響を及ぼす
支配 2次元の対人関係 勢力関係軸(支配↔服従):上下関係 情愛的関係軸(受容↔拒否):感情 拒否 受容 服従 上図は対人関係を相手との上下関係と相手への感情の2軸で捉えたものである。 垂直方向は勢力関係軸(支配↔服従)で、相手との 上下 関係を現している。 そして水平方向は情愛的関係軸(受容↔拒否)で、相手に対する 感情 を現している。 厳然たる上下関係が存在している場合でも、拒否されている関係より、受容されている方が間柄は良好となり、管理なども容易。
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人間関係論 (作業条件より、職場の人間関係の方が生産性に良好な影響を与える)
1920年代の米国ではテイラーの科学的管理法が普及。 メイヨー等が米国ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場での 実験で、 作業条件 (環境)によって、 生産性 が変化するこ とを実証したかった(1924年から1932年の長期的分析)。 実験室で組立作業を様々な条件(照明の明るさ、休憩回数や時間、 軽食の提供など)下で行わせ、結果を測定した。 ところが、どのような条件下でも、作業条件と生産性の 因果 関 係は確認できなかったので、原因は他にあるとして、面接調査を 行った。 非公式組織を含めた職場の 人間関係 が職務満足や生産性 の向上につながると結論づけた。人間の心理的要因、モラール (意欲)が生産性向上には大切。
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マクレガーのX理論とY理論 マクレガー(Douglas McGregor)は、人間は命令(強制)と金銭 だけで高い生産性を達成・維持できるのかを疑問に感じ、「X理 論」と「Y理論」を提唱した。 X理論は命令統制に関する伝統的見解であり、テイラーが想定 した人間観に基づいている。人間は本来怠惰であり、自ら進ん で仕事をしようとしないので、人間は 強制 あるいは金銭的 な 報酬 (飴と鞭)によって働くとされている。 それに対して、Y理論は従業員個々の目標と企業目標を統合し たものであり、前述したマズローの欲求段階説に基づく人間観 を基本としている( 動機づけ )。 生活が豊かになった現代では、X理論の限界が露呈し、Y理論 の方が重要性を増してきているように思える。
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3-1-3 組織と個人 組織と個人 組織の目的と構成員の 目的 が、完全に合致することは稀で ある。重要な事は、組織の目的達成に向けて、構成員から必要 な 貢献 を得ることである。 下図は、組織と個人の目的の重なり具合を図示したものである。 組織と構成員の目的が重なっている部分が多いほど組織運営が 円滑に進めることができる 。 したがって、組織の目的に沿った 人間 を集めること、あるい は、両者の重なる部分が増えるように、 教育 や 研修 など を実施することが有効となる。 組織 目標 個人 目標
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組織の有効性 組織と構成員が目指している 方向性 が同じであれば、同じ位のやる気や労力でも組織の有効性は高くなる。
組織と構成員が目指している 方向性 が同じであれば、同じ位のやる気や労力でも組織の有効性は高くなる。 組織と構成員の目指している方向性が大きく異なる時には、同じ位のやる気や労力でも組織の有効性は低くなる。 構成員の目指している方向性を組織の目指している方向性に近づけることに成功すれば、組織の有効性が高まる 組織の満足(目指す方向) Θ(角度:ずれ) 個人 の満足 (目指す方向性) 組織の有効性 ※実際に組織と構成員の目標の方向性数値化するのは難しい。
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経営における個人行動のコントロール 順応 ・ 発達 過程(個人は会社の従業員となり、職務になれ、 会社に貢献する。 社会 会社
社会 会社 (職務割り当て教育・評価・報酬制度) 個人 (個性・欲求) 応募 採用 順応・発達過程 (キャリア形成) 行動 成果 社会・個人・会社は 相互依存 関係にある。 採用過程(個人は希望の会社に応募、会社は必要な人材を採用) 順応 ・ 発達 過程(個人は会社の従業員となり、職務になれ、 会社に貢献する。 会社による従業員の管理(教育・人事・報酬制度などに加えて、職 場の良好な人間関係などの 非金銭 的インセンティブの仕組み を整える)
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組織の意思決定プロセス 組織の意思決定プロセスにおいて、 満足基準 による意思決定 プロセスをあてはめることができる。
組織の意思決定プロセスにおいて、 満足基準 による意思決定 プロセスをあてはめることができる。 目的設定後、その目的達成に向けた 代替案 を複数作成し、目 的達成の見込みの高い代替案があればそれを採用し、実行に移す。 目的達成の見込みの高い代替案が見当たらない場合は、更なる代 替案を作成する必要がある。いくら代替案を探しても、見込みの高 い代替案を見つけられなければ、設定した 目的 事態を考え直す。 ※組織にも探索能力と時間・費用に限界があるので、有限の選択肢の中から特定の条件を満たしたものを採用せざるを得ない。 ※組織の場合でも、個人と同様に、最適基準での意思決定というより、満足基準での意思決定となる。
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補足② 行動を変化させるには? 内的要因 個性 選好 経験 外的要因 天候 雰囲気 規則 意思決定 メカニズム 行動 内外からの刺激
補足② 行動を変化させるには? 内的要因 個性 選好 経験 外的要因 天候 雰囲気 規則 意思決定 メカニズム 行動 内外からの刺激 不適切な行動を辞めさせたいあるいは適切な行動を採らせた い場合はどうすればいいか? 意思決定メカニズムを変化させればいい 訓練や研修などの学習効果によって内的要因を変化させる 対人関係の緊密化(コミュニケーション等による)や規則の変 更などによって外的要因を変化させる。
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経営にとっての行動科学を学ぶことの意義は?
経営の目的(前提):組織 目的 を効率的に達成すること そのために組織の各構成員の行動および組織内のグループ(下 部組織)の活動を適切にコントロールすることが必要となる。 各構成員に対しては、教育・研修やリーダーシップを通して、 意思決定 のメカニズム(判断基準の枠組み)に働きかけ、組 織的行動をとらせるようにする。 組織内部の部署間あるいは提携関係にある 企業間 におい ても、活動を適切にコントロールしないと大変な問題になる(大企 業病・官僚主義、提携の失敗) ※現代では一企業で、原材料の採掘、部品の生産、製品の完成、 流通網整備まで一貫して行うことはほとんどないので、サプライ チェーンマネジメントも重要な分野になる(サプライチェーンの構 成メンバーをいかに管理し、全体として効率的な運営を行うか)。 ※個人の行動⇒集団(職場・会社)での行動⇒提携会社間の連携
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